起業すると決めても、何から始めるかわからないことが多いのではないでしょうか?今回は起業するときに必要なものや、やるべき手続きについて説明します。何をどのように準備するのかを知って、計画的に起業を進めましょう。
まずは起業形態を決めよう
起業する場合、法人を設立するか個人事業主として個人のまま事業を行うかの2つの方法があります。法人と個人事業主はどのように違うのかを知っておき、どちらの形態で起業するかを決めましょう。
法人は個人事業主と何が違う?
法人は、法律により自然人と同様の権利・義務を持つことを認められた団体です。代表的な法人といえば株式会社や合同会社などですが、社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、NPO法人などもあります。
法人は契約の当事者になれる
法人を設立して事業を行う場合、自らが契約の当事者になって権利や義務を負います。仮に代表者が亡くなっても法人が継続していれば、契約は原則的に有効です。
法人の財産は個人の財産と区別される
法人を設立すれば、預金や不動産を法人名義にできます。法人名義で借金をすることも可能です。法人の借金は法人の財産から返済するのが原則で、個人の財産から返済する必要はありません。
個人事業主と法人ではかかる税金が違う
個人事業主と法人どちらで起業するか、1つの目安となるのが税金です。個人事業主には所得税が課税されますが、法人には法人税が課税されます。
所得税の税率
所得税の税率は、所得が多くなるにしたがって段階的に高くなる「超過累進税率」です。最も低い税率は5%ですが、最も高い税率は45%となっており、高所得になると負担が大きくなります。
法人税の税率
法人税では、法人の種類や規模によって税率が変わり、最高税率は23.20%です。事業で得られる利益がある程度大きくなりそうなら、法人を設立して法人税を払った方が税金を抑えられます。
個人事業主で起業するメリットとデメリット
個人事業主として開始する場合のメリットやデメリットになる点を、整理しておきます。
メリット:手続きが簡単
個人事業主として開業する場合、基本的に税務署に開業届を出せばOKですから、手続きの手間や費用がかかりません。確定申告も白色申告を選べば、帳簿づけが簡易な方法でできます。
デメリット:新しい取引先を得にくい
個人事業主のまま起業すると特に実績がない間は信用を得られず、新規の取引先を開拓できないことがあります。個人事業主の社会保険は原則的に国民年金・国民健康保険への加入となり、年金や手当金などの保障が薄い点もデメリットといえるでしょう。
法人を設立して起業するメリットとデメリット
法人を設立した場合には、どんなメリットやデメリットがあるのかを知っておきましょう。
メリット:取引先に安心感を与えられる
法人で起業すると、取引先の信用を得やすくなります。取引相手にしてみれば、個人よりも法人と取引した方が安心感があるのです。法人は金融機関と融資の交渉をする際にも有利になり、資金調達もしやすいでしょう。税務上も経費にできる範囲が広く、赤字も最大10年間繰越できるなどのメリットがあります。
デメリット:開業の費用がかかる
法人として起業する場合には法律に定められた設立手続きを行わなければならず、開業時に手間や費用がかかります。税務申告も複雑なので税理士に依頼しなければならないケースが多くなり、そのための費用もかかってしまいます。
個人事業主が「法人成り」することも可能
起業のために法人を設立するとなると、手続きに時間をとられるうえに費用もかかってしまいます。最初は個人事業主として起業し、売上が増加してきたら状況に応じて法人化する方法もあります。このように個人から法人に事業を引き継ぐことを、法人成りといいます。
起業するときにやるべき3つの手続きとは?
個人事業にするか法人にするかを決めたら、早速起業の手続きを進めます。起業するときに行う手続きは、次の3つです。
(1) 開業届または法人設立
個人事業主として開業する場合は、税務署に開業届を提出します。一方、法人として開業する場合は、法律に沿って設立手続きを行う必要があります。それぞれの詳しい手続きについては後述します。
(2) 税務上の届出
起業すれば、事業で得た利益に税金がかかるようになります。開業したら、国税に関しては税務署に、地方税に関しては都道府県税事務所や市区町村役場に届出が必要です。
(3) 社会保険の手続き
起業により社会保険加入が必要になる場合は、社会保険の手続きをしなければなりません。法人は社会保険加入が必須です。個人事業主も従業員5人以上を雇用する場合は、社会保険加入義務が生じます。なお、法人でも個人でも従業員を雇用する場合には、労働保険(雇用保険・労災保険)の手続きを行います。
法人として起業するときに必要な手続きとは
法人として起業すると決めたら、法人設立の手続きをしましょう。以下、株式会社を設立する場合を想定して、手続きの流れやかかる費用を説明します。
そもそも株式会社設立の条件は?
株式会社を設立する場合、以前は1000万円以上の資本金と複数名の役員(取締役、監査役)が必要でした。2006年(平成18年)に新しい会社法が施行され、現在は資本金1円以上、取締役1名以上で株式会社設立ができます。
株式会社設立の方法は2種類
株式会社を設立する方法には、発起設立と募集設立の2種類あります。起業して法人を立ち上げるときは、費用も安く簡単にできる発起設立を選ぶのが一般的です。
株式会社の設立手続きは、発起人(会社の資本金を出す人)が行います。
会社設立の流れと注意点
以下、発起設立により株式会社を設立する際の大まかな流れを説明します。
1. 事業計画を立てる
起業するときは、あらかじめ事業計画を立てておくことが重要です。事業計画は事業計画書として書面にまとめておきましょう。事業計画書は、補助金・助成金を申請するときや、融資の申込みをする際に必要になります。
2. 資金調達
開業資金や事業資金を用意します。預貯金や親族からの借入だけでは資金が不足する場合は、補助金・助成金や創業融資を活用しましょう。多くの人の賛同を得られそうな事業であれば、クラウドファンディングを利用する方法もあります。
3. 会社の概要を決める
株式会社の設立を決めたら会社名(商号)、事業目的、資本金など会社の基本的な事項を決めます。
4. 定款を作成する
法律上、会社を設立するときには定款の作成が義務付けられています。定款とは、会社の目的や組織などのルールをまとめたものです。定款は途中で変更できますが手続きには手間がかかるので、内容をよく考えておきましょう。
5. 定款の認証を受ける
会社設立時の定款(原始定款)は、公証人の認証を受ける必要があります。公証役場に連絡をとり、定款認証手続きを行います。
6. 資本金を払い込む
資本金とは事業の元手となるお金です。定款の認証が終わった段階で、資本金を発起人の代表者の口座に入金する手続きをします。
7. 設立登記をする
法務局に設立登記申請書と必要書類を提出して、登記申請を行います。登記完了まで1週間から10日程度かかりますが、会社の設立日は設立登記申請をした日になります。
8. 官公庁への届出
設立登記が完了したら会社の登記事項証明書を取得し、官公庁への届出を行います。届出する役所は税務署、都道府県税事務所、市区町村役場、年金事務所です。従業員を雇用する場合は、労働基準監督署やハローワークへも届出します。
会社設立にかかる費用
会社設立の手続きにかかる主な費用としては、次のようなものがあります。
資本金
株式会社は資本金1円でも設立できますが、現実には元手がないと事業ができません。資本金に回せるよう、ある程度の金額を用意しておきましょう。
定款認証費用
公証役場で定款認証を受けるときに収入印紙代4万円のほか、認証手数料として約5万2000円がかかります。ただし、電子定款(紙に印刷せずPCデータとして作成したもの)を選択した場合は、収入印紙代が不要になります。
登録免許税
設立登記申請時に、登録免許税を納める必要があります。登録免許税の金額は、通常15万円です。
専門家の報酬
設立手続きを行政書士・司法書士等の専門家に依頼した場合は、別途専門家の報酬がかかります。
起業に必要なものを準備しよう
起業の手続きを進めると決めたら、準備しておくとよいものもあります。以下、起業に必要なものを挙げます。
名刺
起業してビジネスを行うことを決めたら、最初に用意しておきたいのがビジネス用の名刺です。自作する方法もありますが、イメージを良くするためにも印刷会社に依頼して見栄えのよい名刺を作成してもらいましょう。
ホームページ
今の時代、集客のためにもホームページは必須といえます。ホームページのURLは名刺にも入れておいた方がいいので、早めに準備しておきましょう。
外注する?自分で対応する?
ホームページの制作は、専門の会社に委託できます。保守や更新も依頼する場合は、費用がどれくらいかかるのかを確認しておきましょう。自分でホームページを作る場合でも、レンタルサーバー費用やドメイン取得費用などがかかります。
チラシ・パンフレット
出会った人にどのような業務を行っているかを知ってもらうため、チラシやパンフレットがあると便利です。
置いてもらえる場所も見つける
店舗や施設に依頼して、チラシやパンフレットを置いてもらう方法もあります。挨拶状と一緒に、これまでに関わりのあった人に送っておくのもよいでしょう。
事業用口座
法人を設立した場合は、法人名義の口座が必要になります。設立登記完了後、金融機関に登記事項証明書を提出して、口座開設の手続きをしておきましょう。
事業用クレジットカード
近年はキャッシュレスの取引を行う機会が増えています。法人口座だけでなく、法人カード(事業用クレジットカード)もあると便利です。法人カードを持っていれば、プライベートと事業の支払いを明確に分けられるので、経理処理も楽になります。
経営者なら個人事業主でも作れる
多くの法人カードは、個人事業主が持てるようになっています。従業員がいる場合は、従業員用の追加カードを発行してもらうことも可能です。
事業用印鑑
法人の場合、設立時に法務局で印鑑登録をするため、印鑑を用意しておく必要があります。実印(代表者印)、銀行印、角印の3つをセットで揃えておくのがおすすめです。
個人事業主も屋号印があると便利
個人事業主の場合、事業用印鑑の登録は必要ありません。ただし、屋号を使って事業を行う個人事業主は、屋号印を作っておくとよいでしょう。
個人事業主の場合にやるべき事項について
最後に、法人を設立せず個人事業主として起業する場合の手続きについて説明します。
個人事業主として起業する方法
個人事業主として起業する場合には、次のような流れで手続きを行います。
1. 事業計画を立てる
個人事業主として起業する場合でも、事業計画を立てることは必須です。できるだけ具体的に事業の内容を決め、事業計画書を作成しておきましょう。
2. 資金調達
資金調達が必要な場合は補助金・助成金を申請したり、融資の申し込みをしたりします。
3. 開業届を提出
開業後1か月以内に、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。青色申告をする場合は、青色申告承認申請書も出しておきましょう。
4. 官公庁への届出
都道府県税事務所に事業開始等届出書を提出します。従業員がいる場合は、労働基準監督署とハローワークへの届出も必要です。
個人事業主の開業にかかる費用
個人事業主の開業手続きは、特に費用がかかりません。開業届の提出や官公庁への届出の際にも、手数料は不要です。
まとめ
起業するときは、所定の手続きを進めていかなければなりません。手続きと同時に必要なものを揃えることも大切です。
起業する際は、事業用クレジットカードも用意しておきましょう。西日本シティ銀行の「for Owners」は、起業してすぐの経営者でも持てるビジネスカードです。起業当初から支払いをスマートに行うために、必要なものの1つとしてリストアップしておきましょう。
ビジネスカード「for Owners」の特徴とは
「for Owners」は、一般的なビジネスカードと概要はほとんど同じです。しかし、「for Owners」ならではのさまざまな特徴があり、特に設立1年目のスタートアップ企業や個人事業主・フリーランスにおすすめのビジネスカードです。
「for Owners」の特徴や審査などについて見ていきましょう。
「for Owners」の年会費・限度額
「for Owners」では、クラシックカードとゴールドカードの2種類が用意されています。
クラシックカード
クラシックカードの年会費は通常1,375円(税込)ですが、初年度は無料です。パートナー会員用のカードを発行する場合は、1名あたり別途440円(税込)がかかります。
限度額は、原則として10万円から150万円です。カードに付帯している海外旅行傷害保険の最高額は2,000万円で、事前に旅費などを「for Owners」で決済していることが条件です。
ゴールドカード
ゴールドカードの年会費は11,000円(税込)で、パートナー会員のカード発行は1名あたり2,200円(税込)です。限度額は原則50万円から300万円となっています。
クラシックカードとは違い、カード付帯の旅行傷害保険は国内旅行での事故も対象となります。補償額は最高5,000万円です。
「for Owners」の審査について
個人の情報をもとに審査される
一般的なビジネスカードでは、事業の財務状況などが問われます。しかし、「for Owners」は個人与信での審査となります。法人としての実績の有無ではなく、代表者個人の情報をもとに審査が行われるということです。
また、「for Owners」では審査時に営業年数が問われません。そのため設立して1年未満の場合でもビジネスカードを発行できます。
「for Owners」を利用するメリット
申し込みが簡単
「for Owners」は、インターネット上から簡単に申し込むことができます。事業の登記簿や決算書の提出は不要となっているため、申し込み時の提出書類も最低限で済みます。
カード決済口座を個人名義にできる
「for Owners」では、カードの決済口座を個人名義にすることができます。したがって、スタートアップして間もなく、法人名や屋号のついた銀行口座を保有していない場合でもカードの発行が可能です。
事業の経費軽減につながる
法人や個人事業主が事業を進める場合、いかに経費を削減していくかが課題になります。「for Owners」で支払いをすれば、清算の手間を省くことができ、振込手数料もかかりません。
これまで自身で行っていた経費にかかる支払をカード1枚で済ませられるので、経費精算に要する時間短縮にもつながります。
ETCカードの発行・電子マネーの利用が可能
「for Owners」を発行すると、追加カードとしてETCカードを発行できます。さらに電子マネーを利用することも可能です。
「for Owners」で利用できる電子マネーは以下の5つです[2021年(令和3年)1月現在]。
● iD(docomoの決済サービス)
● Apple Pay
● プラスEX
● PiTaPa
● WAON
ポイント還元を受けられる
「for Owners」を利用すると、独自のポイントが還元されます。クラシックカードでの有効期間は2年、ゴールドカードでは3年です。ポイントの還元率は0.5%で、公共料金や通信費の支払いでも還元されます。
還元されたポイントは、他の電子マネーに移行したり、ANAのマイルに交換したりすることができます。
法人カード専用のサービスがある
「for Owners」には、ビジネスにおいて便利に活用できる特典もついています。オフィス用品の通販サイト・アスクルのほか、日産レンタカー、タイムズカーレンタル、アート引越センターなどを特別価格で利用できます。
「for Owners」はどんな人におすすめ?
ここまでの内容をまとめると、「for Owners」は特に以下のような人におすすめです。
● これまでに別の法人カードの審査に落ちた人
● 起業して間もないスタートアップ企業の代表者
● 法人格のない個人事業主やフリーランス
● 経費節約のために毎月の振込手数料を抑えたい人