お役立ち

【個人事業主必見】開業届の提出先とは?手続きの仕方・必要書類etc.を徹底解説

By 森本 由紀

|
公開日 2020.09.07
開業届の基礎知識

会社を作って事業を行う場合には、法律に則って会社設立の手続きを行わなければなりません。一方、個人で事業を行う場合には会社設立のような複雑な手続きはありませんが、開業届を出す必要があります。今回は個人事業主の開業届について、提出先や出し方、必要書類などを解説します。

開業届とはどんな手続き?

開業届とはどのような手続きか?専門家が解説!西日本シティ銀行

開業届とは、事業を開始したことの届出です。開業届はどんな場合に必要なのかを知っておきましょう。

個人事業主の開業に必要な届出

法人として事業を開始する場合には、まず法人格を得るために設立登記が必要です。一方、個人で事業を行う場合には、設立登記ではなく開業届の提出が求められます。開業届は、個人事業主として税金を納めるために必要な手続きです。

開業届を忘れても罰則はない

所得税法では、事業を開始したときには1か月以内に届出しなければならない旨が定められています(229条)。しかし、開業届を忘れても罰則はなく、督促されることもありません。開業届を出さなくても事業を行うことはできます。

開業届はどこに出す?

開業届の提出先はどこか

開業届は国税である所得税に関する届出です。そのため開業届の提出先は、国税に関する手続きを行う税務署となります。

納税地の税務署に提出する

税務署は全国に多数ありますが、開業届はどこにでも提出できるわけではありません。開業届の提出先は、納税地を管轄する税務署です。

納税地とは?

個人事業主の納税地は、原則的に自宅の住所になるので、自宅の住所地を管轄する税務署に開業届を提出します。自宅以外に事業所(事務所や店舗など)を設けている場合には、事業所を納税地とすることもできるので、事業所を管轄する税務署に提出することも可能です。

地方税に関する開業の届出

個人事業主には所得税だけでなく、地方税である住民税や個人事業税もかかります。地方税の手続きについても確認しておきましょう。

住民税の開業届は不要

住民税は都道府県や市町村から課税される税金です。住民税に関しては、別途開業届を提出する必要はありません。確定申告をすれば市町村にも所得が通知されるしくみになっているため、住民税の申告も不要です。

個人事業税には届出の制度がある

個人事業税は、所得が290万円を超える個人事業主に都道府県から課税される税金です。個人事業税については、都道府県税事務所などに「事業開始等申告書」を提出して開業を申告する形になっています。

ただし、事業開始等申告書を提出していなくても、確定申告をすれば自動的に都道府県にも通知され、課税される場合には納税通知書が送られてきます。この場合には、改めて事業開始等申告書を出さなくてもかまいません。

開業届の提出方法と必要書類

開業届の提出方法と必要書類を徹底解説

開業届の提出期限は開業後1か月以内ですが、1か月を過ぎてから提出しても問題はありません。以下、開業届の出し方や必要書類について説明します。

開業届の出し方

開業届の提出方法としては、次の3つがあります。

提出方法

概要

注意点

税務署の窓口に持参

税務署の開庁時間に開業届を持参

平日の8時30分~17時に税務署に行かなければならない

郵送

提出先の税務署宛に開業届を郵送

書類が間違っていた場合は訂正が面倒になる

e-Tax(電子申告)

インターネット経由で税務署に開業届を送信

事前に開始届出書を提出して利用者識別番号を取得したり、機器のセットアップをしたりする手間がかかる

必要書類や持ち物

開業届を出すとき(※窓口持参または郵送の場合)には、以下のものを用意しましょう。

個人事業の開業・廃業等届出書

開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」というタイトルの書類です。用紙は税務署でもらえるほか、ホームページからダウンロードも可能です。いずれかの方法で入手し、必要事項を記入しましょう。

押印する箇所もあるため、押印の上、念のため提出時にも印鑑を持って行くと安心です。

国税庁ホームページ 個人事業の開業・廃業等届出書

マイナンバーが確認できる書類及び本人確認書類

開業届にはマイナンバーを記入する欄があります。税務署に行くときには、マイナンバーが確認できる書類(通知カード、マイナンバー入りの住民票または住民票記載事項証明書)及び本人確認書類(運転免許証など)を持参する必要があります。マイナンバーカードがあれば、1枚で両方の書類を兼ねられます。

郵送の場合には「本人確認書類(写)添付台紙」を利用しましょう。

国税庁ホームページ 本人確認書類(写)添付台紙

届出書の控え

個人事業主が屋号で銀行口座を開設したり賃貸借契約を行ったりする場合、開業届の控えの提出を求められることがあります。そのため、提出時には届出書の控えを用意して、税務署の受付印をもらいましょう。

控えはコピーをとったものでかまいませんが、マイナンバーはマスキングする必要があります。控えをもらい忘れた場合には、税務署で開示請求をすれば入手できます。

郵送の場合:返信用封筒と切手

郵送の場合には控えを返送してもらうため、切手を貼った返信用封筒を同封します。なお、マイナンバーや本人確認書類を送ることになるため、郵便物は簡易書留などにしましょう。

開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出しよう

開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出しよう!

開業届を出さなくてもペナルティなどはありません。しかし、開業届を出せば、青色申告ができるという大きなメリットがあります。

青色申告とは?

個人事業主が確定申告する場合には、白色申告と青色申告の2種類があります。白色申告が原則的な方法で、青色申告は税務署の承認を受けた場合にできる方法です。

青色申告をすれば、さまざまな税務上の特典が受けられます。ただし、青色申告をするには、日々の取引について定められた方法で記帳し、これにもとづき正しく申告を行う必要があります。

青色申告の主なメリットは?

青色申告の主なメリットとしては、以下のようなものがあります。

青色申告特別控除

青色申告をするだけで、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。

※2020年(令和2年)度より青色申告特別控除は原則として55万円となり、65万円の控除を受けるにはe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存が必要です。

純損失の繰越控除

青色申告では純損失の繰越控除といって、赤字になった年度の損失を翌年度以降3年間、黒字の所得から差し引ける特典があります。

青色申告専従者給与

家族を従業員としている場合、青色申告専従者として届出することで、その家族に支払った給与を経費にできます。

青色申告の承認を受けるには?

所得税の青色申告承認申請書

青色申告をしたい場合には、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、承認を受けなければなりません。青色申告の承認を受けるには、開業届を出していることが前提になります。

提出の期限

青色申告承認申請書は、青色申告による申告をしようとする年の3月15日まで(事業開始が1月16日以後の場合には事業開始日から2か月以内)に提出が必要です。開業届を出すときには、青色申告承認申請書も一緒に提出しておくとよいでしょう。

国税庁ホームページ 所得税の青色申告承認申請書

まとめ

開業届の提出先は自宅の住所を管轄する税務署となり、定められた用紙に記入するだけなので、簡単に提出できるでしょう。

開業届と同時に青色申告承認申請書も出しておけば、確定申告時に青色申告のメリットが受けられます。開業届や青色申告の承認申請に費用はかかりませんので、なるべく早めに済ませておきましょう。

タグ
  • 開業届

Writer

おすすめの記事

対談記事【ビジネスのヒント】|接骨院から建設業へ。驚きの経歴と経緯
続きを読む >

お役立ち

2025.10.23

対談記事【ビジネスのヒント】|接骨院から建設業へ。驚きの経歴と経緯

経営に関する悩みや課題を抱える事業経営者の皆さまにとって、銀行の営業担当者は心強いサポーターの一人です。そこで、リニュー編集部では、事業経営者と西日本シティ銀行の営業担当者にスポットをあててインタビュー。サポートのきっかけや、事業の成功までの道のりなどをざっくばらんにお話しいただきます。

【今月のZero-Ten Park】株式会社ストリ|心と体に美しさと健やかさを
続きを読む >

ニュース

2025.09.30

【今月のZero-Ten Park】株式会社ストリ|心と体に美しさと健やかさを

福岡を中心に世界5カ国15拠点を展開するシェアオフィス&コワーキングスペース「Zero-Ten Park」。そこに入居している、今注目したい企業をピックアップ。今回は「株式会社ストリ」をご紹介します。

働き方改革に注力している企業ってどんなところ?|次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」
続きを読む >

お役立ち

2023.11.21

働き方改革に注力している企業ってどんなところ?|次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」

これから就職先を探している学生のみなさんにとって、どんな企業が自分にとって働きやすいのか、気になりますよね。そこで今回は、西日本シティ銀行が取り扱う次世代ワークスタイル応援私募債『ミライへの路*』を発行している企業のみなさんにご協力をいただき、その企業で実際に働いている若手の社員に直撃インタビュー。なぜ入社を決めたのか、実際に働いてみてどんな感じなのか、などをヒアリングしました。また、併せて、各企業の経営者にも、求める人材像や今後の展望などをお話しいただきました。取材に協力いただいた企業は、地元・福岡で働き方改革に注力している、優良企業ばかりです。ぜひ、就職希望先の候補の一つとして、働く先輩たちのリアルな声をご一読ください。

【ミライへの路に挑む企業】地球を守り働く人の成長を支える環境調査会社|株式会社ENJEC
続きを読む >

お役立ち

2025.07.18

【ミライへの路に挑む企業】地球を守り働く人の成長を支える環境調査会社|株式会社ENJEC

多様な生き方や働き方が広がりつつある現代。企業にはこれからますます、さまざまな人が働きやすい環境を整えることが求められます。社員の働きやすさを叶える企業の取り組みとは?この連載では、実際に働き方改革を積極的に取り組む企業で働く人や経営者にインタビュー。今回は、九州を中心に、水質、大気、土壌といった環境にまつわる調査・分析の事業を手がける、福岡市の株式会社ENJEC(エンジェック)に取材しました。

質の高い人材紹介サービスで、企業も求職者も従業員も幸せに |株式会社GR8キャリア 小畑和貴さん
続きを読む >

インタビュー

2025.06.11

質の高い人材紹介サービスで、企業も求職者も従業員も幸せに |株式会社GR8キャリア 小畑和貴さん

医療・福祉業界の人材紹介サービスをメインに事業展開する株式会社GR8(グレイト)キャリア。代表の小畑和貴さんは宮城県出身で福岡に移住し、住宅メーカーから人材紹介業界に転職したという異色のキャリアの持ち主です。創業から1年足らずでメンバーは20人ほどに増え、順調な滑り出しといえます。しかし、組織や利益の拡大は求めず、あくまでも「質の高いサービス提供」と「社員とその家族が笑顔で過ごせること」にこだわり続けたいという小畑さんに、その思いの根源や起業のストーリーを聞きました。

番組・動画制作から拠点の運営まで、幅広い事業を展開|株式会社move on.e 岩谷直生さん
続きを読む >

インタビュー

2025.06.02

番組・動画制作から拠点の運営まで、幅広い事業を展開|株式会社move on.e 岩谷直生さん

20歳から放送局の番組制作に関わり、個人事業主を経て、41歳で番組と動画制作を主軸にした株式会社move on.eを設立した岩谷直生さん。長年のディレクター経験を生かして、マスメディアの番組やイベントを手掛ける一方で、子どもに向けた全く新しい事業にも意欲的にチャレンジしています。

【事業継続力強化計画認定制度】概要や認定のメリット、申請支援事業も紹介
続きを読む >

お役立ち

2025.11.25

【事業継続力強化計画認定制度】概要や認定のメリット、申請支援事業も紹介

近年、地震や台風などの自然災害、感染症の流行など、企業経営を取り巻くリスクが多様化しています。 こうした中で注目されているのが、災害や緊急事態に備えて事業を継続できる体制を整える「事業継続力強化計画(BCP)」です。 この計画の認定を受けることで、補助金申請時の加点や税制優遇など、さまざまなメリットがあります。 そこでこの記事では、事業継続力強化計画認定制度の概要や認定メリットに加えて、計画策定・申請を支援する取り組みについても解説します。

【中小企業必見】最低賃金引上げに伴う負担軽減策とは?福岡県の支援策も紹介
続きを読む >

お役立ち

2025.11.25

【中小企業必見】最低賃金引上げに伴う負担軽減策とは?福岡県の支援策も紹介

令和7年度の最低賃金引上げにより、全国的に人件費の負担が増加しています。特に中小企業や小規模事業者にとっては、賃上げへの対応が経営上の大きな課題となっています。 こうした状況を受け、国や自治体では、最低賃金の引上げに伴う事業者の負担を軽減するため、各種支援策を打ち出しています。 この記事では、最低賃金引上げに対応するための国の主な支援策に加え、福岡県独自の支援制度について解説します。