医療現場の日常業務を現場目線でDX化するクラウドシステム『タグサポ』の開発・販売を行い、第3回西日本FHビジネスコンテスト「OPEN INNOVATION HUB」の優秀賞と福岡地所賞を同時受賞したタッグライン株式会社。
代表の橋本さんは、医療機器メーカーで営業を担当し、医療現場のバックヤードを見てきた経験から、このシステムの開発に取り組むと同時に会社を創業したといいます。今回は橋本さんに、起業に至った思いやこれからの展望についてお話を伺いました。
■プロフィール
タッグライン株式会社
代表取締役 橋本拓也さん
福岡市出身。福岡大学卒業後、派遣業界や家電業界で営業職を経験した後、医療機器の開発・製造・販売を行う企業に入社。営業担当として優秀な成績をおさめる。その経験を活かし、2019年9月にタッグライン株式会社を設立。
「男なら社長になりなさい」という祖母の教え
――「起業したい」という思いはいつ頃から抱いていたのですか?
橋本:おばあちゃんっ子だったのですが、その祖母からずっと「男に生まれたのだから社長になりなさい」と教えられてきました。と言われてもやりたいことが何も見つからず…、高校も大学も兄が行ったところにそのまま行き、就職も深く考えず合同説明会に来ていた企業に決めたんです。
派遣会社だったのですが、リーマンショックで事業が傾き、家電業界に転職。でも、今度は転勤が多く、医療機器の開発・製造・販売を行う企業に再度転職したところ、医療業界が自分の性質にピタッとハマりました。営業を担当していたのですが、なかなかの成績だったんですよ。
▲第3回西日本FHビジネスコンテスト「OPEN INNOVATION HUB」の様子
――そこで医療業界との運命の出会いを果たしたのですね。
橋本:そうですね。医療機器の営業や販売を行うので、毎日クリニックなど医療現場のバックヤードにお邪魔するようになりました。販売した医療機器の設置なども行っていたので、パソコンやシステムにも強くなっていって、ドクターに頼ってもらうことも多かったです。
医療業界との相性の良さを感じ、「このままこの会社で過ごしていくのかな」という気持ちになっていたのですが、独立するドクターの話に刺激を受け、「起業について考えてみよう」と奮起しました。
医療現場のバックヤードに関わる中で生まれた決意
――『タグサポ』が生まれた経緯について教えてください。
橋本:医療現場のバックヤードを見てきた営業時代、最も気になっていたのはそこで働いている方々の忙しさです。患者さんを診ることが一番大切な業務なのに、その他の雑多なことに時間を取られ過ぎているという現状がありました。
例えば、いろいろな備品を注文するのも今どきひとつずつ手書きでFAX注文したり、ノートに記入して電話注文したり、とにかくアナログなんです。医療機器の使い方も新しい看護師さんが入る度に説明しないといけない。対患者向けのものは大手企業によってどんどん便利なシステムが生まれているのに、バックヤードは手付かずの状態なことが気になり、現場業務をDX化することで働く環境を改善できないかと考えたのがきっかけでした。
――開発はいつスタートしたのですか?
橋本:『タグサポ』の開発自体は、2019年の創業と同時にスタートしました。創業からしばらくは医療機器の卸販売を当社の生業にしていましたが、それは会社の運営費や『タグサポ』の開発費用を稼ぐためです。
完成した『タグサポ』を一度ゼロに戻したこともあり、開発を終えるまでには時間がかかりました。2023年9月の商品リリース後、おかげさまで評判が口コミ等で徐々に広がり、営業に伺わなくても注文が入ってきている状態です。
――『タグサポ』ではどのようなサービスを展開しているのですか?
橋本:『タグサポ』は、医療機器の台帳作成や、それに紐づく修理・点検・契約書類の管理ができる「てんけんの窓口」と、販売店を限定せず、あらゆる消耗品や薬剤の発注がオンラインでできる「ちゅうもんの窓口」、不要になった医療機器や備品の写真をアップロードするだけで査定・買取の依頼ができる「かいとりの窓口」という3つの機能を持っています。これらのサービスによる"かゆい所に手が届く"サポートをしていきたい、というのが私たちのモットーです。
『タグサポ』から、日本の医療費削減を実現したい
――ユーザーからの評判はいかがですか?
橋本:『タグサポ』を使用したドクターが知り合いのドクターに紹介してくださったり、学会での発表の場で話をしてくださったことで遠方からの注文が入ったり、と好評いただいています。FAXを使用する機会がなくなった分、かなりの費用削減につながったという声もいただきました。
――『タグサポ』をどのように広げていきたいですか?
橋本:私は福岡市出身なのですが、医療機器メーカーにいた際に飯塚で仕事をしていたという縁からここ飯塚市で起業しました。起業の際には飯塚市にお世話になったので、まずはこのまちに恩返ししていけたら。はじめは、まずこの福岡・九州で広げていけたらとしか考えていなかったのですが、全国各地からご注文をいただくことが増え、納品できる場所ならどこにでも伺いたいと考えるようになりました。
『タグサポ』は医療業界以外でも活用できるシステムで、実際にお問い合わせもいただいていますが、まずは医療の現場にしっかりと根付かせていきたいですね。
新たに臨床工学技士もスタッフとして仲間入りしました。「てんけんの窓口」の監修を行うので、より高度なサービスを提供できますよ。
▲臨床工学技士の前川佑さん(左)
――橋本さんが目指す未来について教えてください。
橋本:『タグサポ』をより多くの医療機関に使っていただくことで、医療現場から注文を受けるメーカー側を動かし、連携することでより便利なシステムにしていくことが目標です。そうすることで、医療現場のバックヤードの業務をどんどん効率化できれば、将来的には医療費の削減にもつなげていけるのではと考えています。
タッグライン株式会社について
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817
◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」
プランナー、編集者、ライター、ディレクター
大学卒業後、印刷会社に就職し『FUKUOKA STYLE』編集部に所属。独立後は企業や官公庁、大学などの広報物の編集・取材・ライティング等に携わる。現在は福岡市内でクリエイティブオフィス「shirotoiro」を運営。プランナー・編集者・ライター・ディレクターとして活動しながら、エステサロン「momotoiro」の運営も行う。食べることが大好きですが、グルメライターではありません。