シンギュラリティとは、人工知能が人間の知能を超える転換点のことです。レイ・カーツワイル氏によると、シンギュラリティは2045年に到来すると予想されています。本記事では、シンギュラリティの意味やいつ起こるのかを解説します。私たちの社会に与える影響も説明するので、参考にしてみてください。
シンギュラリティの意味は?
人工知能の発達が急速に進む今「シンギュラリティ」への注目が高まり、話題にされる機会が増えています。まずは、シンギュラリティとはどういったことなのか見ていきましょう。
人工知能(AI)が人間の知能を超える概念のこと
シンギュラリティとは、人工知能の物事を理解する力が人類を上回る転換点、またそれにより起こる社会の変化を表す概念のことを指します。
人工知能は、運転手のいない自動運転車やドローンなどさまざまな分野で活用されており、急速に発達していることは間違いありません。その先にシンギュラリティが起きれば、私たちの社会や生き方は、大きな変化を遂げると予想されます。
シンギュラリティの概念の始まり
シンギュラリティの概念を最初に広めたのは、ヴァーナー・ヴィンジ氏とされています。また、シンギュラリティが大きな話題となったのは、レイ・カーツワイル氏が著書でシンギュラリティ到来論を述べたことがきっかけです。
ヴァーナー・ヴィンジ氏
シンギュラリティの概念を最初に提唱したのは、数学者・SF作家であるヴァーナー・ヴィンジ氏といわれています。
ヴァーナー・ヴィンジ氏は「The Coming Technological Singularity」のなかで、30年以内に人間を超える知能ができ、人類が終わると述べました。つまりシンギュラリティは、約30年前には誕生していた概念だといえます。
レイ・カーツワイル氏
近年、シンギュラリティが広まっているのは、2005年(平成17年)に、アメリカの発明家であるレイ・カーツワイル氏が著書でシンギュラリティの到来を予測したためです。
レイ・カーツワイル氏は、コンピューターの処理能力は加速度的に上がっており、このまま推移するとシンギュラリティを迎えると予想しています。2029年にAIの知能が人間と同等に達し、2045年までに人間を超えると述べたことで大きな話題となりました。
シンギュラリティの概念の根拠
シンギュラリティという概念の根拠にあるのは「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」です。
ムーアの法則
「ムーアの法則」とは「半導体回路の集積率が1年半~2年で2倍になる」という法則です。分かりやすくいうと、半導体の処理能力が2倍になること、また半導体の製造コストが半分になることを指します。
ムーアの法則では半導体の微細化により性能が上がるとされていましたが、近年は「微細化は限界ではないか」との指摘も上がっています。
収穫加速の法則
「収穫加速の法則」とは、レイ・カーツワイル氏により提唱された法則で「技術の進化のスピードがどんどん加速する」ことを指します。これは、1つの発明がほかの発明とつながることで、次の発明の生まれるスピードが速くなるという考え方です。
レイ・カーツワイルは収穫加速の法則のように、加速度的な変化が発生した先にシンギュラリティが起こると予想しています。
シンギュラリティはいつ起こる?
シンギュラリティが起こると、私たちの社会に多大な影響を与えます。すでに人間の知能を超えたとされる事例も存在しますが、シンギュラリティは本当に到来するのでしょうか。また、現実になるとすれば、いつ起こるのでしょうか。シンギュラリティが起こる時期には、さまざまな考え方があります。
シンギュラリティは2045年問題ともいわれる
シンギュラリティは「2045年問題」ともいわれます。これは、レイ・カーツワイルが、著書「ポスト・ヒューマン誕生(The Singularity is Near)」のなかで「2045年にシンギュラリティが到来する」と予想しているためです。
ただし、シンギュラリティがいつ起こるのかという予測は複数あり、2045年より早く現実化すると予想する専門家もいます。
2030年に到来するといわれるプレシンギュラリティ
2045年のシンギュラリティ到来を前に、プレシンギュラリティが起こるという意見もあります。プレシンギュラリティとは、スーパーコンピューターの開発者である齊藤元章氏が提唱した「社会的特異点」です。これは、AIが人間の知能を超える前の大きな社会変動を指します。
齊藤氏は、2030年ごろにプレシンギュラリティが到来し、働く必要がなくなる、貨幣がなくなる、人間が不老になるなどの変化があるとしています。
シンギュラリティが来ないという意見もある
複数の著名人がシンギュラリティの到来を述べるなかで「人間と人工知能は根本的に異なるため、そもそもシンギュラリティは来ない」という意見もあります。
現時点、人工知能が人間と同じように思考して行動できるかどうかは科学的に証明されていないため、シンギュラリティの到来に関しては賛否両論があります。
シンギュラリティの事例はすでに存在する
シンギュラリティがいつ到来するのか、本当に起こるのかは、現時点では断言できません。しかし、チェスや囲碁など、人工知能が人間を超えた事例はすでに存在します。
自動運転車の実用化が進められるなど、人工知能は確実に私たちの社会に浸透しているのです。今後さらに多くの分野で、人間を超える事例が増えることも考えられるでしょう。
シンギュラリティで社会はどう変わる?
シンギュラリティが実際に起こると、私たちの社会は大きく変化します。シンギュラリティの到来が私たちの社会に与える主な影響は、以下のとおりです。
仕事や職業が変わる
シンギュラリティが起こると、一部の仕事や職業が人工知能に代替される可能性があります。野村総合研究所によると、約49%の職業は機械に代替できるとの結果が発表されています。
AIに仕事を代替されると、失業する人も出てくるでしょう。このような社会では、人工知能に代替されず生き抜くための思考が求められます。ただし、AIを活用した新たなサービスも登場するため、必ずしも人間の仕事が減るとは限りません。
AIに代替される仕事の例
シンギュラリティ後、人工知能に代替される仕事には、以下のものが挙げられます。
一般的な事務職やデータ入力の仕事
コンビニ店員
ウエイトレス
テレマーケター など
一般的に、単純な作業を繰り返す仕事や簡単なやりとりで完結する仕事は、代替される可能性が高いでしょう。
一方で、代替されない可能性が高い仕事には、以下のようなものがあります。
医師
弁護士
カウンセラー
スポーツ選手
アーティスト など
ベーシックインカムが導入される
シンギュラリティが起きて仕事が人工知能に代替されると、ベーシックインカムの導入が進むと考えられます。ベーシックインカムとは、国民の生活を守るために全ての国民に無条件で一定額が給付される制度です。
現時点でも「AIにより職に就けない人や低賃金で働かなくてはいけない人が増えるのでは」という懸念から議論がなされています。
デフレが起きる
シンギュラリティが起こるとあらゆるものがAI化し、商品やサービスをつくる人件費がかからなくなります。コストが安くなるとモノの価値が下がるため、大規模なデフレが起きる可能性があります。
デフレとは、モノの価値が下落し続けることです。デフレになるとモノが売れにくくなり、企業の利益にも影響を与えます。業績が悪くなると給料が下がるため、さらに消費が減るという悪循環に陥る可能性があります。
シンギュラリティの懸念点
シンギュラリティが現実になると、現在の生活からは考えられないような社会の到来が予想されます。労働から解放されたりより興味のある職業を選べたりなど、メリットを得られるでしょう。
一方で、シンギュラリティには懸念点もあります。
AIを悪用した犯罪のリスクが高まる
シンギュラリティ後の社会では、AIを悪用した犯罪のリスクが高まると予想されます。AIを使ったなりすまし詐欺やサイバー攻撃など、さまざまな犯罪への対策を考えなくてはなりません。
実際に、近年のデジタル化に伴い、サイバー犯罪は急増しています。警察庁によると、2021年(令和3年)のサイバー犯罪は12,209件であり、過去最多を記録しています。AIが人間の知能を超えれば、未知の犯罪が増える可能性も高まるでしょう。
AIが犯罪を犯す可能性がある
人工知能が犯罪に関与した際、誰が責任を負うべきなのでしょうか。技術は日々進化しているため、人工知能が犯罪に関わった場合の法整備も進める必要があります。
しかし、犯罪に関する懸念点がある一方で、犯罪予測や治安対策などの犯罪を防止する分野でも、人工知能の活用が進んでいます。
労働の意欲がなくなる
シンギュラリティ後、働く必要のない社会が訪れると、人々の働く意欲が低下してしまう可能性があります。
ベーシックインカムが導入されて働かずにお金がもらえるようになると、やりたいことが見つからない人も出てくるでしょう。また、一部の仕事がAIに代替されることで、就きたい仕事が見つからない人も出てくると予想されます。
まとめ
シンギュラリティとは、人工知能(AI)が人間の知能を超える転換点、それによりもたらされる社会の変化を指す言葉です。近い未来、さらに高度な人工知能が現れることと思われます。そして、シンギュラリティが起こると、私たちの社会に多大な影響を与えることでしょう。
FP2級、CFP認定、日商簿記2級
大学卒業後、金融機関にて個人営業を担当し、資産運用の相談・保険販売などに従事。退社後、CFP認定を取得し、フリーライターとして活動。現在はクレジットカード・カードローン・保険・税金・不動産などに関する記事の執筆・監修を行う。これまでに執筆した記事は700本を超える。