「債権保証サービス」は、取引先の倒産などで売上代金を回収できないリスクを低減するための仕組みです。今回は債権保証サービスの特徴やその仕組み、メリットについて解説していきます。
債権保証サービスとは
債権保証サービスは掛け取引(売掛)のリスクを防ぐもの
債権保証サービスの仕組み
債権保証サービスとは、取引先の倒産などによって売上代金の未回収や支払い遅延などが発生した場合に、売上代金の全部または一部を保証してくれる仕組みです。債権保証サービスは掛け取引のリスクを回避するために必要とされています。
掛け取引とは
掛け取引とは、商取引において商品やサービスを先に販売・提供し、その代金を後日受け取るというものです。日本においては、取引先に対する信用にもとづいて商取引が行われてきたという取引慣行により、掛け取引が一般的となっています。
しかし、掛け取引では商品やサービスを販売・提供したにもかかわらず、取引先の倒産や支払い遅延などによって代金を支払ってもらえないというリスクがあります。
買取型ファクタリングとの違い
債権保証サービスと似たようなサービスに、「買取型ファクタリング」があります。買取型ファクタリングは、倒産の発生などとは関係なく、売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を保証会社から受け取ります。
債権保証サービスでは倒産や支払い遅延が起こらなければ売掛債権を現金化できないため、この点において違いがあります。
債権保証サービスの3つの種類
債権保証サービスは以下の3つに分類されます。それぞれコスト面やリターンなどにおいてメリット・デメリットがあります。会社の経営方針や与信管理、資金計画、保証料などによって比較検討し、最も自社に合うサービスを選択することが重要です。
(1)取引信用保険
取引信用保険は、取引先の倒産などの際に損害を補償してくれる保険サービスです。一般的には、継続的な取引先を対象として包括的に保証されます。取引先が突然倒産したなどの不測の事態にも資金を確保することが可能です。
取引信用保険では取引先のすべてを対象に設定できます。あるいは、「売上高または売掛金残高の上位〇位、債権残高〇円以上のすべての取引先」などといった設定もできます。
(2)保証ファクタリング
保証ファクタリングは、貸し倒れなどによる損失を保証会社が保証してくれるサービスです。信用力に乏しい取引先を対象として、基本的には数社にわたる売掛債権がまとめて保証されます。
保証会社は取引先の信用調査を行い、保証限度額を決めます。万が一取引先が倒産した場合は、売掛債権の全部または一部の保証金が支払われます。
保証ファクタリングは、特に新規の取引先に対する信用調査を含めて利用されるケースが多くなっています。
(3)個別債権保証
債権保証会社が、個々の取引に対する貸し倒れなどによる損失を保証するサービスです。個々の取引先ごと、あるいは取引先との個々の取引ごとに保証契約をすることが可能です。
同じ取引先であっても、継続的な取引とともに、単発で高額な大口取引をするケースがあります。大口取引の売掛債権を回収できなかった場合、自社に対して大きな影響が及ぶでしょう。取引ごとに個別債権保証を利用していれば、このようなリスクに備えられます。
債権保証サービスを利用するメリット
売掛金の回収が保全される
取引先に対して商品を販売した場合でも、確実に販売代金(売掛金)を回収できるとは限りません。代金を回収できなければ、自社の財政状態にも大きく影響します。
債権保証サービスを利用すれば売掛金の回収が保全され、万が一回収ができなくなった場合でも資金を確保できます。売掛金が未回収になる不安から解放されるため、安心して取引を継続できるでしょう。
売上拡大につながる
債権保証サービスを利用すると、新規の取引先であっても信用力を気にせずに取引を開始できます。また、既存の取引先においても心配なく取引量を増やすことができるため、売上拡大につながります。
与信管理に関するコストを削減できる
取引先の調査費用、売掛債権の管理、倒産した際の弁護士費用、それらに関わる人件費など、与信管理には多くのコストがかかります。債権保証サービスを利用すれば、これらの与信管理に関するコストを削減できます。
売掛債権保証会社の調査を参考にできる
債権保証サービスを利用する際には、債権保証会社が取引先に対して信用力調査を行います。信用力に問題がある取引先の場合、審査結果により保証の引受ができないということもありえます。
この審査結果を参考にすれば、取引を継続するかどうか、前受金での取引にするかを判断することができます。なお、審査について取引先に知られることはありません。
決算内容や資金繰りが安定する
債権保証サービスを利用すると、売掛債権が回収できないことになっても債権は保全されているため、財務内容は安定します。また、債権の保全を積極的に行っていることで、金融機関や取引先からも好印象を持たれやすくなります。
債権保証サービスはどんな会社におすすめ?
債権保証サービスの利用を検討すべき会社とは
特定の取引先への依存度が高い
取引先が少なく、売上の大部分が特定の取引先から発生している場合は、債権保証サービスでリスクを回避するべきだと考えられます。万が一その取引先が倒産した場合、保証がなければ自社まで連鎖倒産する可能性が出てくるからです。
回収サイトが長期間になっている
売掛金の回収サイトとは、商品を販売・提供してから代金が支払われるまでの期間のことです。一般的に回収サイトが長ければ長いほど、貸し倒れリスクは高くなります。
売掛債権の金額が多額で、回収までの期間が長い場合は、万が一に備えて債権保証サービスの利用を検討した方がいいでしょう。
債権保証サービスの必要性が低い会社とは
取引先が多い
取引先が多い場合は、現状でも取引先の倒産リスクによる影響は分散されているといえます。多くの取引先のうち数社が同時に倒産しても、すぐに経営難に陥ることはないでしょう。このような会社が債権保証サービスを利用しても、そのメリットは限定的となります。
取引先が大手・優良企業
取引先が少なくても、その取引先が大手・優良企業である場合は債権保証サービスの必要性は低いといえます。大手・優良企業であれば倒産する可能性は低く、資金繰りに悩むこともないでしょう。
債権保証サービスを利用する際のポイント
サービス内容の見直しに注意する
債権保証サービスは、半永久的に売掛金を保証するものではありません。取引先の経営難による信用力の低下、経済環境の急激な変化などにより、債権保証サービスを利用していた取引先について契約内容が変更されることもあります。
債権保証サービスを利用する際は、契約内容の見直しに注意しておきましょう。
債権保証会社からの情報を積極的に活用する
債権保証サービスを利用していると、取引先ごとにどのようなリスクがあるのかといった情報を債権保証会社から入手できます。その情報を積極的に活用して、スムーズな与信管理やコスト削減を目指しましょう。
自社の経営安定につなげる
取引先の状況が明らかになることで、取引先の経営課題を把握でき、改善提案に結びつけることができます。取引先の問題点を解消できれば貸し倒れリスクが低くなるため、積極的に提案を行い、自社の経営安定につなげましょう。
まとめ
今回は債権保証サービスの特徴や仕組み、メリットについて詳しく解説しました。きちんと与信管理を行っていても、貸し倒れリスクは常に存在します。万が一の事態を回避し経営を安定させるために、債権保証サービスの利用を検討してみるのがおすすめです。
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西日本シティ銀行では、債権保証サービスを提供する企業をご紹介しています。お問い合わせは、西日本シティ銀行 法人ソリューション部まで。
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公認会計士、税理士、CFP
大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。