
医療・福祉業界の人材紹介サービスをメインに事業展開する株式会社GR8(グレイト)キャリア。代表の小畑和貴さんは宮城県出身で福岡に移住し、住宅メーカーから人材紹介業界に転職したという異色のキャリアの持ち主です。創業から1年足らずでメンバーは15人ほどに増え、順調な滑り出しといえます。しかし、組織や利益の拡大は求めず、あくまでも「質の高いサービス提供」と「社員とその家族が笑顔で過ごせること」にこだわり続けたいという小畑さんに、その思いの根源や起業のストーリーを聞きました。
■プロフィール
株式会社GR8キャリア
代表取締役 小畑和貴
宮城県生まれ。地元の大学で環境建設工学を学び、卒業後は住宅メーカーに就職。宮城の支社で営業として3年ほど働き、福岡へ移住。人材紹介サービスの2社を経て、2024年8月に株式会社GR8キャリアを設立。
活性化した市場を求め、医療・福祉分野の人材紹介へ
――小畑さんは宮城県出身とのこと。福岡で会社を立ち上げるまでの経緯を教えてください。
小畑:仙台の大学を卒業後、営業の仕事をしたくて、住宅メーカーに入社しました。全国に支店のある会社で、新卒の集合研修で出会った福岡出身の女性と付き合い始めまして、僕は宮城、彼女は宮崎や福岡で働いていました。3年経って結婚を前提に、旅行で何度か訪れた福岡を終の棲家にしたいと思い、福岡への移住を決めました。
――仕事はどうされたのでしょうか。
小畑:住宅メーカーは退社して、福岡では人材紹介の会社に入社しました。医療・福祉業界に特化した上場企業の支社でした。
住宅メーカーから人材紹介の営業に転職した理由は2つあります。ひとつは、個人として営業したかったから。住宅メーカーではチーム営業で、自分がいくら成果を上げても相対評価となり、まわりの売上が伴っていなければ評価されなくて。自分の責任で対価を得られる仕事をしたかったんです。2つ目は医療・福祉の業界に興味があったからです。営業として働く上で、常に活性化した市場でどんどん新しい経験を積みたいと思っていて、医療・福祉はしばらく衰退しない業界だと考えていました。あれから10年経ち、実際に有効求人倍率は横ばいか少し上がっている状況で、僕のイメージ通りだったと感じています。

――確かに業界を見極めることは大切ですね。
小畑:はい、その後、知り合いに声をかけられて、大手の人材会社に転職しました。総合的な人材事業をしている会社ですが、僕の配属は医療・福祉の部門でした。当時はちょうど30歳で、結婚して子どもを望んでいたので、しっかりした基盤のある会社で腰を据えて働きたいと考え、転職に踏み切りました。
――人材紹介の営業職にはやりがいを感じていたのでしょうか。
小畑:すごくいい仕事だと感じていました。BtoBとBtoCの対応があり、多くの企業や求職者をサポートできて、双方から感謝してもらうことができます。双方から感謝される業界はそんなにないと思うので、恵まれていますね。
残業をやめて、従業員とその家族の生活を豊かに
――2024年8月、GR8キャリアを設立された理由を教えてください。
小畑:理由は大きく2つあります。まずはシンプルに、企業へ質の高いサービス提供をしていきたいと思ったからです。前職では大手企業ならではの悩みとして、新しいことにチャレンジしたくて会議で提案しても、上のGOサインが出るまでに大きなコストと時間、エネルギーが必要で…。企業が求めていることを、スピード感を持ってやっていきたい僕には違和感があり、独立を考えるようになりました。
もう1つの理由は、働く従業員とその家族の生活を豊かにしたかったからです。より豊かな生活を求めて転職を考えている人をサポートする仕事をしているのに、自分たちはどうなのかと考えると、みんな遅くまで残業していて、残業しないための取り組みを提案しても通らなくて。また、僕自身は子どもが4歳と1歳で、日々成長する瞬間に立ち会いたいという気持ちを諦めたくなくて、同じ思いを抱えている人も多いのではと思っていました。残業の原因を突き詰めて、できることをやっていけば、数か月で改善できると分かりました。自分の会社から、残業は当たり前という業界の風潮を終わりにしたいと思いました。
――社名の「GR8」にはどんな思いが込められているのでしょうか。

小畑:転職は明るい未来を想像して臨むものなので、前向きな社名で、かつキャッチーな響きのgreatにしました。「GR8」と表現したのは、丸みを帯びた見た目でロゴが作りやすいと思ったからです。
――改めて、御社の事業内容について教えてください。
小畑:メインは人材紹介サービスで、基本的に看護師と介護職、保育士、栄養士、コメディカルに絞って、企業と求職者をマッチングしています。コロナ禍以降、遠隔での対応が受け入れられるようになったので、対象エリアは全国です。やり方としては、求職者を集めるところは外注していて、当社では求職者のキャリアや希望に合った企業に対して、「こういう求職者がいるので、いかがですか」と電話で営業するスタイルです。特に介護職は離職率が高く、半年以内に約4割が離職するというデータがあり、マッチングがうまくいくと大変喜ばれます。知り合いの企業から、いい人がいないかと相談されるケースもあります。
ほかに、採用方法のご提案、求人サイトに掲載する記事の制作など、人材に関して総合的にご相談に応じられるのが当社の強みになっています。
創業から1年弱、全国各地で15人の従業員が働く
――小畑さんはひとりで創業されたのでしょうか。
小畑:いえ、最初から僕以外に5人の従業員がいました。前々職のメンバーと偶然再会したり、人との縁がつながったりして、僕の思いをしっかり伝えて共感してくれる人を受け入れることができました。創業から9カ月経った今は、従業員が15人ほどに増えました。本社は福岡市にありますが、リモートで働いてもらえるので、仙台と神奈川、京都、兵庫、鹿児島に住んでいるメンバーがいます。
――創業から1年経たないうちに15人というのはすごい勢いですね。どんなメンバーがいるのでしょうか。

小畑:1年で8人を想定していたのですが、はるかに超えています。というのも、転職メディアに求人を出したら、2カ月で170人ほどに応募いただいたので。そのうち100人ほど面接して、最終的に10人に内定を出し、全員入社してくれました。
メンバーの前職は広告代理店や医療事務、俳優などさまざまで、女性が7割ほど。この仕事の経験者は2~3割です。僕としては、その人の人間性を生かせる仕事だと感じているので、経験は全く問いません。
――働き手不足の中、御社への応募が多かったのは、どんなところに魅力を感じられたのでしょう。
小畑:先ほどお話した「企業への質の高いサービス」と「働く従業員とその家族の生活向上」という思いに共感いただいたのだと思います。メリハリをつけて働き、リモートでもOKという働きやすさと、収入面では他社以上に成果を還元できる仕組みを実現しています。当社はバックオフィスに人件費をかけず営業に還元したいという考えで、バックオフィスを外注にした結果、大手と比べても1.5倍ほどの給与を支払うことができています。
――会社として、どんなことを大切にしていますか。
小畑:トップダウンではなく、「こういうことをやってみたいけど、どうですか?」とみんなの意見を聞くようにしています。誰でも声を挙げやすいように、心理的安全性を保ち、みんなお互いを否定しないというルールを決めています。また、社内できちんと「ありがとう」と言葉で伝えることも大事にしています。福岡のオフィスにいるのは私を含めて7人で、他のメンバーはリモートですが、毎日朝と夕方にオンラインで顔を合わせていて、一体感はあると思います。
2つの軸をブラすことなく、信頼を積み重ねていく
――福岡を拠点に起業するメリットがあれば、教えてください。

小畑:福岡はとにかく人がいいと思います。いい意味でおせっかいな人が多く、人情味があり、すごくあたたかい感じが好きです。あとは、経営的な視点でいうと、福岡は空港が近く、天神や博多へのアクセスも抜群なので、オフィスを構えるのに便利ですね。
――これから起業する人に、経験者としてアドバイスをお願いします。
小畑:起業しようと思ったら、福岡市の大名にあるスタートアップカフェで相談されることをおすすめします。僕自身は起業前にスタートアップカフェの存在を知らなくて、起業の手続きは何からしたらいいのか、人材紹介の許認可申請はどうしたらいいのかも分からず、ひたすらネットで調べて手探りで進めました。その後に、スタートアップ系の優遇や日本政策金融公庫の支援などについて知ったので、もっと早く知っておけばと思いました。スタートアップカフェでは、開業準備から開業後まで、さまざまな相談に応じてもらうことができて、創業支援のメニューもそろっています。ぜひうまく活用しましょう。
――起業して良かったと思われるのはどんなときですか。
小畑:自分のやりたいことをすぐ形にできることが何より楽しいです。あとは、従業員がイキイキと働いている姿を見ると、会社を立ち上げて良かったと思います。
うれしかったエピソードとしては、ある病院の事務局長さんから「看護師の娘にどこか紹介してくれないか?」と言ってもらい、大手がたくさんある中で僕に声をかけてもらったことを光栄に思いました。また、全国展開している企業の代表の方が、当社から紹介した人を優先して採用すると決めてくださって、信頼してもらえているのは励みになります。そういう方々を大事にしていきたいと思っています。
――最後に、今後の展望について聞かせてください。

小畑:創業時に掲げた2つのスタンスは変えずにやっていきたいと考えています。サービスの数では大手に到底かなわないけれど、サービスの質では負けないこと。そして、従業員とその家族まで笑顔で幸せに過ごせること。この2つの軸は、これからもブレないように貫いていくつもりです。
マーケットを広げて、会社の人数規模を増やし、経常利益を上げていくことも、会社を運営する上ではもちろん大事だと思います。しかし、僕としては、それはあくまで過程であって、最終的に2つの軸のために必要なことならやろうという感じです。ですから、前期比何%や何人、三カ年計画などは立てていません。経営理念にあるように、「人と企業の架け橋となり、共に成長し、グレートな未来を創造する。」の実現を目指していきます。
株式会社GR8キャリアについて
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

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