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【スタートアップ企業向け】デットファイナンスについてわかりやすく解説!エクイティファイナンスとの違いも

By 森本 由紀

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公開日 2022.05.31
デットファイナンス

デットファイナンスとは

企業の資金調達方法には、デットファイナンスとエクイティファイナンスの大きく2つあります。本記事ではスタートアップ企業が資金調達する上でおさえておきたいデットファイナンスについて解説します。デットファイナンスの種類やメリット・デメリット、またエクイティファイナンスとの違いについて理解しておきましょう。

デットファイナンスは英語で表記すると「Debt Finance」で、日本語に訳すと「借入金融」です。具体的には、銀行借入や社債発行による資金調達方法を意味します。

返済義務を伴う資金調達方法

デットファイナンスは、簡単にいえば借金して資金を工面する方法です。銀行から資金の融資を受けた場合、約束した返済期限までに返さなければなりません。社債を発行した場合も、約束した期日までに投資家にお金を返す必要があります。デットファイナンスとは、返済義務が生じる資金調達方法といってもいいでしょう。

有利子負債が生じる

デットファイナンスでは負債が生じますが、これは有利子負債です。たとえば、銀行からお金を借りたら、定められた金利の利息を付けて返さなければなりません。社債も、クーポンと呼ばれる利息を投資家に払う必要があります。デットファイナンスでは、資金調達の際に利息というコストがかかります。

貸借対照表では「負債」が増加

銀行からの借入で資金を調達した場合、貸借対照表は負債の部に記載されます。デットファイナンスを行うと、負債が増加するのが特徴です。なお、会社の資金調達は株式発行でも行えます。株式を発行した場合、負債ではなく資本が増加します。株式発行のように資本が増加する資金調達方法は、エクイティファイナンスと呼ばれます。

企業の資金調達方法は大きく2種類

会社で必要な資金を調達する方法には、デットファイナンスとエクイティファイナンスの大きく2種類に分類されます。デットファイナンスの代表的なものが銀行借入と社債発行、エクイティファイナンスは基本的に新株発行による資金調達です。両者の違いについて、詳しくは後述します。

デットファイナンスの種類

デットファイナンス

デットファイナンスは、借金をして事業に必要な資金を用意する方法であると説明しました。デットファイナンスと呼ばれるものは何種類かあります。以下、デットファイナンスを種類ごとに分けて説明します。

公的金融機関からの借入

デットファイナンスの1つに、公的融資を利用する方法があります。公的融資でまず検討したいのが、日本政策金融公庫の融資制度です。日本政策金融公庫は、政府が一定の政策を実現する目的で設けた政策金融機関(政府系金融機関)です。個人事業者や中小企業向けに新規開業資金や長期事業資金の貸付を行っており、さまざまな融資メニューが用意されています。

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫の融資制度は、国民生活事業と中小企業事業に分かれます。中小企業が最初にお金を借りる場合、通常は国民生活事業の窓口に相談します。国民生活事業の融資制度には、次の表のようなものがあります。

国民生活事業の融資制度の例

種類

対象者

融資限度額

融資期間

一般貸付

ほとんどの業種の事業者

4,800万円

(特定設備資金は7,200万円)

設備資金:10年
<うち据置期間2年以内>

特定設備資金 20年
<うち据置期間2年以内>

運転資金:5年以内(特に必要な場合7年以内)
<うち据置期間1年以内>

新規開業資金

新たに事業を始める人または事業を開始後概ね7年以内の人

7,200万円

(うち運転資金4,800万円)

設備資金:20年
<うち据置期間2年以内>

運転資金:7年
<うち据置期間2年以内>(*1)

企業活力強化資金

一定の事業を営む人で、店舗の新築・増改築や機械設備の導入を行う人など

7,200万円

(うち運転資金4,800万円)

設備資金:20年
<うち据置期間2年以内>

運転資金:7年
<うち据置期間2年以内>

新創業融資制度

・新たに事業を始める人または事業開始後税務申告を2期終えてない人

・新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方

ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとする(*2)

3,000万円

(うち運転資金は1,500万円)

各融資制度で定める期間

(*1)「廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方」は、前事業に係る債務を返済するために必要な資金もお使いいただくことができ、運転資金は15年以内(うち据置期間2年以内)まで

(*2)事業に使用される予定のない資金は、本要件における自己資金には含まない

銀行からの借入

デットファイナンスには、民間の銀行から借入する方法もあります。銀行からの融資は、プロパー融資と信用保証協会の保証付き融資に分かれます。

プロパー融資とは?

保証協会を通さず、直接銀行から融資を受ける方法です。プロパー融資の場合、保証料は発生しません。銀行自らが100%責任をもって融資するため、当然審査も厳しくなります。実績がない創業時には、プロパー融資の利用がハードルが高いです。

保証付き融資とは?

信用保証協会に保証人になってもらい、銀行から融資を受ける方法です。信用保証協会は、小規模事業者や中小企業が金融機関からスムーズに融資を受けられるよう、保証人となるサポートを行う公的機関です。保証付き融資を利用すれば、業歴が浅い企業でも利用できます。

ビジネスローンとは?

事業資金に使えるローン商品には、無担保・連帯保証人なしで利用できるものもあります。ビジネスローンなら創業時でも融資が受けられることが多いですが、金利は通常のプロパー融資や保証付き融資よりも高めに設定されています。

デットファイナンスのメリット・デメリット

デットファイナンス

デットファイナンスを利用する場合のメリットとデメリットも把握しておきましょう。

メリット

資金調達の選択肢が多い

デットファイナンスの場合、選択肢が豊富で資金調達しやすい点がメリットです。たとえば融資を受けたい場合、借入先はたくさんあります。1つの銀行で貸してもらえなくても、別の銀行であれば融資が受けられる可能性もあるでしょう。

返済金額が明確

デットファイナンスは、融資を受けた時点で返済金額まで明らかになります。エクイティファイナンスのように、利益に応じた配当金が発生するわけではありません。

返済実績を作れる

デットファイナンスで融資を受けた資金を約束どおり返済すれば、返済実績ができて信用力が増します。将来的により良い条件で融資を受けることも可能になります。

経営権を維持できる

株式を利用するエクイティファイナンスは、第三者からも経営権に影響を受ける可能性があります。一方でデットファイナンスは株式による資金調達ではないため、基本的には経営権を握った状態を維持することができ、自由に事業を進められます。

デメリット

自己資本比率が下がる

自己資本比率は、総資本に対する自己資本の割合です。デットファイナンスを行えば負債が増え、自己資本比率が下がります。自己資本比率が低いと、新たな融資の審査や補助金・助成金の審査などで不利になってしまいます。

返済義務は負担になることも

デットファイナンスで調達した資金は、予め定められた条件に従って返済しなければなりません。返済は毎月行うケースが多いです。会社の業績が思わしくなければ、返済は経営の負担になることがあります。もし返済が遅れた場合、遅延損害金が発生したり、場合によっては期日前に一括返済しなければならなくなるケースもあります。万一、資金繰りが厳しくなってきた場合、返済が困難になる前に、早めに借入先の金融機関に相談するようにしましょう。

エクイティファイナンスとの違い

デットファイナンス

資金調達には、エクイティファイナンスという方法もあります。エクイティファイナンスとはどのような方法なのか、デットファイナンスとの違いを説明します。

エクイティファイナンスとは?

融資や社債発行で資金調達するデットファイナンスに対し、新株発行による資金調達方法をエクイティファイナンスといいます。エクイティ(Equity)とは、株主資本または自己資本の意味です。エクイティファイナンスには次のような方法があります。

時価発行増資

時価で新株を発行して、公募する方法です。自社株の株価が高ければ、少ない株式数でまとまった資金を調達できます。

株主割当増資

既存の株主に、保有株式数に応じて新株予約権を与える方法です。なお、株主には割り当てられた新株の申込や払込をする義務はありません。申込がなければ権利は失効するため、思ったとおりに資金調達ができない可能性もあります。

第三者割当増資

株主かどうかに関係なく、特定の第三者に新株を引き受ける権利を与えて発行する増資方法です。自社の株価が低い場合や、取引先等の連携を強化したい場合に用いられます。

転換社債型新株予約権付社債

一定の条件で、いつでも株式に転換できる権利が付いた社債です。

エクイティファイナンスのメリットとデメリット

エクイティファイナンスでは株式発行を伴います。株式発行による資金調達について、メリットやデメリットを把握しておきましょう。

返済義務がない

エクイティファイナンスはデットファイナンスと違い、返済の義務はありません。利息というコストが発生しないため集めた資金が減ることもなく、必要な金額を確保できます。

自己資本比率が上がる

エクイティファイナンスを行った場合、貸借対照表上は資本が増加します。自己資本比率を高められるので、対外的な信用力が増すのです。

経営者の権利が希薄化する可能性

新株発行による資金調達では、会社に対して発言権を持つ人を増やします。株主は株主総会に出席し、議決権を行使できるからです。株式を多く保有した株主に経営権を握られ、経営者が自由に会社を経営できなくなるリスクがあります。

デットファイナンスとエクイティファイナンスの使い分け

資金調達手段を考えるとき、デットファイナンスとエクイティファイナンスのどちらを選ぶべきか、一般的な基準を説明します。

デットファイナンスが向いているケース

資金を借入しても返済ができる見込みがあるなら、デットファイナンスで問題はないでしょう。資産価値のある不動産を保有している場合にも、デットファイナンスが有効です。デットファイナンスなら経営権を握られるリスクもありません。

エクイティファイナンスが向いているケース

エクイティファイナンスは、事業の発展により株価の上昇や配当金が見込めるといった場合に投資家等による株式の引き受けが期待できるため、今後の収益拡大が見込まれる際に資金調達の手段として有効です。

まとめ

デットファイナンスによる資金調達は、会社の経営権に影響が少ない点が大きなメリットです。ただし、返済義務が生じるため資金計画を立てて利用しましょう。会社の状況によっては、エクイティファイナンスが向いていることもあります。創業時の資金調達については、西日本シティ銀行の「創業応援サロン」でサポートが受けられます。事業計画の作成から相談できますので、ぜひ活用してください。

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