男性の政治家や著名人が率先して育休を取るなど、夫婦で協力して子育てを行うスタイルを見聞きすることも増えてきました。同時に、育児休暇をはじめとした給与所得者の子育てに関する支援は、近年幅広くなっています。本記事では、2021年(令和3年)度に新設される新しい子育て支援についてまとめていきます。
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子育て支援企業に支給される新たな補助金とは
2021年(令和3年)1月から始まる通常国会で提出予定の「子ども・子育て支援法改正案」に、補助金の新設を盛り込むことが報道されました。それに伴い、2021年(令和3年)度予算案には、関連費用として内閣府が2億円を計上したことも報じられています。
補助金の概要
従業員の育児休業の取得などを具体的に実践する中小企業に対し、政府は補助金を支給する方向で調整しています。仕事と育児の両立支援を目的とし、一定の基準に達している企業には年50万円が支給されます。
補助金の対象は?
今回新設される補助金の対象は、あくまで「中小企業」です。中小企業は大企業よりも従業員の子育て支援が遅れているとされています。そのため、補助金によって中小企業の育児休暇取得などの環境を整備するという狙いがあります。
補助金新設の背景
国が主導して行う今回の改正案新設ですが、この背景には「働きながら子育てをする世代を企業あるいは国全体でサポートしよう」という姿勢が見えます。
実際に政府は、近年問題となっている待機児童解消のための「新子育て安心プラン」も策定しています。これは、2023年(令和5年)〜2026年(令和8年)度末の4年間で、14万人分の保育の受け皿を整備する内容となっています。
補助金新設は待機児童解消につながる施策の一つ
2021年(令和3年)度新設の子育て支援策には、中小企業への補助金給付以外にも、保育環境の整備に関する内容が盛り込まれています。具体的に言及されている内容として、「保育士の確保や保育施設の整備」「育児休暇の取得促進」などがあります。
これらを待機児童解消の重要な施策と位置づけ、この一環として補助金の新設を決めたという背景があります。
新設される補助金の受給条件とは?
受給条件
新設される子育て支援の受給条件は、「くるみん」「プラチナくるみん」の認定を受けている中小企業であることです。くるみん・プラチナくるみんの概要を確認しておきましょう。
くるみんとは
くるみんとは、一定の子育てに関する基準を満たしていると厚生労働省が認定した場合に、「子育てサポート企業」として発行される「くるみんマーク」のことです。
簡単にいうと、くるみんマークの認定は子育てに対して寛容な姿勢であるというひとつの目安です。正式には「次世代認定マーク」といいますが、愛称のくるみんが使われることが多いです。
くるみん認定のメリットとは
企業がくるみんマークの認定を受けると、さまざまなメリットがあります。
例えば、くるみんマークを商品や求人広告などに付けて、子育てサポート企業であることをアピールできます。これにより、企業イメージの向上、優秀な従業員の採用および確保・定着などが期待できます。
ほかにも、増改築した建物等について割増償却ができるなどのメリットもあります。
プラチナくるみんとは
プラチナくるみんとは、すでにくるみんマークの認定を受けている企業のうち、より高い水準の取り組みを行った企業に対するものです。必要書類を添えて申請することにより、厚生労働省から「優良な子育てサポート企業」として認定を受けられます。
プラチナくるみん認定のメリットはくるみんの場合とほぼ同様ですが、さらに「公共調達の加点評価」を受けることができ、企業全体にとって大きなメリットがあります。
くるみん取得に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
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現行の子育て支援制度について
今回紹介した2021年(令和3年)度の子育て支援制度の新設は、十分期待できる内容です。また、現行の支援制度においても、充実した内容の給付金などが揃っています。これらを正しく知って本来もらえるお金を把握し、有効に活用していきましょう。
以下、それぞれの概要と申請方法などについてまとめていきます。
出産育児一時金
子どもを出産した場合にもらえるのが「出産育児一時金」です。出産一時金として42万円が給付されます。勤務先に所定の書類を提出することで、加入している健康保険組合から給付を受けることになります。(国民健康保険に加入の場合は、自身で市町村窓口へ提出)
出産手当金
出産手当金は、会社員や公務員などの給与所得者のみが対象となります。産前42日、産後56日の間、標準報酬日額の3分の2が勤務先の健康保険から支給されます。出産手当金の申請の流れに関しては勤務先へ相談しましょう。
児童手当
児童手当とは、中学卒業までの子どもに対して一律の金額を給付するものです。3歳未満では一律1万5,000円、3歳以上から小学校修了前までは一律1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律1万円です。
子どもが生まれたら、現住所のある市町村へ「認定請求書」を提出して申請します。その認定が済めば、原則として年3回(6月、10月、2月)に分けて支給されます。
子どもの医療費助成について
子どもの医療費助成については、住んでいる地域でそれぞれ制度が設けられています。例えば、中学校卒業までの子どもは1か月の医療費上限額が数百円程度で済む場合もあります。あらかじめ行政窓口で確認しておくと安心です。
育児休業給付金
育児休業給付金とは、会社員や公務員などの給与所得者が育児休業中に受け取ることができる給付金です。ただし、この給付金を受け取るにはいくつか要件があり、全てを満たす必要があります。
● 雇用保険に加入している給与所得者であること
● 1歳未満の子どもがいること
● 育休前の2年間のうち、1か月に11日以上働いた月が12か月以上あること
● 育児休暇中に就業している日が1か月のうち10日以下であること
● 育児休暇中の1か月ごと、休業開始前の1か月の給料の8割以上が支払われていないこと
雇用保険加入で正社員として勤務している場合は、条件に当てはまると推測されます。
一方、雇用保険には加入しているものの契約社員やパートとして勤務している人は、支給対象とならない可能性があります。事前にこれらの要件について勤務先に確認しておくことをおすすめします。
新設の子育て支援に関するまとめ
2021年(令和3年)度より、子育て支援の充実を図るための制度が新しく始まります。これにより、育児をしながら働く世代の負担が軽減され、子育てしやすく働きやすい環境作りが期待されます。また、新制度だけではなく、従来の子育てに関する給付金や勤務先(健康保険組合)の助成なども前もって確認しておきましょう。
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芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。