多様な生き方や働き方が広がりつつある現代。企業にはこれからますます、さまざまな人が働きやすい環境を整えることが求められます。社員の働きやすさを叶える企業の取り組みとは?
この連載では、実際に働き方改革に積極的に取り組む企業で働く人や経営者にインタビュー。今回は、北九州に本社を置き創業70周年を迎えた、菓子・飲料製造卸販売の株式会社しんこうを取材しました。
※ここで紹介する企業は私募債発行に際してSDGsに資する取り組み、中でも働き方改革を積極的に行うことを要件に取り込んだ、西日本シティ銀行が提供する、次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」を発行している企業です。※私募債についてはこちら
社員インタビュー
株式会社しんこう 2課 ドーナツ製造部門(2021年入社) 田淵修一さん
Q:この会社を選んだ理由、入社の決め手を教えてください。
私は北九州の大学に進学し、地元で製造に関わる仕事がしたいと考えていました。大学在学中にいくつかの会社説明会に参加したところ、当社の担当者がとても明るくて好印象を持ったので、会社を訪問しました。すると会社も明るい雰囲気で、ここで働けば自分が成長できると感じたので、入社を決めました。お菓子が好きというのも後押しになりました。
Q:入社して感じた、この会社の良さはどのようなところでしょうか。
入社前に感じていた会社全体の明るい雰囲気はその通りでした。仕事のときは皆さん真剣に仕事に取り組んでいるのですが、休み時間など話してみるととても明るく楽しい方が多いですね。
また、風通しのいい社風で、若手の意見も聞いてもらえるので、とても働きやすい環境です。
Q:業務内容を教えてください。
入社時に製造か営業を選ぶことができて、製造を希望しました。会社の主力商品であるドーナツの製造に関わって4年目になります。ドーナツの材料となる卵や粉などを入れてミキサーで混ぜ、生地を作り成形して、フライヤーで揚げるという一連の製造工程を担当しています。入社当初は未経験者だったので、先輩に教えてもらいながら仕事を覚えていきました。
Q:業務でのやりがいや嬉しかったことを教えてください。
ドーナツの生地はとても繊細で、その日の温度や湿度によって加える卵の量を調整することで、仕上がりが違ってきます。また、フライヤーの微妙な温度管理も大切で、おいしいドーナツができたときは嬉しいです。他社のドーナツを食べることがありますが、当社のドーナツのおいしさには自信があって、仕事に誇りを持っています。
お客さまから「おいしいドーナツを作ってもらってありがとうございます」というような声が手紙などで会社に届くことがたまにあって、やりがいを感じています。
Q:福利厚生や制度はどうですか。
製造業ですが夜勤がなく、ゴールデンウイークなどの長期休みもしっかりとることができます。転勤がないので、落ち着いて働けることも当社の魅力です。
Q:仕事を通じて学んだことはありますか。
先ほどお話したように、いい商品を作るためのコツをつかめるようになり、安定していい商品ができるようになったことに自分の成長を感じます。また、年上のパートの方々をまとめる立場なので、気持ちよく働いてもらえるように気を配っています。
Q:今後の目標を教えてください。
いずれは主任、課長、部長とグレードが上がり、会社経営の一翼を担う存在になることを目指して、日々働いています。まだまだ未熟ですが、同期の中で大卒は自分だけなので、先頭に立ってリードしていけるように頑張ります。
トップインタビュー
株式会社しんこう
代表取締役社長 越野 修司(こしの しゅうじ)さん
福岡県北九州市出身。車販売の会社を経て、24歳で家業に入る。社長に就任して36年。
創業70年のお菓子メーカーで直売店も運営
当社は1950年に私の父が戸畑で菓子卸の傍ら、「かりんとう」の生産を始めたところから始まります。1954年に会社を設立し、かりんとうの製造卸をスタートしました。その頃、私はまだ6歳で6人兄弟の末っ子でしたが、希望に燃えて働く家族の姿を見て、将来は自分がこの会社の社長になりたいと思いました。
それから紆余曲折がありながらも、再起をかけて作り方を学んだ「どんど揚げ」が大ヒットし、主力商品である「ハニードーナツ」が生まれ、1985年には現在の小倉南区に新工場を構えました。卸売業では価格決定権がないため、新業態として直売店の「FAVORI
PLUS」「菓匠きくたろう」にも挑戦し、今では社員、パートさんが180人ほどになりました。
社員と創った経営理念は『おいしさで笑顔を創る』
日本では近年働き方改革が進み、売上や事業規模を競う時代から、社会問題を解決していく会社が魅力的と捉えられる時代になりました。当社でも「働き方カイカク」の一環として、例えば年3%以上の昇給の継続、年間休日120日以上、女性管理職を増やすといった取り組みを進めています。また、社員持ち株制度を導入し、経営の参画意識、モチベーションが上がっているように感じます。今期は売上利益共に好調にスタートしています。
その一方で製造部は元より営業、開発、管理部の全社活動として生産効率を上げ、就業時間を短縮するため「生産性カイカク委員会」を立ち上げました。
組織の努力工夫があってこそ「成長と分配」のバランスが継続できるものと確信しています。
当社の社員たちは真面目で、よく頑張ってくれます。私は社員の意見をしっかり聞くようにしていて、10年ほど前に会社の経営理念を一緒に作りました。もともとは「豊かな食文化を創造する」でしたが、わかりにくいという意見が出たため、「おいしさで笑顔を創る」に変更。さらに「私たちはお菓子づくりを通して、我社に関わるすべての人たちの幸せな笑顔と安らぎを創ります」という言葉を加えました。
北九州スイーツヴィレッジ構想で北九州を元気に・・経営理念の実現を目指して‼
今後の展望として、「北九州スイーツヴィレッジ構想の実現」を描いています。この事業を通して、お客さまにお菓子のある豊かなライフスタイルを提供し、笑顔や安らぎや賑わいのある地域社会になるよう貢献したいと思っています。
「スイーツショップ ファボリ」「菓匠きくたろう」そして3つ目の拠点となる建物「SHINKO
DONUTS
LABO」が来春に完成予定です。お客さまと社員がワイワイと話したり、工場見学やドーナツづくり体験ができたり、揚げたて生ドーナツのショップがあったりと、多彩な展開を計画しています。これは社員のアイデアから始まりました。
社員がやりたいことについて舞台を作ってあげるのが社長の仕事だと私は考えています。演じるのは社員で、そこにお客さまがファンとしてやってきてくれる。おいしさとオリジナリティを追求してきた当社は、スイートコミュニケーションを大切に、幸せな笑顔と安らぎをさらに広げて、微力ではありますが北九州を元気にしていきたいと願っております。
フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。