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エクイティとは?【経営者向け】資金調達の手段と して知っておくべき仕組みを紹介

By 市川えり

|
2021.11.16

新規事業や設備投資など、自己資金のみの準備では難しい場合があります。ビジネスを展開していくうえで、資金をどこから調達するかは重要なテーマです。この記事では、自己資金以外の資金調達の方法のひとつである「エクイティ」を中心に解説します。

エクイティって?

エクイティとはどのような資金調達方法なのでしょうか。意味や種類についてわかりやすく説明します。

エクイティとは「株式」「株主資本」を意味する

エクイティ(Equity)は、「株式」や「株主資本」をさす言葉です。一般的には、新株などの発行により株主資本の増加を伴う資金調達を「エクイティファイナンス」といいます。

エクイティファイナンスの種類

エクイティファイナンスによる主な資金調達の方法は、以下の4つです。

公募(時価発行増資)

不特定多数の第三者から時価や時価に近い価格で新株を発行する方法を、公募(時価発行増資)といいます。自社の株価が比較的高い水準にあるときに実施すると、少ない株式発行数で多額の資金を調達できるのが特徴です。一般投資家などから幅広く資金調達が可能なため、株主層の拡大にもつながります。

その一方で、株主が増えると発行済株式数も増加するので、株主構成比率が変化します。既存株主の利益を保護するため、時価よりも有利な価額で新株を発行する場合は株主総会での特別決議が必要です。

株主割当増資

既存の株主に対して新株を発行するときに、持ち株数に応じて「新株の割り当てを受ける権利」を与える方法です。「株主割り当て」ともいいます。既存の株主は、割り当てられた新株の申し込みや払い込みを行う義務はありません。申し込みをしなければ権利は失効します。

既存の株主に対して新株を発行するため、株主構成比率に大きな変化が生じにくいです。時価よりも低い価格で発行が可能で、既存株主は有利な発行価格で申し込めます。なお、自社への株主割当増資はできません。

第三者割当増資

特定の第三者に新株を割り当てて、資金を調達する方法です。第三者は主に取引先や業務提携先などの縁故者が対象のため、「縁故割当増資(縁故募集)」ともいいます。既存株主に対する割り当てであっても、持ち株数に応じていなければ第三者割当に該当します。相手との連携強化目的で利用することが多く、第三者に有利な割り当ての場合は株主総会での特別決議が必要です。

転換社債型新株予約権付社債

新株予約権が付与された社債(投資家から資金を募るために会社が発行する債券)です。「転換社債」や「CB(Convertible Bondの略)」とも呼ばれます。新株予約権とは、発行した株式会社に対して株式の交付を受けられる権利です。新株予約権を行使して株式に転換するか、社債として利金や償還金を受け取るかは選択できます。普通社債に比べて利回りは低くなりますが、株価が上昇すれば株式に転換して値上がり益を得られるメリットがあります。

エクイティとデットの違いとは

どちらも資金調達の方法ですが、エクイティとデットには違いがあります。ここではその違いについて解説していきます。

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デットとは「債務」「負債」を意味する

デット(Debt)とは「債務」「負債」をさす言葉で、一般的に借り入れによる資金調達をデットファイナンスといいます。株式発行などで資金調達するエクイティファイナンスとは、まったく別の方法です。

デットファイナンスの種類

デットによる資金調達の方法を、以下にまとめました。

銀行など民間の金融機関による融資

銀行や信用金庫などから借り入れる方法です。融資を受けるには審査が必要で、審査に応じて返済の方法や期間、金利などが決定します。メガバンクよりも地域密着型の地銀や信用金庫の方が、融資を受けやすい傾向にあります。

地方自治体の融資制度

地方自治体が民間の金融機関などと連携して実施する制度です。活気のある街づくりを目的とする、地域ビジネスの創業支援などに活用されています。民間の金融機関に比べて低金利で融資を受けやすい傾向にありますが、融資実行までの手続きに時間を要することがあります。

ノンバンクからの融資

銀行や信用金庫以外の金融機関(ビジネスローン会社・信販・クレジットカード会社)や消費者金融による融資を受ける方法です。銀行や公的機関よりも審査が通りやすく融資までの期間が短いですが、金利は高い傾向にあります。

日本政策金融公庫を利用する

日本政府が100%出資する金融機関です。銀行などに比べて融資を受けやすく、金利も低く設定されています。とくに中小企業や小規模事業者、資金力や業務実績に乏しいスタートアップ企業などで利用されます。審査に時間がかかる点がデメリットです。

社債の発行

社債は、企業が投資家から資金調達する場合に発行する債券(借用証明)です。発行する会社の財務状況などによって、利回りや価格を決定します。社債の発行理由は株式と同じですが、利息の支払いに加え満期(償還日)には償還金を返還する必要があります。

私募債の発行

少数の投資家に引き受けてもらう社債が私募債です。50人未満の投資家を対象とした少人数私募債や、銀行が引き受けてくれる銀行保証付私募債などがあります。社債などに比べて調達できる金額は少なくなりますが、毎月の返済をする必要はありません。また、資金調達までの手続きが簡略化されているのも特徴です。

エクイティとデットの違い


エクイティ

デット

返済義務

なし

あり

資本の区分

自己資本

他人資本

貸借対照表の扱い

資本

負債

資金調達先の

リスクとリターン

ハイリスク

ハイリターン

ローリスク

ローリターン

株主の権限

経営権に影響あり

経営権に影響なし

返済義務

エクイティファイナンスは基本的に返済義務がなく、利息もありません。ただし、利益が出た場合は株主に配当金として分配する必要があります。

デットファイナンスは、融資元に対して返済義務のある借り入れです。ほとんどの場合、借り入れ元本の他に利息を支払う必要があります。資金調達後は毎月返済しなければならず、借り入れ額が多くなると金銭的な負担も大きくなります。

資本の区分

エクイティファイナンスは株式による資金調達のため、自己資本として扱われるケースが一般的です。

デットファイナンスは借り入れによる資金調達のため、他人資本です。

貸借対照表の扱い

エクイティファイナンスは貸借対照表の「資本」に分類され、会社の純資産に対する自己資本比率の増加につながるのが特徴です。返済義務のない資本金の割合が大きいほど、投資家や金融機関などから財務的に安定していると評価されます。

デットファイナンスは貸借対照表の「負債」に分類されます。負債の額が増えると自己資本比率が下がって印象が悪くなるため、自己資本と借り入れのバランスが重要です。

資金の出し手のメリットとデメリット

エクイティファイナンスの資金調達先(株主など)のメリットは、配当金と株の売却益で、投資した会社の業績が良ければリターンが増えることです。デメリットは、事業が失敗した場合に、資金が優先的に返済に充てられるので、配当がなくなる可能性が高いということです。

デットファイナンスによる資金調達先(金融機関など)のデメリットは、元本の返済と利息の支払いが行われないことです。ただし、元本の回収は株主に支払われる配当金よりも優先されるため、比較的リスクは低いです。リターンは借り入れに対する利息のみで、会社がどれだけ利益を出しても決められた分しか受け取れません。

株主の権限

エクイティファイナンスは新株を発行すると持ち株比率が変わるため、経営権に影響が出る可能性があります。

デットファイナンスは株式には関係しないので、経営権に影響は出ません。

エクイティファイナンスの魅力

デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いについて説明しましたが、エクイティファイナンスの魅力はどのようなところなのでしょうか。ここでは、その魅力について紹介します。

返済義務に追われる必要がない

返済義務のあるデットファイナンスは、借り入れの元本と利息の支払いが経営に大きな影響を与える可能性があります。エクイティファイナンスは、基本的に利息も返済義務も生じないのが1番のメリットです。毎月の返済に追われて経営が圧迫されることがないため、余裕のある資金繰りが期待できます。

財務体質を強固にする

エクイティファイナンスは、会社の財務体質を強化するのに役立ちます。自己資本比率が高くなると、投資家や金融機関から資金調達力のある会社だと評価されます。資金的に余裕があると判断されれば、さらなる増資や融資が期待できます。それらを元手に設備投資をしたり新規事業を開拓したりと、会社の規模拡大が可能です。

多額の資金調達も可能

エクイティファイナンスには上限がありません。企業の価値が高く魅力のある事業であると評価されれば、増資を受けやすくなります。さらにIPO(株式公開)ならば、株式市場を利用した資金調達が可能になります。一般投資家が証券取引所を通して自由に売買できるため、巨額の増資の実現も不可能ではありません。上場会社になるための審査は厳しいですが、社会的信用は向上します。そのため取引先の幅が増えたり、優秀な人材を採用できたりするのが大きなメリットです。

赤字でも調達できる

デットファイナンスはその時点で担保がなかったり、赤字経営で返済能力がなかったりすると融資を受けられない可能性があります。一方エクイティファイナンスは、市場の将来性や会社の成長が指標です。そのため、今の経営状況が悪かったとしても資金調達できる可能性はあります。

経営スキルやノウハウを学べる

スタートアップやベンチャー企業の場合、ベンチャーキャピタルから資金調達を受ける選択があります。ベンチャーキャピタルは事業を成長させる知識やアイデアを提供してくれるため、資金調達以外のメリットがあるといえます。

エクイティファイナンスの4つの注意点

エクイティファイナンスをより深く理解するために、注意点についても押さえておきましょう。

株式の希薄化

新株を発行すると市場に出回る株式の数が増えて1株あたりの価値が下がり、既存株主の利益が減少する恐れがあります。この株式の希薄化は、株価下落の要因のひとつといわれています。既存株主の利益を守るための法令順守や、理解してもらえるような合理的な説明が必要です。

経営権への影響

株主には株主総会での議決権があり、会社の経営に関われます。エクイティファイナンスで第三者の持ち株比率が高くなると、場合によっては株主に経営権を渡してしまうリスクにつながります。

投資家へ配当金の支払いが必要

エクイティファイナンスでは、各株主の持ち株数に合わせて利益を分配する必要があります。株式への投資は一般的にはハイリスクで、借り入れによる利息よりも高いリターンが求められるためです。よって、配当金が増えすぎると会社の利益が減る可能性があります。なお、配当金の支払いは経費にできない点にも注意が必要です。

資金調達に時間と費用がかかる

エクイティファイナンスは、会社法に則った手順で実施しなければなりません。そのため、早急に資金調達が必要なときは間に合わなくなる可能性があります。利用する際は、余裕のある時間配分が大切です。また、必要書類の作成や提出を専門家に依頼する場合は、報酬の支払いも発生します。

エクイティファイナンスで資金調達しよう!

では、実際にエクイティファイナンスで資金調達をするにはどうしたらいいのでしょうか。以下より手順について説明します。

エクイティファイナンスによる資金調達の手順

価格を決める

一般的に増資の価格を決めるのは、ブックビルディング(需要積み上げ)と呼ばれる方法です。ブックビルディングでは、まず勧誘で引受証券会社が仮の発行条件を提示し投資家に需要調査をします。そして調査結果に基づき、公募価格を決定します。

株主への説明

非公開会社の場合、株主総会の特別決議で定められる主な項目は以下のとおりです。

  • 募集株式の数

  • 募集株式の発行価格と算定方法

  • 払い込み期間・期日

  • 申し込み期間・期日

  • 増加する資本金および資本準備金に関する事項

公開会社の場合は、募集事項は取締役会(※)にて決定します。

※譲渡制限株式の募集事項は株式総会の決議による

出典:会社法201条

有価証券届出書の作成・提出

有価証券届出書は、株式や債券の発行時に必要な書類です。株式や債券を発行し募集する際は、財務局への提出が法律で定められています。

出典:金融商品取引法第2条第7項

新株発行事項を通知する

新株を発行する会社は募集株式の引受けの申し込みをしようとする者に対し、会社の商号や募集事項などを通知しなければなりません。

出典:会社法203条1項

株式申込証(新株引受権証書)による新株引き受け

新株を引き受ける人(株式引受人)は、株式申込証による申し込みをします。会社は割り当てる株式引受人を確定し、株式引受人が期日までに払い込みをすると新株発行の効力が生じます。

必要書類を作成して登記申請する

増資時に必要な登記申請は、会社の所在地を管轄する法務局で行います。登記申請に必要な書類を以下にまとめました。

  • 登記申請書

  • 株主総会議事録 ※取締役会の場合は取締役会議事録も必要

  • 株主リスト

  • 株式申込証(新株引受権証書)

  • 払い込みを証明する書類(通帳のコピー)

  • 資本金の計上に関する証明書

まとめ

資金調達にはエクイティ(株式)やデット(借り入れ)などがあり、それぞれ異なる特徴があります。専門家の意見などを参考に違いを理解して、会社の経営状況にあわせた方法を選ぶのが大切です。

西日本シティ銀行に相談する

資金調達には決められた手順や必要書類の記入方法など、自分で行うには難しい手続きがたくさんあります。西日本シティ銀行でもいくつかのサポートをご準備しておりますので是非チェックしてみてください。

西日本シティ銀行の「NCB創業応援サロン」は、事業計画作成やデットファイナンス、創業後の課題などの創業にまつわる相談ができる交流拠点です。
エクイティファイナンスに関するご相談は、西日本シティ銀行の「NCBベンチャーキャピタル」をご活用ください。

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