美容室の50~60%は開業後1年以内に閉店し、3年以内には90%の割合で閉店するというデータがあるのをご存知しょうか?特に福岡は全国屈指の美容室激戦区として知られています。そんな福岡を拠点に"生えグセ改善専用美容室"を経営し、売り上げを伸ばしているのが今回ご紹介する株式会社クリエイション。代表の浅冨総平さんはこれまでの美容師や会社員のキャリアを生かし、事業戦略コンサルティングや広告代理業などの幅広い事業も展開する連続起業家でもあります。
■プロフィール
株式会社クリエイション
代表取締役社長 浅冨総平(あさとみ そうへい)さん
福岡県行橋市出身。美容師歴は18年。専門学校講師を6年勤めた後はフランチャイズスーパーバイザーとして2年間の経験を積み、2021年前に起業して「株式会社クリエイション」を立ち上げる。
多彩な経験を通し、自分のやりたいことを見つけてゆく
――以前のキャリアから、起業することになった経緯を教えてください
浅冨:地元の北九州エリアで10年ほど美容師をした後、美容師の専門学校の講師に転職して6年勤めました。その際、これから美容師になる生徒とのつながりもできて講師としての実績も積んだことだし、いずれ店舗の経営ができるのでは…というビジョンを描くようになったんです。
それから講師を退職し、60店舗ほどの美容室を展開している福岡の企業に総合職として就職します。
実は現場経験は長く積んでいたものの、いわゆる一般企業での社会経験は初めて。営業や企画、マーケティングといった知識は全くなかったんです。当時はもう30代前半になっていたので、さすがにそれではヤバいと焦りましたね。そこでがむしゃらに勉強して仕事を覚え、営業成績を着々と上げていきました。
ところが組織の中ではやりたいことが思うようにできず、ジレンマを感じるように。やがて「集客や商品開発などの事業スキームを自分で作り込み、困っている人の悩みを解決する専門事業を起こしたい」と考えるようになりました。
そんな時にお世話になっていたコンサル会社の社長さんから起業に関するアドバイスをいただき、実際に"週末起業"として自分の会社を立ち上げました。平日は会社員としてフルタイムで働き、仕事終わりや週末に自分の会社の仕事をするというやり方です。
――起業した会社では、どんな事業をされているのですか?
浅冨:美容師の独立開業を支援する事業戦略コンサルティングの会社です。この業種であれば、これまで自分が得た知識やノウハウが生かせると思ったから。何より、僕には"美容学校の生徒(美容師)とのつながり"という強みがあるので、事業を軌道に乗せる確信が持てたんです。
そこで、独立開業に伴う事業計画の作成や創業融資のサポート、美容室専門の内装業者や不動産会社の紹介などを行い、紹介手数料を利益として1年間で3件の立ち上げを成功させました。このことで成功するビジネスのマニュアルと言いますか、利益化する方法を知ることになります。
美容業界で"勝てる"メソッドを見出す
――現在はご自身の美容室も経営されているそうですが、どのような経緯で創業されたのですか?
浅冨:コンサル会社を運営しつつも、実店舗を持っていないとなかなか社会的な信用が得られないことが分かったんです。というのも法人の銀行口座開設申込をした際、審査に落ちることが何度かあり…。そこで自分の美容室を出そうと決意しました。
ただ、普通に美容室を開いても競争が激しい美容業界ではまず生き残れません。そこで、集客やリピートにつながるマーケティングに強くなろうと、WEBマーケティングや広告運用について学び始めます。そうして創業したのが、生えグセ改善専用美容室「L+hair(エルプラスヘアー)」です。
――生えグセ改善専用とは、初めて聞きました!どのような特徴があるのでしょうか?
浅冨:特許を取得したハサミによる特殊なカットがポイントです。このハサミを使って生え癖を"解く"ことによって、前髪の割れや襟足のハネ、つむじによるクセなどを改善していきます。
実はこのハサミは、関西の職人さんが作っていたもの。最初はハサミを紹介してもらって販売代理店をしていたのですが、仕入れた美容室はどこもオプションとして使うだけでこの魅力を十分に伝えきれていないと思いました。
「だったら、他のどこにもない"生えグセ専門"のサロンを自分で作ろう」と行動に移したんです。
――目のつけどころと行動力が素晴らしいですね!
浅冨:ただ、いきなり新ジャンルの店をオープンするのはリスクもあったので、最初はモニターを集めて生えグセ改善カットを実際に試してもらいました。
すると、みなさん口を揃えて髪が扱いやすくなったと好評で。今度はこちらが想定する価格や条件をモニターの皆さんに提示したところ納得していただけたので、「これはイケる!」と確信しました。
実はこの生えグセ改善カットは、根本のボリュームが出るので生え際の白髪が目立ちにくくなるというメリットもあるため、40~50代の女性と相性がいいんです。そこで、エリアは福岡市で40~50代の女性人口が多い東区に狙い定め、人口が集中している箱崎・筥松エリアに出店しました。
顧客ゼロの状態でスタートしたので不安もありましたが、ありがたいことに1ヶ月で100名近くの新規のお客さまがいらっしゃったんです。オープンして1年近く経ちますが売り上げは右肩上がりで、近々佐賀にフランチャイズ店を出することが決まりました。
髪の毛に限らず、脱毛やアイブロウのケアを含めたトータルビューティサロンとしても動き始めているところです。
自身の経験やノウハウを生かしたコンサル事業を展開
――それでは、現在は美容室創業のコンサルと美容室経営の2つを事業としてされているのですか?
浅冨:実は、これまでに培った事業戦略サポートやマーケティングのノウハウを生かそうと他業種のコンサルも行っています。
コンサルだけでなく、広告代理店業やオンラインサロンの経営なども行っているんですよ。「L+hair」では美容師としてハサミを握っていますし、もはや自分の本職が何なのかわからなくなってきました(笑)。
――すでにさまざまな事業を展開されていますが、今後の展望があれば教えてください
浅冨:今後力を入れていきたいのは、起業や創業したい人全般の支援です。ただ既にサービスとして行われている創業支援と異なり、僕が目指すのは"勝つ"ための創業支援。
勝てる事業とは、僕の中では世間のニーズにズレなくマッチするサービスやプロダクトを発信すること。僕自身の経験やノウハウを軸に、マーケティングからプロダクトの開発、WEB・SNSの発信までサポートして、その業界で勝てることを目指します。
そのためにも今の会社を大きくして、いずれは売却してキャッシュを手元に残したいですね。その資金を元に無償で創業支援をして社会貢献ができたらいいな、なんて夢を抱いています。
そのためにも、今後は直営店10店舗、フランチャイズ店舗40店を5年の間に実現しますよ。
――すごいバイタリティですね(笑)。その躍進の秘訣は何でしょうか?
浅冨:とにかく成果が出るまで試すことでしょうか。方法を探しては試す…を繰り返し、勝てるロジックを導き出せたらマニュアルにして数を増やす。
熱意を持ってがむしゃらに行動するというよりも、客観的に見ながら冷静にこなす、という僕のやり方が上手くハマっているのかもしれません。
――最後に、今後起業を目指す人にアドバイスをお願いします。
浅冨:悩むよりも行動です!僕のように、会社勤めをしながらでも挑戦はできるはず。勇気を抱いて動いてみると、違う世界がみなさんを待っていると思いますよ。
株式会社クリエイションについて
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817
◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」
福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。