多様な生き方や働き方が広がりつつある現代。企業にはこれからますます、さまざまな人が働きやすい環境を整えることが求められます。社員の働きやすさを叶える企業の取り組みとは?
この連載では、実際に働き方改革に積極的に取り組む企業で働く人や経営者にインタビュー。今回は、熊本県を中心に、商業施設や公的機関、福祉、教育といった施設の設計・監理を幅広く手がける、熊本市の株式会社太宏設計事務所に取材しました。
※ここで紹介する企業は私募債発行に際してSDGsに資する取り組み、中でも働き方改革を積極的に行うことを要件に取り込んだ、西日本シティ銀行が提供する、次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」を発行している企業です。※私募債についてはこちら
【社員インタビュー】
株式会社太宏設計事務所 構造設計(2022年入社) 有村拓海(ありむらたくみ)さん
Q:この会社を選んだ理由、入社の決め手を教えてください。
私は中学生くらいの頃から、ものづくり、特に建築の仕事に興味を持ち始めました。きっかけは両親が自宅を新築した時、家ができていく過程を間近で見ていて、「いつか自分も大きいものをつくってみたい!」と漠然と思ったのです。その後、高校で将来の進路を考えるにあたり、大学は工学部の建築学科に進みました。
当社のことを知ったのは大学3年時の就職活動で、学科で学んでいた構造設計の仕事ができる会社を探していました。そんな時、担当教授から当社のことを紹介され、ホームページを見たのが最初です。サクラマチ
クマモトなど大きな建物を造っている会社で、ここなら構造設計の業務経験を積むことができそうだと思いました。
熊本北警察署(現・熊本中央警察署)の特徴あるデザインも印象的でしたね。その後、面接などを通して、みなさん優しい雰囲気で人間関係も良さそうだと感じ、入社を決めました。
Q:入社して感じた、この会社の良さはどのようなところでしょうか?
先輩や上司もみなさん優しく何でも話しやすい雰囲気で、風通しがよい職場だと感じています。私が在籍している構造班は自分を含めて3名で、上司から案件を割り振られて業務を行うのですが、聞きたいことも嫌な顔ひとつせず教えてもらえます。
Q:現在の業務を教えてください。
建物を建てるための構造を計算し、CADなどを使用して図面を描くのが主な業務です。出社は8:30、17:40退社で、時々残業することもあります。現地検査などで外出する場合もありますが、基本的には社内で図面を描くことが多いです。12時から1時間の昼食休憩と、午前と午後に15分間の休憩が会社で定められているので、休憩を取りそびれることがないのが良いですね。
Q:業務でのやりがいや嬉しかったことを教えてください。
2023年に竣工した保育園は、私が携わった中でも特に印象に残っています。更地の状態からの新築で、子ども達の安全を考えながら、どんな保育園が良いかを考えて設計しました。
当社が過去に手がけた他の保育園の図面も参考に、規模に適した建材など、ゼロから考えていきました。当社には構造設計一級建築士の資格を持つ先輩社員が3名いるので、いろいろご指導もいただきました。
竣工した時の達成感はもちろんですが、保育園で実際に子どもたちが楽しく遊んでいる姿を見た時は、本当に嬉しかったですね。自分が携わった建築物を通し、街や社会に貢献できるので、やりがいや達成感を得られる仕事だと思います。
Q:福利厚生や制度はどうですか?
年末の忘年会や社員旅行などがあり、社員同士の親睦を深めることができます。また、建築士など資格取得を目指す社員も多く、有資格者の先輩方からアドバイスをいただくこともあり、会社全体で応援してくれます。
私も現在、一級建築士を目指しているのですが、性格的に自宅だと気合いが入りにくいので、会社にいる間の休憩時間や終業後など、スキマ時間を使って勉強する毎日です。試験には製図があるのですが、一級建築士を取得した上司から、製図に使う道具を譲っていただいたこともあります。
Q: 仕事を通じて学んだことはありますか?
お客さまのニーズを形にするため、コミュニケーションの大切さを学びました。お客さまがどんな建物を建てたいか、希望を叶えるために自分ができることは何か。お客さまの目線で考えて設計することが大事だと、日々実感しています。
また仕事に必要な資格取得を目指すことで知識も身についていますし、自分自身も成長できていると思います。
Q:今後の目標を教えてください
将来的には私も、当社で手がけたサクラマチ
クマモトのような、街のシンボルとなる大きな建物に携わってみたいですね。また、個人の目標としては、まずは一級建築士取得を目指して勉強を頑張ります。
【トップインタビュー】
株式会社 太宏設計事務所
代表取締役 平田 有希雄(ひらた ゆきお)さん
1981年(昭和56年)生まれ、福岡県出身。大学卒業後、建設資材を扱う商社への勤務を経て、2012年に株式会社太宏設計事務所に入社。2016年、一級建築士資格取得。2022年、代表取締役就任、現在に至る。
資格取得の支援など、次世代を育てる環境を整備したい
当社は1975年(昭和50年)に創業し、2025年(令和7年)で50周年を迎えます。熊本県内の建物の設計・監理を数多く担当しており、事業の6~7割が公共事業で、学校や福祉施設といった建物の設計も多いです。熊本の皆さま、地域の人々に使っていただく施設を設計することは、社会に貢献できるという点はもちろん、社員にとってもやりがいの大きな、魅力ある仕事だと思います。
なかでも2019年に竣工したサクラマチ
クマモトの設計は、当社にとって転機となりました。バスターミナルをベースとした複合商業施設として全国的にも注目されたプロジェクトで、
日建設計さんと当社との共同事業によるものです。あれほど大規模な施設の設計に携われたことは社員たちにとっても大変勉強になったと思います。
私は大学卒業後、建築資材を扱う会社を経て当社に入社しました。同じ建設業界ではありましたが、入社当時、設計についてはまったくの初心者でした。最初は手伝いをしつつイチから設計を勉強し、意匠や構造の知識も仕事を通じて身につけていきました。設計の実務と同時に、営業、会社経営についても学ぶ日々でした。
現在、当社の社員数は約20名で男性が多いですが、女性の設計士も在籍しています。年齢層は20代から60代まで全体的にバランスよく在籍し、なかには在籍40年というベテランもいます。近年は案件増加により新卒入社も増え、若手も多くなってきました。私自身がそうだったように、仕事を通して学んでもらいながら育てています。
特に一級建築士の資格取得は、働きながら目指す社員も多いです。私の場合は、朝早く出社して勉強するのはもちろん、昼食や休憩時間、帰宅時間や休日も勉強に費やし、資格取得の学校にも通って取得しました。自分が苦労したのもありますし、今、資格取得を目指して頑張っている社員に対しては、会社としてよりバックアップできる方法を検討しているところです。
また、社員同士のコミュニケーションを深めてもらうため、年末の忘年会を行ったり、2~3年に1度、社員旅行にも行ったりしています。2024年は、熊本に台湾の企業が進出してきたこともあるので、社員旅行で台湾へ行きました。現地の建築物を見学するなど研修はもちろんですが、社員達に楽しんでもらえたのが何よりです。
変化への敏感さとコミュニケーション能力が需要
どんな分野でもそうですが、時代が変われば何でも進化していきます。さまざまな業種の施設を設計する当社では、日々新しくなる使い方や考え方に対応できる設計を発想する必要があります。そのため設計士は、常に新しいものに敏感で、知識をアップデートし続けなければいけません。
また、お客さまや工事担当者と関わる中で重要なのは、何よりもコミュニケーション力です。なかでも「聞き取る力」は重要。お客さまがおっしゃる「こんな建物にしてほしい」の“こんな”をいかに具現化し、イメージに合った設計を提案できるか。そのためには、お客さまの話をよく聞いてニーズを引き出すことが大切です。
また当社では設計の提案の際、お客さまにより伝わりやすいよう、新しいツールも導入しています。従来のCADで描いた線の図面だけでなく、BIMというソフトを使用し、3次元モデルで提示することができるので、お客さまが思い描くイメージにより近い建物を叶えることができます。
50年続いてきた当社をこの先も守り抜き、更なる成長を遂げるために。地域の皆さまに信頼され、お任せいただいたこれまでの実績を強みに、さまざまな新しいチャレンジもしていきたいと考えています。
フリーライター・編集者
福岡市出身。大学卒業後、フリーペーパー編集部や企画制作プロダクションにて編集・ライティング業務に従事。2017年よりフリーランス。未就学児2人の子育てに奮闘中。