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2022年(令和4年)の事業承継・引継ぎ補助金について。3つの支援概要とは?

By 市川えり

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2022.09.15

2022年(令和4年)3月31日に、「事業承継・引継ぎ補助金」の公募要領が公表されました。2021年(令和3年)補正予算で成立した、中小企業などの事業承継や引継ぎにかかる経費の一部を補助する制度です。この記事では、事業承継・引継ぎ補助金の要件や補助対象者、補助金額などの支援概要を解説します。※記事は2022年9月5日時点の情報です。

事業承継・引継ぎ補助金とは

まずは、事業承継・引継ぎ補助金の基礎知識を解説します。

制度の概要

円滑な事業承継やM&Aを希望する中小企業や個人事業主を支援し、経済の活性化を図ることを目的とした制度です。交付申請が可能な補助金は、「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3つの類型で構成されています。

申請にあたっての留意点

補助金の交付申請には、いくつかの条件があります。補助の対象となる事業者・経費・上限額は類型ごとに異なるため、 自社の事業がどの類型に該当するのか確認しましょう。また、申請は電子申請システムを利用します。紙の書類では申請ができない点に注意してください。

事業承継・引継ぎ補助金の支援内容

対象となる3つの枠組みの概要を、以下にまとめました。

補助率と補助上限金額

補助上限金額は類型によって変わりますが、補助率はすべての類型で同一です。

類型と型

補助率

補助上限金額

経営革新(創業支援型・経営者交代型・M&A型)

補助対象経費の3分の2

600万円

専門家活用(買い手支援型・売り手支援型)

補助対象経費の3分の2

600万円

廃業・再チャレンジ

補助対象経費の3分の2

150万円

経営革新

事業承継やM&Aを契機に、新たな商品開発や顧客開拓に取り組む事業者を支援する制度です。事業承継や引継ぎにおいて経営革新を図るとき、要した費用の一部について補助を受けられます。

要件

経営革新はさらに創業支援型・経営者交代型・M&A型の3つに分類されます。補助対象者は、地域経済や雇用に貢献している企業であることなど、公募要領で定められた要件を満たす必要があります。

創業支援型

廃業などを理由に、ほかの事業者から経営資源を引き継いで創業した中小企業や個人事業主が対象です。

経営者交代型

親族内承継など、以前の経営者から経営資源を引き継いだ中小企業や個人事業主が対象です。

M&A型

事業再編・事業統合・株式譲渡といった、M&Aにより経営資源を引き継いだ中小企業や個人事業主が対象です。

補助対象経費

出典:事業承継・引継ぎ補助金「経営革新・公募要領」

補助対象経費の下限額は100万円です。補助対象経費が150万円未満になった場合は、補助対象経費の3分の2(補助率)は100万円未満となります。補助下限額を下回ると交付申請ができないため、補助対象経費の金額には注意しましょう。

専門家活用

支援の対象者は、M&Aにより経営資源を引継ぐ予定の中小企業や個人事業主などです。この制度を利用することにより、事業承継や引き継ぎにあたって専門家活用に要した費用の一部について補助を受けられます。専門家とは、ファンアンシャルアドバイザー(FA)・仲介業者・弁護士・司法書士などを指します。

要件

専門家活用には、買い手支援型と売り手支援型の2種類があります。M&A支援機関に登録されたFA・仲介業者のみ補助対象など、公募要領で定められたいくつかの要件を満たさなければなりません。

買い手支援型

事業再編や事業統合に伴い、株式・経営資源を譲り受ける(買う)予定の中小企業や個人事業主などが対象です。

売り手支援型

事業再編や事業統合に伴い、株式・経営資源を譲り渡す(売る)予定の中小企業や個人事業主などが対象です。

補助対象経費

出典:事業承継・引継ぎ補助金「専門家活用公募要領」

補助対象経費の下限額は100万円です。補助対象経費が150万円未満になった場合は、補助対象経費の3分の2(補助率)は100万円未満となります。補助下限額を下回ると交付申請ができないため、補助対象経費の計上は漏れがないようにしましょう。

事業スケジュール

申請や交付のスケジュールを以下にまとめました。現時点で暫定的な項目もあるため、詳細は随時事業承継・引継ぎ補助金Webサイト(専門家活用)で確認してください。

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1次公募(申請受付終了)

申請受付期間

2022年(令和4年)4月22日~2022年(令和4年)5月31日17:00まで

交付決定日

2022年(令和4年)7月中旬~下旬

事業実施期間

交付決定日から最長2023年1月31日まで
※ 受付期間より事前着手の場合は、事務局が承認した日から2023年1月31日まで

実績報告期間

交付決定日〜2023年2月中旬まで

補助金交付手続

2023年4月下旬

2次公募(申請受付終了)

申請受付期間

2022年7月27日(水)〜2022年9月2日(金)17:00まで

交付決定日

2022年10月上旬~中旬

事業実施期間

交付決定日〜2023年4月30日(日)(補助事業完了期限日)

実績報告期間

交付決定日※〜2023年5月上旬(予定)

※受付開始時期は別途お知らせします

補助金交付手続

2023年6月上旬以降(予定)

3次公募

申請受付期間

2022年10月上旬~11月下旬

交付決定日

2022年12月下旬(予定)

事業実施期間

交付決定日~2023年7月31日(月)(補助事業完了期限日)

実績報告期間

交付決定日※〜2023年8月上旬(予定)

※受付開始時期は別途お知らせします

補助金交付手続き

2023年9月上旬以降(予定)

4次公募

申請受付期間

2022年12月下旬~2023年2月上旬

交付決定日

2023年3月中旬(予定)

事業実施期間

交付決定日~2023年10月17日(火)(補助事業完了期限日)

実績報告期間

交付決定日※〜2023年11月上旬(予定)

※受付開始時期は別途お知らせします

補助金交付手続き

2023年12月上旬以降(予定)

廃業・再チャレンジ

既存の事業を廃業し、新たな取り組みに挑戦する予定の中小企業や個人事業主などが支援の対象です。廃業を伴う再チャレンジにかかる費用の一部を補助する制度であり、債務整理を支援する目的ではない点に注意しましょう。

要件

この制度には、経営革新事業・専門家活用事業との併用申請と再チャレンジ申請の2種類があります。補助対象者には、補助期間終了日までに廃業が完了しているなど、公募要領で定められた要件を満たす必要があります。

補助対象経費

出典:事業承継・引継ぎ補助金「廃業再チャレンジ公募要領」

補助対象経費の下限額は50万円です。補助対象経費が75万円未満の場合は、補助対象経費の3分の2(補助率)は50万円未満となります。補助下限額を下回ると交付申請ができないため、補助対象経費の計上は慎重に行いましょう。また、廃業支援費の補助上限額は50万円であることにも注意してください。

事業スケジュール

申請や交付のスケジュールを以下にまとめました。現時点で暫定的な項目もあるため、詳細は随時事業承継・引継ぎ補助金Webサイト(廃業・再チャレンジ)で確認してください。

1次公募(申請受付終了)

申請受付期間

2022年(令和4年)4月22日~2022年(令和4年)5月31日17:00まで

交付決定日

2022年(令和4年)7月中旬~下旬

事業実施期間

交付決定日から最長2023年1月31日まで
※ 受付期間より事前着手の場合は、事務局が承認した日から2023年1月31日まで

実績報告期間

交付決定日〜2023年2月中旬(予定)まで

補助金交付手続

2023年4月下旬(予定)

2次公募(申請受付終了)

申請受付期

2022年7月27日(水)〜2022年9月2日(金)17:00まで

交付決定日

2022年10月上旬~中旬(予定)

事業実施期間

交付決定日〜2023年4月30日(日)(補助事業完了期限日)

実績報告期間

交付決定日※〜2023年5月上旬(予定)

※受付開始時期は別途お知らせします

補助金交付手続

2023年6月上旬以降(予定)

3次公募

申請受付期間

2022年10月上旬~11月下旬

交付決定日

2022年12月下旬(予定)

事業実施期間

交付決定日~2023年7月31日(月)(補助事業完了期限日)

実績報告期間

交付決定日※〜2023年8月上旬(予定)

※受付開始時期は別途お知らせします

補助金交付手続き

2023年9月上旬以降(予定)

4次公募

申請受付期間

2022年12月下旬~2023年2月上旬

交付決定日

2023年3月中旬(予定)

事業実施期間

交付決定日~2023年10月17日(火)(補助事業完了期限日)

実績報告期間

交付決定日※〜2023年11月上旬(予定)

※受付開始時期は別途お知らせします

補助金交付手続き

2023年12月上旬以降(予定)

事業承継・引継ぎ補助金の申請方法と申請期間

ここでは、電子申請の詳細と注意点、申請できる期間の概要について解説します。

受付は電子申請のみ

事業承継・引継ぎ補助金では、紙の書類による申請はできません。申請にはjGrants(Jグランツ)を利用します。jGrantsは経済産業省が運営する電子申請システムで、補助金申請の簡素化を目的として導入されています。

jGrantsの利用には、gBizIDプライムアカウントの取得が必要です。アカウントを取得するには数週間かかるため、手続きは早めにしておきましょう。

申請は4期間

事業承継やM&Aのタイミングに合わせられるように、申請できる期間を4つに分けています。申請期間は事業承継・引継ぎ補助金Webサイトにて公表されるので、希望する場合は随時確認してください。

まとめ

事業承継・引継ぎ補助金の申請交付には、細かな規定や手順があります。各類型の公募要領をよく確認して、正しく手続きをしましょう。西日本シティ銀行では、円滑な事業承継のためにさまざまな課題解決策を提案しています。 後継者育成・自社株対策・資産構成見直しなど、気軽に相談してください。


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