
サッカーや野球、バスケットボールなど、応援しているスポーツチームがある人も多いのではないでしょうか。スポーツチームは運営費や活動資金を確保するため、スポンサー企業から協賛やスポンサーシップを得ることが不可欠となっています。今回ご紹介する株式会社NextStairs(ネクストステアーズ)は、スポーツチームとスポンサー企業のマーケティング効果の最大化を目指す、スポーツマーケティングに特化した企業です。前職で営業代行をしていたという代表の万井拓馬さんがどのようにこの事業をすることになったのか。興味深いストーリーや今後の展望をご紹介します。
■プロフィール
株式会社NextStairs
代表者 万井拓馬(まんい たくま)さん
1999年、大阪府生まれ。大学在学中の2019年に東京の営業代行会社に参画し、後に正式に入社。その後、フリーランスとして営業代行事業を展開し、法人営業で実績を積む。2022年に福岡で起業して株式会社NextStairsを創業。
会社員とフリーランスで営業代行に携わる
―起業するまでの経緯を教えてください。
万井:大学在学中、東京の会社に入社して営業代行をしていました。具体的には電気関係のセールスなどを個人に向けて行っていく業務です。2年ほど会社員をしていたのですが、それからフリーランスに転向して同じく営業代行をすることになりました。
―なぜフリーランスになられたのでしょう?
万井:会社の方針で営業先は個人顧客がメインだったのですが、私としては法人顧客にも営業範囲を広げたいと思っていました。もし自分が会社を作ることがあれば、法人顧客にも営業をした経験を積んでおいた方がいいだろうと思い、フリーランスになりました。
―そこからどうして福岡で起業することになったのですか?

万井:2年ほど東京でフリーランスをしていたのですが、地方のイベントで営業活動をすることも多く、名古屋、大阪、福岡など各地を転々としていました。その時に福岡は起業する場合の補助金など、サポートが手厚いことを知り、福岡で起業することに決めました。
元々全国的に営業代行のサービスを展開したいと思っていたこともありますし、今はzoomやWeb電話などのサービスが充実しているので、場所は東京にこだわらなくてもいいと思っていました。
スポンサー広告の費用対効果を図るサービスをスタート
―会社の事業について教えてください。
万井:現在は大きく分けると2つの事業を行なっています。1つはスポーツメディア『SpoShip(スポシプ)メディア』です。これはプロスポーツチームのスポンサーセールスを担当する方々をサポートするWebメディアです。スポンサーシップの最新トレンド、成功事例、効果的なセールス戦略、スポンサー企業との連携方法など、実践的に役立つ情報を紹介しています。
▲『SpoShip(スポシプ)メディア』は画像をクリックもう1つがスポーツチームのスポンサー広告の費用対効果を図る、メディア露出価値換算サービス『Brand Insight(ブランドインサイト)』です。
サッカー選手や野球選手のユニフォームには、胸元や袖にスポンサーのロゴが付いています。スポンサー企業はあのロゴに何千万円、何億円というスポンサー料を支払っています。果たしてその費用効果はどのくらいだったのかを算出する事業です。
▲『Brand Insight(ブランドインサイト)』は画像をクリック具体的には、スポンサー企業のロゴがテレビやWeb動画、新聞などのメディアにどれくらい露出し、どの程度の広告価値があったのかを、独自開発した画像認識AIを使って算出します。
スポーツチームはスポンサーを獲得しやすくなり、スポンサー企業は広告出稿の意義を明示しやすくなるなど、双方にメリットがあると考えています。
―個人や法人向けの営業代行から、なぜスポーツに向けたサービスに転向されたのですか?
万井:このスポーツマーケティングを始めたのは、実は今年(2024年)の4月くらいからです。2022年に福岡に来てしばらくは営業代行をしていたのですが、その頃からクライアントにスタートアップ企業が増えるようになりました。
一緒に仕事をするうちに、急速に成長するスタートアップの事業モデルに憧れを抱くようになったのですが、私が行なっている営業代行ではそうした急成長は難しいと感じていました。
そこで、新事業をいろいろと模索する中で、2023年に佐藤という社員が入社したことが大きな契機でしたね。彼は以前、プロ野球チームの営業をしていたのでスポーツ系の新事業を考えることが多くなり、スポーツチームと繋がりを持つためにWebメディアを作ることになりました。
それが現在まで続いているスポーツメディア『SpoShip(スポシプ)メディア』なのですが、そのメディアを通してJリーグに所属するサガン鳥栖様から連絡が来たのです。
―どのような内容だったのでしょう?
万井:「スポンサー企業から年間の広告価値がどれくらいあったのか報告してほしいと要望されたものの、自社ではなかなかできない」というご相談でした。
そこでスポーツ科学やスポーツマネジメントが専門の九州産業大学の教授にアドバイザーとして入っていただき、広告価値換算のロジックを作り上げて信頼性の高い分析結果を提供することができました。
―それからどのように展開していかれたのでしょう?
万井:サガン鳥栖様と契約してから、20~30社のスポーツチームに同様のヒアリングを行いました。すると「スポンサー広告の明確な費用対効果を示せない」「スポーツ支援の価値や地域貢献度を示しづらい」といった課題を共通して持っていることが分かったのです。
ヒアリングしたチームの中からもサービスを活用したいというお声をいただき、スポーツマーケティングに特化することにしました。
―クライアントの反応はどうでしたか?
万井:サガン鳥栖様からは「スポンサー企業への報告に使えるものが準備できた」と喜んでいただけましたし、その効果を知って依頼していただけるスポーツチームも増えてきました。今は関東のJリーグクラブや東北のバスケットボールチームのサポートもスタートしています。
広告の価値だけでなく、社会的な価値の可視化へ
―今、他に進めている事業はありますか?
万井:基本的にはスポーツマーケティング事業にはなるのですが、現在行っているメディア露出の価値だけではく、メディアに露出されない会場内外の価値を計ることができないかと考えているところです。
例えば競技場や球場の客席に貼ってある企業のロゴはメディアにはほぼ映らないので、露出価値で表すとゼロになってしまいます。ただし会場に来ているお客さんは見ているはずなので、その価値を算出できないかという声がクライアントからも挙がってきているのです。
この会場内外の価値については実証実験を行い、来場客にアンケートをとって価値を算出したいと考えています。
もう一つ検討しているのが、スポーツ応援プラットフォームの導入です。これはスポーツのチームではなく、個人選手に向けた応援プラットフォームになります。

プロレス選手やダーツの選手など、個人競技の選手は注目を集めにくくスポンサーを得るのが難しいという課題がありました。そこでクラウドファウンディングのようなプラットフォームを作って選手それぞれのプロフィールや思いを掲載し、そこからユニフォームやサインを購入できるシステムや、スポンサーが応募できるような仕組みを構築したいと考えています。
―御社の強みはなんだと思いますか?
万井:私がスポーツ系のビジネスをしてこなかったことが逆に良かったのかもしれません。先ほどもお話しした九州産業大学の教授や、早稲田大学院でスポーツマーケティングの研究をされてきた方に顧問に入っていただくなど、知識がないからこそ専門家で脇を固めたことが結果的に強みになっているのかなと思っています。
もう一つ、シンプルな強みとしては営業力です。先ほど20~30社にヒアリングしたとお話ししましたが、そのアポイントメントを取ることはすごく難しいです。しかし、これまでの営業代行の経験とスキルを生かし、一か月あまりで約20社にヒアリングすることができました。
―今後の展望があれば教えてください。
万井:通常の投資における「ROI(投資収益率)」に「Social(社会の)」の“S”を追加した「SROI(社会的投資収益率)」という指標があるのですが、これをスポーツチームにも適応できないかと考えています。
例えばスポーツチームが存在することによってどれくらい社会的に貢献できているのか、スポーツチームのスポンサー企業になることで従業員がどれくらい満足できるのか。これらを可視化するロジックを研究されている専門家と連携しながら、ビジネスとして実現したいと考えています。
そうして国内だけでなく、海外でもスポーツマーケティング事業を展開していきたいと思います。
株式会社NextStairs について
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」
福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。