新型コロナウイルス感染拡大の影響から、国や地方公共団体によるさまざまな支援策が発表されています。その中でも、今回は福岡県と福岡市の助成金・補助金・給付金について、制度の概要から申請方法までをまとめました。
給付金・助成金・補助金の違いとは?
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国的に休業要請が行われ、業種によっては長期にわたる影響が出ていると考えられます。テレワーク導入に関するパソコンの準備などの環境整備と同時に、資金繰りも重要な課題といえるでしょう。
このような状況を踏まえ、国はさまざまな支援策を実施しています。支援策を理解する準備として、まずは給付金・助成金・補助金の違いを解説します。
給付金とは?
この3つの中で、「給付金」はもっともわかりやすく、相対的に受け取りやすいものです。給付金の受給条件に当てはまりさえすれば、誰でも受け取ることができると考えてよいでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大対策として発表された支援のうち、「特別定額給付金」は特にシンプルでわかりやすい制度といえます。これは、国民全員に10万円を給付する制度です。事業者向けには「持続化給付金」もあります。
助成金とは?
助成金は、事業者の支援のために交付されるお金です。
条件を満たせば交付される場合が多いですが、事業に係る費用の全額が助成されるのではなく、一定の助成率を乗じて、その範囲内で交付されます。
なお、この助成金と後述の補助金は、事業が終わった後の「後払い交付」が一般的です。新型コロナ対策の助成金には「雇用調整助成金」があります。
補助金とは?
補助金は、国や地方公共団体などが、財源を基に交付するお金です。つまり、財源がなくなれば交付は終わるということです。一定の財源の中での交付になるため、審査は慎重に行われます。
新型コロナ対策での補助金には、「IT導入補助金」「持続化補助金」があります。
給付金・補助金・助成金の共通点:返済不要であること
給付金・助成金・補助金など名称が違う支援が多く、混乱してしまうこともあるでしょう。これらすべてに共通していることは、「返済しなくてよい」ということです。融資制度とは違って、これらのお金は返済義務がありません。
しかし、例えば給付を受けた後に、申請した内容に不正が発覚した場合などは、然るべき措置を講じられます。
緊急事態宣言の影響に関する支援とは?経営者・個人事業主必見の「一時支援金」について
福岡県在住者が受けられる支援の一覧
持続化給付金や雇用調整助成金、小学校休業等対応助成金・支援金、持続化緊急支援金といった補助を受けることができます。
福岡県の支援策
福岡県独自の支援策として、各種助成金から融資制度まで数多く準備されています。今回の新型コロナウイルス対策として新設された制度や、要件を緩和し、広く対象となるように拡充された制度があります。
持続化緊急支援金
給付の条件・対象
福岡県が独自で実施している「持続化緊急支援金」は、支援金という名目ですが、実際は給付金と同じく、条件に該当さえすれば給付を受けることができる制度です。
持続化緊急支援金は、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年(令和2年)1月以降の売り上げが30%〜50%減少した、ほぼ全ての業種で申請することができます。なお、資本金10億円以上の企業・団体は除きます。
ただし、確定申告の納税地が福岡県内である事業者が対象です。また、風俗店や宗教施設など一部対象外の業種もあります。福岡県のホームページにて確認してみましょう。
経営革新実行支援補助金
給付の条件・対象
「経営革新実行支援補助金」は、直近数か月の売り上げが前年同期比で15%以上減少した、福岡県の中小企業・個人事業主が対象です。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経営環境の変化に対応するため、経営革新計画を策定し、新たな取り組みにチャレンジする中小企業を支援する目的があります。
中小企業生産性革命支援補助金
「中小企業生産性革命支援補助金」は、対象となる業種や補助金の使途別に、3種類に分けられます。「中小企業設備導入支援型」「小規模事業者販路拡大開拓支援型」「テレワークツール導入支援型」です。
中小企業設備導入支援型
目的
中小企業などが、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるために必要な、新製品開発・生産プロセス改善などの設備投資を支援する目的です。
対象
この支援の対象は、国の「ものづくり補助金特別枠」に採択された県内の中小企業事業者などです。
小規模事業者販路開拓支援型
目的
小規模事業者などが、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるために、経営計画を作成して販路開拓に取り組むことなどを支援することが目的です。
対象
小規模事業者販路開拓支援型の対象は、国の「小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)」の「コロナ特別対応型」に採択された県内の小規模事業者などです。
テレワークツール導入支援型
目的
新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークツールを導入する事業者へ支援を目的としています。
対象
支援の対象は、国のIT導入補助金特別枠(C類型2:補助率3/4)に採択された県内の中小企業などのうち、「丙要件(テレワーク環境の整備)」に資するITツールを導入し、従業員がテレワークを実践できるような環境を整備する県内中小企業などです。
なお、IT導入補助金自体は経済産業省が主体で、新型コロナウイルス感染拡大の影響前から実施されています。今回新たに「特別枠」として、新型コロナ対策で条件を新設したという経緯があります。
中小企業・小規模事業者応援補助金
「中小企業・小規模事業者応援補助金」は、おおむね15種類の細かいジャンルに分けられています。新たな販路拡大に伴う事業費用の助成や、事業承継のサポートとなる内容、移動スーパーを始める際の助成など、かなり細分化されています。
業種によっては、このような従前からある福岡県独自の補助金を併用することもできます。
すでに受付終了している補助金も
中小企業・小規模事業者応援補助金には、2020年(令和2年)6月現在、すでに申請期間を終えている補助金もあります。福岡県のホームページにて最新情報を確認しておくとよいでしょう。
福岡市の支援策
この章では、福岡市の支援策についてご説明します。なお、内容は「福岡市 事業者向け情報(新型コロナウイルス感染症関連)」に基づいています。
店舗の家賃支援
県からの休業の協力要請・協力支援を受け、休業または業務縮小を実施した店舗などが対象です。賃料1か月分の8割、最大50万円を上限に支援する内容です。
市民生活に必要なサービスを安全に提供する休業等要請対象外施設への支援
県からの休業要請の対象ではない業種(理美容室や衣料品店など)で、売り上げが前年比30%以上減少した施設に対し、法人では15万円、個人事業主では10万円が交付されます。
文化・エンターテイメント事業継続支援
アーティストやイベント関連事業者に対する支援制度です。ウェブ配信動画の作成に関する支援として、1作品に上限50万円の支援を行うとしています。
地域の飲食店を支えるテイクアウト支援
新たにテイクアウトに取り組む飲食店などが、割引などの特典を付ける場合に、1店舗10万円の支援を実施するという内容です。持ち帰り飲食サービス業、配達飲食サービス業、小売店は除外となっています。
テレワークの導入を支援
福岡市内に本店を置く駐所企業・小規模事業者などに対し、テレワーク導入費用を支援するのが目的です。1企業あたり上限50万円としています。
宿泊事業者への支援
宿泊事業者の宿泊施設内の消毒、除菌対応など、必要な安全対策の強化にかかる経費を支援するのが目的です。
注意点
福岡市独自の支援策は、全国的にもかなり早い段階で公表され、導入されました。すでに第一弾の支援は2020年(令和2年)5月6日までで終了しているため、自身が申請する段階で、まだ申請期間内かどうかお調べください。
福岡市ホームページのトップページには、新型コロナウイルス感染症関連のページ案内が大きく表示されています。また、「福岡市 コロナ相談窓口」で直接キーワードを検索しても表示されます。最新情報の確認に活用してください。
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国の支援策
国の支援策は、広く国民全体に行き届く支援です。福岡にお住まいの人も、該当する支援があれば、ぜひほかの支援策と並行して申請を検討してみましょう。
持続化給付金
持続化給付金は、法人や個人の経営者向けの新型コロナウイルス対策として、最もポピュラーな支援策といえます。
持続化給付金の対象
持続化給付金の対象は、昨年度の事業収入から50%以上減少した法人または個人事業主です。所定の計算式をもとに、昨年と比べて減少した差額が金額の基準となります。
法人では最大200万円、個人事業主では最大100万円まで給付されます。書類に不備などがなければ、2週間前後で給付されると専用ウェブサイトなどでアナウンスされていますが、申請者が多いことから、実際には少し時間がかかる可能性も考えられます。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、やむを得ず休業や業務縮小を余儀なくされ、従業員を休業させた場合の休業補償について、国が「肩代わり」をしてくれるというものです。
雇用調整助成金の対象
従業員を雇って事業を行っている法人や個人事業主が対象です。申請するのは事業主側で、給付を受けるのも事業主側です。
従業員が多ければ多いほど、休業手当の負担は大きくなると考えられます。少しでも金銭的なサポートがあれば、安心して事業を継続することができるでしょう。
小学校休業等対応助成金
小学校休業等対応助成金は、学校等が休校になり、預けられる場所がないことで、本来の業務に影響が出た場合のための助成金です。
小学校休業等対応助成金の対象
小学校や幼稚園、保育園などに通うお子さんを持つ保護者で、企業に勤務している従業者から、業務委託契約を請け負っている個人事業主など広く対象となります。
企業などにお勤めの場合、助成金は1日当たり1万5,000円、個人事業主の場合は助成金が1日あたり7,500円です。勤務体系によって、提出する書類や細かい要件に差があるため注意しましょう。
起業したばかりの場合はどうなる?
新型コロナウイルス対策として公表されている支援策のほとんどが、前年事業年度との売り上げを比較した場合、一定の割合以下に減少していることを支援の条件としています。
では、2020年(令和2年)に起業し、前年との比較ができない場合はどうしたらよいのでしょうか。
持続化給付金は、2020年(令和2年)の1月~3月創業の新規事業ならOK
国の支援策の一つである「持続化給付金」は、2020年(令和2年)の1月から3月に創業した事業者も給付金の対象とすると、政府が決定しました。創業したばかりの事業者にとってネックとなっていた、従来の「前年比」という要件が緩和されたということです。
税理士など専門家の協力が必要
従来の「前年比」という概念がない分、新型コロナウイルスの影響で収入が減ったかどうかを証明するのは容易ではありません。そのため、税理士などの専門家が作成した毎月の収入を証明する資料を用意し、それらを添付書類として申請時に提出するよう求められています。
申請方法・申請する際の注意点
基本的な申請方法
オンライン、郵送、直接持参の3パターン
基本的な申請方法として、オンライン、郵送、直接持参の3パターンがあります。
例えば、福岡県の「持続化緊急支援金」は、基本的にオンライン申請を推奨しています。パソコンやスマートフォンを所有していないなど、やむを得ない場合のみ、完全予約制で窓口申請を受け付けています。
このように、オンライン申請をメインとし、やむを得ない場合は郵送または持参という申請方法が多いと考えられます。詳しくは各支援策のホームページにて確認しましょう。
最新情報を確認する
実際に申請する際の注意点としてまず挙げられるのは、最新情報の確認です。
特に、新型コロナウイルス対策として新設された制度に関しては、一定期間のみの申請を受け付けている制度もあります。さらに、福岡県独自、福岡市独自、そのほかの地域独自の支援策が多数あり、いずれも状況は変化しています。
せっかく該当する支援を受けられそうなものでも、申請時期を過ぎてしまうと受付はできません。必ず事前にスケジュールの確認を行いましょう。
必要書類作成に時間がかかることも
もう一つの注意点として、申請に必要な書類作成に時間がかかることも念頭に置いておきましょう。申請書類を用意して郵送することは、必ずしもスムーズに行えるとはいえません。申し込む支援策が決まったら、すぐに書類作成に取りかかるようにしましょう。
個人事業主の相談は商工会議所へ
企業や法人の場合は、提携している税理士や会計事務所の担当者に相談すれば、どの支援策に該当するかなど含めて、書類の準備のサポートも行ってくれるでしょう。
個人事業主やフリーランスの場合、有料で専門家に相談することもできますが、まずは最寄りの商工会議所へ相談してみることをおすすめします。助成金やスタートアップ(新規事業立ち上げ)など、幅広く相談することが可能です。
県や市が掲載している相談窓口を活用する
商工会議所以外でも、県や市のホームページに相談窓口が掲載されています。業種別や女性起業家向けの相談支援などもあるため、一度チェックしてみるとよいでしょう。
福岡県・福岡市の助成金まとめ
今回は、福岡県や福岡市が独自で実施している助成金などを解説しました。自身の事業で該当する助成金などがあれば、積極的に申請を検討してみましょう。本記事を活用いただき、不明点は各支援の担当部署に相談しながら進めていくことをおすすめします。
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