個人事業主は会社員と違い自分で確定申告を行なう必要がありますが、その際に気を付けたいのが「経費」の計上です。どこまでが経費として認められるのか、気になる人も多いでしょう。
この記事では、個人事業主が確定申告において経費にできるものとできないものについて、具体的に解説していきます。
押さえておきたい経費の基本
どんなものが経費にできるのかを解説する前に、そもそも経費とはどういった費用なのか、定義について確認しておきましょう。
経費とは事業でかかった支出のこと
個人事業主やフリーランスにおける経費とは、自身の事業経営を行なっていくうえで必要となった支出のことをいいます。
個人事業主の支払う税金は、売上などの収入から必要経費を差し引いた所得(課税所得)に対して課せられます。よって、経費の金額が多ければ多いほど所得は減り、支払うべき税金は低くなります。
経費の計上は単なる税金対策ではない
経費が多ければ税金は減りますが、あくまでも後で支払う税金が減るというだけで、出費が減るという訳ではありません。税金対策と考えて、無計画に経費として支出するのは要注意です。
つまり、どんな費用が経費で計上できるのかをあらかじめ理解しておくことは、個人事業主にとっては必要不可欠といえます。
支払った代金の領収書やレシートは必ず残しておく
確定申告で経費を計上するには、支払った際の領収書やレシートが必要です。実際に税務署に提出する必要はありませんが、申告後も7年間は保管しておく義務があります。また、税務調査が入った際には提出を求められる場合があります。安易に処分しないように、項目ごとに区分するなど整理しておきましょう。
どこまで適用される?経費に計上できるもの
どんな支出でも経費として計上できるわけではありませんが、必要経費は比較的広い範囲で認められています。具体的に、経費に計上できる項目を解説していきます。
経費を計上する際の2つの注意点
経費として認められるかどうかを判断するうえで注意したいポイントは、以下の2つです。
1.事業との関連性を証明できるか
税務署から事業との関連性を問われた場合に、必要な支出であると客観的に証明できるかがポイントです。例えば喫茶店で打ち合わせをした際の飲食代などは、領収書の裏面にいつ・誰と何をしたという概要を記載しておきましょう。
2.経費と収入のバランスに妥当性があるか
売上などの収入に対し、あまりにも経費が多いと指摘を受けることがあります。客観的に不自然ではないかという視点を持つことが大切です。また、収入以上の過大な経費の計上は、事業が赤字とみなされ金融機関からの借入にも影響します。
経費として計上できるもの
一般的に経費として計上できる項目は、以下のとおりです。
勘定項目には法的なルールはありませんので、自分で分かりやすく後から説明できるように管理しておきましょう。
租税公課
個人事業税や固定資産税・自動車税・印紙税などの税金です。
ただし、個人の所得税や住民税は経費として計上できません。
水道光熱費
水道料金や電気料金・ガス料金などです。
職場と自宅が同一の場合は、按分を決めて計上します。
地代家賃
事務所の家賃や、月極駐車場の利用料金などです。
職場と自宅が同一の場合は、床面積で仕事の割合を計算します。
通信費
電話代やインターネット料金、書類を郵送する際の切手代などです。
プライベートと兼用の場合は、仕事に使用した時間で計算します。
旅費交通費
商談などの移動で使用した公共交通料金やタクシー代、駐車場代などです。
電車代やバス代は領収書を出すのが難しいため、ICカードを利用するのをおすすめします。プライベートと兼用の場合のガソリン代は、按分して算出します。
接待交際費
顧客との商談や会食、祝い金や贈答品などです。
税務署から不正計上が疑われやすい項目なので、日付や相手は控えておきましょう。
広告宣伝費
名刺代やパンフレットの作成費、広告費用、WEBサイト作成費用などです。
消耗品費
筆記用具やコピー用紙などの事務用品、事務所用の消耗備品などです。
減価償却費
自動車やパソコンなど、高額な固定資産を耐用期間に応じて分割する経費です。10万円を超える費用などが対象です。
耐用年数はパソコンなら4年間、車なら6年間と決められており、購入価格をその期間で分割して対応します。
新聞図書費
事業のために購入した書籍や新聞・DVDなどの費用、登録した有料サイトの会員費などです。
荷造運賃
宅急便の運賃や梱包材などの費用です。
損害保険料
事務所の火災保険料や、事業用車両の自動車保険料です。
事業主個人の死亡保険や医療保険などは、経費計上できません。
修繕費
事務所の修繕費用や、自動車の修理費用です。
給与賃金
従業員やアルバイトに支払う給料です。
福利厚生費
慶弔見舞金や慰安旅行などの費用、従業員の健康診断費用などです。
外注工費
仕事を外注した場合、外注先に支払う報酬です。
利子割引料
金融機関に借り入れした運転資金や、ローンを支払う際の利息です。
貸倒金
取引先への売掛金や貸付金などで、回収ができなくなったものです。
雑費
組合に支払う会費やごみ処理費用など、項目が分かりにくいものです。
家族などに支払う給与(青色事業専従者給与の届け出がある場合)
妻や子どもなどに支払う給料です。
家族や親族への給与は個人事業主と生計が同一とみなされるため、経費として認められません。しかし、青色事業専従者給与の届け出を行ない、条件を満たした家族や親族への給与は経費として計上が可能です。
経費として計上できないもの
個人事業主にとって、経費に適用されるものは少しでも多く計上したいものです。しかし、中には経費として計上ができない項目もあるため注意が必要です。
経費として計上できないもの
誤解を生じやすい、個人事業主が経費として計上できない項目は以下のとおりです。
事業に関係のない私的な出費、自宅での食事代など
前提として、経費にできるのは事業にかかった必要経費です。事業に関係のない友人との飲食費や、趣味や家庭で使用する物品の購入費などは、経費としての計上は認められません。
自宅で仕事をする場合、家賃や水道光熱費・通信費などは按分できます。しかし、自宅での食事代などについては按分できません。
事業とプライベートの線引きが難しいケースもあります。その場合は、税務署からの指摘に客観的に説明できることがポイントです。
事業主自身の給料や福利厚生費・社会保険料など
従業員の給料や福利厚生費は経費にできますが、事業主自身の給料はできません。健康診断などを受診した場合も経費にできません。
社会保険料についても個人の所得控除の対象となるため、経費として計上することは不可能です。
事業主自身の税金
事業用の自動車税や固定資産税、個人事業税などの税金は経費にすることができます。しかし、事業主自身の所得税や住民税については経費として計上できません。
確定申告する前に!個人事業主・フリーランスの節税対策
個人事業主やフリーランスは自分で確定申告を行ない、税金を納めないといけません。その前に必ず確認しておきたいのが節税対策です。どのような対策が可能なのかは、事前にしっかりと把握しておきましょう。
ここからは、個人事業主やフリーランスができる節税対策について解説します。
経費の見直しと整理をしておく
必要経費が多ければ多いほど、課税所得を抑えて税金を減らすことができます。よって、経費をできるだけ多く計上することは、結果として節税効果につながります。
ただし、前述したように全ての支出が経費として認められる訳ではありません。無計画に計上するのではなく、経費として認められる項目かどうかをしっかりと把握し、日頃から見直しと整理を心掛けることが大切です。
そのうえで、確定申告の際は経費として計上できるものはないか、按分しているものは正しく計算できているかなどしっかり確認しましょう。
青色申告を行なう
青色申告を行なうことで、所得控除や経費計上に関する特例が受けられます。その結果、課税所得が抑えられ税金を減らすことができます。
個人事業主が確定申告を行なう際には、白色申告と青色申告の2つの方法があります。事前に税務署に届け出を行ない承認を受けていれば、青色申告を行なうことが可能です。届け出には手間を要しますが、節税対策としては有効な手段なので活用しましょう。
青色申告による主なメリットは、以下の3つが挙げられます。
特別控除が受けられる
青色申告を行なうことで、条件に応じて最大で65万円の特別控除が受けられます。これによって課税所得が抑えられ、支払う税金を減らすことが可能になります。
少額減価償却資産の特例が受けられる
減価償却の特例とは、青色申告を行なっている個人事業主が固定資産を減価償却する際に、10万円以上30万円未満であれば一括で経費計上が可能になる制度です。
これによって経費に計上できる金額が高くなり、課税所得を抑えて税金を減らせます。
青色事業専従者給与を経費に計上できる
青色事業専従者給与とは、青色申告を行なっている個人事業主が、事業を手伝ってくれている家族や親族に支払う給与のことです。
事前に税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し承認を受けていれば、家族や親族に支払った給与全額を経費に計上できます。
不安なときは税理士に相談する
税理士に相談すれば税金の専門家としての意見や、自分が知らなかった対策について教えてもらえることがあります。費用はかかりますが、確定申告にかかる手間や時間を削減できるうえに、さまざまな対策を講じてくれます。
確定申告に不安を感じている個人事業主やフリーランスの人は、税理士に相談することも検討しましょう。
経費はクレジットカード払いがおすすめ
個人事業主が自分で確定申告をしていくうえで、最も煩雑で大変なのが経費の管理です。日々の支払いをできるだけクレジットカードで行なえば、この作業はかなり楽になります。
クレジットカードを活用するメリット
経費の支払いでクレジットカードを活用するメリットは、以下のとおりです。
経費の管理がしやすくなる
クレジットカード支払いの場合、利用明細を領収書の代わりにすることができます。毎月一覧で発行されるため、経費の管理がしやすくなります。
会計ソフトを活用すれば利用明細をそのまま取り込むことで、入力ミスも防げます。
経費の計上漏れを防ぐことができる
利用明細があれば領収書の紛失や入力漏れによる、経費の計上漏れを防ぐことができます。
ポイントが貯まる
事業に必要な経費をクレジットカードで支払えば、利用額に応じてポイントを貯められます。
個人事業主におすすめのクレジットカード
西日本シティ銀行の事業者向けビジネスカード「for Owners」がおすすめです。注目のポイントは、以下のとおりです。
西日本シティ銀行ビジネスカード for Owners クラシック
初年度年会費が無料で、2年目以降も年間10万円以上利用で無料
登記簿や決算書が不要で、WEBで簡単に申し込み可能
営業年数は不問で、設立間もない人でも申し込み可能(満20歳以上)
ポイントが個人カードと合算できる
西日本シティ銀行ビジネスカード for Owners ゴールド
ゴールドカードの信頼度と充実したサービスが受けられる
登記簿や決算書が不要で、WEBで簡単に申し込み可能
営業年数は不問で、設立間もない人でも申し込み可能(満30歳以上)
ポイントが個人カードと合算できる
まとめ
事業にかかった費用を経費として計上できれば、節税につなげられるので正しく理解しておくことが必要です。
経費を適切に計上するためには、日頃から領収書などの管理が重要になります。クレジットカードを活用すれば大変便利ですので、是非活用しましょう。
ビジネスカード「for Owners」の特徴とは
「for Owners」は、一般的なビジネスカードと概要はほとんど同じです。しかし、「for Owners」ならではのさまざまな特徴があり、特に設立1年目のスタートアップ企業や個人事業主・フリーランスにおすすめのビジネスカードです。
「for Owners」の特徴や審査などについて見ていきましょう。
「for Owners」の年会費・限度額
「for Owners」では、クラシックカードとゴールドカードの2種類が用意されています。
クラシックカード
クラシックカードの年会費は通常1,375円(税込)ですが、初年度は無料です。パートナー会員用のカードを発行する場合は、1名あたり別途440円(税込)がかかります。
限度額は、原則として10万円から150万円です。カードに付帯している海外旅行傷害保険の最高額は2,000万円で、事前に旅費などを「for Owners」で決済していることが条件です。
ゴールドカード
ゴールドカードの年会費は11,000円(税込)で、パートナー会員のカード発行は1名あたり2,200円(税込)です。限度額は原則50万円から300万円となっています。
クラシックカードとは違い、カード付帯の旅行傷害保険は国内旅行での事故も対象となります。補償額は最高5,000万円です。
「for Owners」の審査について
個人の情報をもとに審査される
一般的なビジネスカードでは、事業の財務状況などが問われます。しかし、「for Owners」は個人与信での審査となります。法人としての実績の有無ではなく、代表者個人の情報をもとに審査が行われるということです。
また、「for Owners」では審査時に営業年数が問われません。そのため設立して1年未満の場合でもビジネスカードを発行できます。
「for Owners」を利用するメリット
申し込みが簡単
「for Owners」は、インターネット上から簡単に申し込むことができます。事業の登記簿や決算書の提出は不要となっているため、申し込み時の提出書類も最低限で済みます。
カード決済口座を個人名義にできる
「for Owners」では、カードの決済口座を個人名義にすることができます。したがって、スタートアップして間もなく、法人名や屋号のついた銀行口座を保有していない場合でもカードの発行が可能です。
事業の経費軽減につながる
法人や個人事業主が事業を進める場合、いかに経費を削減していくかが課題になります。「for Owners」で支払いをすれば、清算の手間を省くことができ、振込手数料もかかりません。
これまで自身で行っていた経費にかかる支払をカード1枚で済ませられるので、経費精算に要する時間短縮にもつながります。
ETCカードの発行・電子マネーの利用が可能
「for Owners」を発行すると、追加カードとしてETCカードを発行できます。さらに電子マネーを利用することも可能です。
「for Owners」で利用できる電子マネーは以下の5つです[2021年(令和3年)1月現在]。
● iD(docomoの決済サービス)
● Apple Pay
● プラスEX
● PiTaPa
● WAON
ポイント還元を受けられる
「for Owners」を利用すると、独自のポイントが還元されます。クラシックカードでの有効期間は2年、ゴールドカードでは3年です。ポイントの還元率は0.5%で、公共料金や通信費の支払いでも還元されます。
還元されたポイントは、他の電子マネーに移行したり、ANAのマイルに交換したりすることができます。
法人カード専用のサービスがある
「for Owners」には、ビジネスにおいて便利に活用できる特典もついています。オフィス用品の通販サイト・アスクルのほか、日産レンタカー、タイムズカーレンタル、アート引越センターなどを特別価格で利用できます。
「for Owners」はどんな人におすすめ?
ここまでの内容をまとめると、「for Owners」は特に以下のような人におすすめです。
● これまでに別の法人カードの審査に落ちた人
● 起業して間もないスタートアップ企業の代表者
● 法人格のない個人事業主やフリーランス
● 経費節約のために毎月の振込手数料を抑えたい人