2022年5月、福岡市赤坂の閑静な住宅街に誕生した「Boulangerie Le Bamtan(ブーランジュリー・ル・バムタン)」。鉄工所だった倉庫をリノベーションしたオシャレな店内に入ると、100種類を超えるパンがそろい、見ているだけでワクワクします。オープンから3カ月で早くも話題の同店を開いたのは、パン職人歴27年の後小路洋さん。軽い気持ちで入社したベーカリーでパンづくりの面白さにハマり、「ベーカーズハイ!」に喜びを感じつつ、地域に根付いた店に育てていきたいと話します。
■プロフィール
Boulangerie Le Bamtan ブーランジュリー・ル・バムタン
オーナー 後小路 洋(うしろしょうじ ひろし)さん
行橋市出身。高校を卒業後、老舗の大手ベーカリーに入社。大阪を皮切りに、小倉、天神、熊本、東京、広島など日本各地の店舗で26年にわたってパンづくりに携わる。2021年8月に退社し、2022年5月に店を構えた。
大好きなパンづくりを続けていきたい
――まずはお店のことを教えてください。
Boulangerie Le Bamtanは、今年5月に福岡市の赤坂でオープンしました。経営者でパン職人の私と、前職のベーカリーで一緒に働いていた職人2人、販売担当の全4人で力を合わせて店を運営しています。
店名の「ブーランジュリー」は、フランス語の「パン屋」。「バムタン」は、前職時代に私が「バムとケロ」という絵本に出てくる犬のバムに似ていると言われていたことから名付けました。
――もともとパン屋さんになりたいと思われていたのですか?
いえ、そういう思いは全くなかったんですよ。子どもの頃から図画工作が好きで、パンも好きだったので、パンづくりは楽しくてラクな仕事かなと軽い感覚で入社しました。実際には早朝から働き、常に技術を高め、新しい商品開発も求められるシビアな世界でした。自分の店を持ちたいとスイッチが入ったのは、30歳を過ぎてからです。
――どんなきっかけがあったのでしょう?
会社で出世して店長になるのではなく、一生パンをつくりたい、自分の店を持って丁寧な仕事をしたいと思うようになったんです。ただ、転勤しながらチーフとして指導や現場を任され、社内で日本一の東京の店に配属されることもあり、なかなか退社できませんでした。
そんな中でも、独立を目指して食品衛生責任者の資格を取り、資金を貯めて、機械の展示会を見に行くなど、自分なりに準備を進めていました。全国の職人が腕を競う「メープルスイーツコンテスト」で受賞したことは自信になりました。そして自分なりに区切りをつけて、2021年秋に退社しました。
受賞歴のある職人たちが個性を発揮
――起業するために取り組んだことを教えてください。
西日本シティ銀行の大名支店に創業支援の窓口があると聞き、相談に行きました。そのときの担当者とは今もいいお付き合いが続いています。あとは出店場所について、福岡市内でパン屋を開いていた後輩に話を聞きました。自分は5年福岡を離れていて、最新事情が分からなかったので。そして最初は浄水の物件に決めて融資も通ったものの、うまく折り合わず白紙に。すると内装屋さんが赤坂のこちらの物件を教えてくれて、決めました。
――スタッフ4人はどうやって集められたのですか?
創業すると話したところ、福岡で一緒に働いていた職人2人が一緒にやりたいと言ってくれました。40代の男性はベテランで、30代の女性は「カリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテスト」で金賞に輝いた実力があり、うれしかったですね。販売スタッフも元同僚です。店の坪数と製造人数から売上の目標を立てたら、スタッフが「もっとできます」と言ってくれて、「よし、やろう!」と目標を上げました。
オープンのお知らせはインスタとチラシのみ。オープン当日はすごくドキドキしましたが、お客さんがずらりと並んでくださって驚き感動しました。
――お店のこだわりを教えてください。
3人でそれぞれ得意なパンをつくり、毎日100種類ほどのアイテムを並べています。「選ぶ楽しさ」を提供したいし、おいしさはもちろん見た目も楽しんでもらいたい。常に試作をしていて、いつ来ても新しいパンがあるような店にしたいと思っています。
福岡ではハード系のパンが増えていますが、当店ではデニッシュ系があることも特徴のひとつ。特におすすめは菓子パンで、あんぱんやメロンパンなどはパサつかず、しっとり感が続くように工夫しています。
――どんなお客さんが多いですか?
それが意外なことに、おじさんがとても多いんですよ。毎日決まった時間に来てくれるおじさんや大量に買ってくれるおじさんもいて、とてもありがたいです。もちろんマダムや若い子にもご来店いただいています。
――どんなところにやりがいを感じますか?
パンをつくるのが楽しくて、本当に好きだなあと感じます。中でも一番のやりがいは、いいパンが焼き上がった瞬間。ランナーズハイをもじって、僕らは「ベーカーズハイ」と呼んでいて、すごい幸福感を感じるし、疲れが一気に吹き飛びます。職人として至福のときですね。
それに、年を重ねると創作意欲が低下すると聞くけれど、僕の場合は今でも「あれをつくりたい」「これもつくってみたい」と好奇心が湧いてきます。昔からパンの本や雑誌を読みまくり、気になるパン屋をめぐり、どこで何をしていてもパンのことを考えているかもしれません。新しい素材の組み合わせやアイデアを思いついたら、すぐにメモしています。うちの店にしかないオリジナルのパンをお届けしていきたいです。
――今後の展望についてお聞かせください。
この土地に根付いて、ずっと店を続けていきたい。おかげさまでオープンからお客さんがたくさん来てくださっていますが、今後も売上を維持していくのは大変に違いありません。新商品を出して、飽きられないようにするのがいいのかなと、今はまだ手探りでやっている感じです。のちのちは、新しいスタッフを育てていくことも自分の役割ではないかと考えています。
――これから起業を考えている方にアドバイスをお願いします。
自分は運がよくて、思ったようなスタートを切ることができました。アドバイスをするなら、できる限り準備をして、自己資金を貯めておくことが大事だと思います。
Boulangerie Le Bamtanについて
所在地:福岡市中央区赤坂2-2-7
TEL:092-718-0302
■事業内容
パン製造販売
お知らせ
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▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
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フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。