毎日大変な思いで働いていると、「自分の働きは年収に見合っているのだろうか」と疑問に感じることもあるでしょう。生きるために欠かせないお金は、適正な額をもらいたいものです。この記事では年齢や男女別の平均年収を紹介し、さまざまな条件から適正年収を考えてみました。
そもそも適正年収とは?
適正年収とは、年齢や業種などを踏まえその価値に見合った年収を指します。適正年収は人それぞれで変わるため、適正かどうか判断するにはどのような条件が年収に影響しているかを知る必要があります。まずは、適正年収の考え方を見ていきましょう。
適正かどうかは年齢や仕事内容などで変わる
適正年収はその人の最終学歴や専門資格、会社の規模など、さまざまな条件が関係します。すべての条件から総合的に判断するため、たとえ同じ年齢や業種であっても年収が異なる場合があります。とはいえ、自分と似たスペックの人がより高い年収を得ているなら、自らの給料アップも狙えるといえるでしょう。
適正年収を知ることは「自分の年収は高い、低い」を判断するだけでなく、これからの働き方や将来設計を考えるきっかけになります。余剰資金を資産運用にまわしたり、転職して年収アップを狙ったりするなど、ネクストアクションに繋げることが大切です。
まずは自分のスペックを確認する
適正年収か判断するために自分のスペックを把握し、平均年収と比較してみましょう。勤続年数や役職によっても左右はされますが、年収に影響するのは基本的には以下のようなスペックです。
特に日本では年功序列の風潮により、年齢を重ねるほど年収が上がりやすい傾向です。そのため、年齢は適正年収を判断する大きな指標となります。
【20~60代】年齢別の平均年収
自分の年収が適正か判断するには、同年代の平均年収と比較すると分かりやすいです。ここでは国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」をもとに、年齢別の平均年収を紹介します。
令和2年分民間給与実態統計調査(国税庁)
20代の平均金額
まずは、20代の平均年収から見ていきましょう。性別により異なるため、自分に当てはまる項目の金額をチェックしてみてください。
| 20~24歳 | 25~29歳 |
男性 | 2,770,000円 | 3,930,000円 |
女性 | 2,420,000円 | 3,190,000円 |
男女計 | 2,600,000円 | 3,620,000円 |
男女ともに20代後半になると、年収が大きく伸びていることが分かります。特に男性は平均1,160,000円も年収が増えており、この伸び率はほかの年代と比べても大きいです。
30代の平均金額
続いて、30代の平均年収を見ていきましょう。
| 30~34歳 | 35~39歳 |
男性 | 4,580,000円 | 5,180,000円 |
女性 | 3,090,000円 | 3,110,000円 |
男女計 | 4,000,000円 | 4,370,000円 |
30代は社会人経験を十分積みながらも、体力的にも働き盛りの年代です。会社で中堅層の立ち位置となったり転職をしたりすることで、年収が上がる時期ともいえます。プライベートでは結婚やマイホーム購入など、大きなお金を必要とするライフイベントが多いです。
女性の場合は、30代を通して年収に大きな変化が見られません。産休・育休による長期休暇や、時短勤務など働き方の変化が影響していることが考えられます。
40代の平均金額
40代の平均年収がこちらです。
| 40~44歳 | 45~49歳 |
男性 | 5,710,000円 | 6,210,000円 |
女性 | 3,170,000円 | 3,210,000円 |
男女計 | 4,700,000円 | 4,980,000円 |
一般的に40代は、管理職として責任ある立場を任される年代といえます。責任の大きさに伴い、給料は上がりやすくなります。女性の平均年収については、40代後半の3,210,000円が女性の全年代においてもっとも高い平均年収です。
50代の平均金額
50代の平均年収は、以下のとおりです。
| 50~54歳 | 55~59歳 |
男性 | 6,560,000円 | 6,680,000円 |
女性 | 3,190,000円 | 3,110,000円 |
男女計 | 5,140,000円 | 5,180,000円 |
本データにおいては、男性の平均年収は50代後半でピークを迎えます。部長職や役員など会社でのポジションが上がり、キャリアの最終形態が見える人も多いでしょう。
50代は定年退職まであと十数年を切り、老後の生活を現実的に捉え始める年代です。年収が高いうちに、できるだけ老後資金を蓄えておくことも考えなければなりません。
60代の平均金額
最後に、60代の平均年収を紹介します。
| 60~64歳 | 65~69歳 |
男性 | 5,210,000円 | 4,210,000円 |
女性 | 2,570,000円 | 2,080,000円 |
男女計 | 4,150,000円 | 3,320,000円 |
多くの人が定年退職を迎える60代は、平均年収も下降する傾向です。50代のときより年収が減ったのに同じお金の使い方では、生活に困る場合があります。生活水準を上げないようにするなど、年収が下がっても暮らせる工夫が大切です。
また、65歳で定年退職をする場合は、60代前半にラストスパートで老後資金を貯めることになるでしょう。定年退職直前になって「老後資金がない」とならないためには、期間に余裕をもって蓄えるのがおすすめです。
給料は働くエリアや業種によっても変わる
給料は、働くエリアや業種によっても左右されます。物価の高いエリアや、専門的な知識を必要とする業種は給料が高い傾向です。
ここでは都道府県別・業種別に平均給与を見ていきましょう。なお、国の調査による正式な年収データがないため、月給で紹介します。
都道府県別に見る平均金額
都道府県をエリア別にし、平均月給を算出したのが以下の表となります。
エリア | 平均月給(男女計) |
北海道 | 272,800円 |
東北 | 255,700円 |
北信越 | 279,600円 |
関東 | 313,000円 |
東海 | 297,000円 |
関西 | 301,300円 |
中国・四国 | 270,400円 |
九州 | 260,342円 |
沖縄 | 252,500円 |
出典:令和2年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)
平均月給は、以下エリア分布に従い平均額を算出しています。
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北信越:新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
関西:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国・四国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
もっとも月給が高いエリアは、関東の313,000円です。本データでは東京都の平均月給が373,600円となり、関東エリアの平均月給を引き上げています。参考までに、5大都市圏のある都道府県の平均月給を見てみましょう。
5大都市圏のあるエリアの平均月給
エリア | 平均月給(男女計) |
北海道 | 272,800円 |
東京都 | 373,600円 |
愛知県 | 314,100円 |
大阪府 | 320,400円 |
福岡県 | 282,900円 |
なお、このデータには幅広い調査対象者がいるため、年収の高い人が平均値をどうしても引き上げてしまいます。あくまで目安程度に考えましょう。
業種別に見る平均金額
業種別の平均月給を、以下の表にまとめました。
| 男性 | 女性 |
建設業 | 345,500円 | 251,200円 |
製造業 | 321,800円 | 222,700円 |
情報通信業 | 405,000円 | 315,500円 |
運輸業、郵便業 | 285,300円 | 223,300円 |
卸売業、小売業 | 346,100円 | 236,000円 |
金融業、保険業 | 479,200円 | 281,400円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 420,900円 | 301,400円 |
宿泊業、飲食サービス業 | 278,200円 | 208,900円 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 300,700円 | 225,100円 |
教育、学習支援業 | 429,400円 | 306,900円 |
医療、福祉 | 354,500円 | 264,000円 |
出典:令和2年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)
男性でもっとも高い業種は「金融業、保険業」の479,200円、女性は「情報通信業」の315,500円となっています。そのほかにも「教育、学習支援業」や「学術研究、専門・技術サービス業」など、専門性の求められる業種は月給が高い傾向です。
なお、どの業種も40~50代で月給のピークを迎えます。そのため、同じ会社の40~50代社員の年収から、自分が将来いくら程度の年収になるか考えてみるのも良いでしょう。
適正年収は自分で計算できる?簡単なチェック方法
国の調査データは年収の高い層が平均値を引き上げているので、体感より高い年収が示されている場合もあります。そのため、ほかのデータも参考にして適正年収をチェックするのがおすすめです。ここでは、自分でも簡単にできる適正年収のチェック方法を紹介します。
求人情報の給与水準を見てみる
転職サイトの求人情報から、同じ業種や同じ勤務エリアの給与水準を見てみましょう。転職サイトは、希望条件から求人情報を絞り込めます。現在の自分の勤務条件と同じ内容で絞り込めば、同条件の求人から年収目安を確認できます。リクナビNEXTやdodaなど掲載求人が豊富な大手転職サイトであれば、より多くの求人情報から適正年収を見極められるでしょう。
シミュレーションサイトで計算する
転職エージェントの中には、適正年収のシミュレーションができるサイトがあります。そのエージェントが持つ転職者のビッグデータから、自分の経歴と照らし合わせた適正年収を算出できるのです。
シミュレーションサイトは、転職エージェントのパソナキャリアやdodaなどで提供しています。特にdodaの場合は、186万人の大きな転職者ビッグデータを保有し、今後30年間の年収推移予測を立てることも可能です。
適正年収より低いと感じたときの対処法
自分の年収が低くてもそのまま諦めるのではなく、適正年収以上になれるよう行動することが大切です。それでは、適正年収に近付くために何をすべきなのか対処法を見ていきましょう。
会社に年収交渉をする
まずは今働いている会社に、年収交渉をしてみましょう。いきなり人事や役員会にかけあうのではなく、直属の上司に相談ベースで伝えることから始めます。直属の上司は普段の仕事ぶりを間近で見ており、「頑張っている割に給料が低い」という気持ちに寄り添ってくれる可能性があります。
また、年収交渉をするからには、それに見合う価値や情報を提供しなければなりません。交渉材料としてこれまでの実績やスキル、同業他社の年収相場を用意しておくのがおすすめです。
役職手当や資格手当などで給料アップを目指す
年収交渉が難しい場合は、各種手当を受け取って給料を上げる方法もあります。手当は会社によって異なりますが、自分の努力やスキルで手に入るものもあります。例えば、以下のような手当です。
役職手当:主任、課長などの役職や責任に応じて支給される手当
資格手当:業務に関する試験費用や資格取得代として支給される手当
インセンティブ(歩合給・成果給):営業職など成績によって支給される手当
毎月の給料が増えれば年収も大きく変わってくるため、手当やインセンティブはうまく活用しましょう。
副業で収入を増やす
本業の給料が上がらなくても、副業で収入を得れば総所得を増やせます。副業の普及に伴い、さまざまな職種や時間帯で働き方を選べるようになりました。平日夜のみ、土日祝に2~3時間のみなど、自分のライフスタイルに合わせた副業が見つかるでしょう。
なお、会社により副業規定は異なります。トラブルを避けるためにも、副業を始める前に会社の規定を確認しましょう。また、会社以外から年200,000円以上の収入を得た場合は、原則として確定申告が必要です。
副収入などがある方の確定申告(国税庁)
転職を検討する
「今の会社では年収アップの見込みがない」「副業NGで自分で年収を上げる術がない」という人もいるでしょう。その場合は、今よりも年収の高い会社へ転職するのも一つの方法です。働き方の多様化により、転職をするのは珍しいことではなくなっています。
今の会社で働きながら転職活動を始めれば、収入が途切れることなく転職することも可能です。まずは自分の経歴ならどの程度の年収が期待できるのか、転職エージェントへの相談から始めてみるのも良いでしょう。
まとめ
適正年収はその人の経歴や働く業界など、さまざまな要因によって変わります。年収の一つの目安となるのが年齢であり、同年代の人と年収を比較してみるのも良いでしょう。適正年収より自分の年収が低いと感じた場合は、副業や転職を検討してみるのもおすすめです。また、今ある収入を最大限活かすために、資産運用で蓄えを増やすことも考えてみてください。
2級FP技能士
地方銀行へ入社し、貯金・ローンなど金融商品の販売に従事。 その後、不動産業界へ転職して社会保険や労務管理を担当しながらFP資格を取得。自身の経験から“お金を無駄にしないための”アドバイスをおこなう。