国民年金基金に加入されている方の中には、「途中で加入資格を失ったらどうしよう…」と不安を感じている方もいます。国民年金基金といえば、自営業者にとっては老後の命綱といっても過言ではない制度です。予期せぬ資格喪失は、避けたいですよね。
そこで今回は、国民年金基金で資格喪失になる要件や喪失時の手続きなどよくある疑問にお答えします。
国民年金基金は解約や納付の一時停止ができない制度
まずは、他記事同様に国民年金基金の基本についてお伝えします。既に他の記事をご覧いただいている人は読み飛ばしていただいて大丈夫です。
国民年金基金とは、自営業者を代表とした「第1号被保険者の方」に限って加入できる年金制度です。加入は口数制になっており、何口加入したかで月々の掛金と将来的な年金額が決まります。
そして、国民年金基金は一旦加入すると口数の増減はできますが、途中での任意の解約や納付の一時停止などはできない制度です。2口目以降の掛金増減は自由なものの、1口目だけは途中で止めることはできず、途中での掛金引き出しなどもできません。これは、見方によってはデメリットですが、手元にお金があると使ってしまう方や将来の確固たる備えを作りたい方にとってはメリットかもしれませんね。
任意加入の制度とはいえ継続は力なり!
あくまで国民年金基金とは「任意加入の制度」です。国民年金の保険料とは違い、掛金支払いも強制ではありません。また、もし納付が遅れたとしても過去2年分までなら追納できます。
追納できなくても、納付しなかった額に応じて将来の年金額が減額されるだけですので心配は要らないでしょう。とはいえ、なるべく支払いを続けられることが一番なので、まずは最低掛金額からスタートし、なるべく長い期間運用できる状態にするのが好ましいです。継続は力なりです。
強制的に資格喪失になる要件
次は、強制的に資格喪失になる要件についてお伝えします。国民年金基金は任意に脱退することはできない一方、加入資格を失うと脱退扱いです。具体的には、以下が要件になります。
第1号被保険者でなくなった時(海外転居や会社員になるなど)
被扶養配偶者(第3号被保険者)になった時
職能型基金に加入の方が対象の仕事を止めた時
農業者年金に加入した時
国民年金保険料で免除を受けた時(産前産後の免除を除く、法定免除者は例外アリ)
国民年金の任意加入被保険者でなくなった時
60歳になった時
65歳になった時(60歳以降に加入した場合)
本人が亡くなった時
それぞれの要件について「一定の例外規定」もあるものの、上記以外での脱退はありません。資格喪失が怖い方は安心に繋げる一方、国民年金基金を脱退したい方は参考にしてください。
会社員へ転職や結婚、転居をするときに注意が必要
一般的な自営業者なら、年齢関係を除いて「会社員へ転職、結婚や転居」が該当しやすいでしょうか。また、著しく売り上げが下がり、本体である国民年金の保険料を免除してもらうケースもありうるかもしれませんね。ちなみに国民年金基金は、掛金全額が所得控除になる上に終身年金です。それでも脱退したい方はともかく、そうでない方は上記にだけは注意しつつ、今後もしっかり掛金支払いを続けていきましょう。
資格喪失したら、脱退届で手続きしよう
今度は、加入資格を喪失した時の手続きについてお伝えします。国民年金基金は加入資格を喪失しても掛金が返還、清算される訳ではありません。
資格喪失までに支払った掛金は、将来的に年金として受け取ることになりますから、ちゃんと手続きしておくことが大切です。
そして、資格喪失時に必要な手続きとは脱退届になります。正確には「資格喪失届」です。この書類に当人の個人情報と「資格喪失の日付と理由」を書いて国民年金基金に送ります。また送付時には、資格喪失の理由を明らかにできる証拠書類の添付も必要です。
ちなみに上記の資格喪失届は、国民年金基金の公式サイトからダウンロードすることができます。「各種届出等」のページから手に入れましょう。
15年未満の加入期間なら、年金支給義務承継通知書が届く
一部例外もあるものも、国民年金基金への加入期間が15年未満の場合、加入していた基金ではなく将来的に国民年金基金連合会があなたに年金を支払ってくれます。そして、そのための年金原資が連合会に移ったことを知らせてくれるのが「年金支給義務承継通知書」です。
この通知書は、資格喪失手続きの約3ヶ月後に届きます。国民年金基金に加入していた時の「加入員証」とともに、大切に保管しておきましょう。
国民年金基金には一部「継続特例」がある
今度は、加入資格の喪失に関する「継続特例」についてお伝えします。先ほど「資格喪失になる要件」をお伝えしましたが、やはり何事にも例外や特例があるものです。
まず「職能型基金に加入の方が対象の仕事を止めた時」の場合、別の国民年金基金に引き続き加入すると、掛金が以前のままとなります。
また「海外転居」の場合は、国民年金の任意加入手続きをするとともに改めて国民年金基金の加入手続きをすれば、以前のままの掛金で続けられるのでお得です。
ただし、それぞれ資格喪失後3ヶ月以内の手続きが必要になります。新規加入となると年齢などで加入が不利になりますから、早めにしっかり手続きしましょう。
まず資料請求してみよう
本体の国民年金もそうですが、国民年金基金も掘り下げると十分に複雑な制度です。それなりに例外的な要素も多めにあります。どうしたらいいのか分からなくなった時には、まずは資料請求。お手元に届いた資料に記載されている問合せ先に連絡を取るのがおすすめです。資料がお手元にあった方がスムーズに話が進められるからです。分からないからと放置しておくことが、思わぬ損の第一歩です。
加入は紙の申込書で!
最後に、念のため国民年金基金への加入方法についてお伝えします。国民年金基金に加入したい時は、まずは【資料請求はこちら】のボタンをクリックし、資料請求してください。金融機関が運営するページですので安心安全です。
資料が到着増したら、同封されている申込書、正確には「加入申出書」に必要事項を記入し、返送するだけで手続き完了です。
その後、まずは「加入員証」が手元に届き、申込2ヶ月後くらいから掛金の引き落としが始まっていく流れです。ちなみに掛金支払いは60歳になるまでの期間続きます。状況に応じて加入口数を増やしたり減らしたりできますので、安心してください。あなたの経営状況に合わせて、ムリのない範囲で加入を続けましょう。
支払い方法は口座振替だが、前納もできる
基本的な国民年金基金の掛金の支払い方法は、毎月の口座振替になります。その一方、国民年金基金では一年分を前納して、0.1ヶ月分の割引サービスを受けることも可能です。また割引はないものの、一定期間分の掛金を一括して納付することもできます。
手元にお金があると使ってしまうような方は、これらの利用を検討するのも一手ですね。存分に国民年金基金を利用し、節税しながら老後対策に励んでいきましょう。
国民年金基金の資格喪失、選択権があるならよく考えて実施しよう
国民年金基金とは、自営業者にとって節税にも老後対策にもなる大切な制度です。その加入資格の喪失は、あなたの将来に悪影響を及ぼすかもしれません。特に自発的・自主的に資格喪失するような場合は、「十分に考えて」国民年金基金を止めましょう。
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CFP®、一級FP技能士
山本FPオフィス代表。商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て2008年8月、山本FPオフィスを設立し、同代表就任。 現在は日本初の「婚活FP」として、婚活パーティを開催しながら婚活中の方や結婚直後の方など、主に比較的若い方のご相談を承っています。また「農業FP」としても活動をはじめ、独立10年を機に「後輩育成」にも力を入れています。