
まだ今ほどITやAIが日本に浸透していなかった2011年、高校卒業後に「これからはITの時代だ!」と思ってプログラミングへの道に進んだ「株式会社HANATABA」の柴田啓祐さん。紆余曲折があり、独学でプログラミングを習得した後は日本各地を転々としながらフリーエンジニアとして実績を積んでいきますが、その根底にあったのは「何かの部品ではなく、自分が作ったものが実際に使われて繋がっていく」ことへの思い。「IT系の企業に就職する道もあったのに、あえて茨の道を選びました」と語る、柴田さんの興味深いファウンディングストーリーをご紹介します。
■プロフィール
株式会社HANATABA
代表取締役 柴田啓祐(しばたけいすけ)さん
北九州市出身のエンジニア。高校卒業後、教育系スタートアップに参画。一度は会社員になるが2017年からはフリーランスエンジニアとして活動し、2020年1月に株式会社HANATABAを設立。
IT業界に興味を抱きプログラミングを学ぶ
――エンジニアに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょう?
柴田:僕が高校を卒業する2011年頃、当時はまだスマホがようやく使われ始めた頃だったでしょうか。ITやAIというものがまだ今ほど世の中に浸透していなかったのですが、テレビでホリエモンさん(実業家の堀江貴文氏)がITサービスを展開する姿を見て「かっこいい」と思いました。そこで僕もIT関連のことをやりたいと思って情報系の大学に進学したのですが、電気や機械系の授業が中心で、希望していたプログラミングのことがあまり学べなかったのです。そこで思い切って半年ほどで大学を辞めて、独学でプログラミングのことを学んでフリーランスのエンジニアになりました。
――それから起業することになった経緯を教えてください。

柴田:起業するまでは紆余曲折があったのですが、かいつまんでお話ししますね。独学でプログラミングを習得してエンジニアになってから、東京に行って学生ベンチャーのサポートをしたり、自分で新しいシステムを開発したりしていました。それが20歳の時です。その頃、家庭教師のオンライン化を目指すスタートアップの社長に出会い、僕もそこに参画することになりました。
そこでは先生と生徒のマッチングシステムのようなシステム開発をしていたのですが、資金的な問題がありその会社は仕切り直すことに。僕も自身のプログラミング力について自信をなくしていた時期でもあり、一度企業で働こうと思ってそのまま東京で就職しました。就職した会社は主に受託型のプログラミングをしていて、そこで2年ほど経験を積みましたが、与えられた仕事をすることにどこか疑問を感じて退職したのです。
――退職後はどのようにエンジニアの仕事を続けられたのでしょうか?
柴田:それからは再びフリーランスのエンジニアとして活動することにしたのですが、東京でなく宮城県の石巻市に移住しました。会社員時代に知り合った、震災ボランティアの方のサポートをするためです。石巻市では震災ボランティアの管理システムや地元生産者の販売サポートシステムなどを手がけつつ、クラウドワークス型の受託の仕事を行っていました。
それから石巻市を出て、一度地元の北九州に戻った時に創業サポートやコワーキングスペースの運営を行う「COMPASS 小倉」でお世話になるのですが、そこで沖縄でスタートアップカフェの運営をする人に出会います。その方に「エンジニアが足りないから来ないか」と声をかけらたことをきっかけに今度は沖縄へ。この時は26~27歳くらいで、フリーランスとしてその仕事に関わることにしました。沖縄在住時に知り合ったのが、後に共同経営者となる龍というメンバーです。
当時、龍と新規事業を考えるようになり、「人の心に訴えかけるサービスができないか」と、花をオンラインで集めて花束にして贈るサービスを作ろうという話になり、実際に作ったのが「HANATABA」というWEBサービスです。
その後、沖縄にあるインバウンド向けの翻訳サービスを展開していたベンチャー企業から声をかけていただき、そちらでもフリーランスエンジニアとして携わるっていたのですが、コロナの影響で需要がなくなってしまったこともあり、改めて龍と自分たちの会社を作ろうということで2020年1月に起業しました。それが27歳の時ですね。

――20歳から27歳まで、短い間にとても濃厚な経験をされたのですね!
柴田:改めて自分の歴史を辿ってみると、謎の道を進んでいますよね(笑)。純粋にIT系の会社に就職すればよかった気もしますが、どこかで起業したいという思いがあったのだと思います。一部の部品を作るだけの仕事はやりたくなくて、自分が作ったものが目に見える形で実際に使われ、繋がっていってほしい。当時からそんなことを考えていました。
オンラインのコミュニケーションプラットフォームを制作
――現在の事業内容を教えてください。
柴田:メンバーは僕と沖縄時代に知り合ったエンジニアの龍、もう1名は実業家としての実績を持つ高橋という3人の代表取締役制で会社を運営しています。
現在行なっている事業は、主にITのエンジニアが使う「Tender」というオンラインのコミュニケーションプラットフォームの制作運営です。最近だとリモート接客やオンラインセミナー、ライブコマースのようなオンラインを主体としたサービスが増えていますよね。そうしたものにZoomが使われることが多いのですが、余分な機能が備わっていたり、思うようなコミュニケーションが取れなかったりすることも。そこで「Tender」を使うことでZoomの機能を自動化し、より自由にサービスや製品をカスタマイズできるようなインフラを整えています。
他にはオンライン自習室「どこでも自習室」というものを提供しており、個人塾を中心に学生の学習効果を高められるとして支持をいただいています。これはオンラインで自習室という学びの場を提供するサービスで、生徒が自主的に勉強することを促し、家庭学習のサポートができるというもの。学習場所が家や塾などの一部に限られないため、生徒たちは自由に集中して学ぶことができます。
こうしたシステムの開発や販売だけでなく、受託の案件を受けることも多いですね。クライアントの要望通りに作ることもあれば、相談を受けて一緒に開発することもあります。
いずれのシステム開発の根底にあるのは、コミュニケーションをより良くしたいという思い。僕らはデジタルなコミュニケーションをより良くするために「Tender」を作ってはいるのですが、オフラインのコミュニケーションもより良いものにしていきたいと考えています。

――社名の「HANATABA」の由来を教えてください。
柴田:共同経営者の龍と初めて考えた「HANATABA」というWEBサービスが元ではありますが、情報を集めるといった意味も含まれています。何より初心を忘れないように、最初に考えたサービス名を社名にしました。
人と人との関わり、仕事の繋がりが自身の資産に
――起業するにあたって心がけていることや、気をつけていることはありますか?
柴田:得意なことは手放さないこと。起業のためにこれまでやってきたことからジャンプすることは必要ですが、実績を積んできたこと自体はやり続けた方がいいと思っています。僕は自分がやりたいシステムやサービスの開発に携わりつつもクライアントの意向に寄り添う受託案件もこなしてきたので、今でもそれは続けています。起業のためにリスクを背負わないようにとは気をつけていました。
――起業してよかったと感じたエピソードはありますか?
柴田:広い意味で"資産"が残っていくことが面白いと思います。フリーランスの時は製品を納品して終わりということが多かったのですが、会社をしていると仲間ができてクライアントも増えて人と人との関わりが続き、新しい仕事へと繋がっていくことが多いです。そうした繋がりが価値や売り上げになり、関係性がストックできることは自分たちの資産になっているので、起業して良かったと思えます。
――福岡を拠点に起業するメリットはありますか?
柴田:北九州市に「COMPASS 小倉」があること。とてもお世話になっていて、実は起業した1年目に解散しようと話していた時期もあったのですが、「COMPASS 小倉」の手厚いサポートで乗り越えることができました。
――今後の展望を教えてください!
柴田:短いスパンの展望ですが、現在は遠隔接客のニーズが多いので、その分野のシステムを提供していきたいと思って取り組んでいるところ。どの業界も人手不足が叫ばれる今、人に変わって接客対応できるAIサービスをもっと展開していきたいですね。僕たちはコミュニケーションにフォーカスしている会社なので、その部分をAIでより良くしていきたいと思っています。
株式会社HANATABAについて
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

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福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。