多様な生き方や働き方が広がりつつある現代。企業にはこれからますます、さまざまな人が働きやすい環境を整えることが求められます。社員の働きやすさを叶える企業の取り組みとは? この連載では、実際に働き方改革に積極的に取り組む企業で働く人や経営者にインタビュー。今回は大ヒット商品の「明太フランス」を販売し、「国産小麦パン工房 フルフル松崎本店(福岡市東区)」含め福岡市内に4店舗のベーカリーショップを展開する株式会社フルタパンを取材ました。
※ここで紹介する企業は私募債発行に際してSDGsに資する取り組み、中でも働き方改革を積極的に行うことを要件に取り込んだ、西日本シティ銀行が提供する、次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」を発行している企業です。※私募債についてはこちら
社員インタビュー
株式会社フルタパン 本店製造スタッフ(2021年入社) 平 紗弥香(たいら さやか)さん
Q:この会社を選んだ理由、入社の決め手を教えてください。
小学生の頃、母と一緒にフルフル松崎本店によく買い物に行っていたのですが、その時に食べた明太フランスの美味しさに衝撃を受けたんです。それから程なくして親の転勤で長崎へ引っ越すことになり、お菓子やパン作りに興味があったので製菓コースがある地元の短大に進学してパンの製造を学びました。
就職を考える時期になり、福岡で過ごした時に食べたあの明太フランスの味が忘れられなくて、フルフルで働きたいと思ったことがフルタパンを選んだ理由です。
Q:入社して感じた、この会社の良さはどのようなところでしょうか?
温かい方が多いこと。仕事中はいつも上司や先輩の皆さんに気にかけてもらっていますし、スタッフだけでなくお客さまが温かく接してくださることも当社の良いところだと思います。
入社前に客としてフルフルを利用していた時にも、販売スタッフが他のお客さまにいつも笑顔で接している印象があったのですが、入社後もその印象は変わりません。
Q:現在の業務を教えてください。
入社後はまず販売業務に配属され、接客について3ヶ月ほど学ました。それから製造業務に移って、現在までパンの製造を担当しています。学生の時にも製パンのことは学びましたが、やはり仕事になると全然違うなというのが本音ですね。
当店のパンは大量生産になるので、生地の仕込み、生地の分割、成形、発酵…というようにすべて分業でパンの製造にあたっています。さらに明太フランスを専門で作る担当、クロワッサンを織り込む担当などさまざまな役割があり、製造スタッフはそれらの業務をまんべんなく担当しながら経験を積んでいきます。
Q:業務でのやりがいや嬉しかったことを教えてください。
製造だけでなく販売を担当することもあるのですが、その時に自分が製造したパンがお客さまの手に渡り、「美味しかった」「このパンがあって良かった」というお言葉を直接聞けること。そういった反応を目の当たりにすると、すごくやりがいを感じます。
何でもチャレンジさせてもらえる環境でもあるので、自分でアイデアを出して新商品を提案することもあります。少しですが、実際に商品化されたものもあるんですよ。
Q:福利厚生や制度はどうですか?
パン屋は勤務時間が長い印象が持たれますが、当社ではなるべく9時間で業務が終了するような取り組みが行われています。休日はシフト制なので土日やゴールデンウィークなどの繁忙期は出勤になりますが、お盆や年末年始にはまとまった休暇を取ることもできます。
研修制度に関しては勉強する機会を多く与えていただき、3か月に1回ほどベーカリー業界の人々が集うパンの勉強会に参加したり、他のエリアの繁盛店へ視察に行ったりすることもあります。そこで最近のパンのトレンドや他店の実情を知ることができるので、すごく良い勉強になっていますね。
Q:仕事を通じて学んだことはありますか?
製パンの技術だけでなく、社会人としてのマナーといった人間性に繋がることも指導していただけるので、人として成長できているのではないかと思っています。
Q:今後の目標を教えてください。
今はまだ役職についていないので、チーフや店長を目指したいです。私が所属している本店は社員とタイム社員を含めておよそ30人のスタッフが在籍しています。
みんなの結束をより高めて、もっとたくさんの人に親しんでいただける店舗にしていきたいと思います。
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株式会社フルタパン
代表取締役社長 古田 量平(ふるた りょうへい)さん
福岡県福岡市出身。西南学院大学出身、1976年(昭和51年)フルタ製パンに入社。1985年(昭和60年)に株式会社フルタパンに組織変更し、代表取締役に就任。
美味しいパンが家族団らんを生み、地域コミュニティの拠点となる店を目指す
当社は私の祖父が1925年(大正14年)に創業し、当時は堅パン製造や卸売で事業を行っていたようです。やがて戦争が始まったためしばらく休業となり、復員した父の手によって営業再開することができました。
父の代からは学校や病院向けのパンを製造するようになったのですが、卸売ということで価格や製造ペースに縛りが出て従業員にも負担をかけていたこともあり、私の代になって直営に業態を切り替えることにしました。
そうして1986年(昭和61年)に初の直営店となる『国産小麦パン工房 フルフル松崎本店』をオープンして看板商品の明太フランスを生み出し、現在までに4店舗を展開しています。
松崎本店には、1,100坪の敷地に店を構えてゆったりと過ごせるイートインスペースを用意し、キャナルシティ博多近くの『THE FULL FULL HAKATA』はパンに合うワインを提供するなど、4店舗それぞれに特徴を持たせています。
全店舗に共通する特徴は、"コミュニティを作る場"にすること。ただパンを売るだけ、多くの人に来店いただくだけでは他店との差別化ができません。店舗でライブを行ったり、ファーマーズマーケットを開催したりして、家族団らんの場となり、地域の皆さんが集まってコミュニティを築けるような店づくりに力を入れています。
人間力を磨き、人との繋がりや信頼関係を学べる環境を整える
当社の店づくりに欠かせないのが、スタッフの"人間力"です。デジタル技術が進んだ現代はネットショッピングや自動レジなどが主流となり、人と人との繋がりが希薄になっているように思えてなりません。そんな時代に逆行するわけではありませんが、社員教育に関してはどういう商品を売るかということよりも、"相手本位で物事を考えられる資質"を磨いていくことに重きを置いています。
できるだけレジではカウンターの外に出て、お買い上げいただいた商品を手渡しするように心がけたり、積極的にお声かけをしたりしてお客さまに喜んでいただけること、そうしてお客さまと親しくなれることが店づくりにとって重要であり、その思いはお客さまにも伝わっていると思っています。
私は、職場は人生最後の学校だと考えています。相手を思いやれる人間力を身につけた人こそ、美味しいパンを作ることができるはずです。
先日店舗で、ベビーカーで手が塞がっているお客さまに代わってトレイを持って差し上げたり、大量にパンを買われたお客さまの車までパンを運ぶお手伝いをしたりしているスタッフの姿を見ました。私や上司から「こうしなさい」と言われたからではなく、お困りになっている方に気がついて自発的に行動に移している光景を見て、「私の思いがちゃんと伝わっている」と感じてとても嬉しくなりましたね。
一流を目指すために、研修や勉強の機会を惜しみなく提供
スタッフを採用する上で欠かせないのが、「パンが大好き」であること。出身学部や学歴に関係なく採用を行っており、「作ってみたい」「やってみたい」とうチャレンジ精神を積極的に応援しています。失敗を恐れず、"有言実行"をモットーに思いついたことはすぐに行動に移してもらい、自発的に成長できる環境も整えています。
商品開発に関してはヒット商品の明太フランスに甘んじず、新しい商品を生み出せるように勉強の機会を多く設けています。福岡を代表する一流のパン屋を目指すためには、あらゆる"一流"を知っておかなければなりません。一流の素質がある店には積極的に足を運んでもらっていますし、海外まで勉強に行ったスタッフもいます。これからは入社2~3年目の若手社員にもどんどん海外にも行って"本物"を学んできてほしいと思っています。
福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。