
近年になって、社会の在り方は大きく変化しようとしています。企業はこれからの時代を生き抜くために、GX(グリーントランスフォーメーション)を意識した経営も重要になってくるかもしれません。本記事ではGXとは何かについて説明します。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
GX(グリーントランスフォーメーション)の「G」は「Green」、「X」は「Transformation」を意味します。まずは、GXとはどのような概念なのか解説します。
脱炭素社会に向けたパラダイムシフト
「Green」には「緑」から派生して「環境保護」の意味もあります。また、「X」は「Transformation」(変革、変容)の略として使われるアルファベットです。GXとは、地球環境を保護するための変革を意味します。
持続可能な社会の実現のために必要
今は世界的に、持続可能な「脱炭素社会」の実現に向けたパラダイムシフト(価値観の変容)が起こっています。
GXが目指しているのは、今ある環境問題の解決にとどまりません。環境を破壊することなく経済活動を続けられる、持続可能な社会です。GXでは、経済の仕組みや産業構造の根本的な変革が求められています。
カーボンニュートラルを目指す取り組み
現在解決が急がれているのが、温室効果ガスを原因とする「地球温暖化」の問題です。日本政府は、2020年(令和2年)に「2050年カーボンニュートラル宣言」をしました。
2050年までに温室効果ガスの排出量と回収量のバランスをとり、全体としてゼロにする必要があるのです。そのために、カーボンニュートラルを実現する新しい製品の創出や製造工程の変革が求められています。
企業での取り組みが不可欠
企業は、我々の生活や価値観に影響を与える製品やサービスを提供しています。脱炭素社会への移行を先導するのは、企業の役割と言っていいでしょう。環境問題を制約と捉えるのではなく成長の機会にするために、企業がGXに取り組む意義は大きくなっています。
クリーンエネルギーへの転換
GXにおける主な取り組みは、事業活動に利用するエネルギーをクリーンなエネルギーに転換することです。その1つには、再生可能エネルギーの活用があります。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど、温室効果ガスを発生せず、国内で生産可能なエネルギーです。たとえば、企業で使うエネルギー源を石油から再生可能エネルギーへ切り替えれば、カーボンニュートラルに近づきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)との関連性
GXと似た言葉に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」があります。どちらも今注目のキーワードなので、両者を混同してしまうこともあるでしょう。
DXとはデジタル技術を用いた変革のことで、環境保護目的に限ったものではありません。DXとGXはどちらも今後の企業の成長戦略を支える柱になります。
先進技術を活用
GXでもDXと同様、テクノロジーの利用がカギになります。デジタル技術を活用すれば、さまざまな場面での脱炭素化が容易になります。DXに環境保護の観点をプラスした戦略が、GXと言ってもいいでしょう。
GXが注目されている理由

脱炭素社会に向けて、GXを推進する企業が増えています。ここからは、企業がGXに注目し、積極的な取り組みを開始している理由について解説します。
カーボンニュートラル実現は日本の課題
地球温暖化は、世界全体で解決しなければならない課題です。カーボンニュートラル宣言を行っている国は、140ヶ国以上にのぼります。
国際社会の潮流に乗り遅れないためにも、日本は積極的な取り組みを行わなければなりません。2050年カーボンニュートラル実現のためには、国と企業が一緒になって取り組む必要があります。
企業主導で解決する必要がある
企業が行う事業活動では、大量の温暖化ガスが発生します。カーボンニュートラルを実現するためには、企業のCO2削減の取り組みが欠かせません。
GXを推進する企業では、国による支援も行われています。消費者も、環境問題を意識している企業を評価するようになりました。カーボンニュートラルに対応できない企業は、今後市場においても不利になってしまうでしょう。企業にとっては、GXが生き残りの手段とも言えそうです。
経済成長とCO2排出量削減の両立が必要
我々の住んでいる地球環境を維持するためには、温室効果ガスの排出を抑えなければなりません。しかし、温室効果ガス排出削減のため事業活動を抑制すれば、経済成長を遅れさせてしまうことになります。
今求められているのは、経済成長と環境保護を両立できる仕組みの構築です。GXにより社会や産業構造を変えれば、経済成長を止めることなく、環境を保護しながら事業を続けられます。
GXで持続可能な社会を目指す
近年は、国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」も注目されています。我々の住む地球を保護して持続可能な社会を作ることは、世界共通の目標です。持続可能な脱炭素社会を実現するために、企業におけるGX推進が必要とされています。
社会変革を目指すGXリーグとは?

政府がGX実現の施策として設立したのが「GXリーグ」です。まだスタートしたばかりですが、多数の企業が参画しています。今後はGXリーグが、カーボンニュートラルに向けた社会変革を先導することになるでしょう。
経済産業省が「GXリーグ基本構想」を発表
2022年(令和4年)2月1日、経済産業省は「GXリーグ基本構想」を公表しました。GXリーグとは、「野心的な炭素削減目標を掲げる企業群が、排出量削減に向けた投資を行いつつ、目標の達成に向けた自主的な排出量の取引を行う枠組み」と定義されています。GXに積極的に取り組む企業群と、官・学・金が協働し、GXに向けた実践を行う場がGXリーグです。
3つの取り組みで社会変革を先導
GXリーグでは、これから訪れる新しい時代に備えた議論や試みが行われる予定です。具体的には、以下のような取り組みの場とされています。
- 未来社会像対話の場
- 市場ルール形成の場
- 自主的な排出量取引の場
GXリーグは、カーボンニュートラルを実現させた未来像について議論する場や、新たな市場の創造やルール作りの場となります。自ら掲げた目標の達成に向けて、自主的な排出量取引も行われることになっています。
賛同企業は440社
経済産業省では「GXリーグ基本構想」の公表後、賛同企業を募りました。その結果、締め切りまでに合計440社が賛同しています。
賛同企業には大企業のみならず中小企業やスタートアップ企業も含まれており、注目度の高さがわかります。GXリーグには幅広い業種の企業が賛同していますが、特に多いのは以下のような業種です。
- 電力・ガス・石油などのエネルギー企業
- 鉄鋼・金属・化学・紙パルプ等CO2を多く排出する産業
- 自動車・電機・産業機械・食料品などの製造業
- 情報通信・金融・小売・建設・運輸などのサービス業
「GXリーグ基本構想」への賛同企業の一覧は、「GXリーグ設立準備公式サイト」で公開されています。
GXリーグ設立準備公式サイト
企業がGXを推進するメリット

現在、多くの企業がGXに注目し、取り組みを開始しています。「GXリーグ基本構想」にも、多数の企業が賛同しています。率先してGXを推進する企業が多いのは、企業にとってもメリットがあるからです。ここで、企業がGXを推進するメリットを整理しておきましょう。
企業のブランド力が向上
気候変動による異常気象や自然災害が起こり、多くの人が地球温暖化を重要な課題として認識するようになりました。国民は、環境問題解決に向けた企業の活動に期待しています。GXを推進すれば環境問題を通じて社会に貢献していることをアピールでき、企業イメージが向上します。
これからの企業のブランディングでは、環境問題について真剣に考える姿勢が欠かせないでしょう。
資金調達しやすくなる
GXを推進すれば持続可能な成長を目指している会社と判断され、資金調達が容易になります。近年は、投資家の間で「ESG投資」が活発になっています。ESG投資とは、環境、社会、ガバナンス(企業統治)に配慮した経営を行っている企業の株式等に投資する手法です。脱炭素経営を進めれば投資家に注目され、資金を集めやすくなるでしょう。
優秀な人材を確保できる
今の若い世代は、環境意識が高くなっています。カーボンニュートラル実現に向けた先進的な取り組みをしている企業は、就職活動中の学生からも注目されます。応募者がたくさん集まれば、優秀な人材も採用しやすくなるでしょう。脱炭素経営に役立つ専門的な知識や技術を持った人材を確保できれば、より企業が成長します。
コスト削減にもつながる
GXを進めれば、事業活動で使用するエネルギーを減らすことも可能です。自社で再生可能エネルギーを作れば、光熱費や燃料費を抑えられます。GX推進は、コスト削減にも有効です。
企業における具体的な取り組みの事例

国内でもさまざまな企業がGX推進をスタートしています。ここでは、業種別の取り組み例を紹介します。
自動車メーカー
化石燃料で動く従来型の自動車から電気自動車への切り替えは、自動車メーカーにとって重要な課題です。各自動車メーカーでは、電気自動車の製品割合を大きくする取り組みを行っています。製造工程でのCO2排出についても、再生可能エネルギーを使うなど脱炭素化に向けた改善策がとられています。
建設会社
エネルギー消費量を限りなくゼロに近付けた「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の普及に努める建設会社が増えています。浮体式洋上風力発電など、再生可能エネルギーの生産に取り組む建設会社もあります。
食品メーカー
食品廃棄物削減、環境負荷の少ない包材の利用、商品製造時の電力の再生可能エネルギー化などの取り組みが行われています。
まとめ
脱炭素経営の意義やメリットに注目し、GXに取り組む企業が増えています。今後環境を意識していない企業は、持続的な成長が見込めないでしょう。社内でGXに対応できるような仕組みを作ることも大切です。再生可能エネルギーへの切り替えなど、各企業でできるところから脱炭素化を進めていきましょう。
AFP(日本FP協会認定)、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。