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領収書の収入印紙が不要になるケースまとめ|収入印紙の基礎知識をおさらいしよう

By 河野 雅人

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公開日 2021.04.21
領収書の収入印紙が不要になるケースまとめ|収入印紙の基礎知識をおさらいしよう

収入印紙とは、印紙税という税金を納める際に使用される証憑(しょうひょう)です。領収書や契約書などの文書を作成した場合、契約金額や領収金額に応じた収入印紙を、その文書に貼付することにより納税します。今回は、領収書や契約書の収入印紙が必要なケース・不要なケースについて、わかりやすく解説していきます。

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収入印紙の基礎知識

まずは、収入印紙の基礎知識について確認していきましょう。

印紙税とは?

会社や個人が取引するにあたり、取引相手と契約を交わす、代金の受け払いをするなどの際に、後々の誤解やトラブルを防ぐため、契約書や領収書を発行するのが一般的となっています。これらの契約書や領収書の中には、「課税文書」と呼ばれ、発行にあたり「印紙税」を納付しなければならないとされる文書があります。

印紙税法においては、印紙税を納付しなければならない文書として、第1号文書から第20号文書まで20種類の課税文書が定められています。

収入印紙は、印紙税を納付するための証憑

収入印紙は、国に印紙税を納付するために使用される証憑のことを言います。収入印紙を課税文書に貼付し、消印をすることで納税が完了する仕組みとなっています。

収入印紙を貼り付けただけでは納税したことにはならず、消印をすることが必須になります。消印は契約当事者の双方が行っても、いずれか一方のみが行っても問題なく、収入印紙と文書にまたがるように押印または署名します。

収入印紙が必要な文書とは

収入印紙が必要な文書とは

領収書や契約書などの文書には、収入印紙の貼付が必要な課税文書と、収入印紙の貼付が不要な文書があります。印紙税法において、どのような文書が課税文書となるのかが定められています。

20種類の課税文書

具体的には、「印紙税法別表第1(課税物件表)」により、以下の20種類が課税文書とされています。

第1号文書

不動産等の譲渡、地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡、消費貸借、運送に関する契約書

第2号文書

請負に関する契約書

第3号文書

約束手形又は為替手形

第4号文書

株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託若しくは特定目的信託の受益証券

第5号文書

合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書

第6号文書

定款

第7号文書

継続的取引の基本となる契約書

第8号文書

預貯金証書

第9号文書

倉荷証券、船荷証券又は複合運送証券

第10号文書

保険証券

第11号文書

信用状

第12号文書

信託行為に関する契約書

第13号文書

債務の保証に関する契約書

第14号文書

金銭又は有価証券の寄託に関する契約書

第15号文書

債権譲渡又は債務引受けに関する契約書

第16号文書

配当金領収証又は配当金振込通知書

第17号文書

金銭又は有価証券の受取書

第18号文書

預貯金通帳、信託行為に関する通帳、銀行若しくは無尽会社の作成する掛金通帳、生命保険会社の作成する保険料通帳又は生命共済の掛金通帳

第19号文書

第1号、第2号、第14号又は第17号文書により証されるべき事項を付け込んで証明する目的をもって作成する通帳

第20号文書

判取帳

出典:印紙税の手引き

該当する課税文書には、収入印紙と消印が必要

課税文書に該当すれば、原則として収入印紙の貼付と消印が必要になります。

たとえば、会社設立時の定款に収入印紙が必要なのは、第6号文書として印紙税法で定められているためです。また、継続的な取引が前提となる売買契約書は第7号文書により、代金支払い時に発行される領収書などは第17号文書により、課税文書であることがわかります。

ここからは、ビジネスにおいてよく使用される領収書と契約書について、収入印紙が不要となる要件を見ていきます。

領収書に関する収入印紙

領収書に関する収入印紙

上述のとおり、領収書は第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」にあたるため、原則として収入印紙が必要です。ただし、領収金額が何に対するものかによって印紙代が異なります。また、領収金額によっては印紙税が免除されます。

領収書の収入印紙が必要なケース

【売上代金(5万円以上)の場合】印紙代は金額に応じて異なる

領収金額が売上代金であるとき、5万円以上の場合は金額に応じて印紙代が段階的に増えていきます。具体的には以下の表のようになります。

領収書に記載された受取金額

収入印紙の金額

5万円以上100万円以下

200円

100万円超200万円以下

400円

200万円超300万円以下

600円

300万円超500万円以下

1,000円

500万円超1,000万円以下

2,000円

1,000万円超2,000万円以下

4,000円

2,000万円超3,000万円以下

6,000円

3,000万円超5,000万円以下

1万円

5,000万円超1億円以下

2万円

1億円超2億円以下

4万円

2億円超3億円以下

6万円

3億円超5億円以下

10万円

5億円超10億円以下

15万円

10億円超

20万円

受取金額の記載のないもの

200円

参考:国税庁ホームページ

【売上代金以外(5万円以上)の場合】印紙代は一律200円

保険金の受取や借入金などの売上代金以外のもので、領収金額が5万円以上の場合は、金額がいくらであろうと印紙代は一通につき一律200円となります。

領収書の収入印紙が不要なケース

領収金額が5万円未満の場合

領収書へ記載された金額が5万円未満の場合、印紙税は非課税となります。したがって、収入印紙は必要ありません。

また、借入金や保険金などの売上代金以外に発行される領収書も、金額が5万円未満であれば収入印紙は不要になります。

電子発行された領収書の場合

領収書をPDFなどでデジタル化し、データとして相手に送付する場合、収入印紙は不要になります。収入印紙が必要な課税文書は、あくまでも紙による文書です。つまり、紙文書ではないデータ化された領収書の場合は、印紙税がかからないということです。

領収書を電子発行することで印紙税を節税でき、コスト削減が期待できるでしょう。

クレジットカード決済の場合

現金ではなくクレジットカードで支払いが行われた場合、金額の大小にかかわらず印紙税はかかりません。レシートであっても、領収書を受け取る場合であっても、収入印紙は不要です。

ただし、クレジットカード決済で領収書を発行してもらう場合は、ただし書きの欄などに「クレジットカード払い」と明確に記載されている必要があります。

>> 【まとめ記事】法人カードの基礎知識~メリット・デメリットまで

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非継続的な個人売買取引の場合

収入印紙の貼付や消印が必要な領収書は、「営業取引から発生したもの」とされています。ここでの「営業」とは、利益を得ることを目的として、同種の行為を反復継続して行うことを言います。

そのため、個人が不要なものを処分した場合などの非継続的な取引は、営業に関する取引とは言えません。したがって、非営業取引から発生した領収書に関しては、印紙税は免除されます。

たとえば、事業をしていない個人がインターネットなどを通じて不要なものを売却した場合、領収書を発行するとしても収入印紙は不要となります。

契約書に関する収入印紙

契約書に関する収入印紙

契約書においても、収入印紙に関するルールが定められています。

課税文書の種類によって印紙税額が異なる

契約書に貼付する収入印紙の金額は、20種類に分けられた課税文書の種類によって異なります。主な文書の印紙税額を下記にまとめます。

1号文書・2号文書

1号文書には、不動産の売買をした際に作成する契約書、不動産の賃貸借契約の契約書などがあります。また、2号文書は、委託業務や工事請負契約など請負に関する契約書です。

これらの文書においては、「印紙税額一覧表」により、契約金額に応じて以下の印紙税額が決められています。なお、契約金額が1万円未満の場合は非課税となります。

契約金額

収入印紙の金額

1万円未満

非課税

1万円以上10万円以下

200円

10万円超50万円以下

400円

50万円超100万円以下

1,000円

500万円超1,000万円以下

2,000円

1,000万円超え5,000万円以下

1万円

5,000万円超1億円以下

6万円

1億円超5億円以下

10万円

5億円超10億円以下

20万円

10億円超50億円以下

40万円

50億円超

60万円

契約金額の記載のないもの

200円

参考:国税庁ホームページ

7号文書

7号文書は、継続的な取引を前提とする売買取引の基本契約書や、業務委託契約書などのことです。7号文書に必要な印紙代は、契約金額にかかわらず一通につき一律4,000円となります。

電子契約書の場合は収入印紙が不要

デジタル化された電子契約書を作成し、相手先と電子的に契約を締結した場合は、課税対象である「文書の作成」とはみなされないため、印紙税はかかりません。

ただし、電子契約を締結した場合でも、紙にプリントアウトして印鑑を押したものを契約書とする場合には、課税文書として収入印紙が必要となります。

印紙税の節税方法

印紙税の節税方法

ここでは、印紙税の節税方法について解説していきます。

領収書を分割する

上で述べたように、領収書に記載された金額が5万円未満の場合は、収入印紙は必要ありません。つまり、領収書1枚あたりの金額を5万円未満にすることで、印紙税の節税が可能となります。

領収書の分割の例

たとえば、商品の売買代金が12万円の場合、領収書を1枚で12万円と記載すると、上の表より収入印紙400円が必要になります。しかし、この場合の領収書を4万円ずつ3枚の領収書に分割することで、1枚あたりの領収書の金額が5万円未満となり、収入印紙を不要とすることができます。

このように、同じ売買代金の領収書であっても、領収書を複数枚に分割することで合法的に印紙税を節税することができます。

請求書のみ発行し、領収書は発行しない

印紙税は、基本的に紙の文書を作成することで発生します。したがって、紙の文書を作成しなければ印紙税はかかりません。たとえば、請求書を発行し、領収書を発行せずに請求金額を振り込んでもらうようにすれば、収入印紙は不要となります。

なお、請求書は課税文書にはあたらないため、請求書を紙文書で発行しても印紙税はかかりません。

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まとめ

今回は収入印紙の基礎知識や、収入印紙が不要なケースなどを解説しました。収入印紙の貼付を失念した場合や金額不足の場合は、脱税となるので注意してください。

印紙税法は今後も随時改正が行われる部分でもあるため、国税庁のウェブサイトやニュースをこまめにチェックし、間違いのないように気をつけましょう。

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