損益計算書の「販管費」は、営業利益を求めるために売上総利益から引かれる費用のことです。この記事では、販管費にはどのような項目があるのか、売上原価との違いはどの点にあるのかについてわかりやすく解説します。
販売管理費(販管費)の意味がわかると「会社の経費」が理解できる
販売管理費(販管費)とは
販管費(販売管理費)の会計上の正式名称は「販売費及び一般管理費」で、商品を販売するために必要となった費用や、商品や組織の管理をする上で必要な費用のことです。つまり、商売上で必要になった費用は、ほとんどが販売管理費になります。販売管理費は、会社を経営する上での「経費」と考えるとわかりやすいでしょう。
販売管理費(販管費)に含まれない費用
販売管理費(販管費)に含まれない費用には、お金を借りるときに生じる利息や、資金運用でうまくいかなかったときの損失などがあります。通常、これらの費用に比べると、費用全体において販売管理費が占める割合は高くなります。
販売管理費(販管費)は損益計算書に記載される
販売管理費(販管費)は損益計算書に記載されます。損益計算書とは、会社が1年間でどの程度儲かったのか、損をしたのかを表したものです。損益計算書を構成するのは、「収益」「費用」「利益」で、それら3つの関係は以下の通りです。
収益・利益・費用の違い
会計や経理における収益と利益の違いはわかりにくいかもしれませんが、収益は「費用」を引く前の儲けで、利益は「費用」を引いた後の儲けです。費用とは、収益を稼ぐために必要となる支払いなどのことです。
決算書の損益計算書の内訳
損益計算書には「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益があり、販管費は営業利益に関わりがあります。それぞれの利益の違いを確認していきましょう。
売上総利益
サービスや商品の力によって稼いだ利益を「売上総利益」といいます。マイナスの場合は、「売上総損失」といいます。
営業利益
販売管理費は、給料や家賃の支払いなど、会社が商売を営むと生じるものです。ですから、売上総利益から販売管理費を引いた「営業利益」は、本業によって稼いだ利益であり、実質的な利益を表しています。マイナスの場合は「営業損失」といいます。
営業利益がプラスということは、会社が売り上げた金額で給料や家賃の支払いができているので、商売がうまくいっていることになります。つまり、営業利益は本業がうまくいっているかどうかを表す指標ともいえるのです。
経常利益
「経常利益」は、営業活動以外の収益に費用を加えたもので、経営活動の成果です。マイナスの場合は「経常損失」といいます。
税引前当期純利益
「税引前当期純利益」は、税金を引く前の利益のことです。マイナスの場合は「税引前当期純損失」といいます。
当期純利益
「当期純利益」は最終的な利益のことです。マイナスの場合は、「当期純損失」といいます。
販売管理費(販管費)の内訳
それでは、販売管理費(販管費)にはどのような勘定科目があるのか確認していきましょう。
家賃や給与などの人件費が代表例
販売管理費(販管費)の代表例は、家賃や給料を含む人件費です。通常、給料が販売管理費の多くを占めています。商品を販売して利益を得るために従業員に働いてもらうと、必ず給料が発生します。ですから、給料は商品を販売するために必要な費用として、販売管理費に計上するべきものとされています。
また、事務所や店舗を借りる場合には、家賃を支払う必要があります。家賃の支払いも商品を販売するために必要な費用になるので、こちらも販売管理費に含まれます。
その他の販売管理費(販管費)
家賃や給料以外の販売管理費(販管費)には、以下のような項目があります。
減価償却費:パソコンや車など固定資産の価値の減少分
貸出引当金繰入:売上代金が回収できなかった場合に備えるための費用
水道光熱費:電気代や水道代など
広告宣伝費:新聞の折り込み広告やテレビのCM費用など
賞与:従業員に支払うボーナス
旅費交通費:出張や取引先を訪問する際の交通費など
これらの項目の中で、水道光熱費や広告宣伝費などは費用としてイメージしやすいでしょうが、減価償却費と貸倒引当金繰入は理解しにくいかもしれません。以下で具体的に説明します。
減価償却費とは
減価償却費とは、車や建物などを使うことで生じる価値の減少分のことです。価値の減少分をなぜ販売管理費に計上するのかというと、ある商品の価値の減少は、売上を獲得するために犠牲となった結果として生じるものだからです。
たとえば、営業活動で会社の車に乗って得意先を回ることがありますが、車を使用すれば車の価値は年々失われていきます。しかし、車を使うことによって得意先から注文を取ってくる、つまり売上を上げることができるわけです。ですから、車の価値の減少というのは、売上を獲得するために生じているともいえます。
費用と減価償却費の考え方
費用とは、いわば売上を上げるために犠牲になった金額のことをいいます。車や建物などは固定資産と呼ばれますが、これらの価値の減少も会社の売上に貢献しているのであれば、他の費用と同じように扱う必要があるわけです。
ただし、同じ固定資産である土地については価値が減少しないので、建物と異なり減価償却の対象外となります。
貸倒引当金繰入とは
販売管理費の中で、減価償却と並んで理解が難しいのが「貸倒引当金繰入」です。貸倒引当金繰入は、損失を前倒しで計上しておく勘定科目のことです。
会社同士の取引では、商品を販売して後日に代金をもらう予定だったとしても、販売先が倒産して代金をもらえないことがあります。その場合、もらえなかった分を損失として損益計算書に計上します。
この損失について、どの程度回収できなくなるかを予想できるときは、貸倒引当金繰入として前倒しで計上しておくことで、取引先の倒産リスクを軽減できます。
販売管理費(販管費)と売上原価の違い
企業業績を表す営業利益を求めるためには、売上総利益(売上高ー売上原価)から販売管理費を引きます。そのため、売上原価と販売管理費(販管費)の違いがわからないと、業績を正しく把握することはできません。
売上原価とは
売上原価とは、売上を上げるために直接かかった費用のことで、製品や商品、サービスに紐づけられます。実際に製品や商品が売れたとき、製造や仕入れにかかった費用として計上するものです。また、サービスの場合は、そのサービスを生むのに直接かかった費用を計上します。
つまり、販売管理費が製品・商品・サービスの「販売」にかかる費用であるのに対し、売上原価は販売する製品・商品・サービスを「生み出すため」にかかる費用であるという違いがあります。
人件費は売上原価に区分されることもある
人件費は販売管理費になりますが、従業員の業務区分によって、売上原価に計上される場合もあります。たとえば、製造業では工場に勤務する製造部門の人件費が直接売上に紐づいているので、売上原価に計上されます。
必ずしも「人件費=販売管理費」ではなく、従業員の業務区分に応じて売上原価に計上される場合があることを押さえておきましょう。
販売管理費(販管費)のまとめ
販売管理費は、営業利益を求めるために必要な費用です。商売で必要な費用のほとんどは販売管理費として計上するので、きちんと理解しておく必要があります。売上原価との違いや、理解が難しい減価償却費や貸倒引当金繰入などについても確認しておきましょう。
証券外務員1種
証券会社でマーケットアナリスト・デリバティブディーラーを経て個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に、現物株、FX、CFDなど幅広い商品に投資している。