インタビュー

脱サラ起業で生産者と読者をつなぐ新たなチャレンジ。| ふくおか食べる通信 梶原圭三さん

By renew編集部

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2020.12.03
脱サラ起業で生産者と読者をつなぐ新たなチャレンジ。| ふくおか食べる通信 梶原圭三さん

人は「十人十色」と言われるように、起業のかたちも人それぞれ。「MY FOUNDING STORY」シリーズでは、さまざまな企業の創業ストーリーを紐解き、これから起業しようとしている方々の参考や励みにしてもらいたいと考えています。

2014年度にグッドデザイン賞の金賞を受賞した『東北食べる通信』。「つくる人」と「食べる人」をつなげたいという想いから2013年に創刊された「食べもの付き情報誌」は、その評判から各地に広がり、現在(2020年11月)では全国41地域にまで広がりをみせています。そんな『食べる通信』の福岡版を立ち上げたのが梶原圭三さん。順調な会社員人生を捨ててでも脱サラし、『ふくおか食べる通信』を立ち上げた創業ストーリーとは。

ふくおか食べる通信 代表  梶原圭三

■プロフィール
ふくおか食べる通信 代表
梶原圭三(かじわらけいぞう)さん

1967年、福岡県朝倉市杷木出身。高校卒業後は福岡を離れ、金融系の某上場企業に勤め、その後大手情報通信機器メーカーで支店長やエリア責任者を歴任、老舗機械メーカーに転職後、新規事業を立ち上げ30年ぶりに福岡へUターン。2017年に『ふくおか食べる通信』を立ち上げた。

一念発起で脱サラ起業

――まずは『ふくおか食べる通信』について教えてください。

梶原:『食べる通信』は「食べもの付き情報誌」と言っていまして、こだわった生産者を特集した冊子とその生産者がつくった食べものが定期的に届くというサービスです。私はその福岡版である『ふくおか食べる通信』を2017年11月に立ち上げました。
『ふくおか食べる通信』の場合は、奇数月の2か月に1回発行しています。読者さんは定期購読の申込みをすると2か月に1度自動的に冊子が送られてきます。
冊子は12ページのタブロイド版で、半分の6ページを使って、基本1組の生産者の想いやこだわりを綴ったドキュメンタリー記事、残りの半分は生産者を応援している人の紹介、あるいはその生産者の食材をつかったレシピを掲載しています。
よく食材の宅配サービスと比較されることがあるんですけど、宅配サービスは食材がメインですよね。その中に生産者の情報が少し入っている。『食べる通信』の場合は逆なんです。冊子がメインで、こういった生産者がつくった食べものを少し食べてみませんか、という感じで食べものは付録なんです。そうすることによって、その生産者のことを深く知ってもらう。ぼくは「知産知消」と言っているんですけど、知っている人がつくったものをお互い知っている同士で食べるという、こういう関係性の世界観をつくりたいと思っています。
なので福岡の美味しい食べものが届くサービスというのではなく、提供したいのは生産者と読者が共感を育める関係性なんです。

ふくおか食べる通信

――生産者と読者の関係性を提供というのが新しいですね。『ふくおか食べる通信』は2017年11月に創業ということで、創刊からちょうど3年になりますが、会員数はどれくらいでしょうか?

梶原:2020年11月時点で600人くらいになります。創刊当時は400人でしたので、ゆっくりファンがついてきて、全国の『食べる通信』の中では2番目に大きい規模です。少ないと思われるかもしれませんが、1号あたり1生産者の掲載スタイルなのでお届けできる量には限界があります。例えば、1万人の読者すべてに食べものを提供できる生産者はなかなかいません。それに「知産知消」と言いましたが、お互いに知っている関係性になるには、単純に増えすぎるということも違うのかなと思っています。
最初は500人くらいが適正規模かなと思ったんですが、それだとビジネスとしては赤字なんですね。規模の一番大きい『東北食べる通信』でも1,500人くらいということなので、福岡は1,000人を上限目標にやっています。1,000人であれば私自身が読者の顔と名前を覚えられるとも思っています。

――ビジネスとして上限が決まっているということですが、それでも梶原さんがこの『ふくおか食べる通信』をはじめようと思ったのは何がきっかけなのでしょうか?

梶原:出身は福岡県朝倉市なんですけど、大学は鹿児島に、仕事では3回の転職を経験しながら全国を転々としていました。3社目ではこの先、さらなる昇進も見えていたんですけど、うまく仕事が回りだして自分がいなくても回る状態までに成長したんですよ。一方で、東京のコンクリートジャングルも苦手だったということもあり、なんとなく土日に畑を借りて野菜を作ったりしていました。近場の農家さんとも仲良くなって、収穫イベントを企画すると結構人が来て喜んでくれるんですよね。都会から参加する人も生産者も、そして企画する私たちもお礼を言われて嬉しい、このトライアングルコミュニティをなんとか仕事にできないかと考えていました。加えて、一次産業のかっこよさや社会的意義を多くの人に伝えたいとも思っていました。
そんな中たまたま『食べる通信』を立ち上げた高橋博之さんの本「都市と地方をかきまぜる」を読んだんです。読んだときにまさに実現したい世界はコレだと思いましたね。すぐに高橋博之さんに会いに行って話を聞いて、その想いに触れて決心がつきました。当時はまだ『食べる通信』のエリアに福岡が無く、このままだと絶対ほかの誰かがやると思ったので、高橋さんにも「会社と家族はどうするんですか」と心配されたものの、なんとかしますと言って、そこから6か月で立ち上げたという流れです。

農業イベント

――わずか6か月ですか!そこから会社とご家族を説得して起業は急スピードですね。

梶原:そうですね。まずは妻に話すところからはじめました。3社目の会社ではそれなりのポジションでそれなりの年収はいただいていたので、妻としては60歳まで安泰だと思っていたと思います。そこをなんとか納得してもらって、そこから事業計画書をつくりはじめました。

そもそも何のためにやるのかが大切

――起業までの準備がスムーズに見えるのですが、それはこれまで勤められた会社での経験があったからでしょうか?

梶原:もちろん経営に近い立場で仕事させてもらっていたというのもあります。そして実はもう一つ、2社目の情報通信機器メーカーにいたときに東日本エリアの責任者をやっていたんですが、どうにも仕事がうまくいかなくなってしまったんです。それをなんとか打開していかないといけないと思い、MBAというキーワードが引っかかり、ビジネススクールの「グロービス」が提供していた講座を受講し、その後入学、本格的に経営やマネジメントを学びました。それからは、順調に実績も伸びてきました。

会社員時代

――グロービスでの経験が活きているんですね。

梶原:そうですね。なので事業計画をつくったときから、読者を何人獲得できれば黒字化するとか、それを何年後に達成するのか、例えば3年後であればその期間にどれくらいのお金が必要かというのを全部計算して進めました。一応借り入れもせずに手持ち資金でやれそうだという目途がついたので、まずは“軽く”はじめていきました。

――“軽く”というのは具体的にどういうことでしょうか?

梶原:余計な固定費をかけないということです。いきなり事務所を設けたり人を雇ったりする人もいるかと思いますが、私の場合は『ふくおか食べる通信』を創刊するにあたって、冊子をつくり上げるまでの作業も知っておかないと全貌を把握して経営できないと思ったので、事務所も借りず3年間は人を雇わない、全て自分でやってみる計画で事業計画書をつくっていきました。

――そういった数字に基づいた計画が大切ということでしょうか?

梶原:もちろん起業する上で数字が読めるというのはマストだと思いますが、結局なんのためにやるのかという核となる想いが一番大事だと思うんです。事業計画書つくるのはちょっとしたスキルがあればできるんですが、経営する中ではいろいろな意思決定をしないといけない場面が多々あります。想定外のこともよく起こります。その時に立ち返る核があれば選択を間違わず継続できると思います。単に大きく拡大したいとか影響力を持ちたいとかいうものだと、私の経験上、そういう起業は結構もろいと思います。事業そのものは手段なんですよ。何かの手段であり目的ではない。何のために起業しようとしているのか、本当に自問自答してもいいし、いろんな人と話ながら解像度を高めていくことが大事です。想いだけでは事業は回りませんけれども、想いがないと事業はつくれない。想いと計画。の両輪じゃないかなと思います。

――何のためにやるのか、それは起業のみならず会社員の立場としても大切なところですね。それでは今後の展望についてお聞かせください。

梶原:まずは読者を上限目標の1,000人にするということですね。そしてぜひリアルで生産者と触れ合ってほしいんですよね。やはり直接会うと関係性の深みが違ってきます。
さらに、1,000人以上の人に「知産知消」の世界観を広げていきたいので企業とのコラボなどを計画しています。教育機関や研修制度を考えている企業なんかとコラボすることで、生産者と触れ合うきっかけの幅が広がると思うんです。そういった仕掛けのことは今後2年で練っていきたいなと思っています。

農作物

――ありがとうございます。それでは最後にこれから起業を考えている人にアドバイスをお願いします。

梶原:やはり“あなたは何のためにこれをやりたいのか”ですね。本質的な目的ですね。これはほんとに考えた方がいいと思います。お金を稼ぎたいとか大きくなって影響力を持ちたいでもいいんですが、その稼いだお金をなんに使うのか、影響力をなんのために使いたいのか、と言うところまで考えることで根源的なことが見つかると思います。
それでも見つからなかったら、いろんな人の話を聞いて話してみると頭の中の整理ができていいですよ。

一念発起して新たなチャレンジをした梶原さん。それまでが安定したポジションだったということで、いろいろな葛藤があったと思います。それでも“何のためにやるのか”という想いを持ちチャレンジする姿勢は、起業のみならず働くすべての人にとってずっと必要なものかもしれません。

ふくおか食べる通信について

■会社概要
会社名:ふくおか食べる通信
URL:https://fukuokataberu.com/
設立:2017年11月
代表:梶原圭三

■事業内容
「ふくおか食べる通信」発行・運営

■問い合わせ先
MAIL:fukuoka@taberu.me

お知らせ

▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。https://www.ncbank.co.jp/hojin/sogyo/sogyo_plaza/

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
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