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会社の創業と設立の違いとは?それぞれの正しい意味を専門家がやさしく解説

By 松田 聡子 |
公開日 2020.08.04

知っておきたい創業と設立の定義

「創業」と「設立」は事業を起こすという意味合いの言葉ですが、ほぼ同じ意味だと思っていませんか?実際に、筆者の周りの経営者に尋ねてみても、双方の区別が曖昧な人が多いようです。「創業」は実態のある事業を起こすことであり、個人でも法人でも使われる用語です。一方、「設立」は事業実態に関わらず会社等の組織の立ち上げを意味し、個人には使われない用語です。この記事では、「創業」「設立」のそれぞれの意味を深く理解し、場面に応じて正しく使い分けができるよう詳しく解説します。

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企業の経営を志すなら知っておきたい「創業」と「設立」の定義

「創業」と「設立」の定義を確認するにあたって、「建設会社に勤務していた人が、個人事業主として2013年(平成25年)に独立開業し、2019年(令和元年)に法人になった」と仮定します。

「創業」とは新たに事業を起こすこと

「創業」とは、新しく事業を起こすことを意味します。事業を始めるにあたって、個人で行うか法人を作るかは関係なく使える言葉です。

例えば法人ではなく、個人事業主やフリーランスとして事業を行う場合でも「創業した」と言うことが可能です。つまり、事業の実態さえあれば、「創業した」状態といえます。上記の例では、2013年(平成25年)が創業年ということになります。

江戸時代から続く老舗などの場合、「創業1688年(元禄元年)」など歴史をブランディングに用いるケースも多く見られます。

事業とは?

事業とは、営利や生産を目的として経済活動を行うことです。事業として認められるためには、事業活動が繰り返し営まれ、収益が一定額以上発生していることが必要とされます。

例えば、不要になったCDを中古レコード店で売っても、その場限りであれば、その売り上げは事業による収益とはなりません。

これに対して、オークションや中古品販売店で買ったCDをアマゾンなどで転売して、毎月一定の売上げがあるような場合は、繰り返しの取引のため事業と見なされます。事業と見なされると、その収益に対して課税されることになります。

「設立」には法人を登記することが必要

「設立」とは、学校や会社などの組織を作ることです。株式会社などを新たに作ることを「会社設立」といいます。法人組織は株式会社以外にも種類があり、合同会社、一般社団法人などが挙げられます。

事業の実態より組織を作ることがポイントであるため、個人単位で事業を始めた場合には「設立」という言葉は使いません。一方、極端な例を挙げると、実態のないペーパーカンパニーを作っても「設立した」ということになります。また、非営利のNPO法人のような団体を作る場合にも「設立」という表現が使われます。

創業と設立が同時のケースと、創業が先のケース

最初から会社を作り、事業を行う場合、創業と設立が同時ということになります。一方で、設立以前に創業している場合も考えられます。冒頭の例は、設立以前に創業しているケースにあたり、2013年(平成25年)創業、2019年(令和元年)設立ということになります。

法的な意味がある「設立」

「創業」はどんな形であっても、「事業を始めれば創業」とみなされ、法的な意味はありません。これに対し、「設立」は会社法に基づいて登記することで、会社が成立したことになります。つまり、設立日以降、会社組織が公的に認められたということです。

ゆえに設立後は、都道府県と市区町村に法人住民税の均等割を納税しなくてはなりません。

「創業」と「設立」の関係

「創業」は事業という中身に焦点を当てた用語です。これに対し、「設立」は事業という中身があってもなくても、組織という箱を作ることに焦点を当てた用語だといえます。

「創立」「起業」「独立」など、類義語の意味の違いは?

「創立」「起業」「独立」など、類義語の意味の違いは?

「事業を起こす」というニュアンスの言葉には、「創業」「設立」以外にも似た意味の言葉がいくつかあります。それぞれの違いを確認していきましょう。

「創立」とは「初めて」組織を作ること

「創立」とは、会社や学校、同好会などの組織を、ゼロから「初めて」作って活動を始めることです。NPO法人のような団体やクラブ活動においても「創立」という表現が使えます。事業や活動の実態より組織を作ることが必須であるため、個人の場合には「創立」とはいいません。

「創立」と「設立」の違い

「組織を作る」という点において「創立」と「設立」は、ほぼ同じ意味を持つ用語です。しかし、全く同じ意味の言葉というわけではありません。

両者の違いとして、「創立」がゼロから「初めて」組織を作ることに対し、「設立」は初めてに限らず、2回目でも3回目でも組織を作ることを意味します。

例えば、初めて会社を作った場合には「設立」とも「創立」とも表すことができます。しかし、子会社を作った場合などは、「設立」とはいっても「創立」とはいえません。

「創立」と「創設」の違い

「創立」と似た言葉に「創設」があります。果たして、両者は同じ意味なのでしょうか。

「創立」には、ゼロから組織を作るという意味合いがあります。これに対し、「創設」はそれまでになかった組織や制度を作るというニュアンスで使われます。

既存の会社が新しい部署を作ったり、新規事業を始めたりするときなどには「創設する」という言い方をします。例えば、子会社には「創立」は当てはまりませんが、「創設」という言葉は使えます。

「創立」と「発足」の違い

「発足」は、会社以外の組織などが活動を始めることを指します。会社以外の組織として、任意団体や政治団体などを対象としています。創業や創立との違いは、会社以外のものが主体である点です。例えば、「保護者会が発足した」といった使われ方をします。

「起業」とは事業を立ち上げること

「創業」と似た意味の言葉に「起業」があります。「起業」とは、事業を立ち上げることで、「創業」とほぼ同じ意味と捉えることができます。

この二つの言葉の違いは、使われ方にあります。「創業」は「創業100年」や「1926年(昭和元年)に創業しました」などとはいいますが、創業後10年経ってから「創業しています」とはいいません。あくまで過去形で使われる用語ということです。

これに対し、起業は「2019年(令和元年)に起業しました」とも「現在、起業しています」ともいうことができます。微妙な違いですが、明確に区別したければ覚えておくとよいでしょう。

「開業」とは事業を始めること

「創業」や「起業」と似た意味で「開業」という用語もあります。「開業」とは事業を始めることですが、法人でなく個人の場合をいいます。「すし屋を開業する」や「フラワーショップを開業する」など、何か商売を始めるニュアンスで使われることが多いといえます。

また、「開業医」といえば、医療法人化していない状態を指します。個人事業主として事業を始めた場合、税務署に提出するのは「開業届」です。会社の場合は「法人設立届出書」となります。

「独立」とは会社を辞め、組織に属さない状態のこと

上記の「開業」と組み合わせて使われるのが「独立」です。独立とは、「組織に頼らず一人で立つ」という意味です。

例えば、主婦がいきなり起業した場合などは「独立」とはいいません。それまで会社員だった人が起業目的で会社を辞めるのが「独立」、実際に事業をスタートさせるのが「開業」ということになります。

会社の法人登記について

会社の法人登記について

法人登記と不動産登記の違い

法人の設立には、「登記」が必要だと述べました。不動産の登記ならイメージできても、法人の登記はピンとこない人も多いのではないでしょうか。

法人登記とは、自分の会社の概要について一般に広く公表し、法人として公的に認めてもらう制度です。不動産の登記には、土地や建物の所有者を明確にし、取引の安全を図るという役割があります。

法人の登記も不動産と同様、法人の重要事項を公示することにより、安心して取引ができるようにするために必要といえます。

設立以外で登記が必要になるとき

●住所変更をしたとき

●役員変更をしたとき

●法人を解散するとき

上記のような変更があった場合は、速やかに変更手続きをしなくてはなりません。これらは公的な信用にかかわる事柄であるためです。登記情報は変更の履歴は、謄本上に残ります。

法人登記情報の活用

法人登記の内容は、法人の名称や商号(〇〇株式会社など)、事業の目的、本店や事務所の所在地、発行している株式、取締役や理事などの役員などです。これらの情報は、手数料を払うことで誰でも閲覧できます。

よって、法人登記情報は、新規の取引の際に相手の企業情報を確認する手段として活用されます。会社の所在地や誰が役員になっているかなど、それらの変更の履歴は形式的なものではなく、企業の実態を表す重要な情報なのです。

このように、法人の重要事項の最新情報を公示する登記があるために、個人事業主で事業を行うことに比べ、法人には対外的な信用が大きいというメリットがあります。

「自営業」「個人事業主」「フリーランス」の違い

「自営業」「個人事業主」「フリーランス」の違い

会社員以外で、自分で事業を行っている人を「自営業」「個人事業主」「フリーランス」などと呼びます。これらの違いがよくわからないまま、なんとなく使っている人も多いのではないでしょうか。この機会にそれぞれの意味を確認しておきましょう。

「自営業」「個人事業主」とは自分で事業を営んでいる人

自営業

「自営業」とは、会社員以外で、自分で事業を営んでいる人を指します。事業の規模は問わず、一人の場合、従業員を雇っている場合とさまざまです。

また、オーナー社長など会社組織を立ち上げている場合でも、「自分で事業を営んでいる」ことから「自営業者」と呼ぶ場合があります。つまり、「自営業」は「自分で事業を営む人」のなかでも比較的広い意味を持つ言葉といえます。

個人事業主

「個人事業主」は、「自営業」とほぼ同じ意味で使わることが多い用語です。「自営業」との違いは、「個人事業主」は法人組織を立ち上げず、個人として事業を営んでいる人を指していることです。つまり、「個人事業主」は「自営業」の一種であるということになります。

「フリーランス」とは独立して仕事を請け負う人

フリーランスとは、会社組織には属さずに仕事を請け負う人のことをいいます。フリーランスとは働き方の一種で、個人が持つ資格やスキルを活用していくことが特徴です。

職種としては、プログラマーなどのITエンジニア、ライター、デザイナーなどがあります。自分で法人を設立して仕事を請け負う場合も、個人事業主として仕事を請け負う場合もあります。

まとめ

「創業」は実態のある事業を起こすことであり、個人でも法人でも使われる用語です。「設立」は事業実態に関わらず、会社などの組織の立ち上げを意味します。法的な意味があり、個人には使われない用語です。それぞれの意味を理解し、場面に応じて正しく使い分けましょう。

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