
「将来はITエンジニアになりたい」「起業したい」。そんな夢を抱くこどもたちをサポートするのが、今回ご紹介する株式会社Progress(プログレス)。CFOの清水裕矢さんはビジネスパートナーでもある代表の秦有樹さんと二人三脚で、教育(Education)× テクノロジー(Technology)を組み合わせたEdTech(エドテック)事業に取り組んでいます。お二人がこれまでに培ってきた経験をもとに提供するのは、すぐにでも社会で役立つ"生きた教育"。日本だけではなく、世界を視野に入れたグローバルな事業展開にも注目です。

■株式会社Progress (プログレス)
CFO 清水裕矢さん
山口県出身。大学卒業後は学習塾講師を経てパソコンのインストラクター。その後外資系企業の財務経理職に転職。以来、出向や転職を重ねながら約17年にわたって財務経理の仕事に携わる。2021年11月に代表の秦有樹さんと共に株式会社Progressを創業。並行して外資系企業の外部CFOも務める。
こどもたちが世の中を知る機会を提供
――まずは、株式会社Progressの事業内容について教えてください。
清水:事業内容としては個人・法人向けスクール事業やメディア事業、テスト事業など幅広いジャンルにはなるのですが、大きな柱としているのは"EdTech(エドテック)"と呼ばれるインターネットを活用した教育事業になります。現在特に注力しているのが、今年の4月から開講する「Cyberse(サイバース)」というオンラインスクールです。ここではこどもたちがこれからの社会で必要になるAI・プログラミングや金融リテラシーについて学び、論理的な思考やお金に対する考え方を育んでいきたいと思っています。

――こどもに向けた金融リテラシーの教育とは、どんなものになるのでしょう?
清水:例えばお小遣い帳の活用方法やキャッシュレス決済の基礎知識など、身近なお金にまつわる話をすることから始めて、リスク管理や投資、企業会計も見ていきます。金融の教育と聞くと"お金を稼ぐ方法"という風に捉えられることもありますがあくまでごく一般的な知識として、そして英語や国語と同じくらい大切な教育として金融リテラシーを身につけてほしいと思っています。
――実践的な知識を身につけられるのですね!
清水:金融教育を始めるきっかけとしては、私が長らく財務経理の仕事に携わってきたことが関係しています。さまざまな企業の経営者の方とお会いしたのですが、意外と数字に対して苦手意識が強い方が多い印象を受けました。お金はビジネスではもちろん日常生活でも必要になるので、基本的な金融知識を幼い頃から身につけてほしいと思って事業化しています。
これまでの社会人経験で培ったスキルを生かした事業をスタート
――ではその流れで、起業することになったきっかけや経緯を教えてください。
清水:株式会社Progressは私と代表を務める秦有樹が立ち上げ、二人で運営している会社です。秦とは大学時代からの友人なのですが、当時から二人とも教育関係の道に進みたいという思いがありました。実際に大学を卒業してお互いに教育系の職に就き、私は財務経理職も経て、今は偶然にも二人とも福岡に住んでいます。2021年の夏に、「お互い社会人生活20年を過ぎたことだし、得意なフィールドで一緒に事業を始めないか」と話をしたことが起業のきっかけです。
秦は教育関係の仕事を続けてきたことでノウハウがありましたし、何より事業をドライブさせる力があったのでそちらをメインに、私は財務経理をメインにバックアップすることで力を合わせて…ではありませんが、2021年に創業することになりました。

▲学生時代の清水さん(左)、秦さん(右)
――オンラインスクールの他には、どんな事業に力を入れているのですか?
清水:私たちは会社の他に「一般社団法人こども未来投資プロジェクト」を立ち上げているのですが、こちらの活動でメインとしているのがメディア事業です。「こども経済メディア キッズノミクス」というWEBメディアを運営し、ここではこども向けの経済ニュースや専門用語の動画解説、金融検定といったコンテンツを通してお金や経済の仕組みを楽しく学べるようにしています。
メディア事業でこどもたちに経済に関する広い知識を提供し、スクール事業でしっかりと講義として学んでもらえるような棲み分けですね。
もう一つ、社団法人として取り組んでいるのが交流事業です。副理事 中村がマレーシアに在住しているのですが、現地のこどもと日本のこどもをオンラインでつないでさまざまな国籍や業種の人と交流する"オンラインフェス"をこれまでに2回開催しました。今年は3回くらい開催したいなと企画しているところです。
メディア事業と交流事業に関しては社会的意義のある活動ということで、社団法人として運営しています。

▲こども経済メディア「キッズノミクス」
堅実な起業準備と臨機応変な対応が事業継続のカギ
――幅広い活動をされていますが、起業するにあたって最初に取り組んだことは何でしょうか?
清水:まずは絶対に資金調達をしようと、事業計画書を作り込みました。ビジネスモデルを確立して収益予想をしっかりと立て、融資の相談に行ったという流れになります。
とは言うものの、実は準備期間としては3ヶ月しかなかったんです。2021年の8月頃に秦と起業の話をしたところ、彼が「占いで良いと言われた11月にスタートしたい」と言うものですから(笑)。一気に事業計画書を作り上げました。
――その資金はどのように調達されたのでしょうか?
清水:自己資金という選択肢もありましたが、私は絶対に反対でした。というのも、当時私たちは43歳。ちまちまと利益剰余金を増やしていくには歳をとり過ぎていると思い、スピード感を持って事業を成長させる必要があると判断しました。
そのためにも創業融資を得ようと、西日本シティ銀行のビジネスサポートセンターや信用保証協会に融資の相談をさせていただきました。最初から資金調達を視野に入れて起業したことは、今になってもやっておいてよかったなと思います。

▲「ビジネスサポートセンター」のNCB創業応援サロン
――事業のスタート前後に困ったことやつまずいたことはありましたか?
清水:事業をスタートした時点では困ったことは特にありませんでした。秦はずっと教育業界に在籍していたので受けられるサポートも多く、「なんとか行けるんじゃないか」と意気揚々と滑り出したからです。
ところが後になって、この考えが楽観的だったことに気がつくことになります。
当初はWEBメディアの広告収益を事業の柱に考えていたのですが、紆余曲折あって上手く黒字化することができませんでした。
この経験から受け身ではなく自分たちがイニシアティブを握って事業を進めないといけないと考えを改め、早めに損切りとしてWEBメディアを売却してスクール事業にシフトチェンジすることに。まだ2年目なのでこれからもつまずくこともあるでしょうし、同じように切り捨てるものも出てくると思います。
――福岡を拠点に起業するメリットを感じることはありますか?
清水:福岡にはスタートアップカフェや特定創業支援等事業といった、創業を後押ししてくれる制度が充実していることでしょうか。もう一つは、福岡商工会議所の方が親身になって事業計画書のチェックや資料作成のアドバイスをしていただけること。
その他にも西日本シティ銀行のビジネスコンテストといった事業をブラッシュアップできる機会がたくさんあり、創業者が成長しやすい雰囲気があると感じています。
――今後の展望を教えてください。
清水:大層なことに聞こえるかもしれませんが、アジア進出も視野に入れています。もはや日本だけでビジネスをしていくにはパイが少ないと感じていますし、我々としても面白くありません。詳細は言えませんが、近いうちにこの展望を実現するという大きな目標に向かって進めているところです。

――最後に、これから起業を考えている方へアドバイスをお願いします!
清水:財務経理に長く携わってきた人間として言えることは、やりたいことを実現させるためには資金が不可欠だということ。夢やアイデアはもちろん大事ですが、元手がないことには形になりません。
もう一つ、苦手意識があっても財務会計の基礎知識は身につけておくべきだと思います。
最後に、「頑張った」と褒められるプロセス評価は学生まで。社会ではマーケットに評価されないと意味がないことを忘れないでほしいと思います。まだ2年目なので偉そうなことは言えませんが、自戒の念を込めて(笑)。
株式会社Progressについて
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817
◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」
福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。