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ICT教育とは?学習指導で導入するメリット・デメリットとその効果を解説

By 澤田 真里奈

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2022.11.09

全国の小中学校では、ICT教育への取り組みが行われています。この記事ではICT教育とは何か、メリット・デメリットを含めて解説します。記事の最後にはICT教育の今後の課題についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

ICT教育とは

ICT教育とは、パソコンや電子黒板、インターネットなどの情報通信技術を教育に活用する取り組みです。デジタルがすっかり普及した現代では、日常生活や仕事において最低限のITリテラシーが求められます。そのため、教育現場でICT教育を導入し、ITリテラシーの向上や次世代のデジタル人材の育成が目指されています。

ICT教育とは何か理解を深めるために、まずはICTの意味について見ていきましょう。

ICTの意味

そもそもICTとは「Information and Communication Technology」を略したもので、和訳すると情報通信技術となります。身近な例でいうとスマートフォンでSNSのやり取りをすることや、ECサイトで買い物することなどもすべてICTのひとつです。

似た言葉としてITがあり、この2つの言葉に大きな違いはありません。捉え方の違いをしいて挙げるなら、ICTは人とのコミュニケーションや伝達を行うことに重点を置いているといえます。

IoTとの違い

IoTも、ICTに似た言葉として挙げられます。IoTは「Internet of Things」の略であり、和訳するとモノのインターネットという意味です。IoTは、モノがインターネットに繋がっている状態やその技術を指します。

スマートフォンやパソコンは、IoT機器のひとつです。また、家電や住宅のIoT化も普及しており、次のようにあらゆるものがインターネットに繋がっています。

  • 冷蔵庫

  • 洗濯機

  • テレビ

  • 太陽光パネル

  • 玄関の鍵

  • シーリングライト

ICT教育のメリット【教員・生徒別】

パソコンやインターネットなどのICTを活用した教育方法は、どのようなメリットがあるのでしょうか。ICT教育は授業内容そのものが良くなるだけでなく、長期的な目線で考えても教員と生徒両方にメリットがあります。

ここからは、教員と生徒のメリットをそれぞれ紹介します。

教員のメリット:充実した授業ができる

ICTを活用すれば、授業内容をより良いものにできます。ICTを活用しない授業では板書や口頭、教科書による説明のみになります。説明する事柄によっては、イメージするのが難しかったり、複雑で理解しにくかったりする内容もあるでしょう。

そこでICTを活用し、画像や動画、図解などを見せれば生徒の理解を促せます。生徒の理解が早まれば、順調なペースで授業を進められます。

教員のメリット:授業準備が効率化する

効率的に授業準備ができ、教員の負担が軽減する点も大きなメリットのひとつです。ICTを活用すれば膨大な紙の資料やメモをデータとして保管でき、授業に使用できます。

前年度分の指導書やクラスごとの成績結果をデータ化・グラフ化し、今年度の授業改善案に繋げることも可能です。

また、担任を受け持っている場合は、保護者とのやりとりもICTで効率化できます。欠席確認ができる連絡アプリや、保護者アンケートがとれるアンケートフォームなどが各所で導入されています。

教員のメリット:教員間での資料共有がしやすい

紙ベースだと劣化したり配布が難しかったりする資料なども、デジタルデータなら扱いやすくなります。

以下は、デジタルデータの共有例です。

  • 研修会でもらった指導書を、PDF化して教員全員へ送信

  • 授業用のエクセル表を、同科目の教員と共同利用

デジタルデータは共有しやすいだけでなく、指導技術や知識といった財産として残り続けます。また、手直しすれば常に新しい内容にアップデートでき、翌年度以降も使えて便利です。

生徒のメリット:授業が理解しやすくなる

ICTを活用すれば、授業の理解度が上がります。教科書や先生の説明だけでは分からない内容を、補足画像や補足動画などを見ることで理解が進むでしょう。

また、ICT教育の一環として、生徒の理解度をグラフ化したりアンケートを取ったりする取り組みがあります。理解度を可視化することで、教員は生徒に必要な指導方法や、改善案を考えるきっかけができます。ICT教育で授業の質向上の仕組みが作られるため、結果的に生徒の理解が促されるのです。

生徒のメリット:学習へのモチベーション向上に繋がる

「授業の内容を理解できない」「先生に質問しづらい」という生徒は、学習へのモチベーションが低くなってしまいます。

発言するのが難しい生徒も、タブレット上では気負いなく回答や質問できる場合があります。また、ときにはクラス全体でアンケートや投票システムなどを、タブレットを使って楽しむことも可能です。

このように、授業内容の幅や工夫できる点が増え、生徒のモチベーション向上に繋がるでしょう。

生徒のメリット:情報リテラシーを養える

生徒はパソコンやタブレット、インターネットなどの通信技術を通して情報リテラシーを養えます。スマホやパソコンに直接触れる機会がないと、怪しいサイトの見分け方や個人情報で注意すべき点などを学ぶ機会が少なくなります。

学校で情報リテラシーを学べる場を用意することで、情報漏えいリスクやサイバー攻撃など必要なリテラシーを身に付けられるのです。

ICT教育のデメリット【教員・生徒別】

基本的にICT教育はメリットの方が大きいです。しかし、少ないながらもデメリットは存在するので、把握したうえでICT教育の改善に繋げましょう。

ここからは、教員と生徒別のデメリットをそれぞれ紹介します。

教員のデメリット:情報リテラシー向上が必要で負担になる可能性がある

ICT教育は、教員自身の情報リテラシーが求められます。

ICT教育ではデジタル機器やインターネットなどを活用するため、教員自身が使い方を分かっていないと生徒に教えられません。従来の紙ベースで行う授業に慣れている教員や、そもそもデジタルが得意ではない教員にとっては、その点が負担になりうるのです。

知識を学ぶ場やサポート体制を整えるなど、情報リテラシーが不足している教員の負担を軽減する策が求められます。

教員のデメリット:端末管理やエラー対応などの負担が生じる

教員には、タブレットやスマホなどの機器管理や、エラーが出た際の対応といった新たな負担が生じます。特にエラー対応については、その場でエラーが直らない可能性も考えられるでしょう。そうなると授業に遅れが生じ、教員は授業計画の変更や調整が必要となります。

エラー対応をスムーズにするには、ナレッジを蓄積しておくことが大切です。起こり得るエラーについて、マニュアルの整備や教員間で対応方法の共有をしておきましょう。

生徒のデメリット:想像力や書く能力が衰える可能性がある

生徒にとってのデメリットは、想像力を養う力や書く能力が衰える可能性がある点です。聞いた言葉や限られた情報から自分なりの答えを見つけることは、ひとつの想像力といえます。しかし、ICT教育では理解を促すために画像や動画などを使うことがあります。そのため、想像力を働かせる前に答えを得てしまうことがあるでしょう。

また、タブレットを使ったタッチ操作や手書き入力が多くなり、筆記具で書く機会が減る可能性があります。これは大人にも言えますが、デジタル入力に慣れて字が下手になったり、漢字の書き方を忘れてしまったりする弊害が考えられます。

ICT教育の具体例

ICT教育ではタブレットやインターネットを使うイメージがありますが、実際どのような形で授業が行われているのでしょうか。

ここでは、ICT教育の具体例を4つ紹介します。どの学校でもトライしやすい内容なので、参考にしてみてください。

プロジェクターや電子黒板で板書時間を短縮

国語では教科書の文章を書き写し、解説や記号を付けることがよくあります。

ある学校ではテキストをPowerPointや画像にしたものをあらかじめ作成し、プロジェクターで投影する取り組みを行いました。板書時間を軽減できたことで、生徒の活動時間をより確保でき、授業自体がアクティブになったとされています。教員にとっても、一度プロジェクター用に資料を作成しておけば、別のクラスの授業にも利用できるので非常に便利です。

Web会議システムを使った国際交流

ある小中学校では、ビデオ会議用ツールやPowerPointを導入し、国際交流の時間を設けました。姉妹校である海外の日本人学校とビデオ会議を繋ぎ、生徒同士の自己紹介やクイズなどを実施しました。お互いの地域の有名な食べ物や建物などを調べ、PowerPointにまとめて発表する「調べ学習」も行なっています。

日本人学校との交流なので言語的なハードルはなく、かつ日本の子ども達にとっては海外文化を知る良いきっかけになったでしょう。

シミュレーションソフトで天体観察

ある小学校では、シミュレーションソフトを使った天体観測を行いました。

教科書の画像以外で星座を学ぶには、プラネタリウムへ行く方法があります。しかし学校によっては、クラス全体でプラネタリウムへ行くのが難しいこともあるでしょう。

そこでシミュレーションソフトを導入し、実際の天体図や星座を大画面モニターで学べるようにしたのです。天体図や星座をただ観察するだけでなく、時間による星座の位置変化に関する課題にも取り組み、生徒の主体的な学習を助けています。

タブレット端末による学習(GIGAスクール構想)

GIGAスクール構想で1人1台のタブレット配布により、生徒の積極的な授業参加に繋がった例もあります。

従来の授業の場合、発言する生徒が限られたり、人前だとうまく話せなかったりする生徒もいます。そこでタブレット上で回答を提出する仕組みを取り入れ、1人1人の生徒が授業に参加しやすいようにしました。

タブレットでは、回答共有によりお互いの意見を見ることが可能です。生徒に異なる価値観が芽生えたり、お互いの新たな一面に気付いたりするきっかけにもなります。

ICT教育における今後の課題

ICT教育が本格的に始まったことで、今後の課題なども見えてきました。国や教育現場が一体になって取り組むべき課題や、民間サービスの質向上により負担軽減できる課題などがあります。

ここではICT教育の3つの課題について紹介します。

ICT環境の地域格差をなくす

ひとつ目の課題は、ICT環境の地域格差を少なくすることです。

児童生徒数1人当たりのPC・タブレット普及率は、ここ数年で大差はなくなりました。しかし、学校のインターネット環境についてはまだ地域差があるのが現状です。全教室に無線LANの整備が完了済みの学校、有線LANのみで無線LANの整備が進んでいない学校など状況はさまざまです。

政府の調査資料でも地域格差は示されています。無線LAN(1Gbps以上)の普及率はもっとも低い山口県が6.2%に対し、もっとも高い三重県は89.1%です。

出典:文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果 (令和3年度)

教育委員会と教育現場の認識のズレを減らす

ICT教育の利活用が進む中、教育委員会と教育現場での認識のズレが問題になることもあります。教育委員会では、タブレットの現場普及やインターネットの整備など、ICT教育に必要な環境を整えるのが目的のひとつです。

しかし、教育現場では与えられたICT環境をどのように活かすかが大きな課題です。学校によってはまだ基盤が固まっておらず、教育委員会が望むようなICT教育の利活用が進んでいません。教育委員会と教育現場それぞれの課題を互いに把握し、認識のズレを減らしながらICT教育を進めることが求められます。

教員・指導者の環境を整備する

ICT教育は授業の効率化や生徒のリテラシーを育てる一方で、教員・指導者の新たな負担が生じる側面もあります。

例えば、子どものゲーム課金といった家庭内の問題を、保護者が先生に相談してくるといったケースです。保護者がICT教育の範囲を勘違いしており、教員へ思わぬ負担となってしまっています。

また、情報リテラシーが不足している教員は、勉強会や自主学習の必要性が出てきます。このように学校外での負担や教員の環境をいかに整備し、ICT教育を推進していくかが今後の課題です。

まとめ

ICT教育とは、情報通信機器・技術を学校教育に活用する取り組みです。ICT教育のメリットは教育の効率化や質向上により、子どもの授業理解度や学習モチベーションが上がることです。一方で、教員の負担増加や書く力の低下などが、デメリットとして考えられます。

ICT教育のデメリットや課題を解決するには、国や教育現場が一体となり取り組んでいくことが大切です。また、民間サービスによるICT教育のサポート・技術の促進も注目されています。ICT教育に関する民間サービスの開発・運用などを考えている場合は、事業資金について西日本シティ銀行で相談してみてください。

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