多様な生き方や働き方が広がりつつある現代。企業にはこれからますます、さまざまな人が働きやすい環境を整えることが求められます。社員の働きやすさを叶える企業の取り組みとは? この連載では、実際に働き方改革に積極的に取り組む企業で働く人や経営者にインタビュー。今回は、建設・土木分野の総合事業を展開する福岡市の林ホールディングズ株式会社と、グループ企業の飯盛運輸株式会社を取材しました。
※ここで紹介する企業は私募債発行に際してSDGsに資する取り組み、中でも働き方改革を積極的に行うことを要件に取り込んだ、西日本シティ銀行が提供する、次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」を発行している企業です。※私募債についてはこちら
社員インタビュー
飯盛運輸株式会社 西日本物流事業部(2023年入社) 後藤 尚暉(ごとう なおき)さん
Q:この会社を選んだ理由を教えてください。
福岡大学の経済学部で学び、まだ業界を絞らずに就職活動をしていたところ、合同説明会で出会ったのが飯盛運輸でした。説明会で緊張していたところ、人事の方に明るく優しく声をかけてもらって好印象を持ちました。話を聞いてみると、物流事業部には若手が少ないので、跡を継いでくれる人を探していると知り、ここで頑張ってみたいと思いました。
転職を繰り返してステップアップするより、ひとつの会社で成長して貢献したいという自分の考えに合っていたからです。キャリアについて相談できる「しごと相談室」が社内にあることも後押しになりました。
Q:会社の事業内容と、後藤さんの担当業務を教えてください。
弊社は生コンクリートの輸送に特化した物流会社で、生コンの輸送車を約250台保有し、全国各地に拠点があります。生コンを工場から工事現場に運ぶことをミッションとし、お客さまから注文を受けて配車する事務職と、車で運ぶドライバー職という2つの職種があります。
私は2023年4月に入社し、西日本物流事業部に配属されて8か月経ちました。現在は受注業務をメインで担当しています。また、9月に大型自動車免許を取得したので、ドライバーとして配送業務を行うこともあります。
Q:入社して、会社の良さはどんなところだと感じますか?
挑戦させてもらえる環境がありがたいと思っています。受注業務をやってみると、ミキサー車からどんな方法で生コンをおろすのか、どのくらい時間がかかるのかなどがリアルに分からず、お客さまやドライバーさんにとって最適なスケジュールを組むのが難しく感じられました。
もちろん周りの方に聞けば丁寧に教えてもらえるのですが、自分がドライバーを経験すれば注文を受けるときに必ず役立つと思い、上司に「大型免許を取りたい」と相談しました。すると「いいよ、会社がお金を出すから取っておいで」と快諾。社内規定では、本当は入社後1年経たないと支援金の対象にならないのですが、「自分が保証人になるから大丈夫」と上司が融通をきかせて対応してくださって、社員の思いを大切にしてくれる会社だと実感しました。
また、社員の皆さんが気さくに話しかけてくれて、「会社はどう?」と気にかけてもらったり、「これから会社をもっと良くしてね」と期待をしてくださり、とても温かい職場です。
Q:業務でのやりがいや嬉しかったことを教えてください。
皆さんからいただく「ありがとう」の言葉が励みになっています。例えば、これまではドライバーさんが足りないと受注できなかったのですが、私が大型免許を取ったので「自分が乗って行きます」と伝えると、お客さまにとても喜ばれますね。
ほかにも、お客さまの要望に少しでも応えたくて工夫して対応したら、後々まで「後藤さん、あのときはありがとう」と感謝の言葉をいただくことが増えてきました。会社で別の方が電話を取っても、「後藤くん、いますか?」と指名されることも出てきて、やりがいを感じています。
Q:職場の環境はどうですか?
まだ仕事を覚えている段階でもあるので、残業はほとんどなく、きちんと休みを取ることができています。月のカレンダーに休みの人の名前が書かれていて、名前がない人には「ちゃんと休めてる?」と声を掛け、みんなで気遣い合えるのがいいなと思います。
Q:今後の目標を教えてください。
まだ入社1年目で学ぶことばかりですが、少しずつ成長できていると思います。今は目の前のことを一つずつ深く理解しながら、いろいろな業務を担当して幅を広げていきたいです。全ての業務にしっかり精通して、会社の未来を担っていけるように精いっぱい頑張ります。
幹部インタビュー
飯盛運輸株式会社
取締役 西日本物流事業部 統括責任者 濱本 守(はまもと まもる)さん
2003年にキャリア採用で入社。ドライバーや配車業務を経て、生コン輸送事業のマネジメントに従事。2019年に取締役就任。
Q:この会社に入社された理由を教えてください。
業務提携していた前の会社が縮小するとのことで、飯盛運輸から声がかかり2003年に入社しました。
Q:入社されて20年、会社に変化がありましたか?
はい、会社を永続させるという理念のもと、フェーズが変わってきたと思います。20年前は会社を成長させるために売上や利益を追求して、どんどん走っていました。それから、永続するためには人材の育成が大切ということで、教育に力を入れるように。
さまざまな研修に加えて、2017年からは林会長が「会長塾」を開講しました。会長が全国の拠点を訪問して、創業の精神や企業理念、おかげ様経営などを社員一人ひとりに伝えています。会長は会社や自分のことをさらけ出して話すので、社員は腹落ちして共感し、会社や仕事への意識が確実に高まっています。
Q:社員はどのように変わりましたか?
自分のことだけでなく、会社や仲間のことまで考えてくれるようになりました。1,000年先まで会社を存続させるためには、今ここで基礎を作っておかないといけないとか、自分たちの給料を上げるためにはこれが必要など、みんなが広い視野を持っていろいろなことを話すようになりました。
幹部の私としては、風通しのいい働きやすい会社を目指して、社員から出てきた提案を決して否定せず、目線を合わせて実現するためにできることを一緒に考えていくように心がけています。
Q:会社と社員がお互いを尊重し合っているのですね。
林会長が自ら動くタイプなので、社員もついて行こうと思うのでしょう。例えば、会長は全国の生コン団体の委員を務めた経験もあって顔が広く、2011年の東日本大震災では復興にあたって手が足りないので助けてほしいと相談がありました。
すると会長自身が2年間東北に滞在し、ミキサー車に乗って仕事をしていました。自社の経営を遂行しつつ、ドライバーとしても一生懸命働かれていたと、現地の方から聞きました。トップのそういう姿や人柄を見ているから、社員も頑張るのではないかと思います。
それに「従業員幸福企業」を理念に掲げていて、物価が上昇した昨年は特別支援金が支給されて、子どもの保育園や進学、家族の介護、資格取得などにも支援金が出ます。社員への思いを言葉だけでなく支援金という形で表されていることも大きいと感じます。
Q:最後に、御社で働く魅力を教えてください。
1,000年永続する企業を目指して、一人ひとりが仲間とお客さま、家族を大事にしながら働いています。会社の規模が大きくなっても、アットホームな雰囲気の職場で、自分の思いを口にしながら、のびのびと働くことができますよ。
トップインタビュー
林ホールディングズ株式会社
代表取締役 林 宗一(はやし むねかず)さん
福岡出身。福岡大学を卒業後、1980年野方菱光株式会社に入社。1991年に34歳で経営を継承してグループ会長に就任。2008年グループをホールディングス化。現在は後継の育成とグループ事業の拡大に向けて精力的に活動。
土木・生コン・運輸を柱として
12のグループ会社で全国に事業展開
当社は建設・土木分野の総合事業を営む林グループとして、事業別に12のグループ会社で構成されています。土木、生コン、運輸を3つの柱として、九州を中心に全国で事業を展開。グループ全体で社員は約480名、売上は95億円を超えました。
当社の始まりは1963年、土木業に従事していた父が独立して立ち上げた林組にさかのぼります。当時、父は31歳、私は5歳でした。まずは土木事業を始めて、そこで出た利益でミキサー車を買い、工場に生コンを取りに行って販売する事業を始めました。
福岡市西区小戸の下水処理場で小さな生コンプラントを使い終わって廃棄すると聞き、それを買い取って、父と大学生の私で組み立てたのを覚えています。公共工事に関わるためにはJISマークが必要で、25歳だった私は事業計画書を書いて銀行からお金を借り、必死に勉強して品質管理責任者の資格を取り、無事にJIS認証を受けることができました。それから会社が成長して、私は34歳で父から経営を継承しました。
みんなで夢を語り実現する
「全員参加型経営」に取り組む
これまで会社を存続できたのは、お客さまや関わってくださった方々はもちろん、一番は社員のおかげだと思っています。私自身は大したことをした覚えがなく、幹部を含めて社員一人ひとりが会社の方針を理解して仕事に向かい、成長してくれたことで、会社も成長することができました。
林グループはSDGsに積極的に取り組み、全社「子育て応援宣言」をして、働き方改革も進めています。建設関連の仕事はお客さまの現場ありきで、自分たちの都合で休みや労働時間を決めるのはなかなか難しいのですが、各事業に合わせて給料や働き方を考えていく必要があります。
もともと林グループは「自律自走」を進めており、2023年の今期は「自治」を加えて、「全員参加型経営」を掲げています。事業部ごとに自分たちの職場は自分たちで作ろうと、社員みんなでワイワイガヤガヤと雑談のように大きな夢を語り、それを膨らませて、どうすれば実現できるかを話し合ってもらっています。
社員がワクワクする夢を出しても、幹部が無理と言ってしまうと一気にしぼむので、幹部は出てきた夢を実現するために知恵を絞りアドバイスをして、リードする旗振り役になってほしいと伝えています。
1,000年続く企業を目指して
明るくプラス思考で挑戦
2017年から「会長塾」と題して全国の拠点を訪問し、会社の理念や目標、自分の思いなどについて社員全員に直接話をしてきました。私自身はあと2年半、2025年に会社を卒業して会長を退くと宣言しています。23歳で会社に入り34歳で経営を任されて、ものすごい重圧を感じながらも関わってくださった皆さんのおかげで会社を続けてくることができました。
「私たち林グループは、社会的存在価値を認められ、常に必要とされ続ける永続企業になることを目指します」という企業理念にある通り、私たちは1,000年永続することを目標にしています。そのためには、経営者はもちろん社員一人ひとりが自ら考え行動し、時代の変化に対応すべくプラス思考で挑戦し進化していかなければなりません。これからも私たちは人を大切にしながら、力強く前進していきます。
フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。