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ジョブ型雇用とは|メンバーシップ型との違いや導入するメリット・デメリットを解説

By もろふし ゆうこ

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2022.07.14
ジョブ型雇用メンバーシップ雇用

価値観の多様化や人材獲得競争の激化などにより、業務に応じた即戦力を採用する「ジョブ型雇用」の導入事例が増えています。終身雇用や年功序列を中心とした従来のメンバーシップ型雇用では、対応しきれなくなっているのが現状です。この記事では、ジョブ型雇用の定義やメリット・デメリットについて解説します。

ジョブ型雇用の概要と業務内容

日本企業の採用シーンにおいて、「ジョブ型雇用」という言葉をよく耳にするようになりました。ジョブ型雇用は、価値観の多様化や労働市場の変化に対応しやすい雇用形態として注目されています。

この項目では、ジョブ型雇用の定義やニーズが高まっている理由を解説します。

ジョブ型雇用とは

職務内容や勤務場所・時間などを明確に定めて雇用契約を結び、雇用された人は契約内容の範囲内で業務を担う雇用体系です。基本的に転勤や他部署への異動、昇進・降格はありません。

採用する人材に対して企業が求めるのは、業務内容に合う経験やスキルです。採用時には経験とスキルについてのマッチングを行うとともに、業務範囲や勤務時間、報酬などの明確な条件を提示します。

採用される人材側にとっては、自身の得意分野を活かした仕事に専念できるメリットがあります。契約時の条件にしたがって働けるため、希望するライフスタイルを得やすいのも特徴です。

日本では管理職クラスから導入が進みつつある

欧米など世界では、ジョブ型雇用がスタンダードな雇用システムとして昔から採用されてきました。グローバル化が進み日本人の働き方が多様化している近年、日本でもジョブ型雇用の導入が進んでいます。

特に経験豊富な管理職クラスから導入を開始し、社内体制を構築している企業が増加中です。終身雇用・年功序列制度下では、スキル向上や業務貢献の度合いに応じた賃金体系へ移行しにくい状況でした。ジョブ型雇用を実施すれば成果に見合う評価ができ、これまで苦慮してきた課題の解消を目指せます。

ジョブ型雇用の考え方が注目されている理由

世界ではジョブ型雇用が当たり前になっているにも関わらず、日本ではあまり導入されていませんでした。しかし今、ジョブ型雇用のシステムが熱視線を浴びています。その理由は、社会や個人の価値観、理想の働き方が変わってきているためです。

価値観・働き方の多様化

ワークライフバランスを重視する人が増えています。長時間労働ではなく、時間内に効率よく働いて休暇をしっかり取るという働き方が支持されるようになりました。これは、会社選びの基準にもなっています。

また、副業を持つなどワークスタイルの多様化も背景にあります。「自分らしさを大切にしたい」「自分のスキルを活かしたい」というものさしで、仕事を決めるようになりました。

労働環境の見直しが急務に

グローバル化の波や働き方の変化、人材不足などにより、日本で主流となっている終身雇用制度では対応しきれなくなっています。

転職市場が活況となり、優秀な人材は自身を高く評価してくれる会社へ流出します。また、スピード感ある事業運営・人材配置が競合の中で勝ち抜くためには必要不可欠です。

働き方改革を推進し、ダイバーシティに取り組んでいるかどうかが「選ばれる会社」の分かれ道になりつつあります。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

従来、日本ではメンバーシップ型雇用が主流でした。学校を卒業した若者を採用して、じっくり育てていくスタイルです。時代の流れに見合わない部分ばかりが取り上げられがちですが、実はジョブ型雇用にはない利点もあります。

ここからは、メンバーシップ型雇用の概要とジョブ型雇用との違いについて解説します。

メンバーシップ型雇用とは

終身雇用・年功序列を前提とした人材採用を実施し、研修や配置転換を通じて企業を担う人材をじっくり育成する雇用システムです。多くが新卒一括採用の総合職として入社し、さまざまな職務を経験します。

勤続年数に応じた昇進・昇給、会社の指示に基づいた勤務地・労働時間の決定などが行われます。

ジョブ型雇用との違い

メンバーシップ型雇用で採用された従業員は、「会社のメンバー」というイメージです。一方、ジョブ型雇用は「特定の仕事を担当する経験値の高い人」になります。

どちらも会社で働くことに変わりはありません。しかし、メンバーシップ型は組織人、ジョブ型は専門職担当者という意味合いが強いです。両者の違いについて詳しく見ていきましょう。

採用形態

ジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用

経験者採用メイン

新卒採用メイン

ジョブ型雇用で採用された人は指定された業務を専門的に担うため、経験者採用が圧倒的に多いです。メンバーシップ型雇用は業務が限定されず、新卒採用がメインになります。

業務の範囲

ジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用

限定される

限定されない

ジョブ型雇用では、契約時に取り交わす職務記述書(ジョブディスクリプション)で業務範囲が規定されます。メンバーシップ型雇用は業務範囲が限定されず、ジョブローテーションを行うのが一般的です。

賃金

ジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用

業務内容により決定

総合的に決定

ジョブ型雇用では、仕事の中身で給与が決まります。メンバーシップ型雇用では仕事内容だけでなく、勤続年数や社内での経歴などを総合的に判断して報酬額を決めます。

人材の定着率

ジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用

流動的

終身雇用を前提

ジョブ型の方が、メンバーシップ型よりも人材が流動的です。業務状況などに応じて、採用・解雇しやすい特徴があります。

一方、メンバーシップ型雇用では定年まで働いてもらうことを前提としています。転職が当たり前になりつつあるため、メンバーシップ型雇用においても一昔前と比べて流動性が高くなっているのが現状です。

経験・専門性重視か、ゼネラリスト育成重視か

メンバーシップ型雇用の利点として、企業の状況に応じた人事を行えることがあります。

業務が限定されない人材を採用することで、企業側の都合に応じた育成・配属が可能です。自社のゼネラリストを増やすと、社内の人手不足や業務補強について迅速に対応しやすくなります。また、経営者候補を育てることにもつながります。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用、それぞれの特性をどう活かすかが経営の鍵といえるでしょう。

ジョブ型雇用のメリット・デメリット

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ジョブ型雇用は会社経営においてどんなメリットがあるのかを、デメリットとともに解説します。

ジョブ型雇用のメリット

即戦力を採用することで得られる、ジョブ型雇用ならではのメリットを紹介します。

職務にマッチした人材を採用できる

業務範囲や勤務条件などを明確にして採用募集をかけるため、職務に合う人材を採用できます。雇用された人は決められた仕事で責任を果たせばよく、入社後の食い違いが起きにくいとされています。企業と人材、双方にとってメリットが大きい雇用体系です。

社内の人にイチから教えるよりも、専門性を身につけた人材を外から採用するほうがリスクを避けられるという見方もできます。

希望しない仕事に異動したことで勤労意欲が削がれたり、他社へ転職したりする既存社員を減らせます。また、事業の方向転換により部門が解散したとき、ジョブ型雇用なら契約終了しやすいという面もあるのです。

業務効率アップにつながる

即戦力がある人を採用できる分、任せたい仕事と人材のマッチングがスムーズです。これまでの経験を活かした業務改善も期待でき、チーム全体の効率アップも図れます。

ジョブ型雇用人材は、成果を上げることで高評価を得られます。事業推進を集中的に目指すシチュエーションにおいては、企業の方向性にコミットしやすいです。これは、企業と人材がWin-Winの関係を結びやすいといえます。

リモートワークなど多彩な勤務体制に対応しやすい

メンバーシップ型雇用の場合、成果以外にも複数の要素を考慮して総合的に評価します。一方、ジョブ型雇用では成果そのものに対する評価がメインです。そのため部門リーダーは、対面による業務管理をしなくても公平な評価がしやすくなります。

職種によっては、フルリモートでの勤務であっても成果に基づいて公平に評価できます。「好きな場所・好きな時間に働ける」という魅力は、激化している人材獲得競争においてもプラスに働くでしょう。

ジョブ型雇用のデメリット

比較的メリットの部分が強調されがちですが、ジョブ型雇用で注意すべきポイントもあります。従来の雇用形態からどう抜け出し競争に勝ち抜くか、というのが主な課題です。

採用・育成・評価システムを見直さねばならない

日本企業の多くが、メンバーシップ型雇用を土台とした人材戦略を行ってきました。ジョブ型雇用を実施するためには、今までのシステムを見直さねばなりません。人手不足や人材育成を主に社内異動で対応してきた組織運営を変えるというのは、それなりの労力が伴います。

また、人事評価の改定も欠かせません。ジョブ型雇用の場合、決められた業務においてどのくらい成果が出せたかが主な基準となります。勤続年数などを総合的に判断するメンバーシップ型雇用の基準とは、異なる指標が求められます。

業務範囲外の仕事をどう割り振るかが課題に

ジョブ型雇用で働く人が増えることで、雑務や一時的な業務に対応する人が減ってしまう点も考慮しましょう。契約外の業務が発生したらどう対応するか、対策が必要です。

この課題については、メンバーシップ型雇用の特徴である「ゼネラリストの育成」で補完できます。ジョブ型とメンバーシップ型を組み合わせることで、互いのよさを引き出せるのです。

人材獲得競争が激化する

専門的なスキルを持ち、ジョブ型雇用で働ける優秀な人材を探すのが難しいケースもあります。ごく限られた業務やメンバーシップ型雇用が主流の業界における採用募集については、人材獲得競争が激化しているのです。

特にジョブ型雇用の人材は自身が属する会社への帰属意識よりも、自分に課されたミッションをクリアすることに重点を置いています。より自分を高く評価してくれる会社があれば、そこに移りたいと思うのは自然な流れです。よって、魅力ある企業になるための努力が必要です。

ジョブ型雇用の導入手順

ジョブ型雇用を行う職務の内容を定義する

なぜジョブ型雇用が必要か、どんな業務をお願いするのか、できる限り明確に定義します。現場社員とも綿密に打ち合わせし、任せる仕事の内容や勤務スタイルについて丁寧にすり合わせましょう。

職務要件を明確にする

任せる業務の内容を踏まえて、職務記述書を作ります。職務記述書とは、担当する職務と職務要件が明示された書類です。必要な実務経験・スキル、資格や知識、求められる人物像など可能な限り具体的に記載しましょう。

成果に応じた給与・評価制度を設ける

ジョブ型雇用に適した給与体系や評価制度を設定します。社内の他職種や役職、責任の範囲などとも照らし合わせながら、納得感のある基準を設けましょう。

同時に、市場価値に合う給与かどうか確認が必要です。競合他社に優秀な人材を奪われてしまうリスクもあります。

社内に制度導入について周知する

社内での周知も大切です。ジョブ型雇用による人材と既存社員が気持ちよく働けるよう、雇用意図や条件などをしっかり伝えましょう。

決められた業務内で働くジョブ型雇用人材に対し、既存社員は自身の担当外業務も引き受ける立場です。そのため忙しい現場では、「自分ばかり負担が大きい」などの不満を抱えがちになります。周知が疎かにならないよう、重点的に取り組みましょう。

まとめ

ジョブ型雇用を自社で導入すべきか、悩む経営者が多いのが現状です。ライバル企業の動向も伺いながら最適な解決策を見つけるのは、多大な時間と労力が必要となります。

雇用体系の見直しや経営に関する各種課題は、西日本シティ銀行営業店やNCBリサーチ&コンサルティングでも相談できます。この機会にぜひ活用してみてください。


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