インタビュー

移住先の下関で独立し、地元企業のDX推進に貢献|株式会社etika 宮村佳祐さん

By 西 紀子

|
公開日 2023.03.31

スマートフォンでの情報収集やコミュニケーションが当たり前になった現在。ビジネスにおいてもデジタル化(DX:デジタルトランスフォーメーション)が進んでおり、特にコロナ渦以降は、営業活動のDX化を急務とする企業が増えています。2019年に山口県下関市で設立した株式会社etikaは、デジタルツールでの情報発信・顧客管理など、営業活動のDX支援に特化したコンサルティング会社です。事業の拡大により現在は福岡市にも拠点を持つ同社代表の宮村さんに、移住・独立からこれまでの起業ストーリーを聞きました。

■株式会社etika(エティカ)
代表取締役 宮村佳祐さん
青森県出身。大学卒業後、株式会社イノベーション(東京都)に入社。MA(マーケティングオートメーション)ツール「リストファインダー」の立ち上げ・事業責任者を担う。東証マザーズ上場を経験し、同社執行役員を経て2018年に退職。山口県下関市に移住しフリーランスで活動後、2019年6月に株式会社etikaを設立。2022年1月、福岡オフィス開設。

35歳、「新しい挑戦がしたい」と移住・独立を決断

――まずは事業内容について教えてください。

BtoB企業を中心に、営業活動のDX化を支援させていただいております。買い手側の情報収集の手段やコミュニケーションはスマートフォンを中心にデジタル化が進み、今や当たり前になりましたが、一方で、売り手の情報発信はまだアナログ、オフラインの手段に頼っている企業が多いのが現状です。法人向けに何かを売りたいという場合も、営業担当者が足しげく通って提案書を持って行って…という方法がまだまだ主流。もちろんこれも有効な手段ではありますが、顧客企業にとって有益な情報を定期的に発信したり、効率的なコミュニケーションを取ったりできると良いですよね。こうした体制を整えるご提案をさせていただいています。特にコロナ禍以降、直接対面する機会が減ったこともあり、営業担当者とのコミュニケーションもデジタルで行う企業が急速に増えてきました。このようなニーズを踏まえ、当社ではCRMおよびMA(マーケティングオートメーション)ツールの導入伴走支援・コンサルティング業務を中心に行っております。CRMとは、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(顧客関係管理)の略称で、会社の中にある情報を顧客に関連付けて管理をしていくことで、顧客情報資産を有効活用することができる、ソフトウエアの総称です。

――前職までのキャリアから、起業されようと思ったきっかけをお聞かせください。

前職の株式会社イノベーションで、入社5年目の頃に「リストファインダー」というマーケティングツールの立ち上げに携わりました。会社が東証マザーズに上場した頃、私自身は同サービスの事業責任者および執行役員として仕事をしていましたが、入社12年目を迎え、「若い世代にチャンスをあげたい、自分も新しいことに挑戦したい」という思いが沸いてきました。私も妻も地方出身というのもあり、子どもが幼稚園に入園するタイミングでもあったので、家族と話し合って、妻の地元である下関に移住して独立することにしました。

――役員にまでなられた会社から独立されるのは、思い切った決断ですね。

独立に対してのハードルはあまり感じませんでした。というのも前職のイノベーションは、代表も含め独立心のある社員が多い会社で、挑戦を後押ししてくれるような空気感がありました。それに私自身、若い頃から「いつか自分のスキルを活かして地域貢献をしたい」という思いがあり、35歳で新たな挑戦をしたいと決断しました。

――独立して最初に取り組んだことは何でしょうか?

人脈を広げることですね。私の仕事はパソコンさえあればできるのですが、人との出会いは、能動的に動かないと生まれないので。下関は妻の地元ではありますが、私自身の繋がりはなかったですし、そこは意識して動いていました。移住して1年程は個人事業主で、前職のイノベーションや取引先だった企業からお仕事をいただいて、営業代行やマーケティング企画のようなことをしながら、地元の経営者の会合や勉強会に参加したりして、少しずつ人脈を広げていきました。法人としては、2021年6月に株式会社etikaを設立しました。

「自分にしかできない一番の強み」を主力事業に

――会社設立後は順調に業績を伸ばしてこられたのですか?

設立からしばらくは試行錯誤して、赤字が続いていました。当初は、ネット通販やクラウドファウンディング代行などEコマースの支援業務も含めた、総合的なDXコンサルティングを行っていたんです。ただ、こうした業務は競合他社が多く、自社の強みを打ち出すためには、BtoB取引におけるCRMの導入支援やカスタマイズ事業に注力するのが良いのではないかと思いました。コロナ禍もあって、営業活動DX化のニーズが高まっていましたし。CRMツールは色々ありますが、前職で国内の製品をすべて調査・比較した中で、「地域の企業にとって本当に必要なもの、役に立てるものは何か」を検討しました。地元経営者たちと話して予算感などもうかがった上で、比較的リーズナブルな予算で導入することができる、ZOHO社のCRMの販売代理と導入支援を主力事業として行っています。おかげさまで現在は黒字化しており、取引先は山口が半分、福岡が2割、東京が3割で、地元企業のDXを進めるという点では、貢献できているのではと実感しています。

――現在は人材も採用され、福岡にも拠点があるんですね。

はい。地元・山口県の方と、もう一人は長崎県在住の方でリモート採用です。取引先が増えて福岡に来ることも多いので、現在は本社・下関のほかに、福岡のコワーキング施設「The Company DAIMYO」にも拠点を置いています。もともと下関での独立・移住を決めた当初から、福岡は商圏として意識はしていました。

――-今後の展望についてお聞かせください。

今後は、CRMとの連携アプリなど自社サービスの開発にも取り組みたいですね。お客様のDX化をこれまで以上に進めることに貢献できたらと考えております。

――これから起業を考えている方に一言アドバイスをお願いいたします。

当社が提供する事業そのものとは相反するのですが(笑)、やはり、人と会うことは大事です。最近は遠慮がちになっている人も多いですが、待っていても商売はやってきません。人とちゃんと繋がって、自分の価値をぶつけにいくことが大切です。これをやるかやらないかで、未来は変わると思います。

株式会社etikaについて

■会社概要
会社名:株式会社etika
URL: https://etika.life/
所在地:山口県下関市阿弥陀寺町7-8 uzuhouse
福岡オフィス:福岡市中央区天神2-5-28 西通りセンタービル6FThe Company DAIMYO

■事業内容
・マーケティング・営業DX支援事業

お知らせ

Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

Writer

おすすめの記事

対談記事【ビジネスのヒント】|斬新な新サービスを支えた企業と銀行の絆
続きを読む >

お役立ち

2025.02.06

対談記事【ビジネスのヒント】|斬新な新サービスを支えた企業と銀行の絆

経営に関する悩みや課題を抱える事業経営者の皆さまにとって、銀行の営業担当者は心強いサポーターの一人です。そこで、らいふくのーと編集部では、事業経営者と西日本シティ銀行の営業担当者にスポットをあててインタビュー。二人の出会いや、事業の成功までの道のりなどをざっくばらんにお話しいただきます。

【2025年】キャッシュレス決済導入に使える補助金・助成金5選
続きを読む >

お役立ち

2025.03.05

【2025年】キャッシュレス決済導入に使える補助金・助成金5選

感染症対策やインバウンド対策等の一環としてキャッシュレス決済への需要が高まるなか、キャッシュレス決済の導入を検討しているものの、コストが気になるという事業者様は少なくないでしょう。 そこでこの記事では、キャッシュレス決済端末を導入する際に活用できる主な補助金や助成金を紹介します。 ※記事内容は、2025年3月3日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

IT導入補助金2025の変更点とは?拡充ポイントや制度概要を解説
続きを読む >

お役立ち

2025.03.04

IT導入補助金2025の変更点とは?拡充ポイントや制度概要を解説

事業者の業務効率化を支援する国の施策のひとつに「IT導入補助金」があります。 ITツールの導入を支援する制度で、これまで複数年にわたり公募を実施してきました。 さらに、令和6年(2024年)12月の令和6年度(2024年度)補正予算成立に伴い、今後の継続も決まっています。 そこでこの記事では、IT導入補助金2025で実施予定の拡充ポイントを交えて制度概要を解説します。 ※記事内容は、2025年2月3日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

働き方改革に注力している企業ってどんなところ?|次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」
続きを読む >

お役立ち

2023.11.21

働き方改革に注力している企業ってどんなところ?|次世代ワークスタイル応援私募債「ミライへの路」

これから就職先を探している学生のみなさんにとって、どんな企業が自分にとって働きやすいのか、気になりますよね。そこで今回は、西日本シティ銀行が取り扱う次世代ワークスタイル応援私募債『ミライへの路*』を発行している企業のみなさんにご協力をいただき、その企業で実際に働いている若手の社員に直撃インタビュー。なぜ入社を決めたのか、実際に働いてみてどんな感じなのか、などをヒアリングしました。また、併せて、各企業の経営者にも、求める人材像や今後の展望などをお話しいただきました。取材に協力いただいた企業は、地元・福岡で働き方改革に注力している、優良企業ばかりです。ぜひ、就職希望先の候補の一つとして、働く先輩たちのリアルな声をご一読ください。

お菓子製造のOEMで福岡の製菓業界に新境地を開く。ATELIER S.e.n.s.e 中原浩雅さん
続きを読む >

インタビュー

2025.03.07

お菓子製造のOEMで福岡の製菓業界に新境地を開く。ATELIER S.e.n.s.e 中原浩雅さん

他社ブランドの商品を生産する"OEM"。受託企業は商品の製造に、委託企業は商品開発やPRに集中できるというメリットがあり、アパレルや自動車などのさまざまな業種で活用されていますが、食品業界でもOEMの商品は多く見られます。今回はそんな食品の中でもお菓子(焼き菓子)のOEM製造を手がける、「ATELIER S.e.n.s.e(アトリエ・センス)」代表の中原浩雅さんにインタビュー。福岡ではまだ希少なお菓子のOEMという業種で起業した背景には、中原さんの多彩な経験が深く関わっていました。

手書きの手紙で企業をサポート、さらにその先へ|株式会社RAPAS 陸守康汰さん
続きを読む >

インタビュー

2025.03.04

手書きの手紙で企業をサポート、さらにその先へ|株式会社RAPAS 陸守康汰さん

スポーツ業界でスポンサー広告の費用対効果をAIで可視化|株式会社NextStairs万井拓馬さん
続きを読む >

インタビュー

2025.03.03

スポーツ業界でスポンサー広告の費用対効果をAIで可視化|株式会社NextStairs万井拓馬さん

【ミライへの路に挑む企業】循環型の総合不動産企業として、社員もお客さまもハッピーに!|株式会社みらいコンシェルジュ
続きを読む >

お役立ち

2025.02.06

【ミライへの路に挑む企業】循環型の総合不動産企業として、社員もお客さまもハッピーに!|株式会社みらいコンシェルジュ

多様な生き方や働き方が広がりつつある現代。企業にはこれからますます、さまざまな人が働きやすい環境を整えることが求められます。社員の働きやすさを叶える企業の取り組みとは? この連載では、実際に働き方改革を積極的に取り組む企業で働く人や経営者にインタビュー。今回は熊本を基盤に不動産売買やファイナンシャルプランニング、保険の見直しなどの幅広い事業を展開する「CRAS(クラス)」を運営する「株式会社みらいコンシェルジュ」にお話を伺いました。