インタビュー

ビジネスにおける福岡市の魅力~都市開発がもたらす新たなイノベーションへの期待。

By 山本 佳世

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公開日 2021.11.04
福岡市企業誘致課

西日本シティ銀行は2021年11月15日より「天神ビッグバン」第一号案件である『天神ビジネスセンター』の1F~3Fに、西日本シティTT証券・アルファ天神とともに天神支店をオープンします。この「天神ビッグバン」に加え、「博多コネクティッド」による開発が進む博多エリア。コロナ禍によって働き方に大きな変化が起こる中、新たな商業施設やオフィスビルの建設が進んでいます。

そこで今回は、福岡市内への企業誘致や企業立地の支援に取り組む福岡市経済観光文化局企業誘致課の井上辰之さん、山下亮介さんにお話を伺います。

企業誘致という視点で考えるビジネスにおける天神・博多エリアの魅力やコロナ禍の影響、そしてこれから街に期待することとは。

*天神ビッグバン…天神地区をアジアの拠点都市として役割・機能を高め、新たな空間と雇用を創出するプロジェクト。天神交差点を中心に半径500mのエリアで老朽化したビルを建て替え、ソフト・ハード両面から再開発と整備を進める。

*博多コネクティッド…地下鉄七隈線延伸や、はかた駅前通りの再整備など、交通基盤の拡充とあわせて博多駅周辺のビルの建て替えや歩行者ネットワークを拡大。さらに歴史ある博多旧市街との回遊性を高めることで、都市機能の向上を図る。

都市開発がもたらすハードとソフト、両面のメリット

――天神・博多エリアの移り変わりについて、企業誘致の視点ではどう見られていますか?

井上:天神エリアでは2021年10月4日に天神ビジネスセンターが竣工し、来春には旧大名小学校跡地に福岡大名ガーデンシティ(仮)、さらにその2年後には福ビル街区…というように、大型の都市開発が次々と進んでいます。当然、その流れは企業誘致的にも追い風になると捉えています。というのも2年前まではオフィスの供給量が少なく、空室率で表すと1%台と非常に低かったんです。そのため、県外の企業が福岡市に進出したくても場所がない…という状況が多々見受けられました。現在は天神・博多エリアの都市開発でオフィス自体の延べ床面積が増えたことも関連して空室率は4%台にまで回復し、企業誘致課としても受け皿が増えるというメリットに繋がっています。

もうひとつ、天神ビッグバンによって期待できることは"交流"です。通常、オフィスビルはフロア毎に企業が入居してセグメントされているので、その中で交流する機会はほぼなかったのではないでしょうか。これから新たに建設されるビルでは、エントランスフロアにコワーキングスペース的なカフェを設けるといった話も聞いています。そういったハード面が整備されることで、入居する企業同士や地場企業と交流する機会が生まれ、新たなイノベーションが創出されることを期待しています。

福岡市企業誘致課

▲(左から)山下さん、井上さん

――博多エリアはいかがでしょう?

井上:天神エリアと同じくビルの建て替えを進めていますが、博多駅周辺エリアは天神より空港が近いためビルの高さ制限の緩和が難しいと聞いています。そこで博多コネクティッドという博多駅周辺のビルの建替え促進にあたって、古い街並みや神社仏閣が多く点在する博多旧市街地という周辺の街とつなぐことで都市機能の向上を図るプロジェクトを進めています。

今までの博多エリアは「ザ・オフィス街」というイメージが強かったのですが、博多駅の駅ビルが2011年に建て替わりビジネス目的以外の人も多く行き来するようになりました。ところが実際はまだ、オフィス街というイメージが根強く残るエリアも多いんです。これからは博多コネクティッドで建て替えを促進すると共に、駅前大通りを中心にイベントができる広場を整備することで、人の賑わいが拡大するのではないかと期待しています。

福岡市

――これまでの天神・博多という街はどのようなイメージが持たれていたのでしょう?

山下:"博多"という地名は、駅名でもあり、福岡以外の人にも広く認知されていますよね。歴史的に「商人の街」でもあり現在もビジネスの街というイメージも強いですが、近年は商業施設の整備も進み、人が賑わうエリアとしての魅力も磨かれていると感じます。一方、天神には繁華街があり、特に若者文化の発信地というようなイメージが強いかもしれませんね。加えて、福岡市のスタートアップ支援施設『Fukuoka Growth Next』もあり、スタートアップの街というイメージも定着しつつあるのではないでしょうか。

――開発が進み、天神・博多エリアにおけるビジネスの発展面で期待できることは何でしょか?

山下:これまで親しまれてきたイメージや特徴を磨きながらも、ビジネス拠点としての魅力がさらにプラスされたらいいなと期待してます。都市開発によってこれまで福岡市に存在しなかった高機能・高付加価値な大型ビルができることは、一見するとハード面の整備だと捉えられがちですが、実際はそれだけではなく、より高付加価値なビジネスや魅力的な企業を誘致できるというソフト面での取り組みにもつながります。

福岡市が目指す"支店経済からの脱却"に向けて、IT・クリエイティブ関連産業の集積や、本社機能の誘致など、企業誘致というソフト面の施策をしっかりと進めていかないといけないと気を引き締めています。

――都市開発の一方で、懸念されることもあるのでしょうか?

井上:開発によって新しい風が吹き込むことは大歓迎なのですが、そこに大手企業やグローバル企業などが入居し、黒船的な存在にならないかは少し懸念されますね。分かりやすく例えると、大規模商業施設ができることで地元の商店街が寂れてしまうというようなことでしょうか。もちろん福岡市に新たに企業立地されることで新規の雇用が創出されるなど、ありがたいことですが、地元の企業の方々にもメリットが生まれるという好循環にならないと、それは本来の目的とは異なるので、県外から進出された企業にはできれば地域に根付いて、協業や取引という形でこの地に新たな価値を生み出していただけることを期待しています。

福岡市・井上さん

コロナに負けない福岡市の施策

――全国的にコロナの影響が落ち着きつつありますが、それでも福岡へ進出したいというニーズは多いですか?

山下:数字から見てみると、福岡市は令和元年度まで7年連続で企業誘致数50社以上達成という実績がありました。そして新型コロナウイルスが本格的に流行し、緊急事態宣言等でビジネスや人流が一定程度、抑制された環境下にあった令和2年度においても、進出企業数は50社となり、結果として8年連続で誘致実績50社以上を達成することができました。このことからも、引き続き、企業の福岡市に対する進出ニーズは高い水準にあると考えています。職種としてはIT・クリエイティブ系が最も多い中、特徴的だったのはコールセンターの増加です。巣ごもり需要でEC関係が好調だったこと、密を回避するためにオフィスを広くされるといった背景から、事業を拡張された企業も多かったですね。

またコロナだけでなく、BCP(事業継続計画)の観点から東京以外にも拠点を分散化させるため、日本海側に立地している福岡市にバックアップ拠点を置く事例も多く見受けられます。

――ウィズコロナ、アフターコロナと言われる中で、今後企業誘致課として取り組んでいくことはどのようなことですか?

井上:福岡市のビジネスに関する情報を積極的に発信していきたいと考えています。福岡市では『福岡クリエイティブキャンプ』というプロジェクトを行っており、これは簡単に言うと「IT系の人材やクリエイターに向けたU/Iターン促進のプロジェクト」です。今年からは魅力的な企業を誘致することで、魅力的なビジネスが生まれ、それが新たな雇用の受け皿となると考え、Webサイトを刷新して、企業向けのプロモーションにも力を入れるようになりました。このWebサイトをプラットフォームに、福岡市に進出した企業の実例も紹介することで、進出を検討している企業の参考になるような情報を発信していきたいと考えています。

福岡クリエイティブキャンプ

――福岡市に進出することで、行政としては企業にどんなメリットを提供できますか?

井上:行政的なメリットとしては交付金でしょうか。イニシャルコスト低減のための立地交付金制度を設け、オフィス賃料や雇用への交付金など、業種によってさまざまな条件や内容を設定しています。⇒詳しくはこちらへ。

どの自治体でも設けている制度ではありますが、福岡市としては市民の正規雇用へとつなげることを目的に、このような交付金制度を整えています。

山下:福岡市という街全体で見ると、メリットに感じられる環境がたくさんあると思っています。それはみなさんもご存知のような食の美味しさや、街と自然のバランスが良く、住みやすいという点がまず挙げられます。移住された従業員の方のQOLが大幅に向上したというお話は、我々もよくお伺い致します。また実際に東京から進出された企業から伺ったのは、街も人もコンパクトに集まっているので、ビジネス面でも人の繋がりが強いということ。本来であれば競合になるような業種の方同士でも、飲み仲間になって、そこから一緒に協力してビジネスを進めたりすることもあるようです。

福岡市・山下さん

――最後に、「福岡市に拠点を置きたい」と考えている企業にメッセージをお願いします。

井上:どこに何を投資してどのように事業を拡大するのかは企業によってさまざまだと思います。そういう意味では無理をしてまで福岡市へ進出して下さいとは申しません。福岡市のロケーションを活用することに事業上のメリットを感じ、地域に根ざして事業を長く継続していただきたいですね。企業の事業が成功することを我々も望んでいますし、その中で結果としてどんどん雇用も増えてほしいと思っています。
福岡市は「アジアのリーダー都市へ」というスローガンを掲げていますので、アジア、ひいては世界へと飛び出し、イノベーションを起こすような企業に来ていただきたいです。

福岡市の二大拠点と言える、天神・博多エリア。いま、二つの街はまさに大きく進化を遂げようとしている最中。「この波に乗って福岡市へ進出し、新たなイノベーションを起こしたい」と思われる企業は、企業誘致課や福岡クリエイティブキャンプのWebサイト、福岡市東京事務所までお気軽にお問い合わせを。

■福岡クリエイティブキャンプ
Webサイトはこちら

■福岡市東京事務所
Webサイトはこちら

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