日本政策金融公庫や地銀で個人事業主が利用できる融資制度を紹介

By もろふし ゆうこ

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公開日 2021.08.30

個人事業主向けの融資には、日本政策金融公庫の貸付や金融機関のビジネスローンなどが挙げられます。また、資金支援を受けるという選択肢もあります。

この記事ではそれぞれのメリットとデメリット、個人事業主が融資を受ける際のポイントについて解説します。

日本政策金融公庫の融資制度について

政府系の金融機関である日本政策金融公庫には、事業者のニーズに合わせてさまざまな貸付が行われています。個人事業主も利用可能な融資制度があり、所定の手続きを踏むことで申請できます。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、2008年(平成20年)に「国民生活金融公庫」「農林漁業金融公庫」「中小企業金融公庫」の3つが統合して設立された政策金融機関です。「日本公庫」とも呼ばれており、政府が株式の100%を保有しています。

また、「国民生活事業」「農林水産事業」「中小企業事業」の3事業を柱としており、個人事業主向けの支援は国民生活事業の中で行われています。

個人事業主が借入できる融資制度と条件

運転資金の借入の場合は、「一般貸付」への申請が可能です。融資限度額は4,800万円で、返済期間は5年以内(据置期間1年以内)です。無担保・無保証人で融資を受けられる場合もあり、これらの有無や返済期間などに応じた金利が適用されます。

金利が低めに設定されている一方で、提出を求められる資料や情報が多く、審査基準が厳しめです。さらに自己資金がチェックされるなど、不慣れな人には煩雑に感じるかもしれません。そのため、審査のための準備を開始してから融資を受けるまでに時間がかかることがあります。

日本政策金融公庫だけじゃない!個人事業主の資金調達方法とは

個人事業主が事業資金を準備する方法は、日本政策金融公庫以外にもあります。ここでは「支援」と「融資」の2つを軸にして、それぞれ具体的な資金調達方法を紹介します。

各方面からの支援を受ける

支援は融資を受ける場合とは異なり、お金や利息を返済する義務を負いません。その分、乗り越えねばならないハードルがあります。

自治体の助成金・補助金

自治体には、自分が支払ったお金に対して後日、同額もしくは一定の金額を助成・補助してくれる制度があります。助成金は、条件を満たせば受け取れる制度です。そして補助金は、条件を満たすことに加えて審査も行われるという点で違いがあります。制度内容や条件は自治体によって異なります。

助成金・補助金は返済の必要がないお金である一方、申請から入金までに時間がかかるのが一般的です。

クラウドファンディングの実施

すでに事業内容が明確な場合や、マーケティングも兼ねた資金調達を目指すなら、クラウドファンディングを行うのも1つの手です。クラウドファンディングは、事前にプロジェクト支援者を広く募って必要資金を集められる仕組みです。近年では大手企業も実施しています。

支援者には後日、商品やサービスなどをお返しとして提供します。自分の事業に対する市場の反応を見ながらプロジェクトを進行でき、集まったお金を商品・サービスで返すことが可能です。ただ、賛同を得られなければ資金を集められないため、明確な事業構想がないと運営が難しくなります。

投資家・VCなどからの支援

資金提供者を募る方法もあります。個人的に資金の応援を受けるものから、ベンチャーキャピタル(VC)に対して株式を発行し支援してもらう方法まであります。条件次第では、事業そのものの助言を受けられたり人脈が広がったりするメリットが得られます。

ただ、個人事業主から事業の株式化を目指しているなど、「事業をより大きくしたい」というような目的がないと、投資家やVCからの支援を受けにくいのが現状です。また、出資者から事業についての意見が出た場合、それに従わざるをえなくなる可能性についても考えなければなりません。

融資を受ける

融資には借入金や利息の返済義務があるものの、お金を支援してもらうよりはスムーズに進められるメリットがあります。借り手の状況やニーズに合わせて選択でき、融資内容によってはお金を受け取るまでの時間を短縮することも可能です。

銀行の融資は運転資金〜長期的な融資まで幅広く対応

銀行にはさまざまな人を対象にしたローン商品があり、個人事業主に対しても融資を行っています。事業のための融資だけでなく生活全般に関わる各種ローンがあるので、仕事でもプライベートでもお金について相談することが可能です。

地方銀行の場合は金利や返済期間など、状況に応じた対応をしてくれることもあります。特に、一時的な資金ニーズにも対応しやすいという特徴があります。ローンによっては、日本政策金融公庫での借入に比べて金利が少し高めです。それでも融通が利いて、生活全般におけるマネー相談ができるのは大きなメリットといえます。

西日本シティ銀行の「法人・個人事業主さま」向けページはこちら
https://www.ncbank.co.jp/hojin/

信用金庫の融資は地域密着型、特色あるがエリア限定

信用金庫も地方銀行と同様、地域に根ざした金融機関として多彩なローン商品を扱っています。そのエリアならではのサービスを展開している信金も多く、キャンペーンを利用することで金利を抑えた借入ができることもあります。

ただ、信用金庫は融資先のエリアが限定されない地方銀行とは異なるため、注意が必要です。取引先の信金の営業エリア外へ転居する可能性がある場合、転居後の取引継続ができなくなることがあります。

自治体の融資は支えになるが審査手続きが煩雑

事業形態や用途などに応じた融資を行っている地方自治体も数多く存在します。特に新型コロナウイルス感染症の影響など、事業主がコントロールしかねる事態になった場合には、特別なサポートが行われることもあります。気になる場合は、最寄りの自治体窓口に問い合わせてみましょう。

いざという時に頼りになる自治体の融資も日本政策金融公庫の場合と同様に、資料などの準備や提出に苦労するという声があります。

日本政策金融公庫と銀行の融資制度を比較

個人事業主はどこで融資を受けるのが得策なのでしょうか。ここでは、日本政策金融公庫と銀行の比較から考えていきます。

両者は事業概要などに違いがありますが、特に注目したいのは「融資方法」と「融資までの期間」です。


日本政策金融公庫

銀行

事業概要

融資

経営支援サービス

融資

預貯金

為替

金融商品販売業務など

事業資金源

国民の税金(国が株式の100%を保有)

貸出金利など

株式

預貯金

貸出金利など

融資方法

直接融資

制度融資

プロパー融資

審査基準

収入

自己資金額

借入状況

納税状況

公共料金の支払い状況

これまでの経歴・経験

事業内容など

収入

借入状況

納税状況

事業内容など

金利(年)

約1〜2%

約1〜15%

融資までの期間

1〜2ヶ月程度

数日〜2ヶ月程度

融資方法の違い

日本政策金融公庫は、直接借り手に融資します。銀行は信用保証協会を通して行う「制度融資」と、銀行が直接行う「プロパー融資」という2種類の方法で融資を行います。

制度融資

制度融資とは借り手が何らかの理由で銀行に返済できなくなった場合に、自治体が運営している信用保証協会が代わりに返済金額を支払う制度*です。これは「保証付融資」とも呼ばれています。
*制度融資の種類によって返済割合が変わります。

銀行にとっては貸し倒れのリスクを減らすことができ、借り手にとっては過去の実績が乏しく返済能力の証明が難しい場合でも融資が受けやすくなるメリットがあります。保証を受ける分、借り手は協会へ信用保証料を支払う必要があります。

制度融資を利用するには企業の規模や業種などの条件がありますが、個人事業主も対象であり融資実績も多数あります。

プロパー融資

信用保証協会などを介さずに、自らの資金力を元に融資を行うのがプロパー融資です。銀行が借り手の事業計画書や決算書などを基に、返済能力の有無を判断して融資を行います。

制度融資とは異なり、返済が滞った場合にはその損害をすべて銀行が受けることになります。そのため審査は慎重に行われます。第三者機関からの保証を受けないので、プロパー融資では保証料が発生しません。

「お金が必要なタイミング」が鍵に

次に融資までの期間について見てみましょう。日本政策金融公庫では1〜2ヶ月ほどかかりますが、銀行は最短数日で融資を受けられることもあります。

いつまでにお金が必要か、という視点で借入先を選ぶと安心です。

時間に余裕があるかどうか

できるだけ早めに資金調達したい方は、銀行の融資が向いています。条件によっては日本政策金融公庫と比べて金利が高くなる可能性があります。しかし、一時的かつ急ぎの資金需要で返済目処が立っている場合には、申込みから融資までの期間が短い銀行ローンが役立ちます。

個人事業主が融資を申請する際の注意点

「自分は融資の対象になれるのだろうか」と悩んでいる個人事業主もいらっしゃるかもしれません。借入を検討する際の目安として、次のポイントを確認してみましょう。

収入がある程度安定しているか

返済能力の有無は、審査時にチェックされる重要なポイントです。今後、定期的な収入が見込めるのか、もしくは融資を受けることで事業収入を得られる見込みがあるかどうかを説明できるようにしておきましょう。

個人事業主としての申告・手続きが行われているか

開業届

個人事業主になり事業をスタートする時には、税務署に「個人事業の開業届」を出す必要があります。原則、事業開始から1ヶ月以内に提出することになっているため、まだ済んでいない方は手続きをしておきましょう。書類は最寄りの税務署窓口または、国税庁のホームページからダウンロードできます。

確定申告書類

確定申告の書類も重要です。決算書や損益計算書などを基に、融資の詳細が決まります。決算内容はもちろん、「滞納せずに納税しているか」という点を中心に確認されます。まだ終えていない人は早急に税務署へ申告しましょう。

過去・現在の借入や返済状況に問題はないか

信用情報を基に、借入や返済に関する履歴もチェックされます。現在すでに借入がある場合は借入残高や返済状況が、過去に融資を受けた経験がある場合はその履歴も審査対象になります。補足したい場合は、融資担当者にしっかりと伝えておきましょう。

融資を必要とする理由は明確か

今回なぜ借入を希望するのかを、はっきりと説明できるようにしておきましょう。個人事業主のスモールビジネスにおいては、大企業と比べてどうしても信用を得にくい現状があります。事業計画を示し、融資が必要な理由を明確に伝えることが大切です。

まとめ

「なぜ融資を受けたいのか」と考えると、個人事業主の場合は、事業の運転資金だけでなく、生活資金の補填に至るまでさまざまな理由が挙げられます。日本政策金融公庫の融資は主に事業資金向けのため、トータルで相談したいのであれば、多彩なローンを扱っている金融機関がおすすめです。

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