番組・動画制作から拠点の運営まで、幅広い事業を展開|株式会社move on.e 岩谷直生さん

20歳から放送局の番組制作に関わり、個人事業主を経て、41歳で番組と動画制作を主軸にした株式会社move on.eを設立した岩谷直生さん。長年のディレクター経験を生かして、マスメディアの番組やイベントを手掛ける一方で、子どもに向けた全く新しい事業にも意欲的にチャレンジしています。
株式会社move on.e 代表取締役 岩谷直生(いわや なおき)さん
福岡市出身。福岡大学附属大濠高校、福岡スクールオブミュージック専門学校ラジオ科を卒業後、2002年KBCラジオでADとしてアルバイト勤務。2003年番組制作会社に正社員として入社し、2013年に個人事業主として独立。2023年10月に株式会社move on.eを設立。
目次
子どもの頃から音楽が好きで、番組制作の道へ
―岩谷さんが放送局のラジオ番組制作からキャリアをスタートした理由を教えてください。
岩谷:幼少期にピアノを習ったのがきっかけで、音楽が好きだったからです。特にローリングストーンズにハマり、高校時代は知人に誘われて演劇部でPA(音響)を担当。音楽系の仕事に就きたくて、専門学校のラジオ科に進学しました。そして卒業後は、KBCラジオでアルバイトのADとして働き始めました。
―まずはアルバイトから始めたのですか。
岩谷:そうなんです。翌年、番組のディレクターに声をかけてもらい、番組制作会社に正社員として入社することができました。在籍していた10年間で、福岡の放送局のラジオ番組を中心に、NHKの中継ディレクターからテレビの情報番組、イベントまで幅広く担当しました。結果として、ラジオとテレビのどちらも制作できることが自分の強みになりました。
個人事業主になり、ウェブ動画制作にも注力
―2013年に個人事業主として独立されたとのこと。どんな思いがあったのでしょうか。
岩谷:もともと独立志向があったわけではありません。でも、制作会社で働く中で、番組制作だけでなく、独自のコンテンツを生み出していきたいという思いが強くなりました。というのも、放送局の番組制作という仕事はどうしても下請けになるので、放送局の状況や予算、意向によって大きく左右されてしまいます。そういう受け身なあり方を変えたいと思い、社内でウェブ動画制作の事業を立ち上げ、ひとりで営業と制作をしていました。今ではウェブ動画が一般的になりましたが、15年ほど前のことで、当時は先駆け的な存在でした。
―新しい分野にいち早く着目して、独立されたのですね。
岩谷:従来の番組制作に加えて、将来を見据えてウェブ動画制作にも力を注ぎたくて退職しました。収入面でも、独立した方がいいのではという期待もありました。32歳になる直前で、屋号は自分の下の名前をそのまま英語にした「straight life」。自己資金でスタートしました。
―個人事業主としてスタートされて、いかがでしたか。

岩谷:最初は順調すぎて、逆に大丈夫かなと思ったぐらいです(笑)。番組制作は制作会社を通さずにクライアントと直接の仕事もできるようになり、ウェブ動画制作は代理店から会社のPR動画、CMなど幅広くお話をいただきました。やればやるだけ収入が増えるので、ストイックにやっていると、収入はサラリーマン時代の4倍ほどに増えました。
でも、3年目には番組制作の収入がいったんガクンと落ち込んでしまいました。予想していたように、放送局の下請けだけでやっていくのは危険で、ウェブの分野に進出しておいて良かったと実感しました。
―一度は売上が落ち込んでも、また持ち直したのは何か要因があったのでしょうか。
岩谷:番組制作は、テレビは視聴率、ラジオなら聴取率という数字がハッキリ出て、それが評価になります。僕は業界歴が長くなり、自分なりに数字を上げるノウハウを見出していたので、再び番組制作の依頼が増えました。
―具体的にどんなノウハウがあるのでしょうか。また、仕事の面白さはどんなところに感じますか。
岩谷:テレビもラジオもどう注目されるかが勝負で、番組内でバズるコンテンツを作ってしまえば、数字はおのずと戦略通りになっていくんです。
この仕事の面白さは、見えないターゲットを相手にするところでしょうか。今でいうマーケティングをもとに視聴者やリスナーを想定して制作を進めて、もちろん外れてしまうこともありますが、当たったときは楽しく、数字が上がるとうれしいですね。
そもそもテレビとラジオには大きな違いがあります。ラジオはテレビのようにザッピングするメディアではないので一度受信する局を設定したらなかなか動かしませんし、リスナーの数が限られていて、どうしても各局で取り合いになります。では、どうするか。僕は取り合うのではなく、新しい層を取り込もうと考えています。電波を使った宣伝ではなくて、イベントでPRしたり、チラシを配ったり、SNSからラジオに引き込んだりです。成果が数字で見えるので、やりがいを感じます。
会社を設立し、拠点ができて活動が広がる
―2023年10月に株式会社move on.eを設立されました。なぜ法人化されたのでしょうか。
岩谷:個人で10年やったら、法人にすると決めていました。毎週、経営者をゲストに招くラジオのコーナーを10年ほど担当していて、中小企業から大企業までさまざまな経営者のお話から学ばせてもらいました。その中で、10年続く会社はなかなかないと知り、個人事業主としてやってみて、10年続けられたら法人にしたいと考えていました。ちょうど収入が頭打ちになってきたこともあり、スタッフを入れてやってみたいと思い、move on.eを設立しました。「move one」はコロナ禍に「ひとりでも動く」という意気込みで考えていたネーミングで、それをさらに進化させた「move on(進む)+e」=「move on.e」という社名のeにはエンターテインメント、エデュケーション、エコロジーなど幅広く活動するという思いを込めています。
―どんなメンバーがいるのでしょうか。
岩谷:今は僕を含めて3人が在籍しています。一人は業界歴が近い後輩で、テレビ畑で東京や熊本で活躍した後、福岡に帰ってきたので一緒にやろうと意気投合しました。もう一人はリポーターやナレーションのキャリアがある女性で、子育てのために仕事をセーブしていたので、パート勤務でナレーションやイベントの司会、事務作業などをお願いしています。
―会社にすると、個人事業主とは違いましたか。
岩谷:大きく3つのことが違いました。1つはお金の回り方で、スタッフにはしっかり対価を払いたくて給料を高めに設定したのですが、思った以上に税金や保険などがかかってしまうことが分かりました。
ほかの2つはプラス面で、法人にしたことで行政と直接お仕事ができるようになりました。これまではどうしても代理店が間に入っていたのですが、直接取引ができるようになったのは一番大きな変化ですね。あとは、肩書が個人事業主から経営者になり、経営者の集まりに顔を出しやすくなりました。
―改めて、現在の事業内容について教えてください。
岩谷:大きく3つあります。メインにしているのはテレビとラジオの番組制作で、イベントも手掛けています。2つ目はYouTubeやSNS、HPなどの動画制作で、企業に向けて動画のサブスクというサービスも立ち上げたところです。

3つ目は「イロハニ」という事業で、2024年6月に博多区東比恵の新築マンションに活動拠点を構えました。個人事業主のときからNPO法人文芸想伝会という伝統芸能を発信する団体の理事をしていて、福岡市の幼稚園を中心にワークショップを行い、そのプロジェクトを「イロハニ」と名付けていました。さらに、子どもにアプローチする事業を広げたいと思っていたところ、福岡市の「若者の居場所づくり」事業に共感し、小中高生が放課後に無料で使えるフリースペースとして活動拠点を開放。市の補助金と民間のサポーターで運営しています。また、この場所を撮影スタジオやパーティなどのレンタルスペースとしても活用しています。
―拠点ができたことで活動が広がっていますね。居場所づくりでは、どんな子どもがどんなことをしているのですか。

岩谷:近所の小中学生がメインで、宿題をしたり、おしゃべりしたり、プロジェクターにつないでゲームをしたりと、思い思いに過ごしています。平均すると1日5人ほど、多い日は10人以上来てくれます。今の子どもたちは、核家族化して共働き世帯が多く、放課後に集まって遊ぶ場所がありません。僕ら世代は駄菓子屋さんや友人の家に行っていたけど、親は家に集まられると困ると言い、公園にゲームを持って行ってやっていると「ゲームをするなら帰れ」と地域の人に言われたりして…。ですから、僕ら大人がいる室内スペースは、本当の意味で居場所になっている感じがします。女の子たちがずっと好きな人の話をして、こちらに意見を求められたり、男の子からはお母さんの愚痴を聞いたりと、子どもたちがざっくばらんにいろんな話をしてくれるので楽しいですよ。
動画制作のサブスクや子ども食堂など、新事業に挑戦
―最後に、今後の展望について聞かせてください。
岩谷:会社としては、ウェブ動画制作の事業を伸ばしていきたいと考えています。そこで、業界で先駆けて、動画のサブスクのサービスを本格的に始めたところです。一般的に動画制作は高いというイメージを持たれていて、実際に1本30~50万円ですから敬遠されがちです。しかし、今はSNSの時代になり、企業にとって動画は重要なコンテンツになっています。1本の単価を抑えるために動画のサブスクを始めて、評判もいいので、気軽にご利用いただけるとうれしいです。動画は写真や文章では表現できない雰囲気まで伝えられるので、きっと会社の財産になるはずです。

また、動画制作のスクールも始めました。社内で動画制作ができる人を育てたい会社の人や、副業としてやってみたい人などが参加されています。福岡の一般的なスクールは、編集ソフトの使い方を学ぶところが多いのですが、僕らのスクールは企画や構成、撮影の方法からしっかり教えるところが特徴です。

―動画は素材が大切なので、企画や撮影の方法から学べるのはいいですね。

岩谷:そうなんです。それからイロハニに関しては、これまで月1回、料理研究家が作った料理と生ハムを食べる経営者のビジネス交流会を開いていたのですが、そのノウハウを活かして、子ども食堂を毎月第4土曜日に開催しています。いわゆるボランティアや公的な補助金を入れる事業ではなくて、ここに子どもから大人まで多彩な人が集まることで、ビジネスや交流などいろいろなものが生まれる場にしていきたいです。僕は今までマスメディアを使って数万人を集客してきましたが、個の時代といわれる中、こうして少人数がリアルに集まってしっかり交流しファンになってくれるスタイルにも、とても面白さを感じています。
株式会社move on.eについて
■会社概要
会社名:株式会社move on.e
URL:https://moveon-e.net/
所在地:福岡市南区大橋団地6-1 マークスシティ大橋1105号
設立:2023年10月
代表取締役:岩谷直生
■事業内容
テレビ、ラジオ、インターネットでの動画制作、イベント制作、飲食業
■問い合わせ先
info☆moveon-e.net (⭐︎を@に変更してアドレス記載)
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

◎コワーキング施設「Zero-Ten Park DAIMYO」
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Writer
フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。
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