
厚生労働省では、雇用維持や人材育成、働き方改革を支援するための助成金制度を複数設けています。雇用の安定や職場環境の改善に取り組み、対象要件を満たせば、人件費や設備導入費の一部が助成されます。
この記事では、こうした厚生労働省の助成金に加えて、福岡県内で活用できる雇用・労働分野の補助金について紹介します。
※記事内容は、令和7年7月18日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
雇用関係
まずは雇用関係の主な制度を紹介します。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業、教育訓練、出向に要した費用を助成する制度です。
助成率・助成額
休業・教育訓練の場合 | 休業手当等の一部助成 2/3、中小企業以外 1/2(※1) (※1)支給日数が30日に達した次の判定基礎期間より、実施する休業等の1/10以上教育訓練を実施しなかった場合 1/2、中小企業以外 1/4 教育訓練を行った場合は、教育訓練費を1人1日あたり1,200円(※2)加算 (※2)支給日数が30日に達した次の判定基礎期間より、実施する休業等の1/5以上教育訓練を実施した場合には1,800円 |
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出向の場合 | 出向元事業主の負担額の一部助成 2/3、中小企業以外 1/2 |
参照:厚生労働省 雇用調整助成金
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3か月間試行雇用する制度です。
| 助成額 |
一般トライアルコース | 1人あたり月額最大4万円(最長3か月間) 対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合:月額最大5万円(最長3か月間) |
障害者トライアルコース | 支給対象者1人につき 1. 対象労働者が精神障害者の場合、月額最大8万円を3か月、月額最大4万円を3か月(最長6か月間) 2. 1. 以外の場合、月額最大4万円(最長3か月間) |
障害者短時間トライアルコース | 支給対象者1人につき月額最大4万円(最長12か月間) |
若年・女性建設労働者トライアルコース | 1人あたり月額最大4万円(最長3か月間) |
参照:厚生労働省 令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
掲載ページ:厚生労働省 雇用関係助成金パンフレット
キャリアアップ助成金
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
| 助成額 |
正社員化コース | 【重点支援対象者(※)の場合】 ①【有期→正規】1人あたり80万円 (中小企業以外60万円) ②【無期→正規】1人あたり40万円 (中小企業以外30万円) ※ a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者 b:雇入れから3年未満で、次のア・イいずれにも該当する有期雇用労働者 ア 過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下 イ 過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない c:派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定訓練修了者 【重点支援対象者以外の場合】 ③【有期→正規】1人あたり40万円 (中小企業以外30万円) ④【無期→正規】1人あたり20万円 (中小企業以外15万円) そのほか、加算あり |
障害者正社員化コース | 【重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者を正規雇用労働者等に転換した場合】 ①【有期→正規】1人あたり120万円 (中小企業以外90万円) ②【有期→無期】1人あたり60万円 (中小企業以外45万円) ③【無期→正規】1人あたり60万円 (中小企業以外45万円) 【重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者を正規雇用労働者等に転換した場合】 ①【有期→正規】1人あたり90万円 (中小企業以外67.5万円) ②【有期→無期】1人あたり45万円 (中小企業以外33万円) ③【無期→正規】1人あたり45万円 (中小企業以外33万円) |
賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の賃金規定等を増額改定し、昇給させた場合、 最大 1人あたり7万円 (中小企業以外4.6万円) そのほか、加算あり |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用した場合、1事業所あたり60万円 (中小企業以外45万円) |
賞与・退職金制度導入コース | 1事業所あたり40万円 (中小企業以外30万円) そのほか、加算あり |
社会保険適用時処遇改善コース | 【手当等支給メニュー】 労働者負担分の社会保険料相当額(賃金の15%以上分)を手当等によって支給し、その後、恒常的な処遇改善(賃金が18%以上増額するよう、賃上げ・労働時間延長)を図る 1人あたり最大50万円(中小企業以外最大37.5万円)(※) 【労働時間延長メニュー】 社会保険の被保険者とする際に、週所定労働時間を4時間以上等延長する 1人あたり30万円(中小企業以外22.5万円) 【併用メニュー】 被保険者とした1年目に手当等支給メニューの取組を行い、2年目に労働時間延長メニューの取組を行う 1人あたり最大50万円(中小企業以外最大37.5万円)(※) (※)すべての支給対象期の取組、申請を行った場合の額 |
参照:厚生労働省 令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
掲載ページ:厚生労働省 雇用関係助成金パンフレット
福岡県直方市:副業・兼業人材活用支援補助金
本補助金は、「福岡県プロフェッショナル人材戦略拠点」を通じて副業・兼業人材を活用する中小企業者に対して、その費用の一部を補助する制度です。
採用や人事評価、人事育成等といった人事制度の構築、IT活用などの企業課題を解決する取り組みにおける副業・兼業人材の活用に要した企業負担費用の一部を支援します。
補助対象経費・補助率・補助額
補助対象経費 | 副業・兼業人材の活用に要した企業負担費用(消費税及び地方消費税に相当する額を除く) |
補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
補助額 | 1事業者につき20万円 |
参照:福岡県直方市 副業・兼業人材活用支援補助金
福岡県飯塚市:外国人材受入環境整備事業費補助金
本補助金は、技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人材に、就業地として飯塚市を選択してもらうため、飯塚市での就業および暮らしの満足度を高めるための環境整備を支援する制度です。
補助対象経費・補助率・補助額
補助対象経費 | 外国人材の就業環境、生活の環境の改善及び多文化共生の推進のために行う取組等に係る、以下の経費 謝金:講師等への謝礼金 旅費:講師等の交通費、講習を受ける際の交通費等 使用料及び賃借料:会場、機材、車両等の借上げ料等 委託料:外国人材の母国語への翻訳料等 需用費:消耗品費、材料費、教材購入費、資料印刷代等 備品購入費:外国人実習生の就業・生活環境の改善に資する備品の購入費 研修費:資格取得の講習費用に係る費用 その他経費:市長が特に必要と認める経費 |
補助率 | 2/3以内 |
補助額 | 市外支援団体を利用している場合:15万円/事業者 市内支援団体を利用している場合:30万円/事業者 |
参照:福岡県飯塚市 外国人材受入環境整備事業費補助金
福岡県久留米市:人材確保支援事業費補助金
本補助金は、市内の中小企業者等が、その事業活動に必要な人材確保のため、市内事業所等で勤務する正規職員を安定的に確保するために取り組む事業を支援する制度です。
補助対象経費・補助率・補助額
補助対象経費 | 民間就職支援会社等に支払う出展費用 (注意)交通費・宿泊費・消費税等は対象外 |
補助率 | 1/2 |
補助額 | 20万円 |
参照:福岡県久留米市 人材確保支援事業費補助金
労働条件等関係
次に、労働条件等関係の主な制度を紹介します。
業務改善助成金

出典:厚生労働省 業務改善助成金のご案内
業務改善助成金は、事業場内で最も低い労働者の賃金(事業場内最低賃金)を引き上げ、生産性向上に資する設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)等を行う中小企業事業主に対して助成を行う制度です。
助成率・助成額
業務改善助成金 | 【助成率】 設備投資等に要した費用の3/4 ~ 4/5 【助成額】 引き上げる賃金額および引き上げる労働者数に応じて30万円 ~ 600万円 |
参照:厚生労働省 令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
掲載ページ:厚生労働省 雇用関係助成金パンフレット
働き方改革推進助成金
労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する制度です。
助成率・助成額
業種別課題対応コース | 【助成率】 3/4 (事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は4/5を助成) 【助成額】 成果目標の達成状況に基づき、最大550万円等 (一定要件の場合、最大720万円加算) (※)助成上限額は業種によって異なります(上記は建設事業の場合) |
労働時間短縮・年休促進支援コース | 【助成率】 3/4 (事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は4/5を助成) 【助成額】 成果目標の達成状況に基づき、最大200万円(一定要件の場合、最大720万円加算) |
勤務間インターバル導入コース | 【助成率】 3/4 (事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は4/5を助成) 【助成額】 インターバル時間数等に応じて、 ①9時間以上11時間未満 100万円 ②11時間以上 120万円 など(一定要件の場合、最大720万円加算) |
団体推進コース | 【助成率】 定額 【助成額】 500万円 都道府県またはブロック単位で構成する中小企業の事業主団体(傘下企業数が10社以上)等の場合は上限額1,000万円 |
参照:厚生労働省 令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
掲載ページ:厚生労働省 雇用関係助成金パンフレット
福岡県北九州市:生産性向上・賃金引上げ応援補助金
本補助金は、既述の業務改善助成金の交付額確定を受けた事業場に対して、上乗せ補助を行う制度です。
補助対象となるのは、市内にある事業場で、令和7年4月1日以降に福岡労働局から交付決定の通知を受けて令和8年2月28日までに交付額確定通知を受けている事業場です。
補助率
補助率 | 業務改善に要する設備投資等にかかる補助対象経費の1/10 |
参照:福岡県北九州市 生産性向上・賃金引上げ応援補助金
まとめ
この記事では、厚生労働省の助成金に加えて、福岡県内で活用できる雇用・労働分野の補助金について紹介しました。
申請には所定の手続きや書類準備が必要です。各制度の公募期間や要件を事前に確認し、自社の状況や課題に合わせて申請をご検討ください。
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株式会社Stayway 代表取締役CEO 公認会計士
東京大学経済学部卒業 / 公認会計士及び経営革新等支援機関デロイト トウシュ トーマツ出身。東京及びシアトルにおいて、IPO支援に従事したのち、香港本社のPEファンド・経営コンサルティングファームに勤務。「中小企業や地域のポテンシャルを開放」するため、2017年株式会社Staywayを創業。
※本記事の監修者です。