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インボイス制度ですることはこれ!必要な対応や該当する事業者などを紹介

By 森本由紀

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2023.12.21

インボイス制度が開始したけれど、することがよくわからないという事業者も多いのではないでしょうか。本記事では、インボイス制度で必要な対応について説明します。制度の概要を理解し、遅れないように対策をとりましょう。

>> インボイス制度の課題も対応!西日本FH Big Advance

インボイス制度とは?

2023年(令和5年)10月1日から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されました。制度の開始に伴い、事業者が行うことも増えています。まずは、インボイス制度とはどのような制度なのかを確認しておきましょう。

インボイス制度の概要

インボイス制度とは、法律で定められた一定の事項を記載した請求書をインボイス(適格請求書)とし、インボイスにより消費税の計算等を行う制度です。

消費税納税の仕組み

消費税の課税事業者は、取引先から代金を受け取る際に、消費税も一緒に預かります。課税事業者は消費税を預かった後、まとめて国に納税する仕組みになっています。

仕入税額控除とは?

課税事業者は消費税納税の際に、「仕入税額控除」ができます。仕入税額控除とは、受け取った消費税から仕入れの際に払った消費税を差し引くことです。仕入税額控除は、消費税の二重課税を防ぐために設けられているものです。

これまでは帳簿や請求書があれば、仕入の際に払った消費税は仕入税額控除ができました。しかし、2023年(令和5年)10月1日以降は、インボイスのあるものだけが仕入税額控除の対象になります。もしインボイスがなければ、仕入れの際に払った消費税を、自らが負担しなければなりません。

インボイスを発行できるのは登録事業者のみ

インボイス制度では、インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」として国税庁に登録した事業者のみになります。なお、適格請求書発行事業者の登録申請は、消費税の課税事業者しかできません。これまで免税事業者だった事業者は、適格請求書発行事業者の登録と同時に課税事業者となります。

経過措置期間が設けられている

インボイス制度は、仕入額控除の対象をインボイスのある取引に限定するものです。インボイスのない取引が多ければ、事業者の納税額は急に増えることになってしまいます。そこで、完全移行する前に、一定期間の経過措置が設けられています。

経過措置期間に注意することは?

経過措置期間中は、適格請求書発行事業者に該当しない事業者が発行したインボイスがある場合でも、一定割合を仕入税額控除に含められます。具体的には、次のとおりです。

期間

仕入税額控除に含められる割合

2023年(令和5年)10月1日から2026年9月30日まで

80%

2026年10月1日から2029年9月30日まで

50%

参考元:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 P.15

買い手として請求書を受け取った場合には、上記の経過措置期間中、注意しておく必要があります。インボイスかどうかで、仕入税額控除に含められる金額が変わってしまうからです。

会計ソフトなどの導入に補助金が出る

インボイス制度開始に伴って事業者が行うことは、インボイスに対応できるよう経理のシステムを整えることです。新たな会計ソフトや受発注システム、レジなどの導入も必要になるかもしれません。この場合には、中小企業庁が実施しているIT導入補助金を利用できることを知っておきましょう。

IT導入補助金のうち、インボイス制度向けに使えるのはデジタル化基盤導入類型です。デジタル化基盤導入類型では、会計・受発注・決済・ECソフトのほか、パソコン、タブレット、レジ、券売機等のハードウェア導入費用に補助金が出ます。

インボイス制度が導入される理由と必要性

インボイス制度は、消費税額を正しく計算し、ミスや不正を防止するために導入されたものです。

消費税は2種類の税率が混在

2019年(令和元年)に消費税率は10%に引き上げられましたが、食品など軽減税率として8%の税率が適用されるものもあります。納税額を計算するにあたって、適用されている税率を明確にする必要があるため、インボイスが必要になるのです。

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インボイス制度導入による影響

インボイス制度で何がどう変わるか、よくわからないという事業者も多いでしょう。ここからは、インボイス制度の影響を知りたい事業者向けに、行うことや負担がどう増えるかを具体的に説明します。

請求書の書式が変わる

インボイス制度導入により、適格請求書発行事業者が発行する請求書の書式が変わります。インボイスには、次の6つの項目を記載する必要があります。

インボイスの記載事項

  1. 請求書発行事業者の氏名・名称及び登録番号

  2. 取引年月日

  3. 取引内容(軽減税率対象品目は※印を付ける等して明記)

  4. 税率ごとに合計した対価及び適用税率

  5. 税率ごとに区分した消費税額

  6. 請求書受取事業者の氏名・名称

インボイス制度導入に際して売り手の側が行うことは、上記の事項を記載した請求書を用意することです。買い手の側が行うことは、上記の事項が記載されているかの確認です。

経理担当者の行うことが増える

インボイス制度により、経理業務は煩雑化します。担当者は、行うことが増えるのを認識しておく必要があります。

買い手の側では、適格請求書発行事業者からの仕入れとそうでない事業者からの仕入れを区別しなければなりません。仕入れ先によって、仕入税額の計算方法が変わるからです。

売り手の側は、買い手に求められたら、インボイスを交付しなければなりません。また、インボイスを交付したときには、写しを保存する義務も課せられます。

消費税の負担が増える可能性がある

インボイス制度導入により、買い手の事業者では、消費税の負担が増えてしまうことがあります。インボイスがない仕入れで払った消費税は、仕入税額控除に含められないからです。

また、これまで免税事業者だった売り手の事業者が適格請求書発行事業者になる場合には、消費税の納税義務が生じます。

中小企業がインボイス対策として行うこととは?

インボイス制度は事業者に大きな影響を与えます。ここからは中小企業向けに、インボイス制度開始にあたって行うことを具体的に説明します。

取引先の登録状況を確認する

自社が買い手になる取引では、取引先が適格請求書発行事業者の登録を行っているかの確認が必要です。事前に、取引先に登録状況を聞いておきましょう。

なお、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトでは、登録番号から登録事業者の情報を検索できます。取引先から登録番号を聞いたときには、サイトで確認しておくと安心です。

今後の取引や価格の交渉を行う

自社が買い手の場合、取引先に適格請求書発行事業者の登録をするよう提案してみる方法もあります。取引先がインボイスを発行できない場合には、取引量や価格の見直しも考えた方が良いかもしれません。

適格請求書の管理システムを整える

インボイス制度導入後の経理業務の負担を軽減するためには、会計や請求書発行の方法も変更しなければなりません。インボイス対応の管理システムを使えば、インボイスとそうでない請求書を区分して管理ができます。新たなシステムを導入する際には、IT導入補助金の利用を検討しましょう。

適格請求書が正しいか確認する

買い手がインボイスを受け取った際に行うこととして、内容が適正かどうかの確認があります。以下の事項を確認しましょう。

インボイス受け取り側が行うこと

  • 請求書に登録番号が記載されているかの確認

  • 国税庁のウェブサイトで登録番号と事業者を照合(初めての取引のみ)

  • 税率ごとに区分した対価の記載があるか確認

  • 税率ごとに区分した消費税額の記載があるか確認

  • 適用税率の記載があるか確認

適格請求書の保管が不要な取引もある

適格請求書発行事業者になると、インボイスの交付義務が発生します。しかし、以下に該当する取引については、インボイスの交付や保存が免除されます。

インボイス交付義務が免除される取引

  • 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

  • 卸売市場での生鮮食料品の販売

  • 農協・漁協・森林組合等に委託する農林水産物の販売

  • 3万円未満の自動販売機による商品の販売

  • 郵便切手のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたもの)

インボイス制度の影響を受ける可能性が高い事業者

インボイス制度開始による影響は、事業の種類によって変わります。買い手となる場合、インボイス制度の影響が発生しやすいのは、以下のような業種に該当する事業者です。

飲食店

飲食店の場合、食材の仕入先の農家や卸売業者が免税事業者なら、インボイスの交付が受けられません。仕入額控除ができなければ、仕入の際の消費税を自らが負担しなければならなくなります。

建設業

建設業の会社では、外注先が免税事業者である一人親方や個人事業主であることが多いでしょう。免税事業者からはインボイスの交付が受けられないため、仕入税額控除ができなくなってしまいます。

電力会社

電力会社は、FIT(固定価格買取制度)により、一般家庭が太陽光パネル等で発電した電気を買い取っています。これまでは、買い取り時に支払う消費税を仕入税額控除できていました。インボイス制度開始後は、免税事業者である一般家庭からの買い取りは仕入税額控除の対象外となってしまいます。

インボイス制度に対応すべきケース

自らが売り手である場合、インボイス制度に対応して適格請求書発行事業者となるかどうかを検討しなければなりません。ここからは、売り手である事業者向けに、適格請求書発行事業者の登録を行った方が良いケースを説明します。

自社の売上が1,000万円以上

法人の場合は原則として前の事業年度の課税売上高が1,000万円以上になると消費税の課税事業者に該当し、消費税の納税義務が発生します。税負担は変わらないので、適格請求書発行事業者の登録をしておきましょう。

買い手が課税事業者

買い手が一般消費者や免税事業者のみの場合、買い手は仕入税額控除をする必要はありません。この場合には、インボイスを発行できなくても影響はないでしょう。

一方、買い手が課税事業者の場合には、買い手が行う仕入税額控除に影響を与えてしまいます。取引を制限される可能性もあるため、適格請求書発行事業者の登録をしておきましょう。

一般消費者と事業者の両方と取引している

主に一般消費者向けの商品・サービスを販売しているけれど、事業者にも販売している場合には注意が必要です。買い手に課税事業者がいる場合、インボイスを発行できなければ買い手側が不利になってしまいます。適格請求書発行事業者の登録をしておけば、事業者とも安心して取引できるでしょう。

まとめ

インボイス制度の開始に伴い、事業者では対応が必要です。インボイス制度の対応は、売り手と買い手のどちらに該当するかで変わります。
売り手の場合には、適格請求書発行事業者の登録を検討しなければなりません。買い手の場合には、インボイスとそうでない請求書を区別し、仕入税額控除を行う必要があります。まだ対応できていない場合には、行うことをリストアップして取りかかりましょう。

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