論理的思考の基本「MECE(ミーシー)」とは?考え方やフレームワークを紹介

ビジネスでは、論理的思考やロジカルな分析が多々求められます。そこでこの記事では、論理的思考の基本ともいえるMECEとは何かを解説します。記事を最後まで読むと、MECEの考え方や活用できるフレームワークなどを理解できるでしょう。
MECEとは
MECEとは、課題や目的に対して論理的に考えるための手法です。 簡単に言うと、必要な要素を被りがないよう、すべてモレなく挙げることを指します。
「ミーシー」や「ミッシー」と呼ばれ、以下4つの英語の頭文字から付けられました。
- Mutually(互いに)
- Exclusive(重複せず)
- Collectively(全体として)
- Exhaustive(網羅されている)
これら4つの言葉を合わせ、日本語では「モレなくダブりなく」という表現をします。MECEは論理的思考のひとつであり、客観的な視点や合理的な筋道を考えるクセを付けられるでしょう。
MECEがビジネスで重視される2つの理由

MECEでないと検討事項や物事の完成度が低くなったり、非効率的な検討が繰り返されたりします。ビジネスにおいて完成度や効率は非常に重要なため、MECEの考え方が自ずと求められるのです。
MECEがビジネスで重視される大きく2つの理由について、詳しく紹介します。
理由1.要素にモレがあると完成度が下がるため
まず、MECEで課題や目的に取り組むことは、完成度を高めることに繋がります。物事がMECEでなくモレがあった場合、モレてしまった部分に対する検討がされません。そうなると、全体の完成度としては不足している部分や、完璧とは言い難い部分が出てきてしまいます。
理由2.要素にダブりがあると効率が悪いため
続いて、効率的に考えるためにもMECEが必要です。ダブりがある場合、同じ項目について重複して考えることになります。そのため、同じ問いを繰り返してしまったり、検討時間が長引いてしまったりするため非効率です。
マーケティング活動や営業活動など、ビジネスでは論理的思考が求められる場面が多々あります。MECEを意識することで会社にいい影響が生まれるので、ビジネスで重視されているのです。
MECEの分かりやすい具体例

MECEをさらに理解するために、具体例を見ていきましょう。分かりやすいようモレ・ダブりがそれぞれある物事の例から紹介し、最後にモレ・ダブりのないMECEを解説します。
モレありダブりあり
まずは、モレ・ダブりが両方ある例です。
- 会社員
- 個人事業主
- アルバイト・パート
- 学生
- 予備校生
上記の場合、仕事をしておらず学生でもない人がモレています。専業主婦や無職といった項目を増やすのが望ましいです。
また、予備校生も学生に変わりはないので、要素が被っています。予備校生をなくして学生に統一したり、学生の項目を小学生・中学生・高校生・大学生と細かくしたりする必要があります。
モレありダブりなし
続いて、モレがありダブりがない例です。
- 10代
- 20代
- 30代
- 40代
- 50代
10代~50代まではダブりなく網羅できているものの、10歳未満や60代以上がモレています。
ただし、場合によってはこの状態がMECEになっていることもあります。例えば顧客の年齢層が10代~50代に収まっていることが明らかであれば、10歳未満や60代以上を要素に加える必要はありません。
モレなしダブりあり
モレなしダブりありの例は、以下となります。
- スマートフォン
- iPhone
- ガラケー
- 持っていない
iPhoneはスマートフォンのひとつなので、項目がダブっています。
なお、上記例がもし保有している携帯電話を聞くアンケートの場合、もう少し質問や項目を練る必要があります。複数台の携帯電話を持っている人もいるので、その点を考慮しなくてはなりません。
モレなしダブりなし
最後に、モレなしダブりなしのMECE例を見ていきましょう。
- 男性(35歳未満)
- 男性(35歳以上)
- 女性(35歳未満)
- 女性(35歳以上)
このようにモレ・ダブりがない状態がMECEです。
なお、上記例は年齢の表記を一歩間違うとダブりが発生してしまいます。仮に35歳未満を35歳以下と表記すると、ちょうど35歳の人は35歳以上・35歳以下どちらにも属すことになります。未満と以下・以上は間違いやすいポイントなので要注意です。
MECEの基本的な考え方

MECEへの理解を深めるうえで、重要な思考方法が2つあります。それは課題や目的に対し、「論理的な視点で捉えること」と「分解・構造化すること」です。それぞれについて詳しく解説します。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは話に筋道を立て、論理の飛躍や矛盾・破綻などがないように物事を考えることです。
ロジカルシンキングができていないと、偏った意見になってしまったり、結論は結局何なのかが分からなくなったりします。話が合理的であり筋道が通っていること、因果関係がはっきりしていること、そのように考えるのがロジカルシンキングなのです。
分解・構造化
MECEでは、物事を構成する要素を分解し、新たに再構築やグルーピングなどをおこないます。分解・構造化ではまず全体像を見極め、それを構成する要素や要素間の関係性などを整理します。
一定の条件や目的に沿って要素を再構築したり、別の視点から要素を分析したりすることで、曖昧さが明確になるでしょう。物事を分解・構造化して考えることでモレやダブりがないかチェックできるので、MECEにおいて重要な考え方です。
MECEのさまざまな活用方法

MECEの考え方は、さまざまなアプローチや切り口、フレームワークで活用できます。複雑な問題に当たったときや視野が狭くなってしまったときに、MECEの活用が解決策となってくれるでしょう。
ここでは、MECEを活用できる9つのアプローチ・切り口・フレームワークを紹介します。
2つのアプローチ
まずは2つのアプローチ方法として、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチを紹介します。トップダウン・ボトムアップは経営方針や投資などでも使われる概念です。アプローチする方向が変わるだけで、見える景色や考え方も変わってきます。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは、上から全体を見下ろす形でアプローチしていく方法です。全体像や大枠からその中にある構成要素を見ていくことで、物事を俯瞰的・体系的に捉えられます。トップダウンアプローチでは全体像がはっきりしているので、ゴールを意識した分類がしやすいのが特徴です。
その一方で、細かな要素を見逃してしまう可能性があります。また、そもそも全体像がはっきりしておらず要素分解できない場合は、トップダウンアプローチが難しいです。そのようなときは、次に紹介するボトムアップアプローチがおすすめです。
ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチは、下から上にのぼりながら大枠を捉えていくアプローチ方法です。現時点で分かっている情報や要素から関連性のある要素を導き出し、それをグルーピングして構成します。
ブレインストーミングのように、アイデアを洗い出し整理していくことをイメージするといいでしょう。ボトムアップアプローチは未知の領域や問題に対しても、取り掛かりやすいのが強みです。
3つの切り口
要素の分解・構造化については、3つの切り口から考えられます。何を基準に要素をグルーピングすればいいのか分からない場合に役立ててみてください。
分類
まずは、物事を対称概念や類似概念に分類する切り口があります。対称概念とは全く逆の意味を持ち、類似概念とは似たような意味を持ちます。例えば次のようなイメージです。
まずは、対称概念の例になります。
- メリット・デメリット
- 量・質
- 主観・客観
次に、類似概念の例です。
- フルーツ・りんご
- 家族・兄弟
- 家具・ソファ
要素を対称概念や類似概念でカテゴライズすることで、一見バラバラだった物事を整理しやすくなるでしょう。
区切り(分割)
直線上で表せる要素については、任意の点で区切りや分割を行います。直線上で表せる要素とは横並びになった数値などを指し、例えば次のような尺度があります。
- 年数
- 年齢
- 距離
- 金額
- 回数
また数値以外にも、プロセスやステップといった活動ごとに区切ることも可能です。例えばプロダクトライフサイクルのように、導入期・成長期・成熟期・衰退期と4つのプロセスに区切ります。一見地続きに見えているものを分割して考えることで、モレやダブりを回避できるのです。
因数分解
数学の因数分解とは異なり、ビジネスの因数分解は物事を要素に分解して計算式に当てはめることを意味します。
ビジネスにおける因数分解の計算例は、以下のとおりです。
- 売上高=「各店舗売上」×「店舗数」
- 店舗売上=「客単価」×「客数」×「リピート数」
上記の例でいうと、売上高という大きな対象を、各店舗売上と店舗数という構成要素で計算します。さらに店舗売上を分解し、客単価や客数といったより具体的で細かい部分にまで落とし込めるのです。要素をすべて掛けたものが全体であるので、モレがなくなります。また、同じ要素を二重に計算しない限りダブりもありません。
4つのフレームワーク
ビジネスでよく使われるフレームワークをMECEに活用することが可能です。フレームワークは一定の枠組みにしたがって考えることで、共通認識や分析方法に波が出ない点で役立ちます。
ビジネスでは多くのフレームワークがありますが、その中からMECEで使える4つのフレームワークを見ていきましょう。
3C分析
3C分析とは、自社・顧客・競合の3つの観点から、経営戦略や会社の方向性を考えるフレームワークです。
3Cの内容は、以下になります。
- Company:自社(理念・強み・資本力など)
- Customer:顧客(市場規模・ニーズ・消費行動など)
- Competitor:競合(特徴・シェア率・成長性など)
自社と顧客のみ、または自社と競合のみでは、分析すべき要素がモレてしまう可能性があります。そのため、3つの観点から考えることで、内部要因・外部要因の両方からモレなく分析できます。
4P分析
4P分析とは、商品・価格・流通・販促の4つの要素から、商品販売戦略を考える手法です。マーケティングの基本的な分析手法であり、4Pのことをマーケティングミックスとも呼びます。
4Pの内容は、以下のとおりです。
- Product:商品(品質・スタイル・ブランド力・保証など)
- Price:価格(利益率・支払い方法・ポイント制度など)
- Place:流通(流通経路・販売領域・立地・配送方法など)
- Promotion:販促(広告・広報・人的販売・販売促進)
先ほど説明した3C分析は、内部要因・外部要因のリサーチを行います。4P分析では、3C分析から得られたデータを戦略立案に活かします。
SWOT分析
SWOT分析は、内部要因である自社の強み・弱みと、外部要因である機会・脅威の4つの視点から成るフレームワークです。SWOT分析により既存事業・新事業の将来的なリスクを見出したり、今後行うべき改善点を把握したりする機会ができます。
SWOT分析の内容は、以下のとおりです。
- Strengths:強み(内部環境)
- Weaknesses:弱み(内部環境)
- Opportunities:機会(外部環境)
- Threats:脅威(外部環境)
マーケティングのプロセスにおいて最初のステップである、市場分析やリサーチ段階でSWOT分析が役立ちます。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、核となる問題から関連性のある要素へと拡大しながら考えていく手法です。木の枝葉のように分析範囲や関連要素が繋がっていくので、ロジックツリーと呼ばれています。
ロジックツリーで分析すると、全体像を捉えながら物事を整理しやすくなります。さらに、問題の本質がどこにあるのか新たな発見に繋がり、取るべきアクションが見えやすくなるのも特徴です。課題解決のためのフレームワークなので、問題の根本原因を特定したいときや、考えられるリスクに備えたいときなどに役立ちます。
まとめ
MECEとは「モレなくダブりなく」を意味し、論理的思考における基本的な考え方です。MECEで考えるのは、モレによって完成度が下がることや、ダブりによって非効率な検討になることを避ける目的があります。この機会にMECEで思考するクセをつけ、ビジネスの拡大やいい影響へと繋げましょう。
Writer
2級FP技能士
地方銀行へ入社し、貯金・ローンなど金融商品の販売に従事。 その後、不動産業界へ転職して社会保険や労務管理を担当しながらFP資格を取得。自身の経験から“お金を無駄にしないための”アドバイスをおこなう。
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