クラウドファンディングのメリット&デメリットとは?始める前に知っておきたい基礎知識
By 田中 英哉
|プロジェクトの資金集めの手段のひとつに「クラウドファンディング」があります。クラウドファンディングは、個人でも気軽に資金調達ができる方法です。今回は、クラウドファンディングの基礎知識とメリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
クラウドファンディングとはどんな仕組み?

インターネットで資金調達を行う方法
クラウドファンディングとは、インターネットでプロジェクトの資金集めをする方法です。個人でも気軽に取り組みやすいことが特徴といえます。プラットフォームと呼ばれる募集サイトで告知をすると、プロジェクトに賛同する人が支援をしてくれ、必要資金を集められるという仕組みです。
クラウドファンディングには3つの種類がある
クラウドファンディングを大別すると、「購入型」「寄付型」「投資型」の3つがあります。そして、「購入型」には「All or Nothing(オールオアナッシング)型」と「All in(オールイン)型」の2種類があります。それぞれの種類について詳しく見ていきましょう。
種類1:購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、支援者がお金を出してくれる見返りとして、商品やサービスを提供する仕組みです。このことをリターンといいます。
単なるお金の寄付ではなく、商品サービスの提供という側面から購入型と表現されています。個人や法人を問わず、たくさんのプロジェクトが立ち上がっており、中には1億円以上を集めたプロジェクトもあります。
種類1-a:All or Nothing型クラウドファンディング
All or Nothing(オールオアナッシング)型クラウドファンディングは、指定期日までに目標金額が支援された場合にプロジェクトを履行できる反面、目標金額を達成しなければプロジェクトが成立しない形式です。
支援者がプラットフォームを通じて支援を表明しても、その時点では決済されず、指定期日に目標達成ができて初めて決済がなされます。目標達成できなければ支援金が全く入らないため、目標達成に向けてPRする必要があります。
種類1-b:All in型クラウドファンディング
All in(オールイン)型クラウドファンディングは、目標に達しなくても支援される仕組みです。支援者がプラットフォームを通じて支援を表明した時点で決済がなされます。
支援金を得るハードルが低い一方で、支援が少なければ採算割れのリスクがあります。プラットフォームへの手数料やリターンにかかる費用などに注意しなければなりません。
大手クラウドファンディング運営会社の「CAMPFIRE」を例に挙げると、現在はコロナ関連の案件が多いため、「All ㏌方式」の方が多いようです。
種類2:寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングは、クラウドファンディングのプラットフォームを通じて寄付をする仕組みです。
寄付ですから特にリターンはありませんが、プロジェクトによってはお礼状や写真を送るものもあります。被災地支援などの寄付として活用される傾向があります。
種類3:投資型クラウドファンディング
投資型クラウドファンディングはファンド型、融資型、投資型などと呼ばれ、ビジネスに対する支援をすることで、売上の分配など金銭的なリターンが得られます。つまり、ビジネス自体がうまくいくかどうかによって支援者の収益は異なります。
内容としては、不動産関連からエネルギー関係のプロジェクトまでさまざまです。支援者側は金銭的リターンを得られることから、金融商品と考えることもできるでしょう。
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クラウドファンディングで資金調達するメリット

個人でも事業へ出資してもらえる
クラウドファンディングは、個人でも出資金が得られるメリットがあります。一般的に、個人がプロジェクトの資金を集めるには高いハードルがあります。たとえば、将来性が不確実な新規事業に対しては、金融機関の融資審査は慎重にならざるを得ません。
クラウドファンディングなら、そのような場合でも支援者の賛同があれば資金を調達できるため、融資よりも資金集めのハードルが低いといえるでしょう。
自分ひとりの力だけでは実現しにくいプロジェクトに挑戦できる
クラウドファンディングを利用することで、本来ならできなかったプロジェクトへのチャレンジが可能となります。これまで資金不足を理由にプロジェクトを進められなかったとしても、クラウドファンディングで資金が集まれば、プロジェクトを具現化しやすくなるでしょう。
目的に合わせた資金調達方法を選択できる
種類やプラットフォームが豊富
資金調達の選択肢が大幅に増えることも、クラウドファンディングのメリットといえます。前述したように、クラウドファンディングは種類やプラットフォームの数が豊富であるため、さまざまなシーンに合わせた資金集めが可能です。
たとえば、日本最大級のクラウドファンディングプラットフォームである「CAMPFIRE」は多様なシーンに応じたプロジェクトが立ち上げられています。
資金調達方法のコツがつかめる
クラウドファンディングを実際に利用してコツをつかめば、今後の資金集めも有利に進めやすくなると考えられます。資金調達の手段が多いほどプロジェクトを展開しやすくなるといえるため、クラウドファンディングを有効に活用してみてはいかがでしょうか。
出資募集によりプロジェクトを知ってもらえる
クラウドファンディングのプラットフォームは多くの人が利用しています。クラウドファンディングでプロジェクトの告知をすれば、それ自体がPRとなるでしょう。
支援者があなたのプロジェクトを見るのはもちろんのこと、興味本位でチェックしている人や、ほかのプロジェクトの募集者が見る可能性もあります。多くの人に自身のプロジェクトを見てもらうことにより、広報活動を兼ねることができるといえます。
マーケティングになる
クラウドファンディングで目標達成できるかどうかは、プロジェクトが世間に受け入れられるものかどうかの目安にもなるでしょう。つまり、プロジェクトをスタートする前に、資金集めを兼ねたマーケティングができるといえます。
クラウドファンディングで支援が集まるのであれば成功するプロジェクト、集まらないのであれば改善が必要という、一つのバロメーターとして見ることができるでしょう。
現金以外のリターン設定ができる
現金以外のリターン設定ができる点もクラウドファンディングの魅力です。資金がなくて資金集めをするのに、現金をリターンに設定してしまうと本末転倒となる場合も考えられます。
しかし、商品やサービスなど現金以外のリターン設定ができることで、懐事情に合わせて利用できるというメリットがあります。
クラウドファンディングで資金調達するデメリット・注意点

失敗すれば労力だけがかかる
申し込みや担当者とのやりとり、告知文章などの作業はそれなりに時間がかかると考えられます。そのため、クラウドファンディングの資金集めに失敗すれば、時間と労力だけを費やすことになる可能性があります。
目標達成に向けて懸命にPRを行なったとしても、失敗によってすべてが水の泡となってしまうこともあるでしょう。
プロジェクトの取り下げができない
クラウドファンディングは、目標を達成するとキャンセルができません。お金は集めたもののプロジェクトがとん挫すれば、トラブルの原因となるでしょう。出資金を募集する際は、慎重に検討する必要があるといえます。
競合にアイデアを知られる
クラウドファンディングで告知することにより、競合にアイデアを知られてしまう可能性があります。競合より先回りしたつもりでプロジェクトを立ち上げたものの、資金が集まったころには類似サービスが世に出てしまうかもしれません。結果的に後発のプロジェクトとなってしまう可能性もありえます。
一定の手間がかかる
先ほども軽く触れましたが、クラウドファンディングは一定の手間がかかると考えられます。プロジェクトの具体化と必要な予算算出、プラットフォームの選定、申し込み、担当者とのやりとりなど、実務をこなさなければなりません。
その上、告知文章の作成、PR、リターンの提供にも労力がかかりますので、地道な作業が必要といえます。
手数料やリターンが負担となる問題点
クラウドファンディングは、プラットフォームによって10%~20%の手数料がかかるのが一般的です。また、一定金額分のリターンが必要であるため、目標金額によっては思ったほど純資金が集まらない可能性があります。
募集時には採算を考えた上で目標金額の設定をしなければなりません。
出資者側のメリットやリスクを理解しておく

クラウドファンディングはプロジェクトを立ち上げた募集者側だけでなく、プロジェクトへの出資者側にもメリットやデメリットがあります。募集する際の参考として、出資者側の視点も知っておきましょう。
出資者側のメリット
少額で投資ができる
クラウドファンディングでは少額から出資ができ、出資者側にとっては気軽な投資が可能です。その上、プロジェクトの内容を理解することで出資するため、複雑な金融知識は不要といえます。出資金額の設定や告知文章の内容は、気軽に投資をしてもらえるかをポイントに検討するとよいでしょう。
社会貢献しながらリターンが得られる
クラウドファンディングで個人や企業、被災地などに支援することは、一種の社会貢献です。脳科学的に、人間の脳は「人を喜ばせることで自分も幸せを感じられる」といわれています。
社会貢献で誰かの役に立ち、誰かを喜ばせながらリターンが得られるのは、まさにWin-Winの仕組みといえるでしょう。社会貢献したいという支援者の気持ちも汲みながら、プロジェクト内容や告知文章の作り込みを行うことが大切といえます。
寄付型のクラウドファンディングは節税になる
クラウドファンディングの中でも寄付型は、寄付金控除の対象となります。寄付金控除によって所得税や住民税を減額できるため、寄付型では「社会貢献しながら節税」というメリットを支援者にもたらすことが可能です。
寄付金控除は、寄付金から2,000円を差し引いた金額が翌年の税金から差し引かれます。たとえば、15,000円の支援をした出資者の場合は、13,000円が税金から引かれることになります。
出資者側のリスク
元本割れリスクがある
購入型や寄付型の場合は、それほど出資金に対するリターンを気にしないかもしれません。一方で、金銭的なリターンが得られる投資型は、利回りを意識して出資している支援者が多いと考えられます。
支援者にとっては、元本割れをしてしまうと出資した意味がありません。告知文章では、どういう場合にどういうリスクがあるのか、リターンとリスクのバランスなどをしっかり説明し、元本割れリスクに対して安心感を与えることが大切といえます。
起案者が持ち逃げするリスクがある
クラウドファンディングでは、悪質な起案者による資金持ち逃げの可能性もゼロではありません。特に購入型や寄付型では、持ち逃げとまではいかなくても、使途の確認が難しい場合もあります。
そのため、自身の所在が確認できるような告知や、実態があるプロジェクトのアピール、メディアでの紹介実績の掲載など、信頼性にも配慮しましょう。
支援の取り下げができない
先述のとおり、募集者側がプロジェクトの取り下げをできないのと同じように、支援者側も一旦行った支援の取り下げはできません。
購入型クラウドファンディングのAll or Nothing型であれば、目標未達成時に決済はされないものの、目標達成となれば決済されます。
こういった細かい仕組みを注意書きなどで丁寧に伝えると、親切かつ優良な募集者だと印象付けられるでしょう。
クラウドファンディングに失敗するとどうなる?未達成時の対処法&成功のための心得
クラウドファンディングはこんな人におすすめ

夢ややりたいことを、資金面で諦めていた人
夢ややりたいこと、実現させたいプロジェクトがあるなら、クラウドファンディングでの資金調達を検討してみましょう。クラウドファンディングは資金集めのハードルが低い方法であるため、これまで資金不足で断念していた人にもおすすめといえます。
資金繰りの選択肢を増やしたい人
先述のとおり、クラウドファンディングは気軽に資金集めができるため、新たな資金調達の手段として有効といえます。支援というマーケットの生の声を体験として集められるため、商品サービスを認知させながら資金繰りができる強みがあります。
まとめ
クラウドファンディングとは、インターネットでプロジェクトの資金集めをする方法で、「購入型」「寄付型」「投資型」の3種類が存在します。資金調達の選択肢が増えたり、PRになったりするメリットがありますが、プロジェクトの取り下げができないなどのデメリットもあります。メリット・デメリットを精査した上で、上手に活用しましょう。
- 資金調達
Writer

田中 英哉
上級心理カウンセラー、2級ファイナンシャルプランニング技能士
2級ファイナンシャルプランニング技能士の有資格者。長年のライター経験の中で、お金に関する記事を執筆。難しいお金の話しを分かりやすく伝える記事は、読者から読みやすいと好評。
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