
人は「十人十色」と言われるように、起業のかたちも人それぞれ。「MY FOUNDING STORY」シリーズでは、さまざまな企業の創業ストーリーを紐解き、これから起業しようとしている方々の参考や励みにしてもらいたいと考えています。
近年、説明せずとも話が通じるほど浸透してきているUIとUX。ユーザーインターフェイスの略であるUIは人とデバイスをつなぐ接点を指し、ユーザーエクスペリエンスの略であるUXは人とそこから得られる体験のことを指します。
スマートフォンの普及により、誰もが身近に情報を得られるようになった今、UIとUXの向上はサービスを提供する側にとって、ユーザーの満足度を上げるために重要な要素となっています。
そのUI・UXに特化したデザインファーム、株式会社gaz。創業1年ながら地元福岡の大企業からベンチャー企業まで多くの引き合いを受けています。なぜここまで順調に成長できているのか代表取締役CEOの吉岡泰之さんにお話しを伺いました。

■プロフィール
株式会社gaz 代表取締役CEO
吉岡泰之(よしおかやすゆき)さん
1994年、福岡県生まれ。西南学院大学在学中にフリーランスのWebデザイナーとして活動後、新卒でZOZOTOWN子会社の株式会社アラタナでUIデザイナーを経験、その後福岡市発のスタートアップ株式会社PearのCDOを経てデザイン業務、採用チームの立ち上げや、組織マネジメント業務の経験を活かし、株式会社gazを創業。
UI・UXデザインは独学で習得
――まずは事業内容についてお聞かせください。
吉岡:ぼくたちは3つの事業を展開しています。まずは「STUDIO」というノーコードツールを使ったWebサイトの制作代行事業です。gazは日本初のSTUDIO公認制作会社となり、また僕自身は公式アンバサダーとして在籍しています。クオリティの高いWebデザインを低コストで提案できることから、全国よりご依頼をいただいております。
もう一つが「beaverin」という定額制のサービスで、gazが社内のデザイナーとして企業のデザイン面をサポートしています。東京のクライアントさん、 福岡のスタートアップ企業がお客さまの中心です。スタートアップ企業ではまだまだデザイナーを雇うほどの体力がないところも多いのが現状のようです。
そして三つ目がクリエイティブ制作で 、よりUI・UXによった受託事業をやっています。最近では、福岡市さんとLINE Fukuokaさんと一緒になって、「福岡市LINE公式アカウント」のリニューアルデザインを手掛けました。

▲https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000045713.html
――創業して1年ながら順調そうですね。その好調の要因は後ほどお伺いしますが、そもそもなぜ今のような会社を立ち上げようと思われたのでしょうか?
吉岡:もともとデザインとかものづくりが好きだったというのもありますが、学生の時にフリーランスでWebデザイナーをやっていたんです。きっかけは当時ファッションデザイナーを目指し渡欧した、フランスの街で触れたディスプレイ広告のデザインでした。パリの景観を壊さずに広告をどうディスプレイできるかを考えている時に、この領域もデザインなのかと気づいたんです。それから日本に戻り、シリコンバレーなど世の中のデザイナーを調べているうちに、IT領域でのデザインってインパクトあるし、どのジャンルでも必ず役に立って汎用性もありそう、今後伸びていきそうだなと学生ながら考えたんです。それでちょっとやってみようかなくらいでフリーランスでWebデザイナーをはじめて、そこからさらにIT領域でのデザインの面白さにハマっていったという感じです。
――では学生時代はデザイン系の学部だったということでしょうか?
吉岡:いえ、大学では外国語学科でした。それでフランスに行く機会があったという感じです。文系だったので、スキル的な面は基本的には独学で身につけていったという感じです。
――独学はすごいですね。そのあとはそのまま起業ですか?
吉岡:卒業後は大きい会社で会社の仕組みやどういう形で大きくなっていったのかを知っておきたいと思っていたので、新卒で宮崎県にあるZOZOTOWNの子会社の株式会社アラタナでUIデザイナーをやっていました。そうしているうちにアラタナの代表に「起業するなら早い方がいい」と言われ、その後すぐに福岡に戻り、創業メンバーの二人目として福岡市発のスタートアップ企業、株式会社Pearで2年間くらいCDO(最高デザイン責任者)をやっていました。
――そこからgazを創業しようと思ったのはなぜでしょうか?
吉岡:デザイナーとして大きい会社に転職することも、スタートアップに転職することも選択肢にはありました。福岡市のスタートアップはシード*とかシリーズA*の会社が増えてきていて、資金調達する会社も増えているのですがデザイナーが全然いないんですよ。福岡市がスタートアップ都市として大きくなるには、ファウンダーやCFO(最高財務責任者)、COO(最高執行責任者)、広報のポジション含めて全体的に人材の質は上がっていかないといけないですよね。ぼくはその中でもデザインが特に足りていないと強く感じていて、このまま転職するよりも福岡でそういう会社をデザインを通じて支援するチャレンジをしたいと思って起業を決めました。
あとは周りにそういった会社がなかったというのも結構大きいかもしれないですね。東京だと同じ領域で上場した企業もありますが、福岡でUIデザインできる会社ってまだ多くないんですよ。なのでそういう組織をつくりたいと思ったのが大きいですね。
*シード、シリーズA・・・投資家が企業に投資する段階を意味する投資ラウンドにおけるステージ名。シードは起業前段階、シリーズAは事業を本格拡大する段階を指す。
やりながら得た感覚と確かな自信
――強い決意が伝わってきますね。ここまで順調な理由の一つは競合がいなかったということでしょうか?
吉岡:そうですね。起業自体について言えば、ぼくは思い立って1か月くらいで立ち上げているので他の起業家に比べると準備不足だったと思います。しかし、他に同じことをやろうとしている会社がないというのがこれまでやってきた経験の中で感覚としてあったので、ちゃんとやっていれば仕事はくるという確信がありました。実際スタートアップがUI・UXデザインに困っていて、そこを救える会社がどれくらいあるかといったら、ぼくはほとんど無いと思ったんですよね。それができる会社になれば、スタートアップを次のフェーズに進められるし支援もできるだろうとほんと感覚的ですが確信があったという感じですね。
――1か月で立ち上げたということですが、起業にあたって最初に何に取り組んだのでしょうか?
吉岡:会社を設立するにあたって、何をなすべき会社なのかという会社の定義から考えました。デザインするときも大体そうでコンセプトメイク的なところをしっかり決めて、事業計画とか登記の準備とか税理士を決めていきました。ぼくらIT領域の話って業界以外の方に話してもきれいに回答がくるとこってあまりないので、このコンセプトに共感して、ぼくらのことをより知ってくれてサポートしてくれるところと組みたいと思い体制をつくっていきました。

――起業にあたり困ったことはありましたか?
吉岡:ありがたいことに、今のところ特段困ったことはなく当初つくった事業計画よりも売り上げ的には上回っています。これには会社を登記したFukuoka Growth Next(以下、FGN)の存在が大きいですね。福岡市のスタートアップ支援施設ということもあり入居されている企業とのつながりもできてコミュニティも広がり、 今ではFGNに入居している企業で8社ほどお手伝いさせていただいています。西日本シティ銀行さんとの出会いもFGNです。お金の面など気軽に相談できるのでありがたいです。
――FGNはスタートアップをはじめ企業にとってさまざまなハブになっていますよね。地元ということもあるかと思いますが福岡で起業するメリットはどのようなことでしょうか?
吉岡:行政サポートとして、施設の充実さや助成金等の支援があるのはありがたいです。ぼくらの文脈で言うと、分業しないデザイナーチームをつくりたくて、全員がいろんなところの知見を持っていて多面的に活かせる組織をつくろうと思っています。そういうことを実現しようとするとプライベートの充実が重要だと思っています。クリエイターって自然などいろいろなものに触れたり、運動したり、旅に出たり、アートに触れるとかそういった仕事以外の環境が本業のデザインに活きてくるので、そのサイクルを実現できる福岡ってめちゃくちゃいいと思っているんですよ。さらにこれだけのものがそろっている都市ながら物価が安くてご飯が美味しい。クリエイターを組織化していくには最適の環境だと思っています。
――仕事もプライベートも充実しながら働ける街ですね。今後の展開としてはいかがしょう?
吉岡:直近はいまの事業を進めてグロースしていくのと、新規で同じような領域でネクストチャレンジをここ数年でやろうと思っています。その先でというと、それこそ銀行のアプリとか人々の生活とか人生に直接寄与するようなインフラ領域でのデザインをやっていきたいですね。ぼくらのビジョンが“デザインで人生をアップデートする”なので、それに直接寄与する、やる価値のあるプロジェクトに関われる会社にしていくという感じです。

――ありがとうございます。最後に今後起業を考えている人にメッセージをお願いします。
吉岡:起業前ってすごくできるような気がすると思います。ですが思っている何倍も大変で、ほんとに向いている人でないとやらない方がいいなと思っています。逆に本当に人生かけてその仕事が楽しくて、ヒリヒリするような状態もひっくるめて全て楽しんでいけるという人はうまくいくような気がしています。そういう気持ちがある人であれば起業して進んでいけると思うので挑戦する仲間が増えると嬉しいです。

創業1年ながら多くの企業から引き合いのあるgazさん。その成長ぶりと淡々と語る吉岡さんの口調からは全てがスムーズにいっているように見えますが、その根底には熱い想いと、好きなものを実直に学ぶ姿勢、そして取り組んできた上で得た確かな感覚がありました。上辺だけではないそういった姿勢が多くの企業から信頼を得る要因なのかもしれません。
株式会社gazについて
■会社概要
会社名:株式会社gaz
URL:https://gaz.design/
所在地:【天神】福岡市中央区大名2-6-11 Fukuoka Growth Next内(本社)
【博多】福岡市博多区須崎7-4 エイシングライフ大黒館8F
設立:2019年6月
代表取締役CEO:吉岡泰之
■事業内容
Webサービス、Webサイトのデザイン、開発、運営
UX・UIの設計
CI・VIの企画・設計
グラフィック、イラスト等の企画・制作
デザインコンサルティング等
■問い合わせ先
https://gaz.design/contact.html
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
https://www.ncbank.co.jp/hojin/sogyo/sogyo_plaza/
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817
renew編集部は西日本シティ銀行・デジタル戦略部内の編集チームです。福岡・九州のビジネスに寄与できるようさまざまな情報を発信していきます。