インタビュー

コンサルティング事業に加えて、障がい者が働ける仕組みづくりに挑戦|ミマモル株式会社  甲木陽一郎さん

By 佐々木 恵美

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公開日 2024.04.12

北九州市に本社を置き、東京のオフィスと2拠点で活動するミマモル株式会社。代表の甲木陽一郎さんは自身のキャリアを生かして、業務コンサルティングとシステムコンサルティングの2事業を展開し、新たな事業の準備も進めています。起業したきっかけから、自宅は東京にもかかわらず北九州に本社を置く理由、今後のビジョンまで伺いました。

■プロフィール
ミマモル株式会社
代表取締役 甲木陽一郎さん

北九州市小倉出身。東京の大学に進学後、在学中に教育分野で起業を経験。卒業後はインターンシップ先だったITベンチャー企業などを経て、2016年ラクスル株式会社へ入社。2022年3月、福岡オフィスを本社としてミマモル株式会社を設立。

仕事を細分化すれば、働きにくい人が働けるようになる

――ミマモルを創業するまでの経緯を教えてください。

甲木:地元は北九州市で、東京の大学に進学しました。在学中にいろいろな大学の数人で集まり、教育分野で起業しましたが、マネタイズできずに終了。ビジネスを学ぼうとITベンチャーでインターンをして、卒業後もそのまま就職したものの、入社2年目で大幅な業務縮小をしてしまいました。そしてその後の2016年、ネット印刷のラクスル株式会社に入社しました。業務としてはメインの印刷ECサイトのシステム担当として、ビジネスの人間とECサイトを開発するエンジニアの橋渡し役として、お客様が使いやすくなる機能を決めて、品質やスケジュールなどを管理しつつ、機能をリリースしていく仕事を主に担当していました。その経験を生かしつつ、私自身が感じていた課題を社会に提起するため、2022年にミマモル株式会社を創業しました。

――どのような課題を感じていたのでしょう。

甲木:日本では少子高齢化が進み、労働人口がどんどん減っています。一方で、障がいのある方やシングルマザーなど、働きたくても働けない人たちがいます。このような方々が働きにくい状況になっている原因は、本人というよりは仕事を出す側にあるのではないかと私は考えています。通常の業務だと任せにくい仕事も、業務自体を細かく分けていけば、比較的に誰にでもできる業務が見つかるはずだと考えています。

――なるほど、もともと障がい者の雇用に関心があったのですか。

甲木:前職のときに会社が上場を控える中で、障がい者の法定雇用率を満たすための取り組みができていなかったので、担当したのがきっかけです。たまたま障がい者の就労支援施設をしている方と知り合い、社内で障がい者雇用の仕組みを作ることができました。具体的には、数ある仕事の中から印刷データの確認工程を、精神や知的障がいの方々にお任せしたところ、仕組みを整備すれば健常者並みの生産性で仕事が進みました。ですから、仕事を出す側がしっかり考えて対応すれば、働くことができない人も働けるようになると実感しました。報酬も一般的な額の数倍はお支払いできて、会社にも働く人にとっても良いことだと確信しました。

地元の北九州市を納税で応援したい

――改めて、御社の事業内容について教えてください。

甲木:「世の格差をなめらかに」をミッションに掲げて、2つのコンサルティングをメイン事業にしています。一つはオペレーションのコンサルティングで、業務効率化やコスト削減に向けて、業務設計から実行、運用最適化まで一貫して支援しています。これまで大手出版や中小企業のサポートを行ってきました。もう一つはシステムコンサルティングで、既にプロダクトを持たれている会社様や新規事業をされている会社様向けに、プロダクトKPI・KGIの設計、システム要件定義からリリースまで、大手や中堅の企業様を支援しています。

また、前職の経験をもとに、障がいなどの理由で働きにくい方と業務の一部を外部委託したい会社のマッチングや、障がい者雇用における業務設計支援なども行っています。他にも、WEBサイトやグラフィックなどのデザイン制作も請け負っています。

クライアントは東京が中心ですが全国にいらっしゃいます。基本メンバーとは、リモートで働いており、東京を中心に全国にいます。

――東京にお住まいなのに、北九州市に本社を置いたのはなぜでしょう。

甲木:実家がある北九州市に納税したいと思ったからです。私見ですが北九州市には面白い人や頑張っている人がたくさんいますが、高齢化も進んでおり全体的にかつての活気を失っています。ですから、微力ながら私を育ててくれた地元に納税するためにも、頑張って仕事に取り組むつもりです。

――北九州で創業したメリットはありますか。

甲木:本社を置いているコンパス小倉には、起業家の支援や創業サポート、コワーキングスペースなど、ビジネスに必要なものがそろっています。弊社はコンパスに入ったことで北九州市の支援や金融機関のマッチング、融資でも優遇いただき、とてもありがたく思っています。

――起業して良かったと思うのはどんなときですか。

甲木:事業自体はトライの連続で浮き沈みもありますが、個人的に一番良かったのは育児をしやすくなったことです。経営者は自分でスケジュールを調整できるので、子どもたちが熱を出したら保育園に迎えに行くなど柔軟に対応できます。

それに、子どもが生まれてから未来のことをよく考えるようになりました。今、私たちは現役世代2人で高齢者1人を支えていますが、子どもたちの負担はさらに大きくなります。私が実践している働けない人が働けるようになる取り組みが広まれば、労働力を増やし結果的に納税者が増えて、子どもたちの負担を減らすことにもつながると考えています。

また仕事においては、人との出会いが増えました。最近では経産省の「J-STARX」という海外派遣プログラムや、品川区の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」に参加してネットワークが広がり、とても面白いなと思っています。

ミッションを実現するため新事業をスタート

――仕事のやりがいや、こだわっていることがあれば教えてください。

甲木:クライアントの課題を解決することにモチベーションがあり、それを解決したことでクライアントやユーザーに喜んでいただけるとうれしいですね。

私の仕事のスタイルは、外野であれこれ言うのではなく、業務にしっかり入って調べた上で、どこを変えていくかを提案します。そして、導入してうまく回るまで確認しています。また、クライアントに対してイエスマンにならず、客観的な視点を持ち、根拠を示しながら話を進めるようにしています。

――最後に、御社の今後のビジョンを聞かせてください。

甲木:引き続きコンサルティング業務をメイン事業として進めていきます。また、今期は自社事業として情報管理のサービスを構築しているところで、障がい者の方々にオペレーションで協力いただく予定です。創業時に志したミッション向けて、一歩ずつ進んでいきます。

ミマモル株式会社について

■会社概要
会社名:ミマモル株式会社
URL:https://mimamol.com/
所在地:福岡オフィス(本社) 福岡県北九州市小倉北区浅野3-8-1 アジア太平洋インポートマートビル6F、東京オフィス 東京都品川区東五反田2-5-2 THE CASK GOTANDA 607
設立:2022年3月30日
代表取締役:甲木陽一郎

■事業内容
業務・ITコンサルティング、障がい者雇用などのマッチング支援、デザイン制作 

■問い合わせ先
https://mimamol.com/ の問い合わせフォームから

お知らせ

Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」

西日本シティ銀行・大名支店ビルの5階、6階にコワーキング施設「The Company DAIMYO」ご利用受付中!
↓↓詳細はこちらをご確認ください。
https://thecompany.jp/multi-location/daimyo/

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