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確定申告が必要なケースとは?対象・申請のやり方・必要書類を確認しよう

By 竹国 弘城

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2021.03.08
確定申告が必要なケース

確定申告は、主に個人事業主やフリーランスの人が行うものですが、最近では会社員が副業で収入を得て、確定申告が必要になるケースなども増えています。確定申告とはどのようなもので、誰が対象になるのか、申告の仕方や必要となる書類なども併せて確認しておきましょう。

確定申告とは?

確定申告の流れ

確定申告は、自身で税金を計算し、税務署に申告して納税するまでの一連の手続きをいいます。

確定申告では、1月1日から12月31日までの1年間に得た収入から、その収入を得るためにかかった費用を差し引き、所得を計算します。所得から所得控除を差し引き、税率をかけて計算した所得税額から税額控除を差し引いたものが、実際に納める税額となります。

これらの一連の計算結果をまとめて作成した「確定申告書」を、原則翌年の2月16日から3月15日の間に税務署へ提出し、納税すれば手続きは完了です。

還付申告

申告する所得がなく、払い過ぎた税金の還付を受けるための「還付申告」を行う場合は、翌年1月1日以降5年以内であればいつでも申告できます。

【ケース1】確定申告をしなければならない人

以下のように給与所得以外の所得がある人は、原則確定申告をしなければなりません。

>>確定申告をしないとどうなる?無申告の場合のペナルティやデメリットは?専門家に聞きました

1.個人事業主など事業所得がある人

個人自業主(自営業者・フリーランス)のように、事業所得がある人は確定申告が必要です。会社などに属さず個人で収入を得た場合、経費を差し引いて残った利益は事業所得となり、確定申告をしなければなりません。

2.家賃収入など不動産所得がある人

保有している不動産から家賃収入や賃料収入を得ているなど、不動産所得がある人は確定申告が必要です。

3.金融商品の売買等による所得がある人

譲渡所得・配当所得・雑所得

株の売買で得た所得は「譲渡所得」、受け取った配当金は「配当所得」、FXや先物商品などで得た所得は「雑所得」となり、確定申告が必要です。

ただし、源泉徴収ありの特定口座内で生じた所得は、所得税と住民税が源泉徴収されます。そのため、NISA口座やつみたてNISA口座内で生じた利益は非課税となり、いずれも確定申告は不要です。

また、年末調整の対象者で本来確定申告が不要な人については、給与所得を除く他の所得と合わせて20万円以下であれば、確定申告をしなくてもかまいません(個人住民税の申告は必要です)。

4.年金収入400万円超の年金生活者

年金所得者の確定申告不要制度の対象とならない人が該当します。

5.高額な懸賞を当てた人など

営利目的で継続的に行う行為から生じた所得以外で、労働や資産を売却した対価でもない次のような所得は、「一時所得」として確定申告が必要です。

●          懸賞や福引の賞金・賞品(いわゆる宝くじは非課税なので申告は不要です)

●          競馬や競輪の払戻金

●          生命保険の一時金・損害保険の満期返戻金など

●          法人から贈与された金品

●          遺失物を拾った人、埋蔵物を発見した人が受け取る報労金など

一時所得の金額は、上記の収入を得るために要した支出と、最高50万円の特別控除額を差し引いて計算します。収入を得るために要した支出を差し引いた後の収入が、年間50万円以下であれば確定申告は不要です。

【ケース2】確定申告が不要な人

確定申告が不要な人とは??

所得があれば確定申告を行うのが原則ですが、次のような人は確定申告が不要です。

1.会社員や公務員など

年末調整の対象となる給与所得者

会社員(サラリーマン)や公務員などの給与所得者の多くは、「年末調整」の対象となります。勤務先が所得税額の計算から納税までの手続きを行うため、自身で確定申告をする必要はありません。ただし、詳しくは後述しますが、年末調整の対象とならない人は給与所得者であっても確定申告が必要です。

2.年金生活者

年金収入400万円以下で源泉徴収の対象となる人

公的年金等(※)からの収入が400万円以下かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となっており、公的年金等以外の雑所得金額が20万円の人は、「年金所得者に係る確定申告不要制度」の対象となり、確定申告が不要です。

(※)国民年金、厚生年金、恩給、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、一定の外国年金など

3.経費や控除を差し引くと所得がマイナス(赤字)になる人

収入があっても経費や控除のほうが多く、所得がマイナス(赤字)になる人は確定申告が不要です。ただし、帳簿の記帳や領収書の保管は確定申告をしない場合でも必ず行いましょう。税務調査が入った場合に、帳簿や領収書がなく赤字を証明できないと、無申告のペナルティを課せられるおそれがあります。

【ケース3】給与所得者でも確定申告の対象となる人

1.年末調整の対象とならない人

給与所得者のうち、「年収が2000万円を超える人」「災害減免法の適用を受けて、給与からの所得税・復興特別所得税の源泉徴収の猶予や還付を受けた人」は年末調整の対象とならないため、自分で確定申告をしなければなりません。

2.年末調整や源泉徴収の対象とならない所得がある人

副業で事業所得や雑所得がある人

会社員などの給与所得者が副業として個人で得た所得は、個人事業として認められる場合は事業所得、認められない場合は雑所得となり、確定申告が必要です。

ただし、年末調整対象者で、給与所得を除く所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。確定申告をしない場合でも、個人住民税の申告は必要なので注意しましょう。

複数の勤務先から給与を受け取っている人

複数の勤務先から、源泉徴収の対象となる給与を受け取っている人が該当します。年末調整されない給与の収入金額と、給与所得・退職所得を除く所得金額の合計が20万円を超える人は確定申告が必要です。

ただし、すべての給与所得の収入金額から所得控除(※)を差し引いた金額が150万円以下かつ、給与所得・退職所得を除く所得金額の合計が20万円以下の人は、確定申告が不要です。こちらに当てはまって確定申告をしない場合でも、個人住民税の申告は必要です。

(※)雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く

源泉徴収されていない退職金を受け取った人

「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった人、源泉徴収の対象とならない外国企業からの退職金を受け取った人などが該当します。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、国内企業から受け取る退職金は、所得税等が源泉徴収されているため確定申告は不要です。

親族が経営する会社から給与以外の支払いを受けた人

親族が経営する会社で働いていて、給与以外に、貸付金の利子や店舗・工場などの賃貸料、機械器具などの使用料の支払いを受けた人が該当します。

給与から所得税等が源泉徴収されない人

在日外国公館(大使館)に勤務する人や家事使用人(家政婦)などが該当します。

>>住民税が非課税になるのは年収いくらまで?非課税世帯の条件&メリット・デメリット

【ケース4】税金の還付のために確定申告をしたほうがいい人

【ケース4】税金の還付のために確定申告をしたほうがいい人

確定申告をすることで、払い過ぎた税金の還付を受けられる場合があります。税金の還付を受けるための確定申告は任意ですが、次のような人は確定申告をしたほうがいいでしょう。

1.住宅ローン控除を受けられる人

住宅ローン控除は、住宅ローンを組んで住宅を購入し、一定の条件を満たす場合に利用できるものです。年末時点の住宅ローン残高の1%相当額が、所得税と住民税の一部から控除されます。税金から直接控除される税額控除のため、大きな節税効果が期待できます。

この住宅ローン控除を受けるためには、確定申告が必要です。また、年末調整の対象になる人の場合、1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。

>>確定申告で住宅ローン控除を受けよう!必要書類から申請方法までわかりやすく解説

2.事業で損失が出た人

繰越控除

事業を行っていて、利益が出ていなければ確定申告をしなくても構いませんが、取引先に源泉徴収された所得税がある場合などは、確定申告をすることで還付を受けられます。

また、青色申告をすれば繰越控除が適用され、翌年以降3年間に損失を繰越して利益と相殺できるため、税負担が軽減されます。

3.投資で損失が出た人

繰越控除

「源泉徴収ありの特定口座」で取引している場合、通常は確定申告は不要ですが、確定申告をすることで取引の損失を翌年以降3年間に繰り越せます。

損益通算

複数の証券会社の「源泉徴収ありの特定口座」で取引している場合、確定申告をすれば、A社の損失をB社の利益と相殺(損益通算)するといったことができます。

利益の出ている口座と損失が出ている口座がある場合は、損益通算で税金が還付されるため、確定申告をしたほうが有利です。源泉徴収ありの特定口座内の損益について確定申告をするかは、証券会社ごとに決められます。

4.課税所得が900万円以下で株や投資信託の配当を受け取った人

配当控除

株や投資信託から受け取る配当金(分配金)は、配当所得として支払時に20.315%の税金が源泉徴収されます(上場株の配当の場合)。「源泉徴収ありの特定口座」で受け入れた配当は原則確定申告が不要ですが、確定申告をして総合課税を選択すれば「配当控除」を受けられます。

一般的に、配当所得を含めた課税所得が900万円以下(会社員の場合、年収約1160万円以下)の人は、配当控除を受けることで税負担が減ります。ただし、国民健康保険加入者や配偶者の扶養に入っている人などは、保険料が上がったり、配偶者の控除が減ったりして負担が増えるおそれもあるので注意が必要です。

5.一定以上の医療費などを支払った人

医療費控除

年間10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を超える医療費を支払った人は、確定申告をすれば医療費控除が受けられ、税金が安くなります。対象となる医療費には、生計を同じくする家族のために支払った医療費も含まれます。

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」

年間1万2000円を超える医薬品などを購入した人は、医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」の適用を受けられます。医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないため、両方の要件を満たしている場合は、どちらか一方を選択する必要があります。

6.災害や盗難・横領などで損害を受けた人

雑損控除

災害や盗難・横領といった損害を被った場合、確定申告をすれば「雑損控除」を受けられ、以下のいずれか多いほうの金額が所得から控除されて税金が安くなります。

●          差引損失額(※1)ー総所得金額等×10%

●          差引損失額のうち災害関連支出(※2)の金額ー5万円

(※1)差引損失額=損害金額+災害に関連したやむを得ない支出ー保険金等で補てんされる金額

(※2)被害を受けた資産の取り壊しや除去にかかる支出

7.国などへの寄付やふるさと納税をした人

寄附金控除

「寄附金控除」の対象となる寄付をした人は、確定申告により寄付額の一部が所得から控除され、税金が安くなります。「ふるさと納税」も寄付金控除を利用した制度であり、そのメリットを得るには原則確定申告が必要です。

本来確定申告が不要な人は「ふるさと納税ワンストップ特例」の対象

「ふるさと納税ワンストップ特例」により、本来確定申告が不要な給与所得者などは、所定の条件を満たす場合に限り、確定申告をしなくても控除を受けられます。

条件は、「ふるさと納税を行う自治体が5団体以内」かつ「期限内に自治体あてに申請書を提出する」というものです。6団体以上にふるさと納税をした場合は、すべての自治体分について確定申告が必要になります。

ワンストップ特例を利用する場合、所得税からの控除は行われず、全額が翌年度分の住民税から控除されます(控除合計額は確定申告をする場合と同じです)。

8.年の途中で退職し年末調整を受けていない人

年の途中で退職し、再就職していない人、あるいは独立して個人事業主になった人は、年末調整が行われておらず、源泉徴収によって所得税を納め過ぎたままになっています。この場合、確定申告をすれば納め過ぎた税金が還付されます。

ただし、以下のいずれかに該当する人は、年の途中での年末調整の対象となるため、そのほかに所得がなければ確定申告は不要です。

●          死亡により退職した人

●          著しい心身の障害のために退職した人(退職後、再就職して給与を受け取る見込みのある人は除く)

●          12月支給分の給与等を受け取ってから退職した人

●          パートで働いており、その年に受け取った給与の総額が103万円以下で退職した人(その年に他の勤務先から給与の支払いを受ける見込みのある人を除く)

確定申告に必要なもの

確定申告に必要なもの

確定申告のメインとなる確定申告書の作成には、主に次のようなものが必要です。

収入を証明する書類

申告者の収入(所得)の種類に応じて、収入金額を証明する書類が必要です。

●          給与収入がある人:申告する年分の給与所得の源泉徴収票

●          年金受給者:申告する年分の公的年金等の源泉徴収票

●          その他の収入がある人:収入金額と必要経費の分かる書類

事業所得・不動産所得・山林所得がある人

事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある人は、「青色申告決算書」(青色申告をする場合)または「収支内訳書」(白色申告をする場合)をあらかじめ作成しておく必要があります。

青色申告決算書・収支内訳書は、市販の会計ソフトなどを使えば、自分でも比較的簡単に作成できます。難しい場合は税務署または税理士に相談しましょう。

決算書等の作成には、収入や取引の明細、経費の領収書などが必要となるため、日頃からしっかり管理して保存しておくことが大切です。取引や経費などが多いと作成に時間がかかることもあるため、申告期限までに余裕を持って準備しましょう。

所得控除を受けるために必要な書類(必要な場合のみ)

社会保険料控除や医療費控除などの所得控除を受けるには、支払った金額を証明する書類が必要です。

所得控除の種類

必要書類

社会保険料控除

社会保険料(国民年金保険料)控除証明書など

生命保険料控除・地震保険料控除

生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書

小規模企業共済等掛金控除
(小規模企業共済、iDeCoなど)

掛金額の証明書

医療費控除

医療費控除の明細書、医療費通知(原本)

寄付金控除

寄付金の受領書

給与所得者で年末調整を受けている人の場合、年末調整時に受けた控除の証明書類は不要です。控除額は年末調整後に発行される源泉徴収票に記載されています。

住宅ローン控除を受けるために必要な書類(必要な場合のみ)

一般新築住宅を購入した場合のように、初めて住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受ける人は、以下の書類が必要です。

●          住宅借入金等特別控除額の計算明細書

●          住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書

●          住宅の登記事項証明書

●          住宅の工事請負契約書または売買契約書

●          土地の登記事項証明書・売買契約書(土地購入資金の借入に控除を受ける場合)

●          補助金決定通知書など、補助金等の額を証する書類(補助金等の交付を受けた場合)

●          贈与税申告書など、住宅取得等資金の額を証する書類(住宅取得等資金の贈与特例を受けた場合)

上記のほか、認定住宅では「認定住宅であることを証する書類」、中古住宅では「耐震基準を満たすことを証明する書類」が必要になります。

>>確定申告で住宅ローン控除を受けよう!必要書類から申請方法までわかりやすく解説

そのほかに必要なもの

●          印章

●          申告者(納税者)のマイナンバーカード、または通知カード

●          申告者名義の預貯金口座が分かるキャッシュカードや通帳など(税金の還付がある人のみ)

●          配偶者や専業従事者のマイナンバーカードがわかるもの(該当者がいる場合のみ) など

確定申告の手続きの方法

確定申告の手続きの方法

必要なものを準備したら、次のような手順で確定申告を行います。

【手順1】確定申告書の作成

確定申告書は、国税庁のホームページに設置されている「確定申告書等作成コーナー」から作成が可能です。準備した書類などで金額を確認し、画面の指示に従って入力すると、税額などは自動計算されます。

【手順2】税務署へ提出

完成した確定申告書は、印刷して添付書類とともに書面で提出する方法、e-Taxを利用してデータで送信する方法(電子申告)のいずれかで税務署に提出します。

青色申告を行うなら電子申告がおすすめ

2020年(令和2年)分以降の申告から、青色申告者に適用される「青色申告特別控除」の適用要件が改正されました。内容としては、書面で確定申告書を提出する場合の控除額が55万円に引き下げられるというものです。

ただし、e-Taxを利用した電子申告、または電子帳簿保存を行う人は、引き続き65万円の控除を受けられます。事前に準備する必要はありますが、青色申告を行うのであれば電子申告をするほうがいいでしょう。

【手順3】税金の納付・還付

確定申告書を提出したら、税金の納付または還付を受けて手続きは完了です。

納付する税金がある人

税金の納付は、金融機関または税務署の窓口のほか、コンビニ、ネットバンキング、口座振替、クレジットカードのいずれかで、納期限(原則3月15日)までに行います。

税金の還付を受けられる人

還付される税金がある場合は、申告手続き後1ヶ月から1ヶ月半後に、確定申告書に記載した本人名義の預貯金口座情報に振り込まれます。

>>確定申告をしないとどうなる?無申告の場合のペナルティやデメリットは?専門家に聞きました

まとめ

確定申告は、自営業やフリーランスといった個人事業主だけが行うものではなく、年末調整や源泉徴収の対象とならない所得を得れば、誰でも必要となる可能性があるものです。確定申告が必要なケースに当てはまるかを確認し、わからない点は税務署に相談しながら確定申告を行いましょう。

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