福岡市の海辺に2つの拠点を置くITベンチャーのホライズンテクノロジー株式会社。「未来の世代に“強い日本”を取り戻す」をビジョンに掲げ、テクノロジーを活用したクライアント企業の新規事業立ち上げ支援や、自社サービスの開発を行っています。代表の大谷祐司さんは複数の大手企業でキャリアを積み、福岡に移住してこの会社を立ち上げました。一般的なITスタートアップとは一線を画す、同社の事業内容や経営哲学などを聞きました。
■プロフィール
ホライズンテクノロジー株式会社
代表取締役
CTO 大谷祐司さん
山口県下関市出身。東京の大学を卒業後、SIer(エスアイアー:システムインテグレーター)としてキャリアをスタートし、株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルート)で新規事業の立ち上げ、株式会社サイバーエージェントのネット広告部門で開発組織の立ち上げ、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)でDX推進や新規サービスの立ち上げなどを行う。2017年福岡に移住して株式会社スカイディスクのCTO、2018年株式会社サーキュレーションの取締役CTOに就任。2022年に独立してホライズンテクノロジーを創業し、代表取締役に就任。
技術を極めながら、幅広く価値提供するために起業
――大谷さんは学生の頃からITやシステムを勉強されていたのですか?
大谷:いえいえ、高校でバンド活動にハマり、東京の大学では文学を専攻しつつ、バンド活動に力を入れていました。就職活動でたまたまご縁があったのが東京のシステム開発企業で、入社後にプログラミングを学び、SEとして4年ほど働きました。仕事の傍ら、個人でシステムを作ってネット上に公開したところ、サイバーエージェントの方から連絡をいただき、売却することになりました。
――偶然めぐりあったシステムの仕事が向いていたと。
大谷:そうですね。それから株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルート)の知人に声をかけてもらい、新規事業の立ち上げを経験。株式会社サイバーエージェントに転職し、ネット広告部門の開発組織を立ち上げ、子会社の技術責任者も任されました。
一般向けのBtoCのサービスを作りたいと思い、2013年人材会社の株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)へ、一人目のエンジニアとして入社しました。それから福岡のベンチャーでCTOを打診されたのを機に、2017年に家族で福岡に移住してきました。その後、株式会社サーキュレーションの取締役CTOなどを歴任しました。
――大手企業でキャリアを積んでこられたのですね。2022年に独立されたのは、以前から起業したいという思いがあったのでしょうか?
大谷:実はあまり考えたことがありませんでした。ただ、それまで複数の会社でCTOや新規事業の立ち上げを経験し、前職では副業で技術組織づくりの相談を受けることもあったので、1社にコミットするより起業した方が幅広い組織に対して価値提供できると考えて、起業に至りました。
――なぜ福岡に移住されたのでしょう?
大谷:ずっと東京で働いてきて、環境を変えてみたいという気持ちがありました。福岡は地元の下関から近く、スタートアップが盛り上がってきていたので移住を決めました。在籍していた企業で管理職になる道もあったのですが、私自身は新しい技術がどんどん出てくる中で、技術者としてもチャレンジし続けたいと考えました。
テクノロジーを活用した新規事業の創造を支援
――会社の事業について教えてください。
大谷:「未来の世代に“強い日本”を取り戻す」というビジョンのもと、新規事業を生み出し、新たにチャレンジできる組織をたくさん作ることを目指しています。
メインの事業は、企業の新規事業・DX支援で、テクノロジーを活用して企業のイノベーションを支援しています。ものづくりに限らず、組織文化の変革やセールス・マーケティングなど、幅広い支援を行っています。
また、世の中の課題を解決するための自社サービス開発、AIなど最新技術を活用したサービスの開発なども行っています。自社サービス開発においては若手を積極的に登用し、今では学生エンジニアもたくさん活躍してくれています。
――クライアントはどのような企業でしょうか?
大谷:上場企業やグローバル企業、スタートアップまで幅広いお客さまがいます。今のところ100%紹介の直接取引のみでやっています。新規事業や上場支援、組織構築、ウェブサービスのアドバイスや開発など、関わり方もいろいろです。デロイト
トーマツ
エスピーアイ株式会社と共同で広告監視サービスを開発したり、バスソルトのD2Cなど自社で開発したサービスもいくつかあります。
当社では、やらないことを明確にしています。ただの技術者派遣やルーチンの保守運用など、私たちが介在することで組織や社会変革をもたらさない案件、クライアントと強いパートナーシップを組めない案件などは、相談をいただいてもお断りしています。
――2022年に会社を立ち上げて、今では海が見えるオフィスが2つあるのですね。
大谷:独立した当初は積極的なメンバー採用をするつもりはなく、東京の企業を中心にお声がけいただいた技術顧問の仕事をやっていました。1人目の社員を採用したのが2022年10月。事務のアルバイトを探していたのですが、応募してくれたのがとても優秀なかたで、社員として採用することに。彼女は入社してすぐに新規事業を立ち上げて、今はエンジニアとして働いてくれています。それからはいい人との出会いがあれば採用したいと思うようになり、今では社員と役員で13人、アルバイト10人、業務委託7人になりました。
――どんな世代や職種のメンバーがいるのでしょうか?
大谷:幅広い世代の方が活躍していて、女性もたくさん活躍しています。職種はエンジニアやプロデューサー、ディレクター、デザイナー、広報、人事など幅広い能力を持ったメンバーが活躍しています。
おかげさまで多くの案件相談をいただいていて、もっと急速にメンバーを増やすこともできると思います。しかし当社では急拡大は目指さず、本当にいい人がいたら採用することを心がけています。これまでの経験から人のポテンシャルはすごく大きいと思っているので、いいなと思ったら未経験で採用することもあります。そして採用の際は、当社のカルチャーにマッチするかを重視しています。
お互いに助け合う、ポジティブ、チャレンジ精神がある、視点を高く持つ、成長力が高いといった基準を設けていて、多くのポジションでは選考にあたり、面接だけでなく課題の提出をお願いしています。
メンバーファーストで、挑戦を通じて成長していきたい
――御社の強みを教えてください。
大谷:新規事業で対応できる範囲の広さでしょうか。社内には、様々な役割で新規事業の立ち上げを経験したメンバーが多く在籍しています。サービスの企画からリサーチ、事業性評価、システム開発、マーケティング、事業計画の策定など、幅広い領域で新規事業を推進できます。また、私をはじめ、さまざまな分野で経験を積んだエンジニアが在籍しているため、柔軟な発想で課題の解決策を提供できます。
――福岡で起業したメリットはありますか?
大谷:とても働きやすいですね。この海辺のロケーションもありますが、関東のような通勤ラッシュがなく、自転車で通勤してくるメンバーもいて、落ち着いて働けます。それに、福岡でチャレンジして行きたいという思いを持った、とてもいい仲間が集まっています。
――全国的に人材がいないといわれる中で、御社にはなぜいいスタッフが集まるのでしょうか?
大谷:多くの会社は、会社の成長や売上や利益を最優先に考えていると思います。一方、私たちはメンバーに成長の機会を提供することを最優先に考えています。メンバーが成長することで一人一人の発揮できる価値が向上して、それが事業成長に繋がっていくと信じているからです。
これまでいろいろな会社に関わってきた経験から、みんなが安心して働けるいい会社を作り、しっかり利益を出しながら堅実に会社を成長させていきたいという思いが強いです。私たちは急成長するスタートアップでなく、ゆっくりでも着実に、安定的な成長を目指しています。ただし、決してぬるい環境でありたいわけではなく、みんながスキルを磨き、価値のある新規事業を創造し、楽しくワクワクする仕事を作り、僕らも挑戦を通じて成長していきたいと思っています。
――今後の展望についてお聞かせください。
大谷:ホライズンテクノロジーは、明確な売り上げ目標を追いかけていません。会社として無理な急成長を狙っていませんし、何年後に何人規模になるというような目標も立てていません。メンバーに成長機会を提供し、育っていくことでより大きな仕事にチャレンジできることを目指しています。
弊社には、日本を代表するAWSエンジニアの二橋宣友さんが技術顧問、元LINEヤフーの佐藤祥子さんが技術広報アドバイザリーを務めてくれています。そのようなトッププレイヤーと接することができる環境で、メンバーが育ち会社の芯が強くなると、世の中により大きなインパクトを与えられる仕事ができるようになるはずです。社内外で新規事業にチャレンジできる人が増え、成長していって欲しい。そして、子どもたちの世代が大きくなる頃には、競争力のある強い日本を取り戻すことができればいいなと思っています。
何事もチャレンジしないと始まりません。当社は、新しいチャレンジが出てきたときに、やりたいと手を挙げてくれるメンバーがたくさんいます。私自身が現役のエンジニアですし、メンバーのチャレンジはしっかりサポートしていきます。これからも私たちは失敗を恐れずアジリティをもって、未来の日本のために楽しみながらチャレンジしていきます。
ホライズンテクノロジー株式会社について
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817
◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」
フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。