インタビュー

学校給食をもっと楽しく、便利に!高校生の昼食をスマホで注文|PECOFREE(ペコフリー)

By 山本佳世

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2021.04.22
PECOFREE(ペコフリー)

育ち盛りの高校生のお腹を満たして、栄養もバッチリ!保護者の手作り弁当の負担を減らし、フードロスやゴミ削減といった社会問題も解決する。これまでになかった新たな学生向けモバイルオーダーサービス「PECOFREE」を運営するのは今回ご紹介する川浪達雄さん。産業給食事業や仕出し弁当事業を展開する株式会社はたなかの在籍中にこのサービスをスタートし、今年2月に株式会社PECOFREEを起業しました。
そして「PECOFREE」は今年3月、西日本シティ銀行がスタートアップ企業と地場企業の価値共創を目的とした西日本フィナンシャルホールディングスのビジネスプランコンテスト『OPEN INNOVATION HUB2020』の最優秀賞に輝き、各所から注目を集めています。

川浪達雄(かわなみたつお)さん

■プロフィール
株式会社PECOFREE(ペコフリー)代表取締役
川浪達雄(かわなみたつお)さん

1984年、福岡県福岡市生まれ。高校生から数々の飲食店を渡り歩き、店長やエリアマネージャーなどのマネジメント職も経験。24歳の時に株式会社はたなかに入社し、工場長や取締役部長を務める。2021年2月に株式会社PECOFREEを創業。香蘭女子短期大学の食物栄養学科による産学連携講師も務める。

給食業界の課題を解決

――まず、『PECOFREE(以下:ペコフリー)』について教えてください。

川浪:スマートフォンを使って、高校生が学校で食べる昼食を注文できる学生向けモバイルオーダーサービスです。前日までに専用アプリから好きなメニューを選んで注文すれば、提携する給食業者が学校まで弁当を届けてくれるというもの。弁当の料金はすべて1個450円になっており、保護者が購入したポイントによって清算できるという仕組みです。栄養管理士が監修した弁当は栄養のバランスを考慮し、ヘルシーやボリュームが多いメニュー、スポーツ栄養といった高校生のニーズに沿ったものを3~4種用意しています。食べ終えた後は容器を回収するのでゴミが出ることもありません。学食や購買が売り切れて食べそびれる心配がなく、出来立ての食事を友だちと一緒に教室で食べることができるんです。

ペコフリー

――そういったサービスで起業するに至ったきっかけは何だったのでしょう?

川浪:コロナ禍の影響が大きかったですね。僕は株式会社はたなか(以下:はたなか)で学食運営を担当していますが、昨年の4月~5月には一斉休校として3週間ほど事業停止となり、売り上げは前年比の1割程度まで落ち込みました。"ウィズコロナ"に対応できるサービスをずっと模索していた中で、スマートフォンを使った高校生が学校で食べる昼食を注文できる学生向けモバイルオーダーサービスというアイデアに至りました。
ちょうどそのタイミングで、2020年11月に西日本シティ銀行がビジネスプランコンテストを開催するという情報を聞いたことが転機になったんです。応募するにあたって高校にアンケートをとったり営業に回ったりして、「ペコフリー」のサービス内容を固めました。すると福岡市の福岡雙葉中学校・高等学校が「ペコフリー」を導入していただけるという話がまとまり、株式会社はたなかとは別に株式会社LocalGroupの鍋島さんとジョイントベンチャー*という形で起業することになりました。

ジョイントベンチャー・・・複数の企業がお互いに出資して新会社を立ち上げること。

――なぜはたなかの事業ではなく起業という形をとったのですか?

鍋島:はたなかの中でこのような新規事業を立ち上げることは不可能ではないと思います。ただ同社は弁当製造会社として創業40年という実績と信頼がある会社です。今回のようなモバイルオーダーサービスは性質上プラットフォーマーとしての側面が強く、サービス運営の知見及び経験が必須となる為、はたなかの弁当製造経験と弊社のサービス開発・運営の知見をより活かす為に、ジョイントベンチャーという形で新たな会社を作ろうという提案をさせていただきました。
私は株式会社LocalGroupという会社の代表取締役も務めているのでそこから出資し、役員としてDXをメインに経営に携わっています。

鍋島さん

川浪:はたなかとは別での起業としましたが、社員のみなさんから応援してもらっているんですよ。社員の大半はお子さんを持つお母さんなので、早朝から弁当を作ることが本当に大変だという話をよく聞くんです。だから「絶対成功させなさいよ」とお尻を叩かれました(笑)。

――サービスを始めるにあたって、まず取り組んだことは何でしょうか?

川浪:学食の課題を吸い上げることです。そもそも、このサービスの根底には「小中学校は義務教育で給食があるのに、なんで高校は無いんだろう?」という僕が長年抱いていた疑問がありました。「高校は給食の代わりに学食がある」と思われるかもしれませんが、実は学食の席数って生徒数の1割程度が相場なんです。生徒数が1,000人いる学校の場合、100席しかないと1割しか利用できないことになりますよね。しかも昼休みは45分しかないので、移動や食事時間を考えるとほぼ1回転しかできません。ということは9割の学生は手作り弁当かコンビニや購買で買うしかないんです。
そこで高校生の学食の現状について幅広く知るため、県内外の高校にアンケートをとりました。すると、実は学食自体がないという高校が多いことが分かったんです。昔はそれで良かったかもしれませんが、両親が共働きをしている世帯が65%を占めている現代において、毎朝子どもの弁当を手作りするのは相当な負担があります。

弁当

――さまざまな課題が見えてきて、サービス内容が固まっていったんですね。

川浪:学食の問題だけでなく、高校生の昼食自体にいろんな問題があることも分かってきました。例えば昼食をコンビニや購買で買うにしても、食費として渡されたお小遣いで土日に遊んで使ってしまい、平日の昼食はパン1個に節約せざるを得ないという学生も多いんです。高校ではありませんが、小中学校は毎日の給食献立が決まっているので好き嫌いがあれば残してしまうこともあります。それがフードロスにつながっていく。だからせめて、高校生は好きな食事かつ栄養バランスのとれたものを選べるといいなとも思いました。
キャパ的に学食が利用しづらい、手作り弁当は共働き世帯にとって負担が大きい、食費を節約する学生が多い、好き嫌いによるフードロスがある…。そういった給食業界の課題を一つひとつ解決できるようなサービスとして誕生したのが「ペコフリー」なんです。

業種を超えて変革を

――社会的にもニーズのある事業ですね。起業において困ったことはありましたか?

川浪:全部困りましたよ(笑)。特に、僕たち給食産業ってどうしてもITに弱い部分があるので、そういったことや起業準備については鍋島さんに本当に助けていただきました。ジョイントベンチャーだから解決できた、という実感はあります。

鍋島:あとはサービスの運営面やスタートアップとしての経営面は僕らが考えて、現場的なこと…例えば弁当を作る体制作りや学校への営業は川浪さんの経験を生かしていただきました。それぞれの強みを生かしながら、困っていることがあれば得意な方が解決していきましたね。

――業種を超えてジョイントしたことで、給食業界も変えて行けそうですね!

川浪:コロナ禍に加えて少子高齢化が進む今、給食業界は衰退の一途をたどっています。「ペコフリー」が普及することで新たな市場を開拓でき、同じように学食を運営している企業の不採算によるお悩み解決や食品工場の稼働率、生産量も向上できるはず。ひいてはそれが雇用を守り、畜産農家といった生産者の生活を守って地域経済を助けていくことも、僕らの使命だと思っています。

ペコフリー

――今後の展望を教えてください。

川浪:まずは福岡県内10校の高校に「ペコフリー」を導入してもらうことを目指しています。そして最終的には全国へと普及させていくこと!僕は今37歳なので、10年後の47歳の時点で47都道府県を制覇したいですね(笑)。
給食業界だけでなく、様々な業種業界との業務提携、そして畜産農家や仕入れ業者の売り上げ向上にも貢献し、SDGsの一環としてリユース容器やマイ箸の徹底、フードロスの解消など、協業の輪を良い方向へ各地域の経済活性化に導いていくことを目指したいと思っています。

ペコフリー

――では最後にこれから起業する人へのアドバイスをお願いします!

川浪:まだ起業して間もないのであんまり大きなことは言えませんが(笑)。1人で悶々と考えるよりも、気が合う仲間じゃないですが、応援してくれる人や支援してくれる人を見つければ不可能を可能に変えていけるんじゃないかなと思います。それと、「この問題を絶対に解決したい」という信念も必要です。僕は子どもと妻がいるので、当事者意識としても問題を見ることもできました。家族や仲間の支えが、突き進もうという原動力になっています。
また福岡市で起業を考えているという方であれば、市内の企業がスタートアップを支援していて、みんなで応援してくれるというような一体感があります。僕たちが受賞したビジネスプランコンテストもそうです。サービスを立ち上げる時っていかに周りに知ってもらえるかが重要になりますが、世に出る機会の多い福岡市で起業するのは良いチャンスだと思います。

現場の"リアル"な声から生まれた「ペコフリー」。ジョイントベンチャーという形で川浪さんと鍋島さんが「給食」「IT」という業種業界を超えてお互いに補完し合い、化学反応を起こしたという話も興味深いものがありました。お互いにお子さんを持つ父親として、「自分たちの子どもにはこのサービスを利用させたい」という"当事者意識"も原動力になったようです。

株式会社PECOFREEについて

■会社概要
会社名:株式会社PECOFREE
URL:https://pecofree.jp/
所在地:福岡県福岡市博多区美野島3-22-42 はじめビル303
設立:2021年2月
代表:川浪達雄

■事業内容
・スマホで選べるスクールランチの予約注文サービス「PECOFREE」の開発・運営
・給食・食品業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)支援事業

■問い合わせ先
Mail:info@pecofree.jp

お知らせ

▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
https://www.ncbank.co.jp/hojin/sogyo/sogyo_plaza/

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

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