インタビュー

趣味のキャンプを仕事に。好調理由は起業前の計画性にあり! | キャンプ女子 橋本華恋さん

By renew編集部

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公開日 2020.10.28
趣味のキャンプを仕事に。好調理由は起業前の計画性にあり!

人は「十人十色」と言われるように、起業のかたちも人それぞれ。「MY FOUNDING STORY」シリーズでは、さまざまな企業の創業ストーリーを紐解き、これから起業しようとしている方々の参考や励みにしてもらいたいと考えています。

コロナ禍における密を避けた新しい生活様式は国内のアウトドア市場を盛り上げ、比例するように余暇時間の過ごし方としてキャンプへの需要も高まっています。キャンプは一人で楽しむソロキャンプからキャンプ用品や食材などがあらかじめ用意されているグランピングまで、楽しみ方もさまざまで男女問わず注目されています。

そんな新しい生活様式が謳(うた)われる約1年前の2019年6月。福岡市に注目のスタートアップが誕生しました。その名も「キャンプ女子株式会社」。インスタグラム『キャンジョ』のフォロワーは5万人(2020年10月時点)を超え、キャンプ女子のコミュニティは国内最大級を誇ります。

設立からわずか1年、さまざまなメディアにも引っ張りだこの「キャンプ女子株式会社」が、ここまで好調な理由はどこにあるのか、今回は代表取締役である橋本華恋さんに起業当時を振り返っていただきながらその理由を紐解いていきます。

キャンジョ1

■プロフィール
キャンプ女子株式会社 代表取締役
橋本華恋(はしもとかれん)さん

1990年、熊本県生まれ。北九州市立大学卒業後に福岡市の化粧品会社に就職。趣味ではじめたキャンプの魅力を発信すべく2019年6月にキャンプ女子株式会社を設立。キャンプ女子コミュニティの『キャンジョ』運営をはじめ、キャンプ場のリブランディングやキャンプ用品のレンタル事業を展開する。

趣味から感じたビジネスポイント

――まずは事業内容についてお聞かせください。

橋本:インスタグラムで『キャンジョ』というキャンプをする女子のコミュニティ運営をやっています。その他、地方創生の観点からグランピング場(油山グランピング)の運営と郊外キャンプ場のリブランディング事業、そしてキャンプ道具のレンタル事業をやっています。

――起業にあたり「キャンプ」に目をつけたきっかけは何だったのでしょうか?

橋本:きっかけはキャンプが趣味になったというところからですね。最初は友人に連れて行ってもらったんですが、その1回目からキャンプにハマってしまって。

――そこでハマったことが現在にいたる原点ですね。キャンプのどの部分に魅力を感じたのでしょうか?

橋本:日常では体験できないようなこと。例えば、外でみんなとご飯を作って食べるとか、自分たちで張ったテントで寝るとか、朝起きた時に目の前に広がるきらきらした景色とか、本当に素敵だったんです。元からアウトドアが好きでフェスや登山に行ってはいましたが、そこから最終的にいきついたのがキャンプでした。

キャンプ風景

――キャンプに興味を持つ人が増えているニュースは耳にしますが、趣味から起業に意識がいくまでお聞かせください。

橋本:趣味の域を超えるように、もう毎週のようにキャンプに行っていましたね。そして必ず2泊以上する。それくらいキャンプ好きになりました。まだ会社員時代でしたが、幸い有給休暇などをうまく組み合わせながら行っていました。でも実は、キャンプは好きですがソロキャンプはやったことがないんです。私はみんなで楽しむキャンプが好きで、こういう体験をもっとみんなに試してほしいと思ったこと、そして単純な課題に気付いたというところから起業を意識しだしましたね。

――課題ですか。具体的にはどういったことでしょうか?

橋本:インターネット上でキャンプ場の予約が取れないところが多かったんです。電話予約とか使ったことのない往復はがきとか(笑)。占有許可書とか市役所に提出しないといけないキャンプ場もあったりして。これだけキャンプ需要が増えそうなのに未だにアナログなところにビジネスチャンスを感じたんです。ホットペッパービューティーのように手軽に予約の取れるものがあったらいいなと思いました。

――そこから起業しようと思って、退職されたのですか?

橋本:そうです。起業する1年前の会社員時代から準備をはじめました。最初の半年間はタイミングよくFacebookの広告で流れてきた、福岡市が創業を応援してくれるプログラム『Global Challenge!STARTUP TEAM FUKUOKA』の存在を知って、“これ無料なら行くしかないでしょ”と思って参加しました。ビジネスアイデアを磨くことやお金まわりのこと、デザインなどについて学んでいきました。その中で一番刺激を受けたのが海外研修で、国内研修とどちらかを選ぶ形なんですが、私は海外研修を選び、Twitter社とかFacebook社とかシリコンバレーのスタートアップで世界を変えている本社を訪問して、起業家の生の声を聞いて、そこで“私もあったらいいなをつくりたい”と本気で思えました。

海外研修

(▲海外研修時)

――刺激が決意になったということですね。研修後はどのようなステップを踏んだのでしょうか?

橋本:とはいえ、つくりたいと思っても私はエンジニアでもなくスキルもなかったので、残りの半年間はプログラミングスクールのG’sAcademyに通いました。ほんと大変でしたね。エクセルもパワーポイントもできない状態だったので、スクールの中では劣等生だったと思います(笑)。

それでも毎日定時に会社を出て、夜中2時くらいまでスクールにこもってひたすらコードを書いていました。なので、起業を決めてからは生活スタイルも大きく変わって、大好きだった飲み会にも全く行きませんでした。

――すごい執念ですね。スキル以外の準備についてもお聞きしたいと思いますが、他にはどのようなことを準備されましたか?

橋本:大きかったのはキャンプ女子のコミュニティを先につくったということですね。

起業したその先を見据えた準備をした

――コミュニティですか。なぜコミュニティなのでしょうか?

橋本:コミュニティはインスタグラムでつくったんですが、例えば、会社をつくって自社商品を開発することはできると思うんです。でもその商品をどこにPRして、販売していいかわからない状態だとすぐ行き詰まると思って、先にお客さんのニーズをつかめるコミュニティをつくった方がいいと考えました。このキャンパーさんに共感してもらえるコミュニティをつくるためにも準備をしていました。女性キャンパーのインスタグラムのお写真に、今後始める「キャンジョ」というコミュニティをコメントで一件一件伝えたり、地道に準備をしていました。

――1人1人にDMを送るなんて大変な作業ですね。『キャンジョ』を開設してみての反応はいかがでしたか?

橋本:すごく反応がよかったです。DMを送ったほとんど方がフォロワーになっていただき、3か月で1万人のフォロワーがつくまでに成長しました。おかげで多くのメディアにも取り上げていただき、計画的に準備していてよかったなと思います。この準備がなかったら今頃会社を潰しているかもですね(笑)。

キャンジョ

――それだけ準備されていたということですが、起業において困ったことはありましたか?

橋本:起業するまでは特に困らなかったですが、起業してから知ることもあってバタバタしましたね。クレジットカードはつくっておいた方がいいとか、法人口座は審査が厳しくなっているので早めに銀行に行った方がいいとか。ですが今オフィスを構えている『Fukuoka Growth Next(以下、FGN)』に入っている先輩起業家の方々にいろいろ教えていただいたので助かりました。

――周りに教えてくれるコミュニティがあるって大きいですよね。

橋本:本当にそう思います。FGNにはスタートアップの無料相談窓口もありますし、サポート企業も集まっていますし、地元の熊本では起業できなかったんじゃないかとも思いますね。西日本シティ銀行(以下、NCB)さんとの関わりもここからです。NCBアプリへの情報掲載で、公式LINEの友だちが2,000人くらい増えたんです!クーポンを利用した「油山グランピング」の予約も増えましたね。かなり事業拡大の背中を押していただいてありがとうございます。当時はまだ口座も持っていなかったのに(笑)。

――こちらこそ少しでもお役に立つことができて嬉しいです。

橋本:銀行の一般的なイメージはハードルが高いというか、書類とか完璧な状態でないと相談しに行ってはいけないと思われがちだと思うんです。私もそうでした。ですがFGNにはNCBの方もいらっしゃって、フランクな立場で相談というか雑談から話すことができるので起業を考えている方にとっては心強いと思います。

――もっと早く起業したかったということですか?

橋本:そうですね。好きなことを長く仕事としてやることができますし、体力的にも若い方と勢いがあると思いますしね(笑)。私が学生だったらFGNのような施設に入っている企業にインターンしてまだ見ぬ世界を体感して学んでみたかったですね。

キャンジョ

一度冷静になって整理を

――「趣味や好きなことを仕事に」というのはよく聞くキーワードでもありますが、いまそのように趣味や好きを仕事にしたいと起業を考えている方にアドバイスがあるとしたら、何をお話ししますか?

橋本:好きなことを仕事にした先には2パターンあると思っていて、私のように楽しめる人と、そのものを嫌いになってしまう人。その違いって何なのかなと考えると、趣味(好きなこと)の中で絶対に勝てると思うことを見極められるかだと思います。

私は「キャンプ女子」というカテゴリーに自信がありましたし、コミュニティができた先のことまで展開が考えられたので好きで続けられているのだと思います。自分がするのと仕事として提供するのとは違うということに気づければいいかもしれないですね。そのためにも事前の計画や準備を整えていくのは重要かもしれないです。起業を考えている人は頭のなかも含め一度冷静に整理することをおすすめします。

――それでは最後にこの先の展望についてお聞かせください。

橋本:今回のコロナのようなことって、今後も起こるかもしれないですよね。そうなると、密を避ける生活スタイルがスタンダードになってくると思います。そうした時に、これまでキャンプやアウトドアに疎遠だった人も気軽に外に出やすくなる世界をつくっていきたいなと思っています。古いキャンプ場の整備はもちろんですが、街中の公園とか広場でも楽しめる。都会の人でも身近に感じてもらえるような啓蒙活動を地道に続けていきたいと思います。

キャンジョイベント

(▲商業施設でのイベント)

趣味であったキャンプを仕事にする。一見すると羨ましく思えるものですが、キャンプ女子がここまで拡大し支持されているのは、橋本さんの丁寧な計画性があったからこそだと思います。勢いではじめるのではなく、一度冷静に立ち位置を分析し地道に進めていく姿勢は、今後起業を考えている方にとっても参考なるのではないでしょうか。

キャンプ女子株式会社について

■会社概要
会社名:キャンプ女子株式会社
URL:https://www.camjyo.com/
所在地:福岡市中央区大名2-6-11 Fukuoka Growth Next2F
設立:2019年6月
代表取締役社長:柴垣道宏
代表取締役:橋本華恋

■事業内容
○キャンジョ事業
国内最大のキャンプ女子コミュニティ「キャンジョ」を運営。フォロワー数は5万人を超え、女性に限らずキャンプをはじめたい全ての方へキャンプの魅力を伝えるメディア。

地方創生事業
地方自治体と協働でアウトドア関連施設やイベント企画の運営。福岡市内の「油山グランピング」など含め全国5箇所の施設の自社運営やプロデュースを行う。

○キャンプ道具レンタル事業
個人・法人向けにキャンプ道具のお得なレンタルサービスを展開。

○キャンプ場WEBサイト制作事業
国内初のキャンプ場専用HP作成サービス。

○コラボ&プロデュース事業
商品企画、プロデュース。
SNSマーケティング、ブランディング
撮影用装飾
キャンプ場での研修、合宿、懇親旅行
アウトドアイベントの企画
アウトドアオフィス

■問い合わせ先
MAIL: info@camjyo.com

 

お知らせ

▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。https://www.ncbank.co.jp/hojin/sogyo/sogyo_plaza/
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

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