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「クリティカルシンキング」とは。重要性や能力を鍛える実践方法をわかりやすく解説

By 松田 聡子

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公開日 2022.09.20

「クリティカルシンキング」は、問題解決の手段として注目されている思考法の一種です。クリティカルシンキングを身につけると、ビジネスや日常生活にプラスになるといわれています。この記事では、クリティカルシンキングの特徴やメリット、実践の方法などを解説します。

「クリティカルシンキング」とは?

クリティカルシンキングの「クリティカル(critical)」とは、「批判的な」という意味です。直訳すると「批判的な思考」となりますが、「欠点を探す」「否定する」といったニュアンスとは異なる建設的な思考法です。

客観的な視点で思考するためのスキル

クリティカルシンキングとは、感情や主観に流されない意思決定をするためのスキルです。多くの人は問題を解決しようとするときに「今まではこのようにしたから」など、経験や知識をもとに考えるでしょう。

クリティカルシンキングでは自分の習慣となっている思考パターンを意識し、よりよい方法を客観的な視点で判断していきます。思い込みや偏った考えを排除し、最善の解決法を得るための手段というわけです。

クリティカルシンキングの基本姿勢

クリティカルシンキングを実践するうえで、ベースとなる3つの基本姿勢があります。

目的を常に意識する

クリティカルシンキングを実践する場合、目的を常に意識することはとても重要です。思考のプロセスではさまざまな観点から多面的に考えていくため、ときには目的を見失うおそれがあります。迷いが生じたときには目的に立ち戻り、論点を整理し直すとよいでしょう。

思考のクセや偏りを自覚する

クリティカルシンキングでは、自分の思考のクセや偏りを意識する必要があります。人の思考や意思決定には、多くの偏見や先入観が隠れているものです。これらに気づかずにいると思考がワンパターンに陥り、最善とはほど遠い決定しかできないおそれがあります。

意思決定の陳腐化を回避するには、自分の主観や偏見を自覚して別の切り口を探す努力が不可欠です。自分の思考の習慣を打ち破り、「もっとよい方法はないか」と考えることが新たな視点につながります。

問い続ける

クリティカルシンキングでは解決策が見いだせたとしても、「この方法は本当に正しいのか」などと問い続ける必要があります。問い続けていくと新たな気づきを得られたり、物事をより深く考えられたりするようになるのです。

また、時間が経つと状況が変わり、出した結論が妥当でなくなる場合もあります。クリティカルシンキングの「問い続ける」姿勢は、このような変化にも対応可能です。

クリティカルシンキングの重要性

クリティカルシンキングはビジネスシーンでも日常生活でも役立ち、今後ますます重要性が増すと考えられます。なぜ、クリティカルシンキングが求められるのでしょうか。

社会の変化のスピードに追いつくため

クリティカルシンキングの重要性が高まった背景の1つに、急激に変化する社会への対応が挙げられます。ほとんどの人は何か問題が起きると、過去に成功した方法で解決を試みます。しかし、過去に上手くいった方法が今後も通用するとは限りません。

変化に対応するには使えなくなったやり方を見限り、新しい考え方を受け入れることも必要です。クリティカルシンキングは、企業やビジネスパーソンが将来にわたって生き残るために役立つスキルなのです。

価値観の多様化に対応するため

インターネットの発達により、誰でも世界中の情報に触れられるようになりました。その中で、日本だけでは考えられないような新しいニーズやビジネスチャンスが生まれています。既存の価値観にとらわれてしまうと、将来の可能性の芽を摘んでしまうかもしれません。

クリティカルシンキングを身につけると、異なる価値観や未知の情報から物事を多面的に捉えられるようになります。そうしたスキルのある人なら、新しいアイデアを生み出せるでしょう。

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い

クリティカルシンキングと比較される思考法に、「ロジカルシンキング」があります。

ロジカルシンキング(論理的思考)とは?

物事を要素ごとに分解し、筋道を通し主張と根拠を論理的に説明する思考法です。ロジカルシンキングが身につくと、合理的な論理展開により課題解決力が高まります。また、説得力のあるプレゼンテーションにもつながります。

クリティカルシンキングとの違い

以下は、クリティカルシンキングとロジカルシンキングの特徴を表にまとめたものです。

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの比較

クリティカルシンキング

ロジカルシンキング

・課題の原因と解決策の仮説を立てて考える

・要素に対し、批判的な問いの投げかけを繰り返す

・導いた結論にも疑いの視点を持ち続ける

・課題の原因を分解・整理し、筋道を立てて解決策を考える

・正しいデータに基づき、主張の裏付けを行う

・説明するときに、結論→根拠の順番で論理展開する

ロジカルシンキングもクリティカルシンキングも物事を客観的かつ論理的に考える部分は共通しており、相反するものではありません。

ロジカルシンキングでは論理的に間違っていなければ、要素の正確性や偏りまでは問いません。一方、クリティカルシンキングは与えられた要素を検証し、前提の誤りや別の解決策などを検討していく方法です。

クリティカルシンキングのメリット

クリティカルシンキングを実践すると、特にビジネスシーンで大きなアドバンテージを得られると考えられます。具体的にどのようなメリットがあるのか、解説します。

コミュニケーションが円滑になる

クリティカルシンキングでは客観的な視点で事柄を検討するため、事実に基づく話し合いが行われます。そのため感情的な議論になりにくくスムーズなコミュニケーションが図れ、自然に問題解決までのスピードも上がります。話し合いが行き詰まる場合などに、クリティカルシンキングを導入すると進展が期待できるでしょう。

正しい判断ができるようになる

どんな人にも思考の偏りや考え方のクセがあり、それらが正しい判断を妨げる場合があります。クリティカルシンキングを実践すると自分の思い込みや勘違いを排除し、適切な解決策にたどり着けます。前提となる要素をそのまま受け取らずに、多角的に考えると新たな視点を得やすくなるのです。

最適な問題解決ができるようになる

クリティカルシンキングでは要素や仮説に対して「ほかの方法はないか」など、何度も問いかけを行います。その過程で、ロジカルシンキングでは到達できない解決策を見つけやすくなります。ロジカルシンキングでは、前提条件や仮説の正しさまでは検証しないからです。クリティカルシンキングでは与えられた条件に疑いを持つと、より有効な選択肢を得られるようになります。

新たな視点や発想が生まれやすくなる

クリティカルシンキングで前提条件や意見について問いかけを続けていくと、新たな視点や発想に出会う可能性が高まります。自分にとっての常識を疑ってみると、別の考え方や解決策の糸口をつかみやすくなるのです。

新たなアイデアが即使えるものでないとしても、将来的な選択肢が増えるのはプラスになるでしょう。

リスクの回避につながる

クリティカルシンキングでは物事の要素を批判的に見つめ、多角的に捉え直そうとします。結果として、今まででは気づかなかった欠陥やリスクを発見する可能性があり、回避できるようになります。

物事の本質を捉えられるようになる

クリティカルシンキングは、物事の本質を抽出するプロセスともいえます。当たり前だと思うことをあえて「なぜなのか」「本当に正しいのか」と問い続けると、多角的な見方が可能になるからです。

思考を続けるうちに、与えられた要素の中で重要なものと不要なものを区別できるようになります。本当に重要な情報が何かが分かれば、物事の本質に近づきます。

会議やプレゼンテーションに役立つ

クリティカルシンキングを実践していくと、会議やプレゼンテーションのシーンで自分の主張が通りやすくなります。相手の主張の矛盾に気づいたり、論点がずれたりしても冷静に指摘でき、自然にイニシアティヴを取れるようになるからです。

また、事前に自分の考えをまとめるプロセスで問いを繰り返しておくと、相手の反対意見や批判を想定できます。予想した反論に対する適切な処理を準備しておけば、交渉も優位に進められるでしょう。

クリティカルシンキングを身につける方法

クリティカルシンキングは、日常生活の中で身につくスキルです。ここでは、簡単にできるトレーニング方法を紹介します。

仮説を立てて検証する

クリティカルシンキングで自分の思い込みを排除するには、仮説と検証の実践が有効です。

ロジカルシンキングでも、仮説と検証のプロセスは用いられます。クリティカルシンキングではさらに結論の妥当性を検証し、立てた仮説が正しいかどうかを判断します。それにより、妥当な解決策に近づけるのです。

事実をもとに発言する

クリティカルシンキングを実践するうえで、事実をもとに発言する習慣をつけるのは効果的です。日頃から公的なデータやニュースなどで情報収集をし、それらを根拠として提案や発言をすると受け入れられやすくなるでしょう。

単なる私見と客観的な事実の裏付けがある発言では、説得力に差がつきます。発言をするときには、主観的な意見より事実をベースに話すことを心がけましょう。

正しい情報をインプットする

クリティカルシンキングの実践には、正しい情報を収集する能力がとても重要です。事実をもとに発言するには、情報が正確でなければなりません。

正しい情報を適切に組み立てていくと、客観性のある意見の構築が可能になります。書籍やインターネットで情報収集をするときは、クリティカルシンキングを意識して信ぴょう性を見極めるようにしましょう。

身近な事柄を深掘りして考えてみる

日頃から身近な事柄や常識に疑問を持つと、クリティカルシンキングが身につきやすくなります。当たり前と思っていたことに「本当にそうなのか」と疑いの目を持ち、深掘りしていくと思わぬ発見があるかもしれません。そうした習慣によって、課題に直面したときに解決策を考える力が蓄えられます。

クリティカルシンキングを実践する4つのステップ

クリティカルシンキングを実践する際の流れを、4つのステップで解説します。

【ステップ1】目標を設定する

クリティカルシンキングを実践するには、目標設定から始めます。何のために行うのか、何をゴールとするかを明確にしていきます。クリティカルシンキングは問題解決のためのツールであり、目標がなければ役に立たないからです。着地点をしっかり決めておけば、最短でゴールにたどり着く方法を見つけやすくなります。

【ステップ2】課題を洗い出す

目標が決まったら、要素を分析して課題となる部分を洗い出します。クリティカルシンキングにはさまざまな分析手法があり、それらを用いて考えていきます。その際には自分の主観や思い込みを自覚し、客観的で多面的な視点を持つようにしましょう。

また、常に問いを投げかけ、与えられた条件に対して本当に正しいのかを検証する姿勢も大切です。課題の全体像をつかみ、優先して解決すべき問題を捉えていきましょう。

【ステップ3】思考を整理し仮説を立てる

課題が洗い出せたら、解決のために有効な方法について仮説を立てて検証していきます。解決策は可能な限り多くの案を出し、それらをクリティカルシンキングの批判的な視点で検討します。

つまり「なぜこの案がよいのか」「よりよい案はないのか」などの問いを投げ続け、精査していくわけです。その過程で、出された解決策の弱点があぶり出されたり、有効性の疑わしい案は却下されたりします。また、全く新しいアイデアがひらめく可能性もあるでしょう。そのうえで、最終的に残った案が最善策ではないかと考えられます。

【ステップ4】解決策を実行する

クリティカルシンキングで解決策が決定したら、実行と検証を行います。実行にあたっては「策定→実行→検証→改善」のPDCAサイクルを活用するとよいでしょう。

PDCAの「C(検証)」ではクリティカルシンキングの批判的思考を用いて、仮説を客観的に評価します。「実行してみたら新たな課題が見つかった」など改善の余地があれば、さらにクリティカルシンキングで解決策を考えます。このサイクルを回していくと自然にクリティカルシンキングのトレーニングになり、問題解決の精度が高まるでしょう。

まとめ

クリティカルシンキングというと難しそうなイメージがありますが、日常生活の中で意識的に取り入れれば身につきやすいスキルといえます。社会環境の変化は今後も加速すると考えられ、クリティカルシンキングの重要性は増していくでしょう。できるところから取り入れ、ビジネスやプライベートに役立ててはいかがでしょうか。

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