会社の代表取締役は、そう何度も変わることはありません。そのため、いざ代表者が変わったとき変更手続きがわからず焦ることもあるでしょう。この記事では、代表取締役が変わる際に必要な手続きについてまとめました。登記申請で準備する書類や流れを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
代表取締役の変更手続きを4ステップで解説
代表取締役を変更する流れは社内での決議に始まり、法務局や税務署への書類申請まで行います。会社の体制によって行う手続きが変わるため、司法書士に相談しながら進めるのがおすすめです。最初に、どのような流れで代表取締役の変更を行うのかを4ステップで見ていきましょう。
1.代表取締役の選定・決議
まずは、会社の新しい代表取締役を選びます。取締役の中から代表取締役を決めることを「選定」といいます。代表取締役の選定方法は会社に取締役会があるかないかで異なるため、それぞれの方法を見ていきましょう。
取締役会設置会社の場合
取締役会がある会社の場合、取締役会の決議によって代表取締役を選定します。取締役会の決議では取締役の過半数が出席し、かつ出席者の過半数の賛成による可決が必要です。また、定款に定めている場合に限り、取締役会ではなく株主総会で代表取締役を選定することも可能です。
取締役会非設置会社の場合
取締役会がない会社には4つの選定方法があり、いずれかの方法で代表取締役を決めます。
株主総会の決議により選定する
定款で代表取締役を直接指名する
取締役の互選により選定する
取締役全員を代表取締役とする
定款には代表取締役の決議方法や代表取締役の人数などを記載しておき、その内容に従う必要があります。定款にこれらの情報が記載されていない場合は、代表取締役の選定時にあわせて定款の内容を変更しておきましょう。
2.登記の変更手続き
続いて登記申請用の書類を準備し、管轄の法務局へ提出します。登記の申請は、代表取締役の変更が生じてから2週間以内に手続きしなければなりません。必要書類はケースによって異なります。 なお、登記申請手続きは郵送や直接訪問以外に、オンラインで行うことも可能です。オンラインで登記申請をする場合は、代表取締役本人のマイナンバーカードや、商業登記電子証明書が必要なため準備しましょう。
3.登記簿の発行
登記手続きが完了すると、1〜2週間程度で登記簿が発行できるようになります。登記簿は各方面への代表者変更手続きに必要なため、取得しておきましょう。登記簿は窓口・郵送・オンラインの3つの方法で交付請求できます。
4.代表者変更届の提出
最後に、国税・地方税の関連機関へ代表者変更の届出をします。
税関連の届出先は、以下の2つです。
税務署への届出は、e-Taxからも手続き可能です。地方税事務所と市区町村役場ではそれぞれ申請方法や添付書類などが異なるため、管轄機関へ詳細を確認しましょう。
代表取締役の変更登記に必要な書類
社長が交代した際は、新たな代表取締役の名前で変更登記する必要があります。ここでは、代表取締役の変更登記手続に必要な書類を紹介します。
変更登記申請書
登記内容の変更を申し込む書類で、記載事項は各種ケースによって細かな違いがあるのです。例えば、元の代表取締役が取締役として残る場合と残らない場合では、記入文章が微妙に異なります。また、対象者本人が申請する場合と代理人が申請する場合で、実印が必要なのか代理人の認印で良いのかなども変わります。書類作成は、専門家に確認しながら行うのが安心です。
代表取締役の選定方法に応じた書類
代表取締役の選定方法に従って、以下のような書類を提出します。
株主総会議事録
取締役会がない会社では、代表取締役の選定方法が「株主総会決議」または「定款変更」の場合に、株主総会議事録が必要です。議事録が数ページに渡る場合は冊子のようにホチキスで中央を綴じ、ページ間に契印をしましょう。契印は、代表者1名または出席した取締役全員の印鑑でも構いません。
株主リスト
株主の氏名・住所・議決権数などを記載した書類です。株主総会議事録を提出する場合は、株主リストも必ずセットで提出しましょう。
互選書
取締役の互選によって代表取締役を選定した場合、互選書を作成します。互選書の様式に決まりはなく、以下のような内容が記載された文書であれば互選書として十分です。
可決日時
会社名
就任した代表取締役の氏名・住所・捺印
取締役全員の捺印(会社実印を含む)
定款
代表取締役の選定方法は、定款に記載されている方法と一致していなければなりません。代表取締役の選定方法を証明するために、定款の提出が必要です。定款はコピーを取り、原本と相違がない旨を記載し、その下に会社の実印を押しましょう。
印鑑証明書(代表取締役および他役員のもの)
各会社のケースにもよりますが、基本的には代表取締役や取締役の印鑑証明書を提出します。一例として、必要な印鑑証明書は以下のとおりです。
印鑑届書(新代表者のもの)
新たに代表取締役が就任する際は、会社実印も変更します。会社実印を変更するために印鑑届書の提出が必要です。なお、複数の代表取締役が印鑑届出をする場合は、それぞれ違う印影を使わなければなりません。会社実印のサイズは、1センチ以上3センチ以下の大きさと決められています。
その他の書類
その他にも、代表取締役の変更登記では次のような書類が求められる場合があります。
委任状(申請手続きを司法書士などに依頼する場合)
代表取締役の就任承諾書(取締役の互選による場合)
代表取締役の変更時は書類準備や登記申請など複雑な手続きが多いため、社内の人間のみで行うには不安もあるでしょう。書類を漏れなくそろえ、手続きを滞りなく進めるには専門知識が必要です。西日本シティ銀行では、代表者変更や事業承継に関するサポートもおこなっているため、ぜひ相談してみてください。
登記の他に会社ですべき対応・手続き
登記申請以外にも、代表者変更の際はさまざまな対応や手続きが必要です。登記の手続きに追われ、他の対応が疎かにならないよう注意しましょう。ここでは、代表者変更の際に忘れがちな対応と手続きを紹介します。
社会保険の代表者を変更する
社会保険(健康保険・厚生年金保険・労働保険)の代表者を変更しましょう。健康保険と厚生年金保険は、管轄の年金事務所または事務センターへ「健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」を提出します。ただし、協会けんぽ以外の健康保険組合では、各組合指定の届け出が必要です。必要書類は代表者の変更から5日以内に提出しましょう。また、労働保険は法人事業所の場合は届出不要で、個人事業所のみ労働基準監督署およびハローワークで手続きします。
社長交代の挨拶状を作成する
代表取締役が交代することを伝えるために、取引先や付き合いのある人へ挨拶状を出しましょう。取引先によっては就任祝いの花を贈ってくれたり、直接挨拶に来てくれたりします。挨拶状で事前に伝えておけば、取引先も動きやすいため助かるでしょう。
社内書類等の代表者名を変更する
社内書類等に記載されている代表取締役名を変更しましょう。変更すべき書類や資料には、以下のようなものがあります。
変更すべき書類が多い場合はチェックリストなどを作り、すべて変更したか管理するとわかりやすくておすすめです。
まとめ
代表取締役が交代する際は、登記申請や税関連の代表者変更手続きなどが必要です。新代表者の選定方法や取締役会設置の有無によって、必要書類などが変わります。社内だけで手続きを行うのが不安な人は、司法書士や銀行などの専門家に依頼すると安心でしょう。
>>西日本シティ銀行では経営・事業支援について金融機関の枠を超えて様々なサービスを提供しています。
2級FP技能士
地方銀行へ入社し、貯金・ローンなど金融商品の販売に従事。 その後、不動産業界へ転職して社会保険や労務管理を担当しながらFP資格を取得。自身の経験から“お金を無駄にしないための”アドバイスをおこなう。