インタビュー

自転車を文化に!サブスクやサイクルツーリズムなど、自転車の新たな“在り方”を提案。|Bike is Life 山田大五朗さん

By 山本 佳世

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公開日 2022.01.06

人は「十人十色」と言われるように、起業のかたちも人それぞれ。「MY FOUNDING STORY」シリーズでは、さまざまな企業の創業ストーリーを紐解き、これから起業しようとしている方々の参考や励みにしてもらいたいと考えています。

Bike is Lifeは、福岡発の自転車ライフブランド。代表を務める山田大五朗さんはMTB(自転車競技)の日本代表選手を務めた、日本でも数少ない元プロ選手です。高校生の時にひょんなことで出場した自転車レースで3位に入賞し、それからプロを目指して渡仏、日本代表選手に選出…という豊富な経験を積み、地元の福岡に戻って株式会社Bike is Lifeを立ち上げました。その根底にある思いや現在の事業内容、これからの展望についてたっぷりと語っていただきました。

■プロフィール
株式会社Bike is Life 代表
山田大五朗さん

1978年福岡県福岡市生まれ。17才から自転車競技を始め、21才の時にプロを目指してフランスへ渡る。現地のクラブに所属して2シーズンを終え、22才で帰国。25才からプロ活動を始め、29才でワールドカップに参戦してMTB日本代表選手に選出。以降3年連続で日本代表として世界選手権に出場し、32才で引退。2018年に株式会社Bike is Lifeを立ち上げる。現在は朝倉郡筑前町在住。

“自転車”を軸に広がる、多彩な事業

――まずは、Bike is Lifeの事業内容を教えてください。

山田:「自転車を文化に」を指標に掲げ、オリジナル自転車の製造販売や、クラブハウスの運営、イベントの企画などを行っています。中でも現在メインにしているのは、自転車のサブスクリプションです。これは2021年5月に始めたばかりのサービスでして、貸し出した自転車をアプリで管理しながら、1台1台を大切に乗っていただくというもの。福岡をはじめ、佐賀や大分、東京でもサービスを拡大しています。

――自転車のサブスクリプションは、最近よく見るシェアサイクルとは違うのですか?

山田:ちょっと違うんですよ。これまでは自転車に乗ろうと思うと「購入する」とう方法が主流でしたが、今はこれに「シェアする」という新たなツールが加わりました。

当社のサブスクリプションは、その中間にあたるようなサービスになります。高額な自転車を購入することなく月額制で利用でき、さらにアプリを使って自転車の位置を管理することもできるので“もしも”の時も安心。安定感や機能性を兼ね備えた本格的なスポーツバイクに乗ることができるので、自転車競技にも興味を持ってもらえたらとも思っています。

――クラブハウスの運営やイベントとは、どんなことをされているのですか?

山田:朝倉郡筑前町でクラブハウスを運営し、オリジナル自転車やグッズの販売、カフェを行っています。2022年1月には福岡市西新にも新たなクラブハウスをオープンし、県内2拠点で運営していく予定です。
その他にも自転車で旅や観光を楽しむサイクルツーリズムを行政と組んで企画したり、自社でもショートトリップというものを企画したりして、福岡や東京の街中を自転車で巡るという体験プログラムもはじめました。
また、以前から自転車の完全循環型社会を実現したいと思っており、2021年5月から自転車の買い取りと再生を行う事業を始めたところです。

▲朝倉郡筑前町のクラブハウス

――自転車を軸に、こんなにいろいろな事業が展開できるとは驚きです!

山田:逆に言うと自転車以外のことはできないので(笑)。まだまだ、その他にも市町村と協力して自転車パークを作る事業も進めており、2022年6月には朝倉エリアに誕生する予定です。自転車を楽しむためには、安全に乗ることが欠かせないですよね。そこでは本格的なマウンテンバイクの施設(コース)を作り、自転車運転のスキルアップを図りながら、競技の知識や魅力を広めていきたいなと思っています。

根底にあるのは「自転車を文化に」という想い

――自転車競技のプロ選手であった山田さんが、起業するに至ったキッカケは何だったのでしょう?

山田:当社の指標である「自転車を文化に」という思いは選手時代まで遡ります。21才から自転車競技の選手を目指して2年間フランスに留学していたのですが、その時に体感したフランスの自転車文化が素晴らしくて。自転車を競技として楽しみ、趣味としても楽しむという文化が子どもからお年寄りまで浸透しているんです。そしてその文化が身に付くフィールドも用意されていました。
選手の頃から、いずれはこの文化を日本にも取り入れる活動ができたらと思っていたんです。そして選手を引退した時、この思いを仕事にしていくにはどうしたらいいんだろう?と考え、辿り着いたのが「起業」というカタチだったんです。

▲フランス時代

――選手を引退されてからすぐ起業されたのですか?

山田:引退後は一度、自転車のメディア関連の事業を行う企業に就職しました。ちょうどプロダクトを作ることになった時に入社することができ、その部門を任せてもらったんです。ここでの人脈や経験も、今に生きているかもしれませんね。

――現在はいろいろな事業をされていますが、最初に始めたことは何だったのですか?

山田:実は最初、最近取り組み始めた自転車の再生事業を柱に進めていこうとしていたんですよ。ところが計算してみると全く採算が合わず…。そこでまずは自転車メーカーとしてスタートすることにしました。ゆくゆくはそれに関連づけて、再生事業といったことを幅広く展開できたらいいなと。

自転車って元々環境負荷が少ない乗り物だとは言われていますが、まだまだ日本で自転車は“使い捨て社会”の上に成り立っています。使われなくなった自転車は結局、環境負荷になってしまう。これでは僕が目指すフランスのようにはなりません。事業を始めた頃から、「自転車を文化にする」「環境に負荷を与えないようにする」という思いは根本にありました。

――起業された前後で、困ったことや苦戦したことはありましたか?

山田:今でも困っているんですが(笑)、資金繰りですね。最初は福岡市の創業支援の融資を受けることができたので、メーカーとしての事業を始めることができました。
起業前には福岡市が行うイノベーションスタジオ福岡というプログラムに参加し、当時の講師を務めた株式会社リ・パブリックの田村さんにいろいろと相談させていただきました。さらに田村さんからベンチャー企業でもある八女のアンテナショップ うなぎの寝床の白水さんを紹介していただき、お二人からアドバイスを受けて起業することができました。

▲イノベーションスタジオ福岡

――それからここまで事業をいろいろ展開されているのはお見事です!その要因はご自身で何だと感じていますか?

山田:ニッチなところを攻められたことでしょうか。それと、自転車の専門家でいられたこと。自転車が比較的ニッチな分野であり、さらに周りに専門家と呼ばれる人がほぼいかなかったことで、僕がそのポジションを取れたことが良かったのかなと思っています。それと自転車競技に長く携わっていたので、その業界やそれに近しい友人が多かったことも大きな要因かなと思います。

――福岡を拠点に事業活動をされていますが、このことでメリットに感じることはありますか?

山田:福岡って自転車を楽しむには最適な環境なんです。街がコンパクトですし、自然にも近くてロケーションも素晴らしい。おまけに行政がサイクルツーリズムといった自転車の事業にも力を入れている。ただ、これだけ要素が整っているのにまだまだ自転車が活用されていないんです。そこに事業を展開するメリットを感じています。

――いろいろな新規事業を始められてはいますが、さらなる展望があればお聞かせください。

山田:自転車を文化にすること、完全循環型の社会にすることの2つを引き続き行っていきながら、ゆくゆくは日本の他地域やアジアで事業化することを視野に入れています。それと、自転車競技の育成にも力を入れていきたいですね。スクール事業も展開し、県内でチームを作っていずれはヨーロッパに進出できたら。目標は大きく持っています!

――最後に、これから起業する人へのアドバイスお願いします。

山田:起業するのであれば、ぜひ好きなことで!僕はまだ成功しているとは言えませんが、楽しく事業を展開できているのは間違いなく自転車が好きだから。そんな僕の考えに共感してくれる仲間がいて、本気で話をすることができる環境があることが、Bike is Lifeの強みだと思います。
「好き」があるのと無いのでは、仕事にかける力や人を巻き込む力が変わってくると思います。想いをもって突き進めば、3年は継続できると思いますよ!

インタビューのところどころで、「自転車のことしか知らないんで」とはにかんでいた山田さん。その言葉と表情からも心底自転車のことを愛していることが伝わり、“Bike is Life”という社名が付いたのも納得。自転車が好きだからこそ、そして自転車業界が抱える問題を知り尽くしているからこそ生まれた多彩な事業のこれからに注目です。

株式会社Bike is Lifeについて

■会社概要
会社名:株式会社Bike is Life
URL:https://bikeis.life/
所在地:福岡県朝倉郡筑前町弥永510
設立:2018年4月
代表:山田大五朗

■事業内容
オリジナル自転車の製造販売
クラブハウス運営、イベント企画
自転車のサブスクリプションサービス

■問い合わせ先
Mail:info@bikeis.life

お知らせ

Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

タグ
  • 自転車
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