
企業が成長するうえで欠かせない『顧客理解』。しかし実際には、顧客の本音や行動の理由を正確に把握することは容易ではありません。
curioph(キュリオフ)株式会社が開発したAIリサーチツール「POLLS(ポールズ)」は、その課題に真正面から挑んでいます。アンケートとインタビューの間にある新しいリサーチ手法として、企業や自治体から注目を集めています。
今回は同社代表の玉木穣太さんに、プロダクト誕生の背景やビジネスの可能性について伺いました。
curioph株式会社 代表取締役 玉木穣太(たまき じょうた)さん
香川県出身、多摩美術大学卒業。2019年に前身の会社である株式会社XCOGを立ち上げる。2020年には株式会社カオナビのCDO(最高デザイン責任者)に就任、現在は外部CDO。2023年6月にcurioph株式会社を設立。
本音を深掘りすることで課題解決へと導く
――現在の事業について教えてください。
玉木:生成AIを活用して顧客の「なぜ」を引き出すリサーチツール「POLLS」を開発しています。1人でも1,000人でも、日本語でもタイ語でもどの言語でも顧客の声を集められる仕組みです。
例えばレストランの経営者であれば「お客さまがなぜ来店したのか」「どこに満足したのか」といった理由を知りたいですよね。
従来は主にアンケート用紙やインタビューで調査が行われていましたが、どちらにも課題がありました。
――どういった課題があるのでしょうか?
▲画像をクリックするとPOLLSのサイトへ移動します玉木:アンケートは深掘りが難しく、インタビューは時間や労力がかかり、本音を引き出す会話のテクニックも必要になります。もし50人に30分ずつインタビューすれば、それだけで25時間以上必要になり、結果をまとめて分析するとなると膨大な時間がかかってしまう。
POLLSはそのプロセスをAIで置き換えることで、短時間で質の高いリサーチを可能にします。しかも対象は顧客だけでなく従業員や、医療機関であれば患者など、ステークホルダーすべてに対応できることも特徴です。
――具体的にはどのように使うのでしょうか。
玉木:チャット形式で質問に答えてもらう仕組みです。スマートフォンから簡単に回答でき、AIが会話のように深掘りしていきます。
「既存のAIツールを使えばいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、POLLSとは「質問の設計」に違いがあります。
例えば既存のAIツールに「健康系の質問を考えて」と指示しても、「健康に気をつけていますか?」というような曖昧な質問が提案され、「まあまあ」や「そうだね」といった相槌のような回答しか返ってこないことが想像されます。
そこで「最近健康のために避けたものはありますか?」と質問を変えることで、「タバコをやめた」というように、具体的な行動が見えてきます。
――教えてほしいことをうまく聞き出すことができるのですね。
玉木:そうです。POLLSはこうしたプロのインタビュアーの深掘り質問を、AIで自動生成して本音を引き出せることが強みです。誰が使っても一定レベルのヒアリングができる。そこが価値だと思っています。
業種や用途を問わず活用できるリサーチ基盤
――どのような業種で活用できますか?
玉木:業種は本当に幅広いです。商品が売れた理由、お客さまの解約理由、人材の定着理由など、多くの企業が「なぜ」を知りたがっているからです。
自治体イベントで来場者の声を集めたり、企業の従業員エンゲージメントを測定したりと、用途も多岐にわたります。
――データを集めた後はどうするのでしょうか?
玉木:集まったデータは自動で分析され、仮説検証やクロス分析、ファクト検証も可能です。さらにレポートを音声化する機能も提供しているので、忙しい経営者が隙間時間に聞くこともできます。
ただ、私たちはレポート生成よりも収集した「会話ログ」に価値があると考えています。AIによる分析は後から生成できますが、一次情報としての顧客の声こそが、最も重要な資産だからです。
――このツールの強みは何でしょうか。
玉木:AIだけではなく、心理学やUX設計*などを組み合わせている点です。回答者がストレスなく話せる設計や、つい答えたくなる体験まで含めてデザインしています。
私たちは単なるリサーチツールを提供したいのではなく、顧客理解のプロセスそのものをデザインする仕組みを提供したいと考えて、POLLSを開発しました。
*UX設計(ユーザーエクスペリエンス設計)…ユーザーが商品やサービスを利用した際に得られる一連の体験
開発の原点は「本音を拾えなかった悔しさ」
――POLLSを開発したきっかけは何だったのでしょうか。
玉木:理由は二つあります。一つは、過去にリーダーを務めていたプロジェクトチームで事故が起きたことです。会社も組織も、そして自分自身も、事故を起こした人の本音に気づけなかったことで起きた事故だと思っています。もし声を拾えていたら防げたかもしれない。その悔しさが原点にあります。
もう一つは、趣味で絵を描いているのですが、その作品が売れる理由を知りたいというシンプルな思いです。人の心理は、本人でさえ言語化できないことが多い。そこにテクノロジーで近づけないかと考えました。
――玉木さんはこのPOLLSで起業されたのでしょうか?
▲代表の玉木さん玉木:いえ、最初は子どもの興味や関心を可視化するシステムを作っていました。教育コンテンツのマッチングなどに活用する構想です。
ただ事業として成立させるのが難しく、一度方向転換することにしました。そこから「なぜ商品が売れるのか」というビジネス領域へ進んでいったという経緯です。
――着眼点がすごいですね!
玉木:根底にあるのは、「なぜそうしたのか」という人の心理への興味です。本人さえも言語化できない、無意識に起こした行動についてロマンを感じると言いますか。それをシステムやテクノロジーで可視化することに興味を抱いています。
生成AI時代のスタートアップとして
――起業の過程で苦労したことはありますか?
玉木:2022年頃から構想を進めていたのですが、今のように生成AIが普及する前はなかなか市場に受け入れられませんでした。
プレゼンをしても理解されないことが多く、長いトンネルの中にいる感覚でした。タイミングも影響していたのだと思いますが、最近になってようやく追い風を感じています。
――東京から福岡に拠点を移されたのはなぜでしょうか?
玉木:妻が福岡の企業に転職することになったことが大きいのですが、長い人生の中で東京だけで終わらせるのはもったいない、と思ったことも理由の一つです。
――福岡でビジネスのメリットを感じることはありますか?
玉木:官民連携が非常に強い地域であることと、地場企業や金融機関がスタートアップを受け入れてくれる土壌があることもメリットに感じています。
スタートアップとしての現在地
――クライアントの反応はいかがですか?
玉木:多くの企業に興味を持っていただいていますし、実際に成果も出ています。ただ、現状は単発プロジェクトで終わることも多く、継続的なビジネスにすることが課題です。ここを乗り越えれば、大きく成長できると考えています。
――最後に、今後の展望を教えてください。
玉木:今後は地域企業のDX支援に、より力を入れていきたいと考えています。
実際、地域企業の多くはDXが十分に進んでいないのが現状です。私たちのサービスは、人手が少ない企業でも一定レベルのリサーチや顧客理解ができる仕組みができているので、DXの入り口として役立ててもらえるのではないかと考えています。
その一歩として、西日本シティ銀行のビジネスコンテストにも参加しました。
▲第6回西日本FHビジネスコンテストの様子。銀行や地域メディアは地域企業と強いつながりを持っているため、連携することでサービスを届けられる可能性が広がると感じています。
銀行やメディアが地域への"入口"を担い、私たちがテクノロジーという"武器"を提供する。そうした連携によって、地域企業の課題解決につながり、結果として地域全体が元気になっていく。そんな未来を目指しています。
▲ビジネスコンテストのアーカイブ動画はこちら
curioph株式会社について
■会社概要
会社名:curioph株式会社
URL:https://polls.jp/
所在地:福岡市博多区博多駅前 1-23-2 ParkFront博多駅前5F-B
設立:2023年6月
代表取締役:玉木 穣太
■事業内容
システム開発、マーケティング、コンサルティング
■問い合わせ先
jota☆curioph.com (☆を@に変更してアドレス記載)
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

◎コワーキング施設「Zero-Ten Park DAIMYO」
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福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。
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