インタビュー

起業のキッカケは自身のルーツに。焼酎の魅力を女性に発信する焼酎プロデューサー | Harmonik 黒瀬暢子さん

By 山本佳世

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2021.12.23
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人は「十人十色」と言われるように、起業のかたちも人それぞれ。「MY FOUNDING STORY」シリーズでは、さまざまな企業の創業ストーリーを紐解き、これから起業しようとしている方々の参考や励みにしてもらいたいと考えています。

2000年代前半の本格焼酎ブーム到来により、これまで主流であった麦焼酎に加え、芋焼酎の市場が拡大し焼酎ファンも多く見受けられるようになりました。しかし、まだまだ女性の中には「焼酎が苦手」という人も少なくないようです。

そんな女性に焼酎の魅力を伝えているのが、今回ご紹介する黒瀬暢子さん。"焼酎プロデューサー"として「焼酎女子会enjoy!」を主宰し、商品のプロデュース、講演会など、幅広い活動を通して女性に焼酎文化を広めています。3年前までは焼酎を一滴も飲んだことがなかったという黒瀬さんの焼酎との運命的な出会いから始まる創業ストーリーをお届けします。

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■プロフィール
合同会社Harmonik 代表
黒瀬暢子(くろせのぶこ) 

福岡県遠賀郡出身。早稲田大学を卒業後、株式会社サンリオに入社。海外でモノづくりを行う会社に勤務。2020年に起業し、2021年1月に東京から福岡に拠点を移す。焼酎プロデューサー(商標登録)として活動。

焼酎の魅力を女性に伝える焼酎プロデューサーとして活躍

――まず、合同会社Harmonikとしての活動内容を教えてください。

黒瀬:焼酎が苦手な人、特に女性に焼酎を身近に感じてほしいという目的で「焼酎女子会enjoy!」を主宰しています(2019年から開催して2021年12月現在97回実施)。その他には焼酎に関する講演会に登壇したり、焼酎のプロデュースをしたりすることもあります。2019年には宗像市で福岡産のあまおう(いちご)を使った焼酎ベースのリキュール「宗像三女神あまおうリキュール」の商品開発に携わりました。

実は"焼酎プロデューサー"は商標登録をしているので、名乗れるのは日本で私一人だけなんです。"プロデューサー"というと商品のプロデュースをするイメージがあるかもしれませんが、私の場合は"世の中と焼酎をつなげる"ことも目的としています。むしろ使命感とも思っていますが、そこは後ほどお話ししますね。

――活動の中でも、「焼酎女子会enjoy!」が興味深いです。具体的にどういった内容の会なのでしょうか?

黒瀬:その名の通り女性限定で焼酎を楽しんでもらう会になります。当初は飲食店に集まっていただき対面で開催していましたが、新型コロナウイルスの影響でオンラインに切り替えました。焼酎が好きな方はもちろん、興味がない方にも楽しんでいただけるように毎回焼酎以外の専門家を迎えて、それに私が焼酎を組み合せたトークをするようにしています。

例えばアロマテラピーの先生を招いた時には、一部の芋焼酎に含まれる香りにはアロマと同じ成分が含まれている…というような話をしたり。できるだけ女性に興味を持っていただけるような内容にしています。
世の中の状況を見ながら少しずつリアル開催も増やしています。中洲人形小路にある焼酎バーを貸し切りで開催したところ、あっという間に満席になりました。オンラインにはオンラインの良さがあり、リアルにはリアルな交流の良さがあります。みなさん、リアルの場での交流も待ち望まれていたんでしょうね。大手ホテルや博多の飲食店とコラボで開催する焼酎女子会の企画も進んでいます。

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▲オンライン焼酎女子会enjoy!50回記念の写真

――やはり焼酎が好きだから、プロデューサーになられたのですか?

黒瀬:いえいえ、実はこの活動をする3年前までは焼酎を1滴も飲んだことがなかったんですよ。お酒が苦手ではないのですが、飲む習慣がなかったんです。東京で暮らしていた時にたまたま、自分の苗字が屋号に付いた焼酎バーに行ったことで焼酎と出会って。

そしてSNSにそのお店のことを投稿したところ、「黒瀬さんは名門の出なんですね」というコメントがあったんです。全く心当たりがなくて「名門ってどういうこと?」と親に尋ねてみると、自分が「黒瀬杜氏(くろせとうじ)」の末裔ということを知りました。

伝説の「黒瀬杜氏」の末裔であることを知り、現在の道へ

――杜氏、とはお酒を作る人のことですよね?

黒瀬:そうなんです。歴史を調べると、明治時代に個人での酒造りが禁じられて免許が必要となり、「職業としてお酒を造る人=杜氏」が現れるようになります。お酒といっても日本酒や焼酎がありますが、鹿児島や宮崎などの南九州地域は気温が高く、日本酒に必要な麹が腐敗してしまい日本酒造りには不向きでした。そんな中でも、鹿児島の南部にある"黒瀬"という集落の出身者の杜氏たちが黒麹を使った焼酎造りに成功し、安定供給ができるようになったんです。この地域出身の杜氏は「黒瀬杜氏」と呼ばれ、"焼酎造りのプロフェッショナル集団"として活躍するようになりました。私はその黒瀬杜氏の血筋を引く末裔であることが分かったのです。

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▲黒瀬杜氏集落から見える景色

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――杜氏の血筋であることが分かったから、プロデューサーを目指されたのですか?

黒瀬:家系の話を聞いても、最初は「本当かな?」と疑問に思っていたんです。たまたま叔父が江戸時代からの戸籍が分かる資料を持っていたので、それを元に家系図を作ってみました。その家系図を元に遠い親戚にも会いに行き、家系図を完成させてみたら歴代の杜氏の存在が分かって感無量になったんです。

そこで「焼酎に携わることは私の使命なんだ!」なんて勝手に思い込んで(笑)、これまで縁のなかった焼酎を飲み始める日々が始まりました。自分なりに味を分析して、SNSで「この焼酎はこんな味でこんな香りが魅力です」といった焼酎の情報を毎日発信するように。ここから焼酎プロデューサーの道が始まった…という感じです。

――本腰を入れて焼酎プロデューサーとして起業したキッカケは何だったのでしょう?

黒瀬:前職では中国や東南アジアで子どもの遊び場の企画デザインや玩具を作る仕事に携わり、そこで現地や日本の職人さんと一緒に仕事をしていたんです。その時に、日本の優れたモノづくり文化を目の当たりにして、この文化を伝える活動が何かできないかと思うようになりました。

東京の起業塾やコミュニティなどに通って模索していた矢先に、「黒瀬杜氏」の話を知ったんです。焼酎造りにも職人のモノづくり文化が継承されており、世界に誇れることだと確信したので、どうにか事業化できないかと考えたことが起業のキッカケです。

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――起業にあたりはじめに取り組まれたことは何ですか?

黒瀬:先程も少しお話しましたが、SNSでの情報発信です。「驚異の女子会ティラノサウルス」というコミュニティの勉強会でブランディングの相談をした時に「SNSに焼酎コラムを投稿してみたら?」とアドバイスいただいたことを受けて、毎日欠かさず焼酎情報を更新していました。投稿を続けて半年すると宗像市の焼酎のリキュールのプロデュースをしませんかと声をかけていただき、翌年2019年2月には第1回目となる「焼酎女子会enjoy!」を開催しました。SNSは個人のアカウントなのですが、自然に広がってたくさんの方に見ていただけるようになりました。SNSを見てお声がけをいただき、ラジオ出演や講演活動の依頼につながりました。

多くの人の支えと使命感を力に多彩な活動を展開

――起業された頃は東京にいらっしゃったようですが、なぜ福岡に拠点を移されたのですか?

黒瀬:福岡が地元ということもありますが、東京にいるよりも福岡の方が焼酎の酒蔵が多く集まる九州一円に移動しやすいからですね。コロナ禍で県をまたぐ移動が困難だった時期でもありましたので、そういうタイミング的にも福岡に拠点を構えてよかったと思っています。

加えて、福岡市の創業支援体制が充実していることも大きかったですね。現在入居している『Fukuoka Growth Next(以下、FGN)』ではスタートアッププログラムで経営やビジネスの基礎を学ばせていただきましたし、資金の相談やスポンサー企業の紹介などなど、手厚くサポートしていただいて本当にありがたく思っています。女性向けの焼酎の試飲会を開催する機会も提供していただき、それを通じていろんな蔵元の方と出会うこともできました。

▲焼酎の蔵元に協賛を呼びかけての試飲会

――福岡に拠点を移してますます活躍の幅が広がっているようですが、その要因は何だと思われますか?

黒瀬:起業塾やコミュニティなど、いろんな場所に顔を出してビジネスの話をたくさん聞いていたことが今に生きていると思います。自分の中にさまざまな選択肢を持つことができたので情報収集やコミュニティは大切だと思います。

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▲「驚異の女子会ティラノサウルス」のミーティング後
「驚異の女子会ティラノサウルス」・・・フリーランス、個人事業主、起業を目指す女性が楽しく学ぶをテーマに集まる女性向けコミュニティ

――起業に対して不安はなかったですか?

黒瀬:「安定した職を捨てて、何をやっているんだ」と言われたこともありましたが、起業できたのは、私の場合は勝手な使命感があるからこそ。根拠なき自信もあったので(笑)、会社を辞めて起業することに対して不安はありませんでした。

そもそも私はSNSを毎日更新するようなタイプではなかったんです。それを3年間欠かさず続けてこられたのは、「末裔として焼酎文化を広めないといけない」という強い使命感があるからこそ。3年前まで飲めなかった焼酎も、今では大好きになりましたよ。

――それでは、今後の展望について教えてください。

黒瀬:「焼酎女子会enjoy!」は2022年2月に100回目を迎えるので、それを機に本格的に事業化したいと考えているところです。具体的な内容は今詰めているところですが、九州の女性から焼酎の魅力を世界に広めていきたいと思っています。

インタビュー中、「使命感があるからこそ今の私がある」と何度も話してくれた黒瀬さん。ご自身のルーツを知り、「自分が焼酎を広めなければ」という想いを実践に移した行動力には目を見張るものがありました。起業を考える人に向けて「家系を調べてみると意外な発見から今後の道が開けるかも」というアドバイスも。自身のルーツを調べてみるのも起業のきっかけになるかもしれません。

合同会社Harmonikについて

■会社概要
会社名:合同会社Harmonik
URL:http://kurose-n.com/
所在地:福岡県福岡市中央区大名2-6-11
設立:2019年
代表:黒瀬暢子

■事業内容
焼酎女子会enjoy!主宰
講演会活動
女性向け焼酎プロデュース

■問い合わせ先
Mail:nbkspx@live.jp

お知らせ

Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

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