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【経営者必見】法人税の種類をわかりやすく解説!計算方法や節税ポイントまで

By 森本由紀

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2022.06.16
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会社にはいろいろな税金がかかりますが、主なものは法人税、法人事業税、法人住民税の3種類です。この3つの税金を合わせて、法人税または法人3税と呼ぶことがあります。本記事では法人にかかる3つの税金について解説。会社の節税や個人事業からの法人化を考えるときに、ぜひお役立てください。

法人税には3種類ある!各種の特徴を解説

会社経営をするなら、関係する税金について正しい知識を持っておくことが大切です。まず、会社にかかる法人税と法人事業税、法人住民税の3つについて概要を説明します。

法人税

会社で事業を行って利益が発生したら、法人税を納めなければなりません。法人税とは、会社などの法人の所得に課される国税です。個人の所得に課されるのは所得税ですが、法人の所得には法人税が課されます。

税率・計算方法

所得税も法人税も、課税所得に税率をかけて計算します。個人の所得税では、所得が増えるほど税率も高くなる「累進税率」が採用されています。一方、法人税は法人の種類や規模によって税率が決まる「比例税率」です。法人税の具体的な税率や計算方法については、後述します。

申告・納税方法と期限

法人税は会社が税額を計算し、税務署に申告して納める必要があります。会社は決算日の翌日から2か月以内に税務署に確定申告書を提出し、法人税を納税しなければなりません。税務署や役所、金融機関の窓口で支払う以外に、クレジットカード納税やコンビニ納税、電子納税も可能です。

https://www.ncbank.co.jp/lp/2021_for_owners/

法人事業税

法人の事業そのものにかかる地方税で、都道府県から課税されるものです。会社は事業を行うにあたって、地方自治体の提供する行政サービス(道路、港湾、消防、警察など)を利用しています。法人事業税には、こうした行政サービスにかかる経費を、行政サービスを利用している法人が分担するという意味があります。

税率・計算方法

法人事業税は、課税標準に税率をかけて税額を算出します。課税標準は会社の資本金が1億円を超えるかどうかで変わります。資本金が1億円以下の場合、課税標準は法人の年間所得です。なお、税率は標準税率と超過税率に分かれ、標準税率は全国一律ですが、超過税率は各都道府県が独自に定めています。

外形標準課税とは?

所得を基準にするのではなく、事業所の床面積や従業員数、資本金などの外形的な要素を考慮して課税する方法を外形標準課税といいます。資本金1億円を超える会社の法人事業税については、外形標準課税が採用されています。課税標準は所得、付加価値、資本金の3つで、それぞれに税率をかけて法人事業税額を計算します。

申告・納税方法と期限

法人事業税の納税期限は法人税と同様、事業年度が終了した日の翌日から2か月以内です。法人事業税も会社が税額を計算し、申告する必要があります。申告先は、事業所のある都道府県の県税事務所等です。

損金に算入可能

法人事業税は法人3税のうち唯一、損金算入が可能です。損金は、税金を計算するときに所得から差し引くことができるお金(原価、費用、損失など)を意味します。

法人住民税

所得のある個人は居住している自治体に住民税を納めなければなりませんが、法人にも同様に住民税が課されます。法人に課される住民税は法人住民税と呼ばれ、事業所のある自治体から課税されます。

法人住民税の内訳

東京都23区以外の法人については、都道府県民税と市町村民税を合わせたものが法人住民税です。東京都23区内の法人については市町村がないため、市町村民税に該当する部分も都民税として納税します。

法人税割と均等割

法人住民税は、法人税割と均等割に分かれます。

法人税割

法人税の金額に応じて課税される部分です。赤字の場合には発生しません。

均等割

資本金と従業員数に応じて課税される部分で、赤字の年でも発生します。

納税方法と期限

法人住民税は法人税と同様、事業年度終了日の翌日から2か月以内に申告・納付しなければなりません。申告先は、事業所のある都道府県や市町村です。

法人税の計算方法や法人税率について

法人にかかる税金のうち、最も意識しておかなければならないのが法人税です。会社では利益を出すために事業を行いますが、利益が出れば法人税の負担も大きくなります。節税対策を考えるためにも、法人税の計算方法や税率を把握しておきましょう。

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法人税の計算式

法人税は法人の年間所得に税率をかけて算出されます。法人税の計算式は、次のとおりです。

法人税額=課税所得×税率

法人税の課税所得とは?

企業会計では通常、「収益-費用=利益」と考えます。ただし、法人の課税所得は企業会計上の利益ではありません。税務会計では「益金-損金=所得」とされており、この所得にもとづき法人税を計算します。なお、益金、損金とは企業会計上の収益と費用に、一定の調整(申告調整)を加えたものです。

申告調整の方法

税務上の規定により、法人の当期利益をもとに次の計算式で所得を計算します。

所得=利益+益金算入-益金不算入―損金算入+損金不算入

受取配当金は収益に含まれますが、益金には含まれません。したがって、益金不算入の処理が必要です。また、交際費は原則として損金に含まれないので、損金不算入の処理をしなければなりません。

法人税の税率

法人の種類や規模、事業開始年度によって、法人税の税率は変わります。2019年(平成31年)4月1日以後に事業を開始した普通法人(株式会社など)の場合、法人税率は次の表のとおりです。

区分

所得金額

法人税率

資本金1億円以下の法人など

年間800万円以下の部分

15%(注1)

年間800万円超の部分

23.20%

上記以外の普通法人

23.20%

※2021年(令和3年)9月1日現在
※注1:平成31年4月1日以後に開始する事業年度において適用除外事業者(事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は19%

個人事業主と法人ではどっちが得?税金を比較!

個人事業主が法人化を考えるとき、一つの目安となるのが税金です。個人事業主にかかる所得税は所得が増えるほど税率が上がりますが、会社にかかる法人税率は会社の規模等により固定されています。つまり、個人事業で利益が出るようになって所得が増えてくると、会社にした方が税金を抑えられる可能性があるのです。

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所得税率は?

事業で利益を得て所得が発生すれば所得税がかかります。国税庁による「所得税の速算表」による税率の一覧表は次のとおりです。

課税所得金額

税率

1,000円から1,949,000円まで

5%

1,950,000円から3,299,000円まで

10%

3,300,000円から6,949,000円まで

20%

6,950,000円から8,999,000円まで

23%

9,000,000円から17,999,000円まで

33%

18,000,000円から39,999,000円まで

40%

40,000,000円以上

45%

法人化すると法人税と所得税の両方がかかる

個人事業主が法人化して会社の社長となった場合、会社から役員報酬(給料)を受け取ることになります。役員報酬は会社の必要経費となるため、役員報酬を払った分、会社の所得は減ります。一方で個人が受け取った役員報酬は、所得税の課税対象です。つまり、法人化すると所得が会社と個人に分散し、別々に課税されます。所得をどのように分散するかによって、税金も変わるということです。

かかるのは所得税・法人税だけではない

個人の場合には、所得税のほかに住民税や個人事業税がかかります。同様に法人の場合も、法人税以外に法人住民税・法人事業税の負担が発生します。それぞれの税金で計算方法が違うため、税金の差がどれくらいになるのかについてはケースごとに具体的な検討が必要です。

会社の方が税制上有利になる点は?

売上がいくらになったら会社にした方が有利という、明確な基準はありません。ただし、税制上会社の方が有利になる点もいくつかあります。法人化を検討するときには、以下のような法人の税制メリットも参考にするとよいでしょう。

給与所得控除が使える

法人化して役員報酬を受け取ると、個人の所得税を計算する際に給与所得控除が使えます。給与所得控除は、サラリーマンの必要経費に相当するものです。会社にとっては払った役員報酬が全額経費になり、個人にとっても受け取った給料の一部を経費にできるので、課税を圧縮する効果があります。なお、個人事業主も青色申告する場合には、最大65万円の青色申告特別控除を使えます。しかし、給与所得控除の場合は最大195万円なので、青色申告特別控除より有利な場面が多くなります。

欠損金を10年繰り越せる

個人事業主も青色申告をすれば、純損失を繰越控除できます。ただし、個人事業主の場合、繰越できる期間は3年間です。会社の場合は、10年間繰越控除できるというメリットがあります。

消費税の納税義務の免除が受けられる

個人事業主であっても会社であっても、前々年度の売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。つまり、創業から2年間はたとえ売上が1,000万円を超えていても、消費税を納税しなくてもよいということです。個人事業から法人成りした場合、個人事業主と法人は別人格なので、法人化後も2年間消費税の免除を受けられます。

法人は赤字でも税金がかかる点に注意

個人事業主の場合、赤字の年には税金がかかりません。一方、法人の場合は赤字でも法人住民税の均等割がかかります。法人住民税の均等割は、小規模法人であっても年間5~7万円程度の負担になります。法人の場合、利益が出なくても税金の負担が発生する点にも留意しておきましょう。

法人税の5つの節税ポイント

法人税を抑えるには、益金を減らしたり損金を増やしたりといった工夫が必要です。以下からは、法人税の節税のためにできる対策を5つご紹介します。

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役員報酬の見直し

役員報酬は原則として全額損金に算入できます。役員報酬を増やすことで、会社にかかる法人税を減らせます。ただし、役員報酬が増えると個人の所得税が上がる点に注意しておきましょう。税金のバランスを考えて役員報酬額を設定すれば、節税に効果的です。

中小企業向け共済に加入

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは、中小企業の取引先が倒産したときに、連鎖倒産等を防ぐために設けられている制度です。また、中小企業退職金共済(中退共)は、中小企業の事業主が従業員の退職金を社会に積み立てられる制度です。いずれも、加入すれば掛金を全額損金に算入できますが、共済金を受け取るときには課税されます。したがって、課税を先延ばしにできるものと考えるとよいでしょう。

出張手当を支給する

出張が多い会社では、交通費等の実費とは別に出張手当を支給することで節税効果が見込めます。出張手当を損金として計上するには、あらかじめ出張旅費規程を作っておく必要があります。あまり高額でない出張手当を規定どおりに支給した場合には、全額を損金に算入可能です。出張手当を受け取った個人にも、所得税はかかりません。

社用車に変更

これまで自家用車として使っていた車を社用車に変更することで、取得費用のほかにガソリン代や高速道路料金、自動車保険料なども経費として計上できます。車の利用頻度が高い場合には、かなりの節税効果が期待できるでしょう。

社員旅行を実施する

従業員の慰安のために実施する旅行に通常要する費用は、損金となります。ただし、旅行の期間が4泊5日以内、参加した人数が全体の50%以上などの要件があります。さらに、旅行が実質的な給与とみなされる場合には、従業員に所得税がかかることもあるため注意しましょう。

まとめ

会社には法人税、法人事業税、法人住民税がかかります。法人への税金のかかり方は個人とは違うため、計算方法の概略を知っておくと節税に役立ちます。3つの税金とも申告が必要なことも認識しておきましょう。個人事業主が法人化を考えるときには、税金面以外のメリットも含め、総合的に判断することが必要です。西日本シティ銀行の創業応援サロンでは、法人化のコンサルティングを行っていますので、ぜひお問い合わせください。

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